HOME > 全文掲載 >

大阪市への障害者雇用に関する意見書

障害者欠格条項をなくす会 2009/07/22


2009年7月22日

平松邦夫 大阪市長さま

障害者欠格条項をなくす会
共同代表 福島 智・大熊由紀子
事務局長 臼井久実子
東京都千代田区神田錦町3−11−8
武蔵野ビル5階
TEL:03-5282-3137 FAX:03-5282-0017


意見書

日頃のお務め ごくろうさまです。とつぜん、このような文書をお届けすることの失礼をお許しください。

じつは7月7日付け毎日新聞の夕刊を読んでいて、「全盲の保育士 採用試験に 大阪市が門前払い」という見出しが飛び込んできて、何を今更この時代に、と驚いたしだいです。このようなことでは、大阪市がこれまで培って来た障害者職員採用などの先進的な取り組みの精神にも、反してしまいます。じつは私どもは法律や制度上の障害者に対する壁を取り除くために、障害別、障害の有無、立場のちがいをこえて1999年に発足し、運動を展開している、全国規模の団体です。

新聞記事によると、国家の保育士資格をもち、8年もの実務経験もある人が、大阪市の昨年度の保育士採用試験で(全盲ゆえの)点字受験が認められず、1年待って、今秋の試験には再挑戦したいと大阪市に問い合わせたところ、1年前と変わらない回答がなされた、とあります。相違ありませんか。

受験資格をすべて満たしている人がどうして受験すらできないのでしょうか? その理由を、こども青少年局は「試験は競争なので、働く条件が同じなのが前提。一部の人を特別扱いできない」としているようですが、こうした回答は、目の見えない人に「目が見えないとダメだ」と言っているのに等しく、障害についてまったく認識できていないことになります。目が見えないままで、どのようにすれば共生社会で暮らしていけるか、また役割を発揮できるか、その手立てを施すのが役所の仕事であり、地域住民の手助けです。けっして目の見えない個人の問題ではありません。平等とは? 特別扱いとは? を改めて考えていただく必要を感じています。

また、厚生労働省は「いままで全盲の保育士は聞いたことがない」と発言しているようですが、お役所がよく言う「前例がない」と言うことでしょうか。役所の本来の仕事は「前例をつくる」ことではないのですか。前例を踏襲していくのならロボットのほうが「正確に、平等に」こなすことでしょう。なぜ、役所に血の通った人間が必要なのか、それは同じ人など2人としていないこの人間社会で、ケースごとのきめ細かな対応が要求されるからにほかなりません。

いまの世の中、全盲という条件は悔しいことに幾多の困難に遭遇します。幼いときから全盲で、幼稚園でのたのしい思い出を夢につなぎ、それを実現させた人の底力は何よりも信頼できるものではないでしょうか。きっと、その人にしかできない保育があると私どもは確信します。そしてより大きなことは、全盲の保育士に育てられたこどもたち、彼らは幼い時から目の見えない人もこの社会で生きているということを知ることになり、ただこのことだけでも感受性ゆたかな人間として成長していくにちがいありません。
こども青少年局の発言の中に「働く条件が同じなのが前提」とありますが、なぜ、そうして世間を狭くしてしまうのでしょうか?目の見えない人にはその人の、耳の聞こえない人にはその人の……それぞれの特徴を活かせる役割があり、それが障害者の世界です。ここにゆたかな世界が隠されています(残念ながら、まだまだ表面化されていません)。

どうぞ、障害者のもつ与えられた力をムダにしないで、社会の財産として共有してください。夢の実現に向けて、ひたむきに生きる人を心をこめて応援してください。工夫や知恵を発揮できる余地はまだまだあります。私どももアイデアを出し合えればと願っています。

以上

*作成:
UP: 20090727
全文掲載  ◇障害者欠格条項をなくす会  ◇障害者と労働
TOP HOME (http://www.arsvi.com)