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「倫理委員会への非専門家参加の必要性――参加のためのシステム構築を中心に」

『医療・生命と倫理・社会』8:1-16 大阪大学大学院医学系研究科 20090320
櫻井 浩子(立命館大学大学院先端総合学術研究科博士後期課程、生命倫理学)
上田(三橋)昌恵(湘南ポジティブIBD の会、社会教育・成人教育)
小竹朝子(The Japan Times 記者、社会学)
加部一彦(愛育病院新生児科医師、新生児学・医療管理学・生命倫理学)

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last update: 20160120


T はじめに

 近年、病腎移植、HIV 陽性者の生殖医療、代理出産、終末期患者への延命治療など医療現場における倫理的問題がマスメディアを通じてクローズアップされており、それと平行して、医療の質や安全に対する国民の関心も高まっている。しかしながら、その倫理的問題を検討する学会、大学病院や一般病院に設置されている倫理委員会の存在と、その意義について国民はあまり知らない。その理由として、多くの倫理委員会が非公開で審議が行われているからである。
 武藤(2004)は、社会に開かれた倫理委員会にするためには、患者家族の立場や一般市民が委員として加わることも一策である、と述べている。同様に、稲葉・長尾(2003)は、倫理委員会には家族の悩みや戸惑いなどを聴く工夫が必要であり、同じような体験をした元患者・家族を含む幅広い人選が求められる場合がある、としている。倫理委員会に社会的動向や多様な立場や考え方を反映させるには、委員として一般の立場の人々を含めた非専門家の参加を積極的に取り入れるべきであり、そのことは有益であると考える(注1)。
 まず、倫理委員会の体制と役割を確認しておく。稲葉・長尾(2003)によれば、日本の倫理委員会には、1985 年に厚生省令として公布された「医薬品の臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice:GCP)」により治験実施機関に設置が求められている「治験審査委員会(Institutional Review Board:IRB)」、医学研究等に関する「研究倫理委員会(Research Ethics Committee:REC)」、病院のガイドライン作成や臨床現場で生じる倫理的問題を扱う「臨床倫理委員会(Clinical Ethics Committee:CEC)」がある。
 さて、倫理委員会の運営に関する調査には、星野(1993)、赤林ら(2000,2003)、白井ら(2003)、原・増田(2007)、児玉(2007)がある。先行研究に共通した運営における課題として、外部委員や女性委員の不足、外部委員の適正な選任の困難さ、審議の密室性(非公開)、資金不足、を挙げることができる。そして武藤ら(2005)は、倫理委員会改革のための7 つの提言をまとめている。しかしながら、その後の検証は、筆者らが知る限りでは報告されていない。また、かねてから、倫理委員会への非医療者参加や(岡本1997;稲葉・長尾 2003;武藤 2004)、一般市民の参加を含めた人材養成・研修システムの必要性が述べられているが(原・増田 2007)、その具体的なシステム構築については追究されていない。そこで筆者らは、既存の倫理委員会を対象に、委員構成、市民参加への意見、非専門家参加を実現するための条件について調査を行なった。本研究では、その分析を踏まえて、市民参加を実現するための課題、欧米の非専門家参加の状況、最後に、倫理委員会への非専門家参加のためのシステム構築を考察したい。
 ここで、本稿における「非専門家」と「市民」の定義について触れておきたい。医療分野における「非専門家」は、特定分野の学術的・専門的知識を要求されない非医療者であり、例えば法学者や宗教家、学識経験者や報道関係者、一般の立場の人(注2)(以下、「市民」と呼ぶ)など、が挙げられる。「市民」とは、特に特定分野の学術的・専門的知識を要求されず、また非医療者であること、少なくとも「医療を提供する側」に立ったことのない人、と定義する。そして、倫理委員会の組織に関する考察を行なうため、研究倫理と臨床倫理を区別することなく総称して「倫理委員会」とする。

U 倫理委員会の現状について

1 対象と方法
 調査は、全国の学会100 団体、大学付属病院148 施設、一般病院302 施設、合計550施設を対象とした。調査対象の抽出には、大学病院医学情報ネットワークの名簿を活用した。学会は、「学会・研究会」から、「日本医学会」に加盟している学会100 団体を選んだ。大学付属病院も同様に、医療機関系から大学病院(医科系)148 施設を抽出した。一般病院は、社団法人日本病院会の支部・会員一覧より、開設者および病床数のバランスをとりながら、抽出した。2006 年4 月に対象施設の倫理委員会長宛に調査票を郵送し、回収した。調査内容は、倫理委員会の有無、委員の定数と構成、委員会への市民参加の必要性の有無、またその理由についてである。倫理的配慮として、施設が特定されないこと、集団として結果報告することを文書にて約束した。

