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「エピキュリアンなエンド・オブ・ライフを実現する緩和ケア」

第14回日本緩和医療学会学術大会シンポジウム抄録
於:大阪国際会議場 20090619-20
川口 有美子


エピキュリアンなエンド・オブ・ライフを実現する緩和ケア
川口有美子 日本ALS協会

 WHOによる緩和ケアにも日本の難病対策要綱にも、治療法のない病者に対する社会的心理的支援の必要性が定義されている。特に日本における難病対策は、特定疾患の医療費助成や人工呼吸器のレンタル、訪問診療や看護などの在宅サービスを実施してきたが、これら具体的な政策が患者家族の経済的心理的負担を緩和し、呼吸治療を受けやすくした。そうして在宅人工呼吸療法にも勢いが出てきた90年代後半から、人工呼吸器はもはや延命のためではなく、自宅で長く療養するための補装具的な地位を築き上げるに至ったのである。
 難治性呼吸疾患の者のエンド・オブ・ライフ・ケアに在宅人工呼吸療法が用いられるようになり、それが定着してくると、今度は日本の障害福祉施策が「エンド・オブ・ライフ(にあると言われてきた)重症患者に対する自立支援」という世界に類をみない障害福祉政策「障害者自立支援法」を打ち出して成功している。こうなればエンド・オブ・ライフの定義自体がわからなくなってしまうが、10年以上にもおよぶ長い終末期を生きてきた患者たちは、毎日が生死の狭間にあってもその「エンド・オブ・ライフ」を心身で味わい、楽しんでいる。ある患者は享楽的な人生を旅に見立てて、最期は野垂れ死ぬ(無計画に死ぬ)のが理想だと言うが、毎日がエンド・オブ・ライフかもしれない彼らにとって、計画どおりに行儀よく死ぬことほど恐ろしいことはない、のかもしれない。


*作成:岡田 清鷹
UP: 20090301 REV:
日本ALS協会(Japan A. L. S. Association)  ◇ALS
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