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新聞記事「自分なら、どうする:子どもからの臓器移植可能に――法改正で、来年から日本でも」

『京都新聞』 20091108


自分なら、どうする:子どもからの臓器移植可能に――法改正で、来年から日本でも

 脳の機能がすべて失われ回復しない状態を「脳死」という。法律の改正で来年から日本でも、子どもからも脳死状態で心臓などの臓器を取り出すことができるようになる。子どもたち自身は、臓器移植についてどう考えればいいのだろう・

これまでは禁止
 脳死の人は人工呼吸器で心臓を動かしているので体は温かく、ねむっているように見える。でも目覚めないし、人工呼吸器を止めたら体も冷たくなり、やがて心臓も止まってしまう。臓器移植法は、脳死の人から内臓をほかの人に移植するときのルールだが、これまで15歳未満の子どもから脳死状態で臓器提供することは禁止されていた。
 子どもは体が小さいので、大人の臓器は移植できない。重い病気の子どもは同じ大きさの臓器をもらうため、米国など海外で手術を受けるしかなかった。学会によると、今年4月までの11年半で、海外で心臓移植を受けた18歳未満の子どもは75人。手術できずに死亡する子どもは毎年40人ほどいると考えられている。

自分だけでなく
 米国で肝臓や小腸などの移植を手がける加藤友朗医師は「自分が臓器移植を受けたい、家族にも移植を受け生きてほしいと思う人は、自分や家族が死んだときに臓器を提供することも考えてみてほしい」と話す。「法が変わっても臓器提供が増えるとは思わない。変わらないといけないのは一人一人の考え方ではないか」とみる。
 脳死が人の死という考えに、納得していない人もいる。立命館大学の大谷いづみ教授(生命倫理学)はその一人。学生のとき「死んだら臓器を提供してもいいよね」と口にしたとたん、両親に激しくおこられた。それから「臓器提供は自分だけの問題でなく、家族の問題でもあるんだ」と考えるようになったという。

生きる権利とは?
 大谷教授は法律が変わると、病院などで脳死状態に近い人も含め治療を早く打ち切ることにつながるのでは、と心配している。「医療費ははらえない、意思を伝えられないなど、弱い立場の人の生きる権利は守られるのでしょうか。臓器提供という善意が、別のだれかに思いもよらない形で影響するかもしれない」
 改正法では本人が生前こばんでいなければ、家族の同意のみで提供できる。大阪府立大学の森岡正博教授(哲学)は「子どもの命は親の所有物でないのだから、体を利用する権利は親にもない。臓器提供も子どもの考えを尊重すべきだし、まだ意思を示せない年齢の子どももいる。子どもたちも自分はどうしたいのか、ふだんから考えたり、家族と話したりした方がいいでしょう」と話している。

091108『京都新聞』


*作成:岡田清鷹
UP:20091109 REV:
全文掲載  ◇臓器移植・脳死 2009
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