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法務省・厚生省の検討会立ち上げにあたっての主意書

法務省・厚生省 200012** 『反保安処分資料集 I』,pp. 2-3.

last update: 20110925

この文献は、「反保安処分資料集 I」(編集・発行:全国「精神病」者集団、2001年04月01日)pp. 2-3 所収のものに基づいています.
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 [外部リンク]長野英子のホームページ内の当該ファイル

法務省・厚生省の検討会立ち上げにあたっての主意書

I 協議・検討の目的
 精神障害者の犯罪は、最近、特に増加しているわけでばないが、殺人、放火といった重大犯罪におよぶ例もまれではない。このような犯罪は、時として何の罪もない第三者に理不尽かつ重大な被害を与えるだけでなく、精神障害を持つ者をしてその症状ゆえに犯罪の加害者とならしめる点でも、極めて不幸な事態であると言わざるを得ない。そこで、このような精神障害に起因する犯罪の被害者を可能な限り減らし、また、重大な犯罪を犯した精神障害者精神障害に起因する犯罪を繰り返さないようにするための対策を検討することが必要である。

II 協議・検討事項
1 精神障害に起因する犯罪の発生を予防するための方策の検討
 幻覚や妄想など精神症状に起因する重大犯罪は、予防可能な犯罪の一つである。これまで起きた事件の背景を詳細に分析し、改善策を実行に移すことによって、精神障害が原因の犯罪の発生はかなり防ぐことができよう。この方策は、精神医療の水準の向上につながり、精神を病む当事者や家族に福音をもたらすという意味でも意義深い。精神障害に起因する重大犯罪は、その背景によって
  ・精神障害と気づかず、未治療ゆえの犯罪
  ・気づいていたが、治療を敬遠したための犯罪
  ・治療を中断したための犯罪
  ・治療を継続中であったが、日常生活を支える福祉的支援に問題があったために症状の悪化を招き、起きてしまった犯罪
  ・上記とは秘趣を異にするが、思いあまった家族による患者殺人
などに分類することができる。
 多くの先進国では、1970年代から図のような精神保健・医療・福祉システムを構築することによって、精神医療への信頼を高め、不幸な事件を防ぐ努力をしてきた。
 こうした経験も参考にしつつ、次のような方策について検討する。
a 信頼され、親しまれ、受診しやすい精神医療の構築
b 精神保健についての知識の普及
c 早期対応が必要な事例について、保健所や病院、警察、児童相談所、学校等が、通常の行政の枠組みを超えてかかわることができる新たな仕組みの構築
d 通院や服薬を中断しないための仕組みや支援体制の整備
e 退院後や通院中の患者を孤独にしないための地域精神保健福祉サービスの構築
f 地域における危機介入体制の構築

2 重大犯罪を犯した精神障害者の処遇の決定と処遇システムのあり方の検討
 触法精神障害者の精神病院での処遇はい現行法上は、犯罪と無関係な患者と同様となっている。
 しかし、両者を同じ体系の下で処遇することは、精神医療全体の水準の向上を図る上で障害となっているだけでなく、次のような問題を引き起こしている。
  ・他の入院患者やスタッフの安全のために、重大犯罪を犯した入院者が、刑務所を上回る重装備の保護室に長期拘禁される例もあるという人権上の問題
  ・処遇の方法論を持ち合わせていたに精神病院が、いわゆる「触法精神障害者」を早期に退院させる傾向があり、退院後、同様の犯罪が繰り返される現実
  (略)
 このような観点から、精神医療の充実と地域支援体制の構築を前提とし、また、イギリス、カナダ、オランダ、北欧等この分野に経験を持つ国々の例も参考に、次のような課題を検討する。
a 入退院の手続き、退院後のシステムをどうするか。
b 施設の配置と必要数、およびその人員配置数と構造をどうするか。
c 人材の要請をどうするか(略)
 以上の検討にあたっては、以下のような観点も含めて検討する。
・「殺人を犯したのに刑も受けず、精神病院からいつの間にか退院していることは納得できない」
「被害者(被害家族)として、加害者がどのよう >p. 3> な処遇を受けたのかを知りたい」
「検察官は、犯罪を犯した精神障害者に安易な不起訴処分を行っているのではないか」など、処遇や決定過程に対する国民の不信や不満に答えるための方策
・重大犯罪を犯してしまった当事者自身の「償いをしたい」「裁判を受けたい」というねがいに答えるための方策

III 協議・検討の方法
 法務省、厚生省の関係部局の担当者、ならびに、)精神医療、あるいは触法精神障害や人権問題に識見を有する者による検討会を密度高く開催する。あわせて、精神病院入院体験者や関心を有する市民の出席を求め、その意見を尊重しつつ、議論・検討を進める。
 検討会の会議、あるいは議事録を公開とし、議論の透明化を図って国民の信頼を得つつ検討をすすめる。

図(割愛)



UP: 20110925 REV:
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