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自分の身体に耳を澄ます
不確実な医療の揺らぎのなかのコミュニケーション

北村 健太郎 20091206 多言語コミュニティ通訳ネットワーク第14回事例検討会


北村 健太郎 20091206 多言語コミュニティ通訳ネットワーク(mcinet)第14回事例検討会  於:立命館大阪オフィス

〈配布資料〉

■今日、話すこと
1.私のこれまでの経緯
2.医療現場における患者と医者のコミュニケーション

1.私のこれまでの経緯
  [省略]

2.医療現場における患者と医者のコミュニケーション
◆患者本人の背景
慢性疾患などで病院に頻繁に通う患者 →病院に親しみ?
滅多に病院に行かない患者 →おっかなびっくり?
 患者の病院のイメージや医者に対する親近感は、医療現場の患者と医者の関係性の構築に重要。医療、医者に対する不要な恐れ。必要以上に緊張すると言いたいことも 言えなくなる。

◆医療現場で話すことの難しさ
 患者は身体がしんどい。身体のしんどさを言葉で表現し、医者に説明することは難しい作業。患者は楽になりたいから、早く結論を出したいと思っているかも。ときには、 患者本人が現実から目を逸らさずに、ゆっくり考えられる支援が必要。

◆患者と医者の根本的な「常識」の違い
◇患者は、医療は「身体を楽にしてくれる行為」「健康な身体に戻してくれる行為」と期待。患者は医療行為の成功を前提に話す。
◇医者は、医療は「常に不確実な行為」として、失敗する可能性を考える。医学的に立証されたデータと臨床経験から「良い結果が高い確率で期待できる」医療行為を選択。 医者は医療行為の失敗も含めて話す。

 目指す方向は、医療行為の成功で患者が健康な身体への回復なので、多くの場合は問題ない。たまに取り返しのつかないことが起こる。医療行為は身体内部への直接介入。 常に実験的な意味を持つ。

◆医療現場における患者と医者のコミュニケーション(患者から見て)
 「自分の身体をどうしたいのか」という原点を忘れないこと。医者の言ったことを聞き返して確認すること。自分の母語で言い直してみること。聞き返しや言い直しは、 「自分の身体を医者の思い通りにはさせない」という意思表示。患者が自分の身体に興味を持って、大事な自分の身体の話をするという基本に立つ。

〈関連する参考文献〉
立岩 真也,2000,『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』,青土社.
仲正 昌樹,2003, 『「不自由」論――「何でも自己決定」の限界』,ちくま新書.(特に第4章)
小松 美彦,2004,『自己決定権は幻想である』,洋泉社新書.
城山英明・小長谷有紀・佐藤達哉編,2005,『現代のエスプリ』458 (2005-09). (特集:クリニカル・ガバナンス――共に治療に取り組む人間関係)

〈参考URL〉
◇Living Room(北村健太郎ホームページ)
http://www.livingroom.ne.jp/
 最近、あまり更新できていませんが、微妙に情報を追加していたりします。

◇多言語コミュニティ通訳ネットワーク(Multilingual Community Interpreter Network)
http://mcinet.info/

〈拙稿一覧〉
北村健太郎,2005,「「錆びた炎」問題とその今日的意義」(pdf) 『コア・エシックス』1:1-13.
――――,2006a,「血液利用の制度と技術――戦後日本の血友病者と血液凝固因子製剤」(pdf) 『コア・エシックス』2 :75-87.
――――,2006b,「全国ヘモフィリア友の会の創立と公費負担獲得運動」(pdf) 『コア・エシックス』2:89-102.
――――,2007a,『日本における血友病者の歴史――1983年まで』 立命館大学大学院先端総合学術研究科先端総合学術専攻博士論文.
――――,2007b,「血友病者から見た「神聖な義務」問題」(pdf) 『コア・エシックス』3:105-120.
――――,2007c,「サイボーグたちの讃歌」 『Birth:Journal of Body and Society Studies』:176-177.
――――,2008a,「C型肝炎特別措置法の功罪」 『現代思想』36-2(2008-2):143-147.
――――,2008b,「序」 山本 崇記・北村 健太郎編 『不和に就て――医療裁判×性同一性障害/身体×社会』:90-113.生存学研究センター報告3,199p. ISSN 1882-6539 ※
――――,2008c,「再録にあたって」 山本 崇記・北村 健太郎編 『不和に就て――医療裁判×性同一性障害/身体×社会』:87-89.生存学研究センター報告3,199p. ISSN 1882-6539 ※
――――,2008d,「C型肝炎特別措置法に引き裂かれる人たち」 山本 崇記・北村 健太郎編 『不和に就て――医療裁判×性同一性障害/身体×社会』:69-70.生存学研究センター報告3,199p. ISSN 1882-6539 ※
――――,2008e,「大西赤人君浦高入学不当拒否事件」『障害学研究』4:162-187.
――――,2008f,「救済する法=引き裂く法?」 『現代思想』36-14(2008-11):238
――――,2009a,「侵入者――いま、〈ウイルス〉はどこに?」 『生存学』vol.1:373-388
――――,2009b,「「痛み」への眼差し――血友病者をめぐる論点の構図」櫻井 浩子堀田 義太郎『出生をめぐる倫理――「生存」への選択』:113-142.生存学研究センター報告10,193p. ISSN 1882-6539 ※


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