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「歴史社会学の応用可能性――社会科学にとっての歴史研究の方法論について」

角崎 洋平 20090918 「歴史社会学の方法論――福間良明氏の仕事を/から学ぶ」 指定質問 於:立命館大学衣笠キャンパス諒友館842教室


 私は、福間先生の「歴史社会学」論についてお伺いします。私は経済学を専門としていますが、社会科学として歴史をどう記述するべきかに悩み、先生の著作も含めいくつか「歴史社会学」と名のつく文献を読みましたが、いまだに「歴史社会学」とは何か、つかみかねています。「歴史社会学」をご専門とされる福間先生の、「歴史社会学」論についての見解をご教示下さい。

●歴史「社会学」の汎用性と定義について
 歴史社会学はなぜ歴史「社会学」なのでしょうか。
例えばシーダ・スコチポルは、歴史社会学(Historical Sociology)を、@一般的・抽象的モデルを歴史事象にあてはめその有効性を検証するもの、A個別の歴史パターンを有意味に解釈するもの、Bなぜ、何が起こったかの一般化可能な歴史パターンを分析するものに分類しています。しかし、こうした歴史事象の取り扱い方法は、社会学のみならず、経済学も含めた社会科学全体にとって適用可能であるように思われます。
同じ方法を用いて、例えば「歴史『経済学』」などと称することも可能なのでしょうか。それとも「社会学」という名称を除外することができないほどの、「社会学」しての固有性が「歴史社会学」にあるのでしょうか。

●史資料の取り扱いについて
 先生は、『辺境に映る日本』の「あとがき」において、ご自身の研究について「個別領域に特化した学史研究・思想史研究の立場からすれば、必ずしも、新たな史料の掘り起こしや実証史学的な緻密な史実の積み上げに力点が置かれていない」という指摘がありうることを認めつつも、「知の編成のダイナミズムは、特定の学問領域を横断的・マクロ的に俯瞰することによってのみ、抽出される」と反論されています。
 先生の上記のご見解は、「二次文献」の利用・読解の重要性を説く、スコチポルなどの見解と類似しているように思えます。スコチポルは、歴史社会学の研究を進めるにあたって「『二次文献』の結論の基礎たる『一次資料』」について必要に応じて再確認を行うことも有効であるとしつつも、「比較史的調査」を行う際には、一次資料調査に拘泥すべきではない、としています(Skocpol ed. 1984=1995: 355-356)。私は、社会政策として使用されてきた貸付制度の歴史についての比較研究を試みていますが、膨大にある金融に関する史資料や言説を整理・分析するにあたって、このような「二次資料」を中心とした比較研究は「効率的」であるという点で魅力的に感じます。
 しかし先生のその後の著作・論文では、引き続き「ナショナルなもの」へ関心を置かれつつも、『辺境に映る日本』で行われた比較「領域」的研究や、スコチポルらがいう「比較史的調査」ではなく、戦争体験や反戦運動についての語りや出版物などの一次資料の分析をより重視した研究であるようにお見受けします。そうするとやはり「歴史社会学」研究にとっても「一次資料」読解は重要であることには変わりないようにも思われます。
この一次・二次の史資料に対する先生のスタンスの違いは、単に、両者の研究対象や研究目的の違いに起因するものなのでしょうか。それとも「ナショナルなもの」を記述するにあたっての方法論の転換や見直しによるものなのでしょうか。
 
参考文献 Skocpol, T ed. 1984 Vision and Method in Historical Sociology, Cambridge University Press.(=小田中直樹訳『歴史社会学の構想と戦略』木鐸社)


*作成:櫻井 悟史
UP:20090922 REV:
全文掲載  ◇歴史社会学研究会
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