2 結果
 122 委員会(回収率22.2%)から有効回答を得た。内訳は学会31 委員会、大学付属病院30 委員会、一般病院61 委員会であった。
 委員の定数は、「10 名」がもっとも多く19.2%(20 委員会)であった。その内訳は、学会と大学付属病院が4 委員会、一般病院12 委員会であった。次いで「9 名」と「11 名」がそれぞれ13.5%(14 委員会)であった。また、定員の上限を決めていない委員会(1 委員会)もあった。
 委員構成における非医療者の人数は、「2 名」23.3%(24 委員会)ともっとも多く、次いで「3 名」の19.4%(20 委員会)であった。非医療者の平均人数は、学会では2 名、大学付属病院が5 名、一般病院が3 名であった。非医療者の占有率でみると、10 名中7 名(占有率70%)が2 委員会であった。次いで9 名中6 名および12 名中8 名(66.7%)が2 委員会であった。委員の職種、専門性をみると、専門家である医療者では、「医師」を委員に採用している委員会は96.2%(100 委員会)、「看護師」66.3%(69 委員会)、「他の医療関係者」43.3%(45 委員会)、であった。一方、非医療者では、「事務関係者」52.9%(55委員会)、「法学者」57.7%(60 委員会)、「哲学倫理学系」31.7%(33 委員会)、「宗教関係者」12.5%(13 委員会)であった。「その他」として、学会では、マスコミ関係、一般有識者、患者家族、研究者、歯科医師、文科系の有識者、が挙げられた。大学付属病院では、特定非営利活動法人(NPO)スタッフ、エッセイスト、医療分野以外での学識経験者、一般市民、自然科学者、教育関係者、弁護士、フリーアナウンサーなど、が挙げられた。一般病院では、学識経験者、教育関係者、自然科学者、民間事業者、民生委員、福祉関係、弁護士、財団法人役員、市民など、が挙げられた(表 1)。
 女性委員の人数は、「1 名」36.5%(38 委員会)がもっとも多く、次いで「2 名」24.0%(25 委員会)、「3 名」14.4%(15 委員会)であった。
 次いで、委員会への市民参加の必要性の有無とその理由について質問した。ここでは、特に「素人」と言われる市民に限定した。その結果は、「必要」43.4%(53 委員会)がもっとも高く、その内訳は学会7 委員会、大学付属病院16 委員会、一般病院30 委員会であった。次いで「どちらともいえない」36.1%(44 委員会)、「不要」4.9%(6 委員会)であった(表 2)。「必要」の主な理由として、「医療を受ける側の意見も大切」、「倫理は病院単独のものではない」、「倫理性を重視していくためには、市民参加は必要である」、「広い視野からの多様な意見が必要」、「社会常識、社会通念の視点からも客観的に評価する必要あり」、「偏りのない意見を集約するため」、が複数の委員会から挙げられた。「どちらともいえない」の主な理由として、「個人情報が外部に漏れやすくなる可能性がある反面、より公平な判定ができるというメリットがある」、「条件資質が必要」、「課題により市民参加は必要」、「専門知識がないと理解できないことが多い」、が挙げられた。他方、「不要」の主な理由として、「学識経験者から委員が加わっているため」、「医療関係以外の各領域が加われば、一般市民が入ることはない」、が挙げられた。

3 調査から見えたこと:小括
 分野別による委員構成の分析を行なったものに、星野(1993)、赤林ら(2000)、原・増田(2007)、児玉(2007)がある。分類方法が異なるが、非専門家領域では総じて法学者の参加が高い。筆者らの調査では、法学者の参加は大学付属病院が約80%と高いが、学会および一般病院では半数であった。「ヒトゲノム・遺伝子解析研究における倫理指針」は詳細に委員構成について定めており、「外部委員を半数以上置くことが望ましいが、その確保が困難な場合には少なくとも複数名おかなければならない。外部委員の半数以上は、人文・社会科学の有識者、または、一般の者でなければならない」としている(文部科学省ほか2005)。近年の、医療現場における訴訟の増加を鑑みれば法学者の参加が、また重症新生児の治療決定や終末期の症例を検討するうえでは哲学・倫理・宗教学者の参加が、積極的に行なわれる必要がある。さらに、原・増田(2007)の調査では市民・患者の委員参加が30%近くであったが、児玉および本調査では低率であった。
 また多くの倫理指針では、「男女両性で構成されなければならない」としているが、女性委員がいない委員会が7.7%(8 委員会)あり、原・増田(2007)の調査でも8%と同じ結果であった。男女両性のバランスが取られておらず、女性委員のより積極的な採用を行なう必要がある。
 委員として市民が参加することは、半数近くの委員会で必要と回答されていた。しかしながら、「どちらともいえない」の理由をみれば、市民参加を手放しで受け入れるにはいかず、その課題として@医学的専門性、A人選、B個人情報の保護と管理、にあるということが推測された。
 そこで、日本における非専門家参加のシステム構築を検討する参考として、欧米の倫理委員会の状況を概観する。

V 欧米における非専門家の参加状況
 ここでは、国内およびインターネットで入手可能な日本語と英語の文献検索により、欧米の倫理委員会における非専門家参加の状況について検討を加える。2000年発表の世界保健機関(World Health Organization:WHO)の「生物医学研究評価のための倫理委員会の実務的ガイドライン」(WHO 2000)では、委員会の構成について、関連領域の専門家、年齢・性別構成のバランス、コミュニティの利益と関心事を代表する「非専門家」(laypersons)を含んだ多機能、多方面のメンバーで構成されるべきである、としている。しかしながら、非専門家の厳密な定義については触れられていない。
 続いて、国別に状況を見てみたい。

