HOME > 全文掲載 > 『詳論 相談支援』

「精神障害者退院促進支援事業実施要綱」

厚生労働省 20030507 障第0507001号

萩原 浩史 20191210  『詳論 相談支援――その基本構造と形成過程・精神障害を中心に』,生活書院,資料

Tweet
last update:20200719


精神障害者退院促進支援事業の実施について

平成15年5月7日 障第0507001号
各都道府県知事・指定都市市長あて
厚生労働省社会・援護局保健福祉部長通知

 精神障害者の保健福祉施設については、かねてより特段の御配慮をいただいているところであるが、今般、精神障害者の社会的自立を促進することを目的として別紙のとおり、「精神障害者退院促進支援事業実施要綱」を定め、平成15年4月1日から適用することとしたので通知する。

(別紙)
「精神障害者退院促進支援事業実施要綱」

1.目的
 本事業は、精神科病院に入院している精神障害者のうち、症状が安定しており、受け入れ条件が整えば退院可能である者に対し、活動の場を与え、退院のための訓練(以下「退院訓練」という。)を行うことにより、精神障害者の社会的自立を促進することを目的とする。

2.定義
(1)対象者
  「対象者」は、精神科病院に入院している精神障害者のうち、症状が安定しており、受け入れ条件が整えば退院可能である者をいう。
(2)協力施設等
  「協力施設等」は、精神障害者に対する理解が深く、退院を目指す精神障害者に活動の場を提供し、退院訓練を行うことを通じてその社会的自立を促進することに協力する精神障害者社会復帰施設、精神障害者地域生活援助事業、小規模作業所をいう。
(3)自立支援員
  「自立支援員」は、精神障害者の福祉に理解を有する者であって、精神保健福祉士又はこれと同等程度の知識を有する者をいう。

3.実施主体
(1)本事業の実施主体は、都道府県及び指定都市(以下「都道府県等」という。)とする。
(2)実施主体は、本事業の一部を、希望する精神障害者地域生活支援センターの運営主体に委託して実施するものとする。

4.自立支援員の委嘱
 都道府県知事及び指定都市市長(以下「知事等」という。)は、対象者の退院訓練を支援するために、自立支援の委嘱を行うものとする。

5.運営委員会の設置等
(1)知事等は、以下に掲げる業務を行うため、精神障害者退院促進支援事業運営委員会(以下「運営委員会」という。)を設置するものとする。
 @対象者数(利用者見込者数)、協力施設等の数等に係る数値目標の設定
 A6に規定する自立支援促進協議会からの報告の受領及び自立促進支援協議会への助言
 B実績報告を受けての事業効果の評価
 Cその他本事業の実施にあたって必要な事項の協議
(2)運営委員会は、以下に掲げる機関の責任者で構成する。会の長は都道府県等本庁の精神保健福祉部局の責任者とする。
 @都道府県等本庁、精神保健福祉センター及び保健所の精神保健福祉部局
 A市町村の精神保健福祉、生活保護及び公営住宅の各部局
 B精神科病院
 C精神障害者社会復帰施設
 D精神障害者居宅生活支援事業における運営主体
 E小規模作業所
 F地域の医師会
 G地域の精神科病院協会
 H地域の家族会
 I地域の当事者団体
 Jその他知事等が適当と認める者
(3)運営員会は年2回以上開催するものとする。
(4)本事業を複数の地域生活支援センターで行う場合であっても、運営委員会は都道府県・指定都市ごとに1か所とする。

6.自立支援促進協議会の設置等
(1)本事業の委託を受けた精神障害者地域生活支援センターは(以下単に「地域生活支援センター」とする。)は、支援の進捗状況の把握、具体的な支援の方法等について協議し、円滑な支援をより迅速に実施していくため、自立促進支援協議会(以下「協議会」という。)を設置し、当該協議会の事務を担当するものとする。
(2)協議会は、対象者の退院訓練及び対象者への支援に直接関わる者(協議会を設置する地域生活支援センター・市町村・保健所・精神保健福祉センターの職員、主治医、協力施設の担当者及び自立支援員等)で構成するものとし、会の長は互選とする。なお、狭義の対象者によって構成員を変更できるものとする。
(3)協議会の業務は以下のとおりとする。
 @対象者の決定
 A対象者の自立支援計画の決定(退院訓練中及び退院後の生活のためのケアマネジメントを実施するものとする)
 B対象者ごとの協力施設等の決定
 C事業の進捗状況の把握、事業効果の評価並びに自立支援計画の見直し
 D地域における社会資源の把握
 Eその他本事業の実施にあたって必要な事項の協議
(4)協議会は、原則として月1回以上開催するものとする。なお、自立支援計画を策定する場合その他の必要と認められる場合においては、当該対象者の同意を得て当該対象者の意見を聞くことができる。

