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精神障害当事者と支援者による障害者施設における対等性についての研究――
クラブハウスモデル研究を通して支援関係の変換の試み
三野 宏治
(立命館大学大学院先端総合学術研究科) 20090926-27
障害学会第6回大会
於:立命館大学
◆報告要旨
◆報告原稿
■報告要旨
精神障害者福祉においても障害者本人と支援者である専門家の関係の対等性が強調されるようになっている。また、従来の専門家による直接的な支援の他に、セルフヘルプなど本人の力に注目し、その活動へのはたらきかけを重要な支援の方法として捉えようとする考えもある。
しかし、実際の支援の場面で、例えば作業所や授産施設で行われる活動で、本当に「対等」は可能であり、実現されているだろうか。またそれは常に望ましいものだろうか。例えば自他に対して加害的な行為がなされる場合がある。本人たちに委ねる場合より、作業や組織の運営にとって明らかに有益な別の選択肢があることがある。どうしたらよいか。また、実際には対等でないのに、対等な関係の下でなされているゆえにある対応が正しいとされるなら、その対応は本人に対する加害ともなりうる。
こうした場面で、組織、とくに「対等」を標榜する「クラブハウスモデル」は、どんな対応をしているのか。また、その対応をどのように解釈しているのか。それを調査し、議論し、現実的で正直な支援のあり方を考える。
まず、本人・支援者が幾度か集まり、対等性について自由な意見交換を行い、調査に向けて論点の整理を行う。
その上で、当事者と専門家の対等性を前提として社会復帰にむけてのリハビリテーションを行うクラブハウスの一つである東京都小平市の「クラブハウスはばたき」で聞き取り調査と参与観察を行う。対等性について、その困難について、対処について、支援者と本人に聞く。また活動の実際に寄り添い、そこに起こるできごとを記述する。
この本人・支援者の協働による研究は対等性をその活動の中心に据えた実践であり、自分自身を含む集団の力動を観察し検証することは、支援関係において本人・支援者の役割がいかなるものであったのかを見直す作業である。
◆報告原稿
「精神障害当事者と支援者による障害者施設における対等性についての研究――クラブハウスモデル研究を通して支援関係の変換の試み」
立命館大学大学院先端総合学術研究科 三野宏治(みの こうじ)
はじめに
精神障害者福祉においても障害者本人と支援者である専門家の関係の対等性が強調されるようになっている。また、従来の専門家による直接的な支援の他に、セルフヘルプなど本人の力に注目し、その活動へのはたらきかけを重要な支援の方法として捉えようとする考えもある。
しかし、実際の支援の場面で、例えば作業所や授産施設で行われる活動で、本当に「対等」は可能であり、実現されているだろうか。またそれは常に望ましいものだろうか。例えば自他に対して加害的な行為がなされる場合がある。本人たちに委ねる場合より、作業や組織の運営にとって明らかに有益な別の選択肢があることがある。どうしたらよいか。また、実際には対等でないのに、対等な関係の下でなされているゆえにある対応が正しいとされるなら、その対応は本人に対する加害ともなりうる。
こうした場面で、組織、とくに「対等」を標榜する「クラブハウスモデル」は、どんな対応をしているのか。また、その対応をどのように解釈しているのか。それを調査し、議論し、現実的で正直な支援のあり方を考える。
1 研究の方法
1 本人、支援者それぞれに「支援関係において対等性は必要か」という内容の聞き取り、アンケート調査を行う。
2 協力機関である社会福祉法人心生会地域活動支援センターみのりにおいて、対等性について意見交換を行い、実地調査に向けての問題意識や論点を整理し、「クラブハウスはばたき」での調査時における質問や意見をまとめる。同時に依頼文、調査ノートの作成を行う。
3 国内クラブハウスで1週間の実地調査を行う。具体的な内容は、「クラブハウスはばたき」プログラム、ミーティングへの参加とそこでの意見交換。プログラム終了後、本人とスタッフへの聞き取りを行い調査ノートへ記載。調査者全員による1日の報告、問題点の整理を兼ねた打ち合わせ等とする。