1 米国
 米国には、病院内の生命倫理上の基準や規定を定め、症例について倫理的検討を行なう「病院内倫理委員会(Hospital Ethics Committee:HEC)」と、大学や研究所で治験や研究の倫理面を審査する「施設内研究倫理審査委員会(IRB)」の2つがある(赤林 2001)。病院内倫理委員会における市民参加状況については、まとまった文献は見つからなかったが、多くの委員会でコミュニティのメンバーを受け入れていることがホームページ上で散見される(注3)。一方、医療過誤の問題を恐れて、もしくは自らが「不誠実であることを見せたくない」からか、患者や家族を臨床倫理の討議の場に積極的に参加させていないという現状もあるようだ(Davis 1999)。WHOガイドラインによれば研究倫理審査委員会には、最低、非科学者1名と、該当組織に属さない者1名を配置しなければならない。全米の主要研究倫理審査委員会20施設における市民(lay member)参加の状況を調査したセングプタとロー(Sengupta&Lo 2003)によれば、弁護士、倫理学の教授、がん体験者や宗教者が含まれる。
 残念ながら、市民メンバーに対する教育や研修は、倫理委員会の歴史が古い米国においても十分とは言い難い。回答者32名のうち88%が「科学者委員が自分たちの意見を尊重してくれず、理解も示さず、真剣に取り合ってくれなかった」と回答した。また、ほとんど全ての市民代表回答者が、被験者保護の観点から、「同意書の文言を分かりやすくする」ことで委員会に貢献していると考えていた。回答者の多くは、教育・研修の向上を希望している。具体的には、該当する研究倫理審査委員会がどのように機能しているのか、市民代表委員に期待される役割に関する事前オリエンテーション、特に委員参加当初3ヶ月ほど、プロトコールの審査方法などについて教えてくれるメンター制度を望む声があった。その改善策として、米国における被験者保護のルールを定めたベルモント報告、連邦規則集(Code of Federal Regulations)などを説明する「より優れた、形式化された研修の機会や、研究活動の倫理向上を目指す非営利組織である「医療・研究における公的責任」(Public Responsibility in Medicine and Research:PRIM&R)の年次大会や他の倫理関係会合への出席の機会、を挙げている。
 なお、米国では、臨床現場での個々の事例の検討において、個人、病院内倫理委員会や医療チームなどによる「倫理コンサルテーション」活動が一般的である(稲葉 2004)。それは、倫理コンサルタントと呼ばれる立場の人が、医療関係者や患者に対して助言を提供している。倫理コンサルテーションを行なうためには、「生命・医療倫理学、倫理綱領、医事法などの知識」が必要で、倫理コンサルタントは「臨床的な状況を評価するのに十分な医学的知識を持ち、道徳的推論に秀でていて、人々の間でコンセンサスを作り出すコミュニケーション能力を持つべきである」とされている(Jonsen 2002=2006)。終末期治療(生命維持治療の中止、回復見込みのない治療など)、患者の治療意思の尊重、関係者間の衝突等において生じる「倫理的ジレンマ」により、倫理コンサルタント養成の必要性が高まっていった。また、倫理コンサルタントが必要とされる理由として、衝突場面の解決や難しい患者・家族への対応に関する助言を求めるものが最も多い。倫理コンサルタントは、従来の「倫理的問題を見つけ、分析し、臨床チーム、患者、家族を教育し、問題解決に尽力する」というような役割から、「紛争解決、危機解決、感情的に対立した状況の対応」へと役割が変化しており、いったん衝突が発生すると解決は困難なことから、早期の介入が求められている。

2 ヨーロッパ
2-1 イギリス
 今回、本テーマに関連して最も文献が豊富だったのがイギリスの事例である。イギリスでも、臨床倫理と研究倫理は別々の機関が担当するが、研究倫理審査委員会(REC)については、研究倫理審査委員会中央機関(Central Office for Research Ethics Committees:COREC)がlayの定義について非常に詳細に定めている(National Research Ethics Service and National Patient Safety Agency 2008)。イギリスの場合、地域ごとに分かれた研究倫理審査委員会は18名以下の委員で構成されるが、まず3分の1がlay membersでなければならない。さらにそのうえで、layはlayとlay+の二種類に分類され、製薬業界関係者や医療職経験者はlay、一般大衆の面々(members of the general public) や社会学者、弁護士、心理士などはlay+と定義される。委員会においては、lay+が半分以上を占めなければならない。
 一方で、委員会の仕事を定期的に監査する仕組みがないため、ほとんどが非公開であり、委員会の審議や議事録の公開を求める声も聞かれる(Ashcroft&Pfeffer 2001)。
 臨床倫理委員会については、市民参加は一般的に行なわれてはいるものの、選考方法などは不明である。オックスフォード大学付属の倫理センターでは、2001年以降、臨床倫理委員会(CEC)に対するサポートを行なっている。同センターが出版した「臨床倫理サポートに関する実践ガイド」(Ethox Centre 2004)には、倫理的諸問題に関して「決定」ではなく、あくまで支援を行なう立場の臨床倫理士(clinical ethicist)の役割についての説明や、市民(lay members)を委員会のメンバーに任命する際に考えるべきこと、と題されたQ&A形式の説明も含まれている。ここで明らかなのは、layの定義は統一されていないということだ。「layとはどういう意味か」という質問に関して、「最初に、まず、lay memberとはどういう意味であるかについて、そして彼らの機能や期待される役割に明確な合意ができている必要がある。(中略)layの定義は予想するほど簡単ではないが、仕事の説明や候補者選定に必要なので、早いうちに定義しておくべきである」(Ethox Centre 2004: 65)と記している。また、市民代表候補の募集方法として、地元紙への求人広告掲載を勧めている。
 著述家であるアップデール(2006)は、イギリスにおける市民の委員会参加の率直な感想を述べている。臨床倫理委員会には市民メンバーが大勢いるが、作家である筆者が委員を務める小児専門病院の場合、「なんとなく決まっている」という。その結果、時間や金銭的余裕があると推察される「白人、中流階級の女性」が多く、公募はない。市民委員の人選や研修には課題が多いものの、果たせる可能性は大きいとしている。