7.手続等
(1)利用の手続等
 @当該精神科病院の管理者は、対象者の承諾を得て、主治医の意見書を添付の上、申込書を協議会に提出するものとする。
 A協議会は、対象者の適否を協議の上、その協議の結果を当該精神科病院の管理者及び申込者に通知するものとする。
(2)協力施設等への依頼
 @協議会は、本事業の実施につき、地域の精神障害者社会復帰施設等協力施設等として相応しい者に対象者の受入れを文書にて依頼するものとする。
 A協議会は、@について、その可否を文書にて受け取るものとする。

8.退院訓練の実施
(1)対象者は、自立支援計画に基づいて、協力施設等における訓練(精神障害者通所授産施設における授産活動、精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)における体験入居、小規模作業所における作業等)、日常生活を営むのに必要な活動等の退院訓練を行う。
(2)自立支援員は、当該対象者が退院訓練を実施するにあたり、必要に応じて次に掲げる業務を行うものとする。
 @開始時における対象者への訓練内容の説明及び対象者との信頼関係の構築
 A当該対象者が入院している病院から当該協力施設等までの同行支援
 B当該対象者の訓練中の状況確認及び必要な支援
 C協議会の構成員に対しての支援方法の協議並びに支援に必要な情報の収集
 Dその他当該対象者が安定的に訓練するために必要な支援
(3)退院訓練の期間は原則として6か月以内とし、必要に応じて更新することができる。ただし、対象者の病状の悪化の場合にあっては主治医が、その他の場合にあっては協議会が、本事業の継続が困難となったと判断したときは、退院訓練を中止し、この旨を当該精神科病院の管理者及び当該対象者へ通知するものとする。なお、中止は再開を妨げるものではない。また、地域生活への移行にあたって引き続き自立支援員による支援が必要と協議会が認める場合には、退院後1か月間に限り、支援を継続することができる。
(4)協議会は、協力施設等へ退院訓練の経過等の報告を求めるものとする。

9.退院訓練終了時の取扱い
(1)退院訓練は、当該対象者が退院若しくは訓練を中止することにより終了するものとする
(2)協議会は、関係機関と連携を密にし、当該対象者が円滑に地域生活を継続できるよう支援に努めるものとする。
(3)協議会は、退院訓練を中止した場合にはその要因分析を行うものとする。
(4)自立支援員は、退院訓練終了後、協議会に対し、当該対象者に係る退院訓練についての報告書を提出するものとする。
(5)協議会は、毎年度末までに運営委員会に事業実績報告を提出するものとする。
(6)運営委員会は、毎年度末に知事等に事業実績報告を提出するものとする。

10.費用の援助
 国は、都道府県等に対し、本事業に要する費用について、別に定める「精神保健費等国庫負担(補助)金交付要綱」により補助するものとする。

11.その他
(1)協議会の構成員は、その業務を行うにあたっては、対象者の人格を尊重してこれを行うとともに、対象者の身上及び家庭に関して知り得た秘密を守らなければならない。
(2)都道府県等は、本事業の実施について、地域住民及び関係機関に対して周知を図るとともに、精神疾患及び精神障害者に対する正しい理解の促進を図るものとする。
(3)地域生活支援センターは、本事業に係る経理と他の事業に係る経理とを明確に区分することとする。
(4)協議会は、保健所が実施する地域精神保健福祉連絡協議会の場を活用する等により、精神保健福祉センター、保健所、市町村、福祉事務所、精神障害者社会復帰施設、精神障害者居宅生活支援事業の事業所、医療機関等関係機関と連携して本事業を実施するものとする。
(5)自立支援員は、支援にあたって、定期的に主治医に状況を報告し、指示があった場合にはそれに従うものとする。
(6)都道府県等は、本事業に係る実績報告書を、別に定める様式により翌年度の4月30日までに提出すること。



*作成:松本 彩見
UP:20191129 REV:20200719
萩原 浩史  ◇『詳論 相談支援』  ◇精神障害/精神医療  ◇施設/脱施設  ◇「社会復帰」  ◇障害者と政策  ◇全文掲載

TOP HOME (http://www.arsvi.com)