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 聴覚障害者の情報保障と手話通訳制度に関する考察――3つの自治体の実態調査から

坂本 徳仁*・佐藤 浩子**・渡邉 あい子**
*国立リハビリテーションセンター **立命館大学大学院先端総合学術科
  20090926-27
障害学会第6回大会 於:立命館大学


◆報告要旨
◆報告原稿

■報告要旨

聴覚障害者の中には先天的ないし言語学得前に聴覚を失い、日本手話を主要なコミュニケーション手段として用いている人々(いわゆる「ろう者」)がいる。手話通訳制度は、そのような手話を使用する人々が滞りなく日常生活を送れるように、1970年代以降、当事者運動の要求に沿う形で公的に整備されてきた。しかしながら、公的な手話通訳制度にはまだまだ多くの構造的問題が存在するものと指摘され、関連団体(全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会、日本手話通訳士協会)から多くの要望が提出されている。
本研究は、三つの自治体における手話通訳の養成事業・利用状況に関する聞き取り調査から、(1)手話通訳養成事業の効果と限界、(2)手話通訳の利用における諸問題、といった二つの点を明らかにし、日本の手話通訳制度が抱える構造的問題を改善するために何が必要とされているのか考察することを目的としている。
  結果として、手話通訳養成事業に関しては、@手話通訳養成事業における手話通訳者育成の困難さ、A手話通訳養成事業における手話サークルの重要性、という二つの点が明らかになった。また、手話通訳の利用・活用状況については、@手話通訳奉仕員の硬直性、A聴覚障害者一人当たりの手話通訳利用件数における自治体間の差、B聴者・ろう者間のコミュニケーションの不在、C特定項目・特定人物における手話通訳利用の集中、D手話通訳の使い分け、Eソーシャル・ワーカーとの連携の必要性、F手話通訳者の低賃金問題、という7つの点が明らかになった。
  これらの点を踏まえた上で、ろう者の情報保障手段として手話通訳制度が機能するためには、@手話通訳の専門職化と職の細分化、A労働現場における手話通訳の公的な保障、B手話通訳養成事業の見直し(養成事業の有料化や手話サークルとの連携強化)、C手話通訳とソーシャル・ワーカーの連携強化ないし手話通訳相談員の資格化、といった4点の改善が必要であると結論付けた。


UP:20090624 REV:
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