   私たちの重要な仕事の一つは、そこにいる、ということ。アウトサイダーがいると、委員が仲間うちで専門用語を使って何かを隠したり、疑わしい院内政治を展開することが難しくなる。私たちも、何か分からないことがあったら、そのつど質問することが非常に重要。頭文字や省略語は、知っている人の間では飛び交っている。医療資格のある委員たちが同僚の前ではずかしくて聞けなかった質問を、私が聞いたために、彼らに感謝されたことが複数回ある。(Updale 2006: 60)

 またアップデールは、市民にとっても倫理委員会に入るメリットは大きいことに触れ、次のように結んでいる。

   医療の専門知識を学ぶことができ、患者としての権利について敏感になることができ、自分の仕事の善悪について真剣に考えている医師や看護師など最良の人たちと知り合い、友人になる機会も得られる。(Updale 2006: 62)

 なお同国では、2007年4月に、これまでの研究倫理審査委員会中央機関(COREC)と研究倫理審査委員会(REC)を統合する形で、英国国民医療サービス患者保護庁研究倫理事業部(National Research Ethics Service:NRES)が設立された。2008年1月2日現在で英国国民医療サービス(National Health Service:NHS)に属する研究倫理審査委員会が155団体存在する。新組織においても、研究倫理審査委員会における非専門家参加は次のように明記されている。研究倫理審査委員会のメンバーは、研究倫理について特に訓練を受け、またときに、研究提案の倫理的側面を審査するのに役立つような経験を備えている。メンバーには以下の者が含まれる。すなわち、患者、一般人(members of the public)、看護師、家庭医、勤務医、統計学者、薬剤師、学者、ならびに法的、哲学的、もしくは神学的バックグラウンドから得られた個別具体的な倫理の専門知識を有する者、である(NRES 2007)。
2-2 その他
デンマークでは、1992年に法制化された生物医学的研究倫理審査委員会法(Act on theBiomedical Research Ethics Committee System)により、倫理委員会が地域ごとに8つ存在する。それらの委員会では半数以上がlay membersであることが定められている(Den Centrale Videnskabsetiske Komite 2003)。フランスにおいては、研究倫理審査委員会は12名で構成され、このうち、過半数は研究者、医師、看護師などのサイエンス職だが、それ以外は心理学、社会科学などの専門家、法律家が占める。施設内研究倫理審査委員会には、施設と関係のない素人が入っている(星野 1999)。
 ドイツでは、各大学の倫理委員会や州の倫理委員会が個別に対応している。各委員会の構成メンバーとして、医師、法律家、統計学・計量生物学の専門家、自然科学者、哲学者、神学者、心理学者、その他の精神科学・社会科学の専門家、看護師、医学生、素人を取り入れている(甲斐 2004)。
 オランダでは、被験者を伴う研究に関する中央委員会(Central Committee on ResearchInvolving Human Subjects:CCMO)が設置されている。その委員構成は、条文で決められている。総数は11名とし、その内訳は、医師3名、倫理学者2名、分子遺伝学者、リサーチ方法論学者、薬理学者、看護学者、法律家、医療心理学者、被験者各1名となっている(甲斐 2004)。

3 欧米と日本の比較:小括
 入手できた情報には限りがあるが、全般的に欧米での市民参加は満足できるレベルには達していないと考えられる。委員会構成の条件や、「非専門家」や「素人」の概念は国によって異なっていた。また人材確保の手段として、地元紙への求人広告掲載の推奨など具体的な試みが行なわれている。日本においても、この手法は隠れた有能な人材を発掘するうえで有効であろう。
 米国には倫理コンサルテーションという機能がある。近年、日本でも、この倫理コンサルテーションの必要性に関する報告がある(稲葉 2004;長尾ほか 2005;三浦ほか 2007)。2006年からの、浅井らによる「臨床倫理支援・教育・対話促進プロジェクト」では、倫理コンサルテーションの試みが行なわれている(重症疾患の診療倫理指針ワーキンググループ 2006)。その方法は、複数の臨床倫理の専門家が依頼内容に迅速に対応し、施設と利害関係が全くない異なる専門のメンバー(3名で男女両性を含む)が、多角的視点から相談内容を検討し、回答する。長尾ら(2005)の調査でも倫理コンサルテーションのニーズは高く、その理由として、第三者として客観的に問題を分析し整理するうえで有効であろうという期待があった。倫理委員会とは別の機能として、臨床現場での個々の症例について、適時、助言できる体制づくりも必要であろう。
 そこで、欧米における取り組みを参考としながら、非専門家参加のための課題として挙げられた、人選、医学的知識の習得・個人情報保護・症例検討などの研修を行なう中間団体について検討する。

