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「渡英の準備段階でのこと」

田島 明子 GCOE生存学創成拠点「国際研究調査報告」



 私は、日本時間で二〇〇八年二月九日から二月一五日まで、イギリスに行ってきました。援助頂いた資金は二〇〇七年度若手研究者グローバル活動支援助成金です。
 今回の渡英の目的は二つありました。一つは、リーズ大学障害学センター所長のコリン・バーンズ教授を訪れること、もう一つは、イギリスで作業療法士をしている日本人女性を訪ね、彼女の仕事場を見学させて頂くことです。一つめの見聞については、二〇〇九年度あたり冊子としてまとめて頂けるとのこと(1)、二つめの見聞については、田島[2008]で報告させて頂きましたので、そちらをご覧いただけたら、と思います。(生存学センター書庫に一冊置かせて頂いております)

 この報告では、渡英する準備段階でのことをご紹介したいと思います。

 実は海外一人旅はこれが初めてだったので、何もかもをわくわくと不安な気持で行っていたように思います。航空チケットを予約する際、一二時頃発で一五時頃到着ですと言われ、イギリスって結構近いんだぁとちょっと安心し、「イギリスって結構近いんですね」と職場の人に話したら、バカかという目力をしつつ、日付変更線っていうのがあってね……と、とうとうと説明を受けたことが思い出されます。

 リーズ大学のコリン・バーンズ教授にお会いすることは、(もちろん)資金援助を受ける段階では全く予定に入っていませんでした。申請書類には、ただリーズ大学の図書館で障害学関係の資料を収集したいと書いただけでした。そうしたところ「生存学関係でリーズ大学の障害学センターとの連携を考えているので、何でもいいからリーズ大学のことを調べてきてほしい」と立岩真也先生より注文?があり、さてどうしようか、とWebを調べていると、リーズ大学の日本窓口のWebサイト(2)に行き当たりました。早速日本窓口に電話をし、実はこうこうこうで、と事情を説明したところ、障害学センターに問い合わせをして下さるとのお返事。一〜二日後、障害学センター所長のコリン・バーンズ教授が会いたいと言っているとの連絡が入ったのでした。そのときは本当にびっくりしました。私を教授と間違えておられるのかなぁと不安に思い、院生を強調するメイルを送り返したようにも思います。また、資金援助が決まったのが一二月、渡英予定が二月でしたから、スケジュール的に非常にさし迫った状況にあったのですが、この日本窓口の方が本当に手際よくとても良いスケジュール調整までしてくださり、ミーティング当日に外部講師のレクチャーを聴講させて頂くこともできました。

 その後、私が急ぎ考えなければいけない重要な課題は、コリン・バーンズ教授とのミーティングをどうするかでした。まず重大なポイントとして私は英語ができないので、コミュニケーションの方法をどうするかがありました。その頃、私がリーズ大学に行くことを生存学メーリングリストに流したのですが、そうしたところ、院生の青木慎太朗さんがリーズ大学へ留学経験のある知り合いの方をご紹介くださいました。一ノ瀬トシ美さん(1)とおっしゃる方で、コリン・バーンズ教授の元で修士論文を書かれ、つい最近日本に戻ってこられた方でした。その方の紹介で、障害学センターにvisiting researcherとして滞在しておられる平直子さんと連絡を取ることができました。こうして平直子さんがミーティングの際の通訳をお引き受けくださった訳です。ちなみに平さんはミーティングの逐語録の日本語訳もしてくださり、多大なるご支援を頂きました。そして平さんの紹介で、研究生として滞在しておられた筑波大学大学院生の田中みわ子さんとも知り合うことになります。リーズに滞在の際はこのお二人に本当に助けて頂きました。

 コミュニケーションの心配は解決しましたが、もう一つ、どのような内容のミーティングをするかというさらに重大な問題を考える必要がありました。私一人では考えつかず、立岩真也先生はじめ、天田城介先生、松原洋子先生に助け舟を求め有益なご助言を頂きました。特に松原先生がご教示くださった心得ポイントは、大舞台に臨むにあたり大きな勇気と支えになりましたのでご紹介します。

○1普通に(できればにこやかに、おちついて)、先生に会えて嬉しいです、というオーラをだしておく。
○2わざわざ時間をとって頂くので面会目的をきちんと説明できるようにしておく。今回の渡英の目的や内容、渡英した資金についての説明、それに関連する質問項目なども英語で用意しておく。
○3日本の物と情報となる「おみやげ」を持っていく。
○4簡単な自己紹介は自分で英語で言う。
○5一つ二つはまともな質問をして自分の専門性を印象づける。
○6「なるほど、今の日本ではそうなのか」と思わせる情報の提供─―自分の得意分野の状況、障害学関連の人が関心を持ちそうな話題、日本では障害学に関する研究や組織の状況はどうなっているか─―など。

 特に○4ですが、英語ができない私にとってまるで拷問のようだ……と内心半泣きでしたが、緊張感みなぎるなか、たどたどしい英語で書いたものを棒読みで行いました。コリン・バーンズ教授にはほとんど言葉の意味としては伝わらなかったようですが、それでも言葉以上の何かが伝わったのではないかと思います。気のせいかも知れませんが、その後、コリン・バーンズ教授は「私」とお話してくださったように感じました。自分の言葉で自己紹介をして本当によかったと思っています。

 さて紙数も尽きましたので報告はこれぐらいにしたいと思いますが、今回の渡英で思いますのは、色々な方との出会いと助けがあったから充実した素晴らしい渡英になったということです。皆様には心から御礼申し上げます。


■註
1 二〇〇八年六月二八日に、野崎泰伸先生の障害学研究のご講義のなかで、COE「生存学創成拠点」企画・「英国の障害学の現在」として、一ノ瀬さんは留学の体験談について、私は今回のコリン・バーンズ教授とのミーティングの様子について報告をした。報告の内容は二〇〇九年度あたりに冊子にまとめられるようですので、もし刊行されましたらご覧頂けたらと思います。

http://www.leeds.jp/がリーズ大学の日本語サイト。

■文献
田島明子 2008 「イギリスでOTをしている日本人女性を訪ねて─イギリスの訪問作業療法」 『地域リハビリテーション』3-5:466-468(三輪書店)

国際研究調査報告写真

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UP:20091110(安部 彰) REV:20091110
全文掲載  ◇田島 明子
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