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「『精神医学的アプローチの提案』スライド資料」
第13回横浜市療育研究大会全体会シンポジウム
片山 知哉
2009/07/21
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last update: 20160120
2009年7月21日(火)
第13回横浜市療育研究大会全体会シンポジウム
シンポジスト「精神医学的アプローチの提案」
■ シンポジウム概要
◆基本情報
第13回横浜市療育研究大会全体会シンポジウム
「家族背景の要因で『難支援』に至るケースへの対応――精神医学的アプローチの導入」
2009年7月21日(火)13:30〜15:30
◆企画趣旨
横浜市の療育センターで発達障害の早期介入に関わるスタッフは,子どもへの直接的な支援はもちろんのこと,保護者支援の重要性を認識している。しかし実際の臨床現場でスタッフはしばしば次のような事例に遭遇して,困惑し,疲弊することも決して稀ではない。ひとつは保護者自身が周囲とのコミュニケーションに少なからず支障をきたしている場合であり,もうひとつは保護者自身に心理・社会的な苦悩がある場合である。診断されていないが保護者にも発達障害が疑われることもあれば,保護者に精神疾患があってその治療中であることもある。保護者の精神疾患にはうつ病や統合失調症がよく経験されるが,パーソナリティ障害や他の精神障害も中にはあるのかもしれない。
いずれにしても,このような事例を担当したとき療育スタッフは戸惑いながら,まずは同じチームのスタッフの誰かに相談するものである。そこでうまく支援方法が見出せなければチームでカンファランスを重ね,ベテランスタッフや上司からのアドバイスを求めるなど試行錯誤を繰り返す。しかし有効な支援策が見つけられるとは限らず,行き詰って思い悩む経験も少なくない。こうしたことはどの職種にも体験されるであろう。
そこで,この議論を深めるために『難支援』という臨床概念を提起し,難支援事例へのアプローチについて療育研究大会全体会の場で議論する機会を持つこととした。保護者のメンタルヘルスに関連した精神医学の方法を学び,それを明日の臨床に生かす工夫についてシンポジストおよびフロアと共に討論したい。
◆当日の構成
シンポジスト3名(ソーシャルワーカー,心理士,精神科医)+指定討論者1名の構成。 片山は,シンポジストとして登壇。
■スライド資料
スライド1
療育研究大会全体会シンポジウム
家族背景の要因で「難支援」に至るケースへの対応
――精神医学的アプローチの導入
V.精神医学的アプローチの提案
精神科医 片山知哉
スライド2
導入@:難支援の背景
難支援には,背景がある。
――対象別:こども
養育者
支援者……
――内容別:個体要因
社会関係要因
社会構造要因……
スライド3
導入A:お話しすること
本シンポジウムのテーマ:
“家族背景が要因”での難支援
今日は特に,養育者の個体要因に関する,精神医学的アプローチを提案する。
スライド4
前提@
支援は,後手に回ってはならない。
――スタッフは皆が前線部隊
――支援の場の枠組み設定を主導
スライド5
前提A
支援に必要なのは,技術である。
――アセスメント
――プランニング
――コミュニケーション
スライド6
精神医学的アプローチ概要@
精神医学的アプローチは,ふたつの軸のアセスメントを要とする。
――統合水準
――認知スタイル
スライド7
精神医学的アプローチ概要A
アセスメントを通じ,
――適切なコミュニケーションの選択
――別の場での行動・状況の予測
スライド8
統合水準@
メンタルヘルスに関してアセスメントすべきは,統合水準である。
――統合水準=こころのまとまり
――精神疾患により,元来の水準よりも低下しうる
――必要に応じ,精神疾患の有無・内容・治療状況の情報収集
スライド9
統合水準A
統合水準は,現前の状態で判断可能。
――思考の論理性・連続性が指標
――精神病水準:思考の解体 →保護的
境界水準 :思考の歪曲 →構造化
神経症水準
スライド10
統合水準B
逆転移感情を意識化する。
――精神病水準・境界水準では感情が周囲に感染する
――レヴュー,スーパーヴィジョンの必要
スライド11
認知スタイル@
認知スタイルは,個人ごとに異なるが,ある程度のカテゴリー化は可能。
――認知スタイルが,コミュニケーションのスタイルに関係
――相手の認知スタイルの把握を土台に,コミュニケーションのやり方を選択
――必要に応じ,情報は複数の経路から入手する
スライド12
認知スタイルA
境界性スタイル
――境界水準の持続と顕著な対人希求性
――情報・関係の構造化とチーム対応
スライド13
認知スタイルB
自己愛性スタイル
――境界水準の内面と強固な自己愛性防衛とのギャップ
――自己愛への攻撃はしないこと
スライド14
認知スタイルC
シゾイドスタイル
――まとまらなさ +被害感
――被害感構築がある場合は,事実に基づく対応をチームで行う
スライド15
認知スタイルD
スタイルの相違が問題になる場が,どこであるかを意識する。
――ヴァナキュラーな文化の構成
:日本手話,非日本語音声言語,
アスペスタイル……
――文化間ギャップへの支援
:通訳者としての支援
バイカルチュラル教育
スライド16
おわりに@
アセスメントの対象は,
――こども
――養育者
――インフォーマルネットワーク
――支援者自身
――同僚
――他機関職員……
スライド17
おわりにA
アセスメントの目を鍛える最も良いサンプルは,自分自身や同僚である。
スライド18
文献
Nancy MacWilliams
『パーソナリティ障害の診断と治療』
『ケースの見方・考え方』共に創元社
*作成:
片山 知哉
UP:20090810 REV: 20160120
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