W 市民参加のためのシステム構築

 筆者らの調査および先行研究から、倫理委員会への非専門家参加とその実現にあたっては、@非専門家委員となる候補者の確保、A非専門家委員の資質と研修、B各委員会における非専門家委員が参加することへの理解、が課題として挙げられた。
 本章では、これらの課題の解決策として、非専門家委員と倫理委員会の仲介役として中間団体の設立を提案する。
 以下、中間団体の業務を述べる(図1 ※本来論文に掲載されている図はこのページでは表示されていません。こちら(pdf)を参照してください。)。

1 市民代表委員のリクルート
1-1 候補者登録制度
 本調査において、非専門家委員に対する一定の資質への要求と、その資質をもった人材確保の困難についての意見がみられた。中間団体では、資質を持った人材を候補者として登録することで確保し、その情報をデータベース化し、適切な人材の派遣につなげることが業務として考えられる。
 候補者の募集先として、まず、ステークホルダー(利害関係者)である患者会・介護者団体・支援団体等、が挙げられる。市民を始め非専門家委員候補を公募し、その応募者を登録する方法もある。公募の通知先は上記と重なる点もあるが、広く一般に公募することで多様な人材が確保できることが期待される。倫理委員会とは異なるが、英国国民医療サービス(NHS)の国立クリニカルエクセレンス研究所(National Institute for Clinical Excellence:NICE)における患者参加ユニット(Patient Involvement Unit for NICE:PIU)やスコットランド大学間共通診療ガイドライン作成ネットワーク(Scottish Intercollegiate Guidelines Network:SIGN)の診療ガイドライン作成への市民参加の事例(注4)でも、ホームページ上から直接登録可能なシステムによって公募し、履歴書と書類審査と電話インタビューで責務理解を確認することにより、人材を確保している。市民代表として委員になった経験者も、倫理委員会に対する基本的理解や市民代表として参加する上での困難や意義を自覚しているため、多くの場合適切な人材と言えよう。その他、医療倫理に関するイベントを実施、参加者の中から潜在的委員を発掘、育成することも重要である。広く市民に公開された医療倫理に関するワークショップやセミナー等を通じて、医療倫理に関心を持つ層が理解を深める機会を作り、自ら積極的に倫理委員会に参加する動機付けとなるような活動も、非専門家委員の確保、育成にあたる中間団体の責務の一つと考えられる。
1-2 住民票等による無作為抽出
 他の選択肢として、住民票による無作為抽出があるが、これは現実的ではないと思われる。無作為抽出による市民参加の事例として司法分野における裁判員制度が挙げられるが、法的な拘束力があることなど、大きなシステム上の差異があるため同列には論じられない。

2 非専門家委員としての資質の育成
2-1 非専門家委員に必要とされる資質
 非専門家委員の任に当たるには、一定の資質が要求されることを述べてきたが、非専門家委員の育成のための研修において考慮すべき要素を、ここでまとめてみる。それは、@倫理委員としての基盤となる知識等(倫理的価値基盤、個人情報の保護と管理)、A倫理委員会に対する理解(委員会の基本知識、非専門家委員の意義、責務内容)、B技術的資質(発言力、体系的知識の習得技術)、である。
2-2 事前研修の実施
 事前研修は、@ケーススタディー(事例研究)、ロールプレイイング、模擬倫理委員会の開催、A倫理委員会の実習、関連団体見学などの研修を他団体とも協力して管理、運営し、生命倫理の基本的知識の習得や倫理委員会の活動に関する理解を深めること、を目的として行なう。
 ケーススタディーでは、多くの事例から実際の倫理委員会で直面すると思われる事項を擬似体験することで技術的資質を習得でき、基盤となる知識を得ることができる。また、小グループによる討議を通じて、コミュニケーション技術の習得、判断に必要な情報を得る訓練にもなるだろう。例えば、特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML(Consumer Organization for Medicine & Law)での、言語化訓練である小グループによるディスカッションを挙げることができる。ロールプレイイングでは、異なる立場の役割を演じることで、多様な意見を評価することができ、自分自身のおかれる非専門家委員としての責務に対する客観的理解につながると考えられる。
 東京大学生命・医療倫理人材養成ユニット(Center for Biomedical Ethics and Law :CBEL)で行われた実際の研修事例における演習を参照する(CBEL 2005)。ここでは、終末期医療、医療資源の配分、インフォームド・コンセント、医師・患者関係とケアの倫理、守秘義務・個人情報保護、法の基礎、事実と価値の違いなどがグループ討議の課題として挙げられている。その他、医療現場で直面する倫理的ジレンマのケースを取り上げた報告(赤林・大林 2002)には、患者のライフサイクル毎の倫理課題や、患者と医療者の内面的な葛藤等についての実際的な課題が取り上げられていて興味深い。これらは、市民倫理委員に必要な資質を網羅している。倫理委員会の実習、医療関連団体見学では、実際の現場を見ることでより具体的に、医療倫理に課せられた課題や医療の現実を理解することが可能となる。前述のプログラムでも実習として、医療現場を知るため東京大学医学部付属病院救急医療部を、生命科学研究の現場を知るために理化学研究所を訪問している。 その他、事前資料として渡すガイダンス資料、講読資料等の作成も重要である。研究倫理審査委員会中央機関 (COREC)では、新規倫理委員に対する導入ガイドのフォームを作成している(COREC 2005)。このガイドは3部からなっており、第1部は概略として、導入研修と倫理委員会の概略、審査のポイントなどが記載されている。第2部は個別の倫理委員会ごとに内容を記載していくフォーマットとして作成されており、基本情報や今までの委員会の内容、日程・開催場所への地図、所蔵資料などを記入する。第3部では、詳細情報、書籍や関連団体のサイト、用語集、検証方法、審査のポイントやガイドライン、法的情報等について70 ページ以上に渡って書かれている。

