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「アメリカ合衆国における史料調査について」

森下 直紀 GCOE生存学創成拠点「国際研究調査報告」



昨今では、情報技術の発展によって、かつてなら現地に赴かなくては閲覧あるいは入手できなかった資料がオンライン・データベースなどの普及によって容易に入手できるようになりました。例えば、アメリカ合衆国の公文書は、数十年ほど前のものはオンラインで入手できるようになっています。しかし、それ以前の多くの文献や資料については、現在でも現地において閲覧、入手するしかないのが現状です。書籍として入手できるものの多くが、それら一次資料に類するものの分析からなっている二次資料ですので、専門的にそれらの文献の検証・考察を加える場合には、一次文献を参照する必要があります。
 以上の必要に際して、研究対象地となるアメリカ合衆国に赴き、直接一次文献を入手し、かつ関係する大学や施設を訪問し、研究内容に対して議論を深めることを目的として、生存学若手研究者グローバル活動支援助成金を申請し、受理されました。受理に際しては、一九世紀末に提唱された資源の衡行分配を目指した政治理念としての「コンサベーション」に関する調査研究が、公共政策史上の基礎研究として評価されたものと考えています。
 渡米に際して注意しなければならなかったことは、アメリカ合衆国などの国土面積が大きい国の場合、資料を所蔵している重要な拠点間の位置が遠く離れている場合があることでした。その場合、移動手段をどのように確保するかが、効率的な調査旅行を行う上で重要なポイントとなります。例えば、連邦議会図書館と公文書館において調査をおこなう場合、調査対象となる資料によっては、長距離を移動する必要があります。両館ともワシントンDCに本部があるのですが、公文書館はメリーランド州にも新館(アーカイブス・U)があり、収蔵する資料によってはそちらに赴く必要があります。ワシントンDCに滞在する場合、地下鉄とバスを乗り継いで、或いはDCの本館(アーカイブス・T)から出ているシャトルに乗って移動しなければならず、いずれも片道一時間以上かかります。
 効率的な調査をおこなうためには、必要となる資料がどこに収蔵されているか、詳細に調べておく必要があります。ただし、現地に赴かないと具体的な情報が分からないということもあるので、臨機応変な対応が求められます。お勧めは、当該分野の専門家や、内情に詳しく精通した人物と接見することです。情報の所在を推薦してもらうことによって、効率的に調査を開始することができます。今回の調査では、調査対象となる資料点数が一億点を超えることがわかり、ワシントンDCを中心に文献収集活動に専念することになりました。
 調査場所を特定した場合に、宿泊先をとのように確保するか。これは調査期間を決定する重要なポイントとなります。当然の事ながら、調査費用は限られており、それは調査期間においても同様ですが、たとえ一ヶ月の調査期間を確保できたとしても、その調査期間をまっとうできる予算がなければ、それは不可能になります。
 たいてい日本から予約できるホテルなどの宿泊施設は、高い宿泊費が必要になります。特にワシントンDCなどの宿泊施設が相対的に少ない都市において、それは顕著です。しかし、現地で直接宿泊地を探すと、比較的安価な宿泊施設が見つかることがあります。ただし、宿泊施設は安ければいいというわけではありません、少なくとも個室があって、セキュリティがある程度確保できる宿泊先が必要です。それは、調査した資料を保管しておかなければなりませんし、すべての貴重品を携行するわけにもいかなからです。その意味において、ドミトリーのような複数の旅行者が同じ部屋に宿泊する形態は好ましくありません。
 調査地が決定し、宿泊先も安定的に確保できたら、いよいよ本格的に調査開始となります。今回の調査のように、公的機関において調査をおこなう場合、調査に費やすことができる時間は、開館時間の制約から非常に制限されます。各機関において異なりますが、概ね八時から一七時の間になると思います。また、休憩や昼食の為に閲覧室の外に出たり、屋外に出る場合には、セキュリティ・ゲートを通過する必要があり、少なからず時間を消費されてしまいます。特に、開館直後のセキュリティ・ゲートは渋滞するので、二、三〇分かかることもあります。そのため、より円滑に調査活動をおこなうために、休憩は集中的に取ることが求められます。
 また、公的機関は週末に閉館になることが多く、また平日であっても何らかの記念日で閉館することがあるので、現地に赴いたら休館日を調べておき、休館日には他の場所において調査を、或いは余暇に時間を費やすと良いでしょう。ワシントンDCの場合は、博物館や美術館は開館していたので、機会を見つけて観て周ることができました。
 今回の調査では、日程の都合上、当該研究領域の学会に出席することはできませんでしたが、次回の調査では出席し、最新の研究動向を含め、広く人的交流を深めることを目的としたいと考えています。
 この度は、貴重な調査機会を与えていただき、有意義な調査活動を送ることができました。この場を借りて、御礼申し上げるとともに、必要なアウトプットの為に全力を尽くしたいと考えています。


国際研究調査報告写真

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UP:20091106(篠木 涼) REV:20091106
全文掲載  ◇森下 直紀
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