5、最近、ワシントン州で可決された「尊厳死法」Death with Dignity Act (58.68% (yes) to 41.32% (no))では、医師による自殺幇助を認めている。法律施行後の第一例は膵臓がん末期の患者であった。元SWの彼女は障害で働けなくなり破産。障害者手当を受けて生活をしていた。最後まで法制化に反対していたのはALS患者であった。二人は奇しくも同じ日に亡くなっている。この法律が医師による自殺幇助や安楽死を容認していることに、注意を払う必要があるだろう。(スライド)
14、共約不可能性を乗り越える
末期がんや欧米諸国で完成されているNPPVまでを終末期とするALSの終末期の緩和ケアとは、まったく異なる側面から日本のALS医療は独自に発展してきた。
ALSのEnd-of life care の議論は、価値の対立のようであるが、重要な議論の多くは取り残されている。個々の価値観を超えた普遍的な支援の在り方が求められている。
「ラムジーは求められているのは、死に行く者を「治療」から解放して死なせるとともに、医学的適応がある治療や緩和療法を怠らないという「誠実な実践」のみであるという。」この香川[2006:258]の指摘は当たっている。「二者択一ではなく必要なのは調停である」(ラムジ−)。
さまざまなALSの人々の「生きる実践」を通して、「人工呼吸療法による緩和ケア」と「エンド・オブ・ライフの可能性」を発信していくことには意味がある。(スライド)