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「障害者の高等教育史に対する文化技術的考察」『特殊教育ジャーナル――理論と実践」

クァク・ジョンナン 20090331 『特殊教育ジャーナル――理論と実践』10(1): 57-84

last update: 20110419

■要旨

本研究の目的は障害者の高等教育保障および障害学生支援の歴史的展開過程を調べるところにある。 このために1960年代以後2008年まで障害者の高等教育関連した各種文献を分析し、具体的な人生の脈絡で歴史的事実を理解するために研究参加者らを対象にインタビューを実施した。 これを通じて得た結論は次のようである。 障害者の高等教育史は部分的入学許容の時期(解放以後高等教育成立初期-1994),形式的機会拡大の時期(1995-現在)、障害学生支援の登場時期(2000年代-現在)を経て展開した。 障害学生支援は使命感、献身そしてボランティアメンバーの動員という枠組みに基盤を置いていた。

■目次

T. 序論
 1. 問題提起
 2. 研究方法

U. 特例入学実施以前の障害者の高等教育
 1. 高等教育の成立時期の障害学生の大学入学の状況
 2. 1970年代〜1980年代障害者の高等教育現況
  1) 文献に現れた障害者の高等教育現況
  2) 障害者の口述を通じてみた障害者の高等教育

V. 特例入学制度実施と形式的機会拡大
 1. 上から作られた特例入学制度
 2. 行政的措置に終わった特例入学制度
 3. 特例入学制度の可視的な成果
 4. 特例入学制度の限界:特定の大学に集中した商学学生の入学
 5.教育部の遅れた介入とその限界

W. 最初の障害学生支援センター
 1. 障害学生たちの高い中道脱落率
 2. 全国最初の障害学生支援センター
 3. 障害学生支援センターの変化過程

X. 結論

参考文献

■一部抜粋

□ 1967年特殊学校卒業生の進路および就業状況(p.59)
高等部卒業生 進路者
区分   計     女  
合計 45 8 11 1
盲学校 28 7 10 1
聾唖学校 17 1 1 -
盲唖学校 - - - -
その他 - - - -
市都別
ソウル 41 7 9 1
慶北 4 1 2 -
出所:文教部1967 『文教統計年報』:488

□ 高等教育成立初期の障害者の大学入学状況(p.60)
大学名 卒業 在学 大学名 卒業 在学 大学名 卒業 在学
建国大学 4 2 明智大学 0 1 梨花女子大学 1 0
慶北大学 1 0 釜山神学校 0 1 中央大学校 7 1
慶煕大学 1 0 三養神学 0 1 総会神学大学  5 0
啓明大学 1 1 ソウル聖書大学 1 1 春川大学  0 1
高麗大学 2 0 ソウル女子大学 1 0 忠南大学校  1 0
国民大学 5 0 ソウル神学大学 1 0 韓国社会事業大学  7 8
大邱神学 1 3 徐羅伐芸術大学 0 1 韓国神学大学  1 0
大韓神学 1 0 崇実大学 2 0 日本留学  3 0
大田大学 1 1 延世大学 4 6 米国留学  1 1
同徳女子大学 1 0 円光大学 0 1 53 30
出所: アン・テユン1968 「韓国盲人の高等教育に関する研究」『特殊教育研究』 1:1-19, 韓国社会事業大学特殊教育研究所, p.7 (参考: 韓国社会事業大学はヘッサル大学の前身)

□ 1970年代〜1980年代障害者の高等教育現況
□□ 文献に現れた障害者の高等教育現況(pp.61-62)
事件概要(p.61)
* 1974.1.28 バック・ヤングボム郡, 小児麻痺理由で慶北大歯医科不合格
* 1976.2. 障害者という理由で大学入試 30人余り不合格. 2月24身体不自由学生および親など 100名, 非教育的入学制に糾弾決起大会を行う. それで、同一障害者の入学制限を撤回.
* 1977.1.24  バック・チァン、グ・グォングン, ソウル大学応美科聴覚障害を理由に脱落. 全国特殊学校校長 30人余り, 特殊児の大学進学に対する緊急建議文を採択.
* 1977.2.11 ジョン・ギソク, グ・ボンヨン 嶺南大学薬学科で身体不自由児という理由で不合格
* 1977.2.16  YWCA, 障害によって大学入試で脱落されたバック・チァングォン, ジョン・ギソク, グ・ボンヨンの入学許可に建議文を関係機関に送り
* 1980.1.9 例示合格視覚障害者 大部分の大学で願書受付拒絶
* 1980.11.25 嶺南大薬学科で身体障害を理由に不合格されたド・ヒョヒ(20)大邱地方法院で合格判定
* 1982.1.29 障害を理由でション大学薬学科2人不合格
* 1983.1.20 身体不自由という理由だけでイ・ヒョン, キム・ヨンハク試験落第
* 1983.3.17 身体不自由という理由で全南大薬学科で落榜されたキム・ヨンハク群救済
* 1984.1.13 身体不自由という理由で東国大学落榜
* 1986.1.22 カトリック大学で小児麻痺学生3人を障害理由で不合格処分
* 1987.11.9 政府 88年から税務大学に一定比率の障害者入学許容計画発表
出所: 定立会館障害者福祉研究会 1988 『障害者関連新聞資料集事日誌(pp.1-14)』の中で障害者高等教育関連事件日誌を整理したのもの

