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「看護師はいま――医療・看護をめぐる現状報告」

2009年度第2回ケア研究会 於:立命館大学衣笠キャンパス創思館414
2009/07/19
小幡 光子


2009年度第2回ケア研究会(2009/07/19)報告資料

テーマ:看護師はいま―医療・看護をめぐる現状報告

1.背景
効率性を追求する医療改革の推進や社会からの安全性への厳しい要請は、看護職者の責務を重くし、個を重視した質の高い看護への要求との二重基準のなかで、看護師はジレンマをかかえながら自らの役割を模索している。

1)日本の先端医療を担っている大学病院・大規模病院の問題
・新人看護師の早期離職
・高等教育を受けた看護師がそのキャリアを発揮しないままに5年〜6年で退職
慢性的人材不足 → 新卒NSがICUやNICUへ多数配置
経験5年未満の若い看護師が業務の中心を担っている
看護師の疲弊
  *高齢化(ICU患者平均年齢70↑:対応困難)
高度医療 Technology(生命維持装置、モニタリング技術)の急速な発展
*経験を積み上げ、Skillを磨く余裕がない → 感情を鈍磨させながらの?
機械的な業務処理 → 長時間労働、ストレス、バーンアウト

2)「医療崩壊」「医師不足」が言われ、看護師の業務拡大や「裁量権」が議論され「看護とは? 看護の専門性とは何か?」があらためて問われている。

2.問題意識
  ・この10年間で看護の何が変わり何が変わっていないのか。
 (IC、患者の高齢化、申し送りの廃止、電子カルテ:対人援助関係の本質にかかわる?)
  ・医療分業をめぐる様々な政策や検討会報告の意味するもの。現実との乖離
  ・各界の反応とその分析。
  ・どこに向かおうとしているのか。
  ・希望が持てる看護の未来のために何を為すべきか。

資料

◆ 看護職の現状
 ○ 離職率:12.4%/1年未満の離職率9.2%(2007年日本看護協会病院看護実態調査)
  (1%≒8000名/81万人・病院勤務)
【国立42大学付属病院の看護師の経験年数別構成比】
1年未満14%
1〜3年23%
3〜5年12%
5〜7年9%
7〜10年9%
10〜15年10%
15〜20年7%
20年以上16%
【教育背景:国立42大学/全看護職】
専門学校33.85%46.05%
4年制大学58.2 %30.8%
短期大学6.55%21.62%
修士1.31%1.44%
博士1.44%0.02%

○ 看護職年間需要7万人に対して供給3万人(2007年日本医師会調査)
  *2006年診療報酬改定:看護配置新基準の導入/入院患者7名に対して看護師1名
入院基本料患者1名当たり1555点(「10:1」1209点)→急性期病棟の質の確保が狙い
  しかし → 大量の新人NSの入職:教育が間に合わない。病院格差の拡大

○ 日本看護協会:時間外勤務、夜勤、交代制勤務等緊急実態調査(2009,5/15)
  ■ 20代が疲れている
    ・全国推計2万人が過労死危険レベル:超過勤務60時間↑/月
*過労死労災認定:3名/24歳・25歳 (2008、10月)
    ・就業継続の困難

○ 看護教育の高度化
* 2009年4月現在:4年生大学 178+1(国立/42+1,公立/44,私立/92)
          修士:114+1  博士:54
* 少子化による看護学生の質・量的確保の課題
    ・18歳人口/136万(2005):89万↓(2030)
    ・人としての成熟?

業務拡大・裁量権をめぐって
医師と他の医療従事者との役割分担の推進
【厚生労働省医政局長通知】(2007,12/28)
看護職の業務拡大
・薬剤投与量の調整
・静脈注射
・救急医療時における診療の優先順位の決定(トリアージ)
・入院中の療養生活に対する対応(ADLの拡大・食事の変更・入浴など)
・患者及び患者家族への説明行為
* 協働推進事業:都道府県や専門看護師を要請する大学院に補助金
CNS(Certified Nurse Specialist)・NP(Nurse Practitioner)等の養成
・高い質を伴うケアを提供できる看護の専門性の確立や向上の議論
・認定看護師 CES (Certified Expert Nurse)19分野4458名:広告・診療報酬
専門看護師(CNS)10分野304名/クリティカルケア分野26名 (2008,11月現在)
◇アウトカム評価:Ptの症状改善、QOLの向上、ケア満足度、死亡率などへの貢献