3 継続研修と市民委員によるネットワーク作り
 継続的な研修は、委員として業務に従事するなかで生じた様々な課題や問題点を解決・検討する場として、必須と言えよう。実際に委員になったあとの研修については、スコットランド大学間共通診療ガイドライン作成ネットワーク(CITS 2003)や患者参加ユニット(Jarret&PIU 2004)の報告書においても評価を得ており、単に非専門家委員にとって役に立つだけでなく他の委員にとっても利益があり、経験のある委員でも参加すべきとの意見が挙げられている。またスコットランド大学間共通診療ガイドライン作成ネットワークの報告書では、そのなかの患者ネットワークが他の委員と連絡を取り、イベントに関する最新情報を得る機会となった、というコメントが紹介されている(CITS 2003)。
 たとえ研修を継続的に受けたとしても、並み居る専門家を相手に市民委員が発言する際には、かなりの心理的ストレスを伴うことが予想される。市民委員が抱くであろうその様なストレスに対しては、市民委員のネットワークを作り、その中で様々な情報交換を行うことが不可欠である。もちろん、ここの倫理委員会での審査内容等に関する守秘義務が遵守されることが前提である。一つひとつの委員会に参加する非専門家委員は少数であっても、非専門家委員がネットワークを通じてつながって行くことは、個々の現場での発言を行う力の源泉となり得ると同時に、縦横にネットワーク化された非専門家委員の参加は、単に「専門家」にとっての「いいわけ」や「数合わせ」に利用されるだけだとの批判にも答えることとなろう。

4 各委員会への非専門家委員参加に対する理解促進
 中間団体には、委員長が果たすべき役割の理解と実際の協力的行動を容易にするためのガイドライン、参考資料や情報の提供をすることが求められる。委員会の運営方法に関してのガイドラインの提示も、中間団体の役割の一つになりうる。内容としては、非専門家委員の数を複数にすること、メンター制度の導入、委員間のメーリングリストの活用など、が挙げられる。

5 評価と見直し
5-1 非専門家委員および倫理委員会からのフィードバック・評価
 非専門家委員が実際に業務を開始した後、その効果の検証と倫理委員会に非専門家が参加する場合の問題点や課題を明らかにすることも、非専門家委員を派遣する中間団体の役割となる。前述のスコットランド大学間共通診療ガイドライン作成ネットワーク(CITS 2003)や患者参加ユニット(Jarret&PIU 2004)の報告書では、市民代表、中間団体スタッフ、委員長や医療専門委員など各立場からのフィードバックを得ている。特にスコットランド大学間共通診療ガイドライン作成ネットワークは、患者参加プロジェクト開始前と開始後の比較をしている。このような比較は、中間団体の活動内容の検証として有効であろう。
5-2 改善点・対策の提示
 中間団体には、上記のフィードバックと評価から、研修や市民代表委員の登録などの活動と各委員会・委員長への働きかけの改善、関係団体の協力を得ながら対策を立てること、が求められる。患者参加ユニットの例では、メンバーに対するインタビューにおいて、よりよいプログラムにするための提案を報告している(鈴木 2004)。

6 中間団体の機能:小括
 非専門家が倫理委員会に参加するには、米国のように非専門家が専門家と対等な立場で委員としての役割を果たしていくための研修・教育の場の提供が必要である。
 筆者らの提案した中間団体は、人材の確保、教育・研修、参加の促進という機能をシステム化したものである。のみならず、このような団体が存在することは「非専門家が倫理委員会に参加できる(すべきである)」という自覚につながり、また「非専門家である自分が専門家に混じって議論すること」に対する不安感を教育研修の場で解消することにより、潜在的非専門家委員の裾野を広げることになる。また今後の展開に向けて、イギリスのように系統だったフィードバックや課題の検討の場として中間団体が機能することが、非専門家の参加促進につながる。

