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卒業論文発表:多層エスニシティ都市京都
――「あわい」の場としての四条河原――
松田 有紀子
20081009
立命館大学文学部専門科目 人文総合科学演習ID I・U ゲストスピーカー(
崎山政毅
先生)
■章立て
*論文の基本は三章構成!
・序
・第一章 京における空間的境界設定と都市空間
第一節 秀吉の都市政策と土居の境界性
第二節 徳川政権の都市政策と、京都の近世社会化
・第二章 京における意識的境界設定と「あわい」の場における沸騰局面
第一節 沸騰局面の舞台装置
第二節 「広場の時代」、「無主の場」とカーニバル
第三節 かぶきの時代、支配イデオロギーとの対決
・第三章 近世的封建社会が恐れたもの、「あわいの場」
・結
■問題設定 「あわい」の場への関心
・時代設定 中世末期(織田・豊臣秀吉による支配体制崩壊期)から近世初期
・地域 京都、特に四条河原をはじめとする「あわい」の場
この時代の京都=中世的な流動的身分社会から、
徳川政権による封建社会化(近世化)への過渡期であり、
様々な共同体がそれぞれのレベルで社会を形成する複合社会(composite societies)である。
報告者は身分制度をエスニシティと読み替えることで、
この時期の京都における異なる階級同士の交渉に注目。
この交渉の場を仮に「あわい」の場と定義し、
空間に関る社会的、主体的意識の境界設定問題として検証した。
盛り場空間であった四条河原町を「あわい」の場として分析し、
そのカウンターカルチャーとしての特性に注目している。
「あわい」の場がその特性ゆえに支配政権から危険視され隔離されていく過程を、
絵画や町触などを手がかりに通史的にまとめた。
■方法論
1. 関連論文の摂取 (御土居、洛中洛外図、四条河原町、非人村、島原etc)
2. 京都町触集成」から関係する条項の検証
3. 「近世初期風俗画」のイメージリーディング
■章ごとの内容
・序 問題設定と方法論の提示
⇒先行研究(守屋毅 1976)のレビュー、その批判
・第一章 豊臣政権/徳川政権による地理的境界設定の分析
⇒豊臣政権:御土居(太閤堤)/徳川政権:賀茂川新堤の対比
・第二章 「あわい」の場の機能論による意識的境界設定の分析
⇒バフチーンのカーニバル論提示、「あわい」の場実例
・第三章 「あわい」の場分析のまとめ、疑問点の提示
⇒第一・二章総括、象徴的な2つの「踊り」と隔離/囲い込み
・結 今後の課題
⇒本論で明らかになったこと/ならなかったことの提示
☆加えて関連する参考資料・図版を掲載し、それぞれに短い分析・紹介をつけている。
■結論 京都の近世都市化
複数形の社会として存在していた中世都市京都は、身分による居住地の分断と
「あわい」の場の囲い込みによって一元的、均一的な〈封建的近世都市〉として変貌していった。
⇒都市における近世社会化を
「エスニシティ同士の境界線を地理的にも意識的にも分断し、その接触を制限すること」と設定すると、
江戸幕府にとって貴族(朝廷)と周縁身分の人々を結びつける四条河原という「あわい」の場が
非常に危険な存在であった事が見えてくる。
■参考文献
・浅井了意、朝倉治彦校注『東海道名所記2』平凡社1979年
・朝尾直弘『都市と近世社会を考える』朝日新聞社1995年
・阿部謹也『自分の中に歴史をよむ 北の町にて』筑摩書房2007年
・網野善彦『中世の非人と遊女』講談社2005年
・網野善彦『異形の王権』平凡社1986年
・網野善彦『日本論の視座 列島の社会と国家』小学館1993年
・網野善彦『日本社会の歴史(中)』岩波新書1997年
・網野善彦『増補 無縁・公界・楽―日本中世の自由と平和―』平凡社1987年
・大林太良『日本民族体系(普及版)第七巻 演者と観客=生活の中の遊び=』小学館1984年
・岡見正雄・佐竹昭広『標柱洛中洛外屏風上杉本』岩波書店1983年
・小川保「京都・天部村の都市的要素に関する若干の検討」、
『京都部落史研究所紀要』No.2、 京都部落史研究所、1985年、17頁―34頁
・角川書店編集部編、田中一松監修『日本絵巻物全集 第13巻』角川書店1961年
・川嶋将生『「洛中洛外」の社会史』思文閣出版1999年
・河田光夫「中世被差別民の装い」、『京都部落史研究所紀要』NO.4、
京都部落史研究所、1984年、2頁―43頁
・京都国立博物館編『洛中洛外図』角川書店1966年
・京都国立博物館編『洛中洛外図都の形象−洛中洛外の世界』淡交社1997年
・京都市編『京都の歴史第四巻「桃山の開花」』學藝書林1969年
・京都市編『京都の歴史第5巻「近世の展開」』學藝書林1972年
・京都府立総合資料館編『開館20周年記念特別展示 洛中洛外図の世界』京都府立総合資料館1983年
・京都部落史研究所『京都の部落史3史料古代中世』阿吽社年1984年
・京都部落史研究所『京都の部落史4史料近世』阿吽社1986年
・京都部落史研究所『中世の民衆と芸能』阿吽社1986年
・京都町触研究会編『京都町触の研究』岩波書店1996年
・京都町触研究会編『京都町触集成 別巻一』岩波書店1983年
・京都町触研究会編『京都町触集成 別巻二』岩波書店1989年
・黒川みどり『つくりかえられる徴(しるし)日本近代・被差別部落・マイノリティ』解放出版社2004年
・黒田日出男『姿としぐさの中世史 絵図と絵巻の風景から』平凡社1983年
・源城政好「洛中洛外図にみえる河原者村について」
『京都部落史研究所紀要』京都部落史研究所、No.2、1982年、1頁―10頁
・藝能史研究會編『日本芸能史 第四巻中世・近世』法政大学出版局1985年
・小松茂美編、神崎光晴『続日本絵巻大成 法然上人絵伝 上』中央公論社1981年
・小松茂美編、神崎光晴『続日本絵巻大成 法然上人絵伝 中』中央公論社1981年
・小松茂美編、神崎光晴『続日本絵巻大成 法然上人絵伝 下』中央公論社1981年
・澁澤敬三編『新版絵巻物による 日本常民生活絵引』平凡社1984年
・杉森哲也「京の城下町化」所掲写真、『図集日本都市史』、東京大学出版会、1993年
・高橋康夫(ほか)編『図集日本都市史』東京大学出版会1993年
・中沢厚『つぶて』法政大学出版局1981年
・中牧弘充編『陶酔する文化 中南米の宗教と社会』平凡社1992年
・守屋毅『季刊論叢日本文化5 かぶきの「時代」』角川書店1976年
・守屋毅『中世芸能の幻像』淡交社1985年
・横井清『中世民衆の生活文化』東京大学出版会 1975年
・川嶋将生・辻惟雄編『近世風俗図譜第四巻 洛中洛外(二)』小学館1983年
・横井清・河野元昭編『近世風俗図譜第五巻 四条河原』小学館1982年
・森谷尅久・佐々木丞平編『近世風俗図譜第九巻 祭礼(二)』小学館1982年
・守屋毅・小林忠編『近世風俗図譜第十巻 歌舞伎』小学館1983年
・ミハイル・バフチーン、川端香男里訳
『フランソワ・ラブレーの作品と中世ルネッサンスの民衆文化』せりか書房1974年
Bakhtin,Mikhail Mikhailovich,
Творчество Франсуа Рабле и народная культура срдневековья и ренессанса
・ハキム・ベイ