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ケアする者へのケアシステムを構築するには何が必要か

 的場 和子 2009/03/19
立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点 20090319
安部 彰有馬 斉 『ケアと感情労働――異なる学知の交流から考える』
立命館大学生存学研究センター,生存学研究センター報告8,248p. ISSN 1882-6539 pp.71-72



 みなさま、はじめまして。的場です。
 私は、ごく単純なことだけ聞こうかと思います。感情労働ということが言われるようになってきて、今日のお話でもあったように、組織として、それをとらえていくやり方が大事だということですけど、日本の場合って、なかなかそれが進まないように思うんです。
 私は90年代にイギリスのNHSのContinuing Care Unitで、少し看護助手として仕事をしたことがあるのですが、そのとき驚いたのが、要するに「ケアする側がいい状態でなければいいケアが提供できない」という認識が非常に強いことでした。例えば労働条件だとか、いま言った感情労働的なことですよね。師長さんが、例えば金曜日になるとワインを開けて、スタッフ全部で、今週はこんなことがあったなんてことをやったりとか。あるいは、私の行っていたところはContinuing Care Unitだったので、10週続けて働いたら1週休みましょう、死ぬ人を看ていくのは非常にしんどい仕事だから、そういうことをちゃんと保障しましょうということが、NHSのなかでなされていたんですね。ちょうど1990年の医療改革のときです。
 私自身は、それまで日本で研修医として働いてきて、有給休暇を取るなんてとんでもないし、ともかく休まず働くのがいいという文化のなかにずっといて、日本に帰ってきてからは、緩和ケアの領域でもケアする人のケアということが言われていますけど、やっぱり実際に現場ではそれが進んでいかないということがあると思うんです。
 なので、私がおうかがいしたいのは、個人ではなくて組織として対応していくことが大事だ、リーダーがちゃんとそのあたりをとらえていないといけないというのは、イギリスでも最初からそういう理解があったとは思わないので、そういうふうに動かしていく力が、NHSの場合はどんなところにあったのかということです。それをお聞きして、日本ではなぜ、そういうベクトルにことが進まないのかなということを考えてみたいなと思いました。 以上です。



崎山:的場さん、どうもご質問ありがとうございました。的場さんのご指摘は、おそらく最近、日本の病院でも特にケアワーカーに対するケアということが盛んに叫ばれていて、それは意味深いものである半面、それをどう組織として支えていくのか、その方法や方向について先例を踏まえながら示唆を得たいということかと思います。
 それでは最後に天田さんから、感情労働という概念について、日本やこの場でどのような議論が起こっているのかということからご意見をお願いします。


□的場 和子 20090319 「ケアする者へのケアシステムを構築するには何が必要か」 安部 彰有馬 斉 『ケアと感情労働――異なる学知の交流から考える』,立命館大学生存学研究センター,生存学研究センター報告8,pp.71-72.



UP:20090911 REV:
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