X 倫理委員会への非専門家参加の意義とその課題
 筆者らの調査から、「市民参加は不要」と回答した委員会を除けば、多くの委員会において検討の余地があると推測された。そして、市民を含む非専門家参加のための課題として、@医学的専門性、A人選、B個人情報の保護と管理、が挙げられた。
 「市民」の定義については、倫理委員会に限らず、法学関係者や宗教家、学識経験者や報道関係者を市民代表とみなすかどうか、特に大学関連施設の場合には医学部以外の学内の教員を非医療者である「院外委員」として市民代表とみるか、といった「市民の定義」については、これまでにも問題が指摘されてきた(菱山 2003)。これらの委員に対し現状では、倫理委員会の審議に関して「医療の利用者=医療消費者」としての立場で広い視野からの意見を提示する役割というよりも、それぞれの委員の各分野における専門知識の提供を期待される存在として、あるいは、病院の事務長や医事課長と言った事務系職員が、専門家に対する単なる「数あわせ」的な存在として参加している場合も見られる。加えて、科学技術・学術審議会の報告でも、大学や研究機関に属し、「教授」や「研究部長」などといった「権威的」な肩書きをもつ専門家委員が並ぶなか、何ら専門性を有さない、「市民」の立場の参加者が、委員会の場で発言することの困難さを指摘する声もある(武藤 2004)。 あらためて、「市民」が専門性の高い倫理委員会に参加する意義は何かと考えれば、それは、ともすれば「専門」という限られた視野から物事を判断してしまいがちな専門家に対して、「ずぶの素人」かもしれないが、いわゆる「一般常識」や「普通(市井)の感覚」から専門家では考えつかない視点から意見を述べることが求められるものと考える。
 甲斐(2004)によれば、日本の倫理委員会は「倫理規則(ガイドライン)モデル」に基づいており、柔軟な対応ができるというメリットがある。しかしながら反面、課題もあり、@倫理委員会が通過儀礼的性格に陥っている、A人材不足、Bコスト不足、C法制度の関与がない、Dガイドラインは幾つもあるが、継ぎはぎ的性格のため、間隙が多かったり、相互に齟齬がある、などの課題を挙げている。特に倫理委員会が通過儀礼的性格に陥っていることに関して言えば、倫理観が医療者に偏らないよう、広い視野から意見を取り入れるべきであり、その意味においても非医療者の積極的な採用は不可欠である。
 そこで筆者らは、倫理委員会と非専門家の橋渡しとして機能する中間団体の設立を提案し、その業務について検討を行なった。先行研究や本調査から中間団体の役割として、@多様な資質を持つ人材の確保、育成、リクルート、A就任後の非専門家委員の支援、B非専門家委員参加の意義に関する周知、C評価と手法の見直し、D広く社会に向けての情報発信、が求められる。さらに中間団体では、定期的な症例検討会の開催や医療情報の提供なども行なうべきであろう。しかしながら、赤林ら(2000)の調査では委員報酬の問題、白井ら(2003)の聞き取り調査からは運営資金の不足、が挙げられている。筆者らが提案した中間団体を設立するにしても、運営資金をどこから調達するのかという大きな課題があるが、委員会を始め関係機関に公的資金を当てることも検討する必要がある。
 今後ますます倫理委員会には、日々の文化・倫理観・死生観等の多様性に対処することが求められる。委員会での審議が単なる通過点(免罪符)として存在するのではなく、倫理委員会が本来の役割を果たすことは、医療消費者である国民の利益につながると言えよう。

Y 結びにかえて

 本研究では、倫理委員会へ非専門家が委員として参加するためのシステムとして、中間団体の設立とその役割について検討した。日本には、1988 年に発足した「大学医学部医科大学倫理委員会連絡懇親会(現医学系大学倫理委員会連絡会議)」があるが(赤林 2002)、これは日本の国公私立大学医学部・医科大学倫理委員会の相互の情報や意見交換を目的とし、臨床症例を多く扱う一般病院の倫理委員会は加盟していない。中間団体設立を実現させるには、運営や有効的な研修プログラムなど具体的に検討すべき課題が残されているが、本研究が倫理委員会への非専門家参加の必要性を唱えるうえで一助となれば幸いである。

【謝辞】本調査にご協力いただいた全ての関係者の方々に、心より御礼申し上げます。

〈文献〉
◇赤林朗,2000,『日本における倫理委員会の機能と責任性に関する研究』1997-1999 年度科学研究費補助金研究成果報告書.
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◇――,2002,「倫理委員会の機能:その役割と責任性」,浅井篤・服部健司・大西基喜・大西香代子・赤林朗『医療倫理』勁草書房.
◇――,2003,『先端医療技術に関する社会的合意形成の手法』2001-2002 年度科学技術振興調整費調査研究報告書.
◇赤林朗・大林雅之編,2002,『ケースブック医療倫理』医学書院.
◇Ashcroft Richard and Naomi Pfeffer,2001,“Ethics behind closed doors: do research ethics committees need secrecy?,” British Medical Journal ,322(1294): 1294-1296.
◇Central Office for Research Ethics Committees(COREC),2005,Essential reading and National Information ,Central Office for Research Ethics Committees.
◇Consultation & Involvement Trust Scotland(CITS),2003,SIGN Involvement Project Review, Consultation & Involvement Trust Scotland.
◇Davis,Anne J,1999,「医療と医学的研究における倫理委員会の看護からの展望」,星野一正編『生の尊厳』思文閣出版,53-72.
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◇菱山豊,2003,『生命倫理ハンドブック―生命科学の倫理的、法的、社会的問題』築地書館.
◇星野一正,1993,「日本の医系大学倫理委員会」,星野一正編『倫理委員会のあり方』蒼穹社.
◇――,1999,『生の尊厳』思文閣出版.
◇稲葉一人,2004,「倫理コンサルテーション―Ethics Consultation」,『医療・生命と倫理・社会』3(2): 40-61.
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◇Jarret Linda and the Patient Involvement Unit(PIU),2004,A Report on a Study toEvaluate Patient/Carer Membership of the First NICE Guideline Development Groups, National Institute for Clinical Excellence.
◇Jonsen,Albert R,Siegler,Mark and Winslade,William J,2002,Clinical Ethics:A Practical Approach to Ethical Decisions in Clinical Medicine ,New York:McGrow-Hill.(=2006,赤林朗他監訳『臨床倫理学―臨床医学における倫理的決定のための実践的なアプローチ』,新興医学出版社.)
◇重症疾患の診療倫理指針ワーキンググループ,2006,『重症疾患の診療倫理指針』医療文化社.
◇甲斐克則,2004,「ドイツとオランダにおける被験者保護法制の比較的考察」,『早稲田法学』80(1): 1-19.
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◇武藤香織,2004,「倫理委員会の明日はどっちだ?!」,『患者のための医療』9: 79-83.
◇武藤香織・佐藤恵子・白井泰子,2005,「倫理審査委員会改革のための7 つの提言」,『生命倫理』15(1): 28-34.
◇長尾武子・瀧本禎之・赤林朗,2005,「日本における病院倫理委員会コンサルテーションの現状に関する調査」,『生命倫理』15(1): 101-106.
◇National Research Ethics Service(NRES),2007,“What are Research Ethics Committees?,” (http://www.nres.npsa.nhs.uk/aboutus/what-are-recs/,2008.11.08).
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◇Sengupta Sohini and Bernard Lo,2003,“The Roles and Experiences of Nonaffiliated and Non-scientist Members of Institutional Review Boards, ” Academic Medicine ,78(2): 212-218.
◇社団法人日本病院会(http://www.hospital.or.jp/index.html,2008.11.10).
◇白井泰子,2003,『遺伝子解析研究・再生医療等の先端医療分野における研究の審査及び監視機関の機能と役割に関する研究』2002 年度厚生労働省科学研究費補助金研究報告書,国立精神・神経センター精神保健研究所.
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◇東京大学生命・医療倫理人材養成ユニット(CBEL),2005,「模擬倫理委員会演習第三回―臨床における倫理的問題を考える一」第2 回生命・医療倫理学入門コース配布資料,東京大学.
◇Updale Eleanor,2006,“The challenge of lay membership of clinical ethics committees,”Clinical Ethics ,1(1): 60-62.
◇World Health Organization(WHO),2000,“Operational Guidelines for Ethics Committees That Review Biomedical Research”(http://www.who.int/tdr/publications/publications/pdf/ethics.pdf,2008.11.10).

