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「健康関連QOLを数値化する道具(尺度)について」

サトウ タツヤ 20091107


■健康関連QOLを数値化する道具(尺度)

◆健康関連QOLの尺度は大きく包括的尺度と疾患特異的尺度に分けられる。

◇「包括的尺度」
福原俊一 包括的尺度というのは,その測定対象を特定の疾患を持つ患者に限定しないQOL尺度です。しかも,病気を持っていない,いわゆる「健康人」を対象にしても利用可能であることも大きな特徴です。これまで,臨床家は患者さんを「病気の人」と「病気でない人」という2つのカテゴリーに分類することを学び,実践してきたと言えます。しかしQOLの観点からは,はたしてこういう二元的な考え方が妥当かどうかという疑問があると思います。すなわち,「健康人」にも「病気を持っている人」にも適用が可能な包括的尺度を使うことによって,健康状態を連続的に捉えることが可能になりました。これは包括的尺度の特徴の1つで,SIP(Sickness Impact Profile),NHP(Nottingham Health Profile),WHOQOL,SF-36(MOS-Short Form 36)などの指標があります。

【座談会】アウトカム評価におけるQOL研究 週刊医学界新聞 第2429号
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/n2429dir/n2429_01.htm

◇「疾患特異的尺度」
下妻晃二郎 がんの場合ですと,まずがんという疾患を患者が有していることそのものに起因する状態をしっかり測定できるような質問項目が並んでいることが基本です。具体的には,食欲不振,るいそう(emaciation),痛み,疲労感,確実な治療法が少ないことによる将来悲観などです。それから,治療に特異的な項目としては,手術による身体イメージの変化,抗がん剤による疲労感や吐き気,脱毛などがあげられます。
 がん疾患特異的尺度においては,先ほど福原先生がおっしゃった,QOLに重要とされる身体面,心理面,社会面,機能面などの基本的領域について問う項目が,一般尺度(general scale)と,がん種別に特に大切な項目について質問する「追加尺度(module)」が備わっていることが通常です。

【座談会】アウトカム評価におけるQOL研究 週刊医学界新聞 第2429号
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/n2429dir/n2429_01.htm

◆包括的尺度は健康プロファイル型尺度と選好に基づく尺度に分けられ、疾患特異的尺度は、疾患ごとの尺度が存在する。

池田俊也 「選好に基づく尺度(preference-based measure)」は,患者さんのQOLを多面的に捉える質問紙ですが,最終的に単一のサマリースコアが算出できるという特徴をもつQOL尺度です。領域によって優劣が別れる場合,最終的な価値判断をどうするかという点が,いわゆる多次元的QOL尺度では困難な場合があります。期待効用理論というモデルに従ってこれを単一の尺度である「効用値」にまとめ上げるというのが選好に基づく尺度と呼ばれるものです。

【座談会】アウトカム評価におけるQOL研究 週刊医学界新聞 第2429号
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/n2429dir/n2429_01.htm

◆包括的尺度・健康プロファイル型尺度

◇Short-Form-36 Health Survey
  Ware JE, Sherbourne CD. The MOS 36-Item Short-Form
  Health Status Survey (SF-36): 1. Conceptual framework and
  item selection. Med Care 1992; 30: 473-83.

◇SF-36公式ページ http://www.sf-36.jp/What.htm
SF健康調査票は、健康関連QOL(HRQOL)を測定するための、科学的な信頼性・妥当性を持つ尺度です。健康関連QOLとは、医療評価のためのQOLとして、個人の健康に由来する事項に限定した概念として定義されています。
  SF健康調査票は、米国で作成され、概念構築の段階から心理計量学的な検定に至るまで十分な検討を経て、現在、50カ国語以上に翻訳されて国際的に広く使用されています。最初に開発されたSF-36のほかに、その短縮版であるSF-12やSF-8があります(SF-12やSF-8の日本語版は、最終的な標準化が終了していません)。現在、オリジナルのSF-36(日本語版はversion1.2)を改良したSF-36v2?が標準版として使われています。現在日本語版として標準化が終了し、使用できるものは、SF-36v2?日本語版です。

◇SF-36の下位尺度は以下の8つ。8尺度でプロフィールを描く。

身体機能 (Physical functioning)PF
日常役割機能(身体)(Role physical)RP
身体の痛み (Bodily pain)BP
社会生活機能 (Social functioning)SF
全体的健康感(General health perceptions)GH
活力 (Vitality)VT
日常役割機能(精神)(Role emotional)RE
心の健康 (Mental health)MH

  福原俊一、鈴鴨よしみ『SF-36v2?日本語版マニュアル』
  健康医療評価研究機構, 2004

◇Sickness Impact Profile
  疾病(Sickness)の影響を行動に基づいて計測する尺度。
  社会的交互作用、栄養摂取、余暇活動、など14のカテゴリーについて、
  機能不全が起きているかどうかを行動レベルで把握する。

  Bergner M, et al. The sickness impact profile; development and
  final version a health status measure. Med Care 1981; 19:
  787-805.
  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1776251/pdf/amjph00799-0032.pdf

 (P1309)
  The SIP is a scaled measure of health-related dysfunction.
  It is being designed for use, in conjunction with other
  kinds of assessment, in evaluation of health care services
  and particularly of comprehensive health care programs. It
  is a behavioral measure, independent of diagnostic criteria,
  which relies solely on an individual's perception of the
  impacts of sickness on his usual daily activities.