4 実地調査終了後、実地調査のまとめをおこなう。
5 報告書を交野市、交野市社会福祉協議会および交野市障害者福祉施設等に配布する。
6 完成した報告書をもとに学会発表に向けての準備をおこなう。ここでは、実地調査で判明したクラブハウスモデルにおける対等の可能性とともに、当研究よって、本人・支援者の関係がどの様に変化し、対等性がどのように構築されていったかについても言及する。
2 現在の進捗状況
1 の「聞き取り」と「アンケート調査」を実施。並行して民間研究助成に応募をおこない(明治安田こころの健康財団・財団法人大同生命 地域保健福祉研究助成)、大同生命地域保健福祉研究助成を獲得。
3 聞き取りからみえたこと
「対等性」の重要性を、専門家ほど理屈だてて考えず、実際の自分を取り巻く環境に沿って考えていることが分かった。つまり、「対等であるべき」あるいは「対等でなければならない」と考えるよりも、実際、対等である場合のほうが心地よい、あるいは対等でない方が都合がよい場合がありそれにしたがった過ごし方をしているという回答が多くみられた。
しかし、「対等とはどのようなことをいうのか、よくわからない」といった疑問は聞き取りを行ったすべての人からきかれ、また、「対等という言葉は、よいものという気がするが本当にそれが実現できるのかは疑問。世間一般でも対等でないことは多い」という意見もあった。
4 アンケートから見えたこと
専門家に対してアンケートを行った。対象人数は地域活動支援センター職員5名、就航継続B型の職員4名の計9名。全員精神保健福祉士資格を有する者(社会福祉士、看護師の資格を持つ者もあり)である。
質問枝は以下の9点。
1 障害者福祉においても障害者本人と支援者である専門家の関係の対等性が強調されるようになっていますが、どのようにお考えでしょうか?
2 支援者とメンバー(以下、その人)との関係で、望ましい関係とはどういったものと考えますか?
3 支援者とその人の関係で、「対等」は必要でしょうか。また、可能でしょうか?
4 「対等」という関係は、どのような時に必要だと考えますか?
5 「対等」という関係は、どのような時に可能だと考えますか?
6 その人たちと接するとき、「対等」の関係を意識するときはありますか? また、それはいつでしょうか?
7 その人たちと接するとき、「対等」の関係を担保するために、支援者が行う努力は必要だと考えますか、必要ないと考えますか?また、それは、なぜですか?
8 ご自分がその人たちとの関係を良好に保つために気にかけていることはありますか?
9 一般的に、ご自分が他人との関係で「対等」は大切である。と意識したことはありますか?また、対人支援の仕事場において、「対等」は大切である。と意識した ことはありますか?
アンケートのなかで、「あるべき」という回答が目立った。そこにまだ「対等性」について実践の積み上げが少なさをみる。また、「互いに〜しあう関係」に対等性の可能性をみるという回答もみえた。これは、指示や注意、あるいは情報をながす側や受けてが固定していることが問題なのかもしれない。
5 今後の予定
実際の活動に則して話し合いを行う必要があると考える。「そうあるべき」や「しなければならない」という結論ではなく、今、どのような関係であるのかを、さまざまな場面を出しあうことでできるだけ正確に把握し、どのようなやり方が可能であるかを話し、話し合いの方法としてやってみる。それの結果、うまくやれたことや、わからないこと、また工夫の余地などを出し合うことで、「クラブハウスでの調査」の論点整理を行う。
未だ当研究は、その緒にもついていない。しかし、時間をかけ、参加者の共同作業として進めその進捗状況を、共同作業が機能しているかの点検という位置づけで、研究会や学会にて発表していく。
発表予定の全文は次のURLにて掲載
http://www.arsvi.com/2000/0909mk.htm
UP:20090624 REV:20090920
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