○ 安心と希望の医療確保ビジョン(2008,6月)
・医師と看護職との協働の充実
・医師・看護職と看護補助者・メディカルクラーク等との協働の充実
Cf)医師業務の補てん ⇔ 看護業務のヘルパー・ケアワーカーへのシフト
              アウトソーシング:ベッドメイキング・清拭etc

【安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会中間とりまとめ】(2008,10月)
・チーム医療を実践することや各職種が専門性を発揮し、患者のためのよりよい医療が行われる体制がとられることを前提に、その職種でなくても行いうる業務を他の職種に担わせるスキルミックスをすすめるべきである。
・医療者と患者間の真の協働関係を樹立するためには、医療従事者が全体として、患者
 の立場を十分に配慮するという「文化」を醸成する必要がある。
○ 看護の質の向上と確保に関する検討会(2008,11月)
・構造改革特区特別推進本部 調査・評価委員会 医療福祉労働部会 第21回議事録
   → NP/ANP(診療看護師)の裁量権をめぐる日本医師会との攻防

◆ 文部科学省・厚生労働省の検討会
○ 看護基礎教育のあり方に関する検討会(2001,6月)
○ 看護基礎教育のあり方に関する懇談会(2008,1月)
*看護基礎教育のあり方に関する懇談会論点整理(2008,7月)
−看護職員に求められる資質・能力について−
・看護の特徴
看護とはキュアとケアを融合したものであり、科学的専門知とともにフランス語でいうメチエ(その分野に特有の技術)を必要とするものである。
看護特有のメチエとは、経験知として培われた技術を基に、臨機応変に患者の状態に応じて対応することが必要とされるものである。従って看護とは、広義には、医療に携わる者すべてにとっての基本であり、医の原点であるとも言える。
一方で看護とは、患者とともにあることにより発現されるものである。すなわち、医師が患者と対座して医療を提供する存在であるのに対し、看護職員は、患者と並座して医療を提供する存在であり、患者に寄り添うという言葉に代表されるように、常に患者の立場に立ち、患者を支えることが求められる存在である。
こうした看護の特徴を踏まえ、将来において看護職員に求められる資質・能力やその教育のあり方についての検討がなされる必要がある。

・将来的には、看護基礎教育の期間の延長をはかり、大学での基礎教育に移行していく必要がある。学生の大学進学志向を踏まえると、看護職員確保という観点からも、大学教育に移行すべきである。 

○  看護教育の内容と方法に関する検討会(2009,4月)
○  今後の看護教員のあり方に関する検討会(2009,4月)
○  大学における看護系人材養成に関する検討会(2009,3月)
○  新人看護職員の臨床研修に関する検討会(2009,4月)
○  人材確保法・保助看法改正(2009,7/9成立 2010,4月施行)→ 検討課題多し!!
 *新人看護職員の臨床研修制度の創設
 *看護師教育4年、保健師・助産師教育1年以上に 

◆ 2008年9月5日、名古屋高裁判決「患者拘束に賠償命令」
*判決文では「看護師の対応=看護の質」についてかなり具体的に言及し、看護師の倫理意識・ケア技術や組織としての問題意識と対応能力を問うている。
資料《朝日新聞(2008,9/8付朝刊・中部版)の記事より要約》
判決:医療機関でも同意を得ることなく患者を拘束して身体的自由を奪うことは原則として違法である。
判断基準
・身体抑制や拘束の問題を見直し行わないようにしようという動きは、介護施設だけでなく高齢者や
看護にかかわる医療機関でも同様であり問題意識を有するべきであった。
・拘束の弊害は一般に認識されており、当然(医療者であれば)認識できる。
・緊急避難行為として例外的に許される基準:切迫性、非代替性、一時性の3要件
違法性
・同意を得ていない。
・本件は違法性の阻却要件はない:危険への切迫性はなく、夜間せん妄は病院の診療・看護の適切性を欠いた対応などが原因になっている。(おむつへの排泄の強要・看護師のつたない対応等)
・勤務状況からも、看護師が患者に付き添って安心させ、不安を和らげるというような対応が可能で
あった。


*作成:小幡 光子
UP: 20090723
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