◇WHOQOL

WHO(世界保健機関)によるQOL尺度。100項目版と短縮版がある。

  田崎美弥子,他.WHOQOL 短縮版−使用手引き.東京:金子書
  房;1997.


◆包括的尺度・選好に基づく尺度

◇EuroQOL(EQ-5D)

 EuroQoLはEQ-5D(5 dimension)とも称され1990年に発表された。各国版が作られており日本語版は1997年にEuroQoL. Groupの認定を受け、1998年に発表された。

  EuroQol Group. EuroQol; a new facility for the measurement
of health-related quality of life. Health Policy 1990; 16:
199-208.
日本語版EuroQol開発委員会 1998 日本語版 EuroQol の開発 
医療と社会, 8, 109-123.

  EuroQolグループのHP 
  http://www.euroqol.org/eq-5d/what-is-eq-5d.html

EQ-5D is a standardised instrument for use as a measure of health outcome. Applicable to a wide range of health conditions and treatments, it provides a simple descriptive profile and a single index value for health status. EQ-5D was originally designed to complement other instruments but is now increasingly used as a 'stand alone' measure.

 欧州で開発された、医療従事者でなくとも簡易に測定できる健康関連 QOL(HRQOL)の尺度として幅広く用いられている調査表で、わが国では翻訳された日本語版EQ-5Dがある。調査票は 5項目(移動の程度、身の回りの管理、ふだんの生活、痛み・不快感、不安・ふさぎ込み)からなる3段階選択式回答法と VAS(Visual Analogue Scale)による患者の健康状態の自己評価により構成されている。回答の組み合わせがスコア化(効用値)され、1が最上の健康状態、0が死の状態を表す。

宇田川 久美子 2006. 11. 15 インフリキシマブを早期に開始すると長期的にはコストも「割安」 日経メディカルオンライン
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/acr2006/200611/501873.html


 EuroQol は、健康状態を5 つの項目に分けて評価する5 項目法(EQ-5D)と視覚尺度(visual analogue scale,以下VAS と略す)による評価の2 つから構成されている.5 項目法(EQ-5D)の内容は「移動,身の回りの管理,普段の活動,痛み/不快感,不安/ふさぎ込み」であり、それぞれ3水準の状態を回答する。3水準には、1,2,3という数値が割り当てられているから、5つの項目に対する水準の値を、単純に合計して他者と比較をするというのが、普通の心理測定法である。たとえば、移動,身の回りの管理,普段の活動,痛み/不快感,不安/ふさぎ込みの全てについて、全く問題が無い場合には、全ての項目に1と回答することになる。一方で、全ての項目に問題を抱えているとするなら、全ての項目に3と回答することになる。前者は1+1+1+1+1=5,後者は3+3+3+3+3=15というように計算するのが、単純な計算方法である。
 しかしEuroQolにおいては、こうした単純な加算は行わず、回答パターンは予め用意されているQOL 効用値に換算される。QOL効用値は一般に、1が最上の健康状態、0が死の状態を表すが、EQ-5Dではマイナス値が割り当てられることもある。それぞれの状態の効用値は、予め一般人口を対象にしたタイム・トレード・オフ法(Time Trade-Off;TTO)調査で決定する。「身の回りの管理」、「普段の活動」はほぼ問題はないが、「不安/ふさぎ」が少なからずあり,「移動」、「痛み/不快感」については大きな問題を抱えている、というような状態を想定してみよう。このような状態で10年間生きること(あるいは余命10年と宣告される)を想像した上で、このような状態で生きることは、完全に健康な状態の何年に相当するか、を個々人に問うのである。ある人は3年と言うかもしれないし、ある人は6年と言うかもしれない。これらの回答を平均し、当該状態と完全に健康な状態との比を計算することで効用値を算出するのがEQ-5Dの基本的な方法である。
 それぞれの状態に対する効用値の表は、タリフと呼ばれていたが最近はバリューセットと呼ばれている。日本人を対象にしたバリューセットも作られている。 