〈注〉
1 木場は、科学技術政策形成過程に市民が参加することに関する議論を、次のようにまとめている。それは、@専門家だけで科学技術に関する問題について決定すると、その科学技術に関する利益共同体の立場からしか見ることしかできないし、特段の先入観のない一般市民の方が、専門家よりも問題発見能力が高いとも言われている、A民主的な政治形態の下では、専門家だけでなく、市民参加による民主的な決定形態をとることが理念的に望ましい、B市民参加の手続きをとって、専門家だけではなく多くの市民が決定に関与できることによって決定の正統性が高まる、ことである(木場 2000)。
2 菱山は、「一般の立場」について次のように述べている。実際に指針の運用が始まると、「一般の立場」とはどのような人であるかについて問題となる場合があった。「一般の立場」とは、専門家以外を指すと考えると、たとえば大学、会社、病院の内部の委員であるが、いずれの専門に属さない者も一般の立場ということになる。ここで、「一般の立場」というのは、英語でいう「layperson」であり、素人的な立場の人のことを指すと考えるべきである。このように考えると機関内の委員を「一般の立場」とすることは無理がある、としている(菱山 2003)。
3 例えば、ワシントン大学医学部の倫理委員会
http://depts.washington.edu/bioethx/topics/ethics.html#ques2,2008.11.10)や、モアヘッド記念病院
https://www.morehead.org/Portal/Main.aspx?mtid=1&tid=299,2008.11.10)、カンザス大学病院(http://www.kumc.edu/hospital/ethics/ethics.pdf,2008.11.10)がある。
4 事例の詳細については、各ホームページを閲覧されたい。患者参加ユニット(PIU;http://www.insolvency.gov.uk/compulsoryliquidation/piu/homepagemain.htm
2008.11.10)、スコットランド大学間共通診療ガイドライン作成ネットワーク(SIGN;http://www.sign.ac.uk/index.html,2008.11.10).


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表1 委員構成(%)
学会
(n=21)
大学付属病院
(n=26)
一般病院
(n=57)
合計
(n=104)
医師92.596.296.595.1
看護師9.557.791.252.8
他の医療関係者9.534.659.634.6
事務関係者9.534.659.634.6
法学者47.680.850.959.8
哲学倫理学系14.357.726.332.8
宗教関係者07.719.318.0
その他マスコミ関係・一般有職者(著述業)・患者家族・研究者・歯科医・文科系一般市民(3委員会)・NPO団体スタッフ・エッセイスト・委員長が認める者・医療分野以外での学識経験者・自然科学者・基礎医学系の有識者・教育関係者・弁護士・フリーアナウンサー教育関係者(4委員会)・自然科学者(2委員会)・・民間事業者(2委員会)・部外学識経験者(2委員会)・市民(2委員会)が必要と認める学識経験者・民生委員・福祉団体関係・弁護士・財団法人役員――――

表2 市民参加の必要性
必要どちらともいえない不要NA
全体(n=122)53(43.4%)44(36.1%)6(4.9%)19(15.6%)122(100%)
学会(n=31)7(22.6%)12(38.7%)3(9.7%)9(29.0%)31(100%)
大学付属病院(n=30)16(53.3%)7(23.3%)1(3.3%)6(20.0%)30(100%)
一般病院(n=61)30(49.2%)25(41.0%)2(3.3%)4(6.6%)61(100%)


*作成:岡田 清鷹
UP:20090220 REV: 20160120
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