□□ 障害者の口述を通じてみた障害者の高等教育
* 1980年代大学に通った全盲者のインタビュの一部
障害学生にたいする配慮があったより、受けてくれるのが配慮ですよ. あまり入学できなっかたので。盲人の中には神学大学をかよっていた人もいたが, その理由はその学校だけが 一応よく受けてくれるからだった(pp.63-64)

□特例入学制度実施と形式的機会拡大
参考: 障害者大学入学特別選考制度(以下特例入学制度)
1995年から障害学生の大学教育機会拡大および職業リハビリを企てるために障害者対象特別選考(特殊教育対象者特別選考含む)制度を実施。大学定員外障害学生の入学を許容

初め特例入学制度が議論されたのは1989年障害者福祉対策委員会の「障害者福祉総合対策」という報告書である。 障害者福祉対策委員会は1988年ソウルオリンピック開催を前後して強力な障害者の社会福祉に対する要求に応じて政府が作った臨時的な大統領諮問機構である。 当時、障害者らは障害者らの基本的な生存権さえ保障されない事情で莫大な国民の税金を注ぐオリンピック開催に対する反感を持っていた。 特に、1987年全国を強打した民主化熱風は障害者らの意識を起こすのにも至大な影響を及ぼした(クァク・ジョンナン[2003] キム・ドヒョン[2007]). 当時政権はソウルオリンピック開催以後開催されるパラリンピック開催などで世界の耳目が注目された中で、障害者の要求に応じる福祉政策らを速かに作り出さなければならなかった。 障害者福祉対策委員会は1989年8月「障害者福祉総合対策」という政策報告書で福祉施設拡充、教育施設の改善、国立特殊教育院の設置などを主な内容で扱いながら教育機会の拡大一環で障害者の高等教育に対して短く言及した. しかしこの内容らは政権が交替して大きく議論されることはなかった。
これが文民政府(93年~97年)によって議論されることになったものである。 障害者に対する教育機会拡大は当時、キム・ヨンサム大統領候補の公約事項の中の一つであった。キム・ヨンサム政府は世界化政策を政治基調で前に出して世界化に進むための一つの基本要素として社会福祉政策拡充に関心を持っていた。オーイーシーディー加入のためには社会福祉全般を改善しなければならなかった(イ・ヒョンジュン、1995; ナム・ジミン、2006). このために色々な社会福祉政策らが立案されたが、当時教育部では1994年1月24日業務報告を通じて特殊教育対象者の定員外特例入学制 を報告することになったものであた(pp.66-67)。

障害者の反応:障碍者運動活動家パク・オクスン氏とのインタビュー
高等学校状況や入試状況を考慮するならば、正当な権利だと言えるが、特別選考という制度によって障害者があたかも能力がない存在と見える可能性もあると判断しました。 教育環境は整備しないでキム・ヨンサム政府が作った障碍者の地下鉄無賃乗車制度のように、特例を与えるというイメージが強くて、一種の恩恵的な政策でかぎりませんが。 当時はこの制度を歓迎することも反対することもできなかったんです(p.68)。


□ 特例入学制度 学生数(1995-2010)(p.70)
専門大学 4年制大学
年度 大学数 学生数 大学数 学生数 大学数 学生数
1995 2 6 6 107 8 113
1996 2 16 16 201 18 217
1997 6 42 30 234 36 276
1998 6 57 39 298 45 355
1999 6 47 40 349 46 396
2000 9 55 48 313 57 368
2001 11 61 43 360 54 421
2002 15 194 46 420 61 614
2003 14 117 47 310 61 427
2004 24 115 49 309 73 424
2005 11 45 53 344 64 389
2006 10 31 63 388 73 419
2007 9(7) 79 71(72) 439 80(78) 518
2008 8(7) 100 74(65) 460 82(72) 560
2009 10(10) 74 80(70) 498 90(80) 561
2010 19(12) 51 80(75) 601 99(87) 652
( )は最終登録基準大学数
出所:教育科学技術部 2010 『2010年定期国会報告資料特殊教育年次報告書』教育科学技術部:50
* 2009、2010年データー追加


□ 4年制大学の中でヘッサル大学に入学した特例入学者の比率(p.72)
年度 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
比率(%) 41.1 28.9 23.9 22.8 24.4 26.8 22.8 19.8 18.7 13.6 14.5 9.8 9.3

■参考文献

クァク・ジョンナン2003『韓国障害者運動の特殊教育学的考察』 テグ大学校修士学位請求論文.
キム・ドヒョン 2007『差別に抵抗しなさい』 ソウル: パク・ジョンチョル出版社
ナム・ジミン 2006『発展国家の転換と福祉政策: キム・デジュン政府の福祉政策を中心に』 ヨンナム大学校大学院博士学位論文
教育科学技術部 2010 『2010年特殊教育年次報告書(2010年定期国会報告資料)』教育科学技術部
アン・テユン1968 「韓国盲人の高等教育に関する研究」 韓国社会事業大学特殊教育研究所『特殊教育研究』 1:1-19
イ・ヒョンジュン1995 「整えたことはもっともらしいが食べたい物がない-世界化時代の障碍友福祉」1995年07月01日(土)10:29:35
定立会館障害者福祉研究会 1988 『障害者関連新聞資料集事日誌(pp.1-14)』定立会館


*作成:クァク・ジョンナン
UP: 20110419 REV:
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