◇EuroQoL(EQ-5D)日本語版における5つの次元と3水準の表現

移動の程度
 1 私は歩き回るのに問題はない
 2 私は歩き回るのにいくらか問題がある
 3 私はベッド(床)に寝たきりである
身の回りの管理
 1 私は身の回りの管理に問題はない
 2 私は洗面や着替えを自分でするのにいくらか問題がある
 3 私は洗面や着替えを自分でできない
ふだんの活動(例:仕事、勉強、家事、家族・余暇活動)
 1 私はふだんの活動を行うのに問題はない
 2 私はふだんの活動を行うのにいくらか問題がある
 3 私はふだんの活動を行うことができない
痛み/不快感
 1 私は痛みや不快感はない
 2 私は中程度の痛みや不快感がある
 3 私はひどい痛みや不快感がある
不安/ふさぎ込み
 1 私は不安でもふさぎ込んでもいない
 2 私は中程度に不安あるいはふさぎ込んでいる
 3 私はひどく不安あるいはふさぎ込んでいる

池田俊也 ・池上直己 (2001)「選好に基づく尺度 (EQ-5D を中心に)」
 池上直己他編 2001 臨床のための「QOL評価ハンドブック」 医学書院 2章5節

◇Health Utilities Index (HUI)
 
 HUI(Health Utilities Index)にはMark2とMark3があり、前者は7属性、後者は8属性。
Mark II は感覚、移動、情動、認知、セルフケア、痛み、受胎能力(sensation, mobility, emotion, cognition, self-care, pain and fertility)の7属性. Mark IIIは視力、聴力、発話、移動、手指機能、感情、認知、痛み(vision, hearing, speech, ambulation, dexterity, emotion, cognition and pain)の8属性について、それぞれ多段階評価を行い組み合わせについて効用値を算出・算定する。
 HUI2は7つの属性について3〜5段階で評価し、合計24,000通りの健康状態のQOL(効用)値が得られる。
 HUI3 は8 つの属性について、それぞれ5 〜 6 段階で評価し合計972,000 通りの健康状態のQOL(効用)値が得られる。

   D.Feeny, F.Furlong, M.Boyle and G.W.Torrance (1995)
   Multiattribute health status classification systems:
   Health utilities index.
   PharmacoEconomics , 7(6), 490-502.

   J Horsman, W Furlong, D Feeny, G Torrance 2003
   The Health Utilities Index(HUIR):
   concepts, measurement properties and applications. 
   Health and Quality of Life Outcomes, 1,54
   http://www.hqlo.com/content/1/1/54

◇SF-36(効用値算出版)
  J Brazier, J Roberts, M Deverill 2002 The estimation of
  a preference-based measure of health from the SF-36. Journal
   of Health Economics , 21 , 271-292.

◆包括的なHRQOL尺度開発の歴史に関する年表
 1973 The Quality of Well Being Scale
 1975 The Sickness Impact Profile
 1976 McMaster Health Index Questionnaire
 1980 Nottingham Health Profile
 1981 Duke Health Profile, Quality of Life-Index
 1990 EUROQoL
 1992 36-Item Short Form Health Survey (SF-36)
 1994 WHOQOL-(BREF); Patient Generated Index

◆疾患特異的尺度
◇がん
 European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire (EROTC QLQ),
  Aaronson NK, et al. The European Organization for Research
  and Treatment of Cancer QOL; a quality-of-life instrument of
  use in international clinical trial in oncology. J Natl Cancer
  Inst 1993; 85: 365-76.

◇関節炎
Arthritis Impact Measurement Scale
  Meenan RF, et al. Measuring health status in arthritis; the
arthritis impact measurement scale. Arthritis Rheum 1980; 23:
146-52.

◇腎臓病
 Kidney Disease Quality of Life (KDQOL)   Hays RD, et al. Development of the kidney disease quality of
  life (KDQOL) instrument. Qual Life Res 1994; 3: 329-38.

◇糖尿病
 Problem Area in Diabetes Survey (PAID)
  Welch WG, et al. 1997 The Problem Areas in Diabetes Scale-a
  evaluation of its clinical utility. Diabetes Care, 20, 760-72.

◇皮膚疾患
 Skindex-16
  Mary-Margaret Chren , Rebecca J. Lasek, Anju P. Sahayand Laura P. Sands
  Measurement properties of skindex-16: A brief quality-of-life measure for   
  patients with skin diseases. Journal of Cutaneous Medicine and Surgery:
  Incorporating Medical and Surgical Dermatology, 5, 105-110. (2001)
  檜垣祐子 (2004) 皮膚疾患特異的QOL尺度Skindex-16 臨床皮膚科, 58, 164-166.

◇股関節と膝関節の変形性関節症
 Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC)
  http://www.womac.org/womac/index.htm


*作成:サトウ タツヤ
UP:20091107 REV:1109
全文掲載  ◇生活の質・生命の質/Quality of Life, QOL
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