生存学創成拠点の看板である「障老病異と共に暮らす世界の創造」のしょっぱなを飾る「障害」にかんして考えています。専門こそ哲学・倫理学でありますが、障害について考え、障害者が生きやすい世界にしていくための学問的貢献に資するには、狭義の学問研究の壁を飛びこえなければなりません。
私がこれまで行ってきた研究活動じたいが生存学の目指す方向とほぼ一致するということもあるため、かなりそれらは重なります。たとえば障害者をめぐる法律はめまぐるしく変わり、それは直に障害者の生活を脅かすものにもなり得ます。他方、たとえ重度の障害があろうと、実家や入所施設ではなく、地域のなかで介助を得て生活する障害者の姿は、まだまだ知られていません。私が行ないたいことは、そのような生活実態を世に知らしめるとともに、そこを始点としながら、社会全体の望ましいあり方を考察し提言することです。ですから、学問同士の壁はもとより、学問とそれ以外の区別すらあまり有意味なものではなく、むしろ障害当事者の言説や彼/女らの生の実態から見えてくるものも数多くあります。そのような声を拾いながら、思考し続けていきたいと思っています。
*作成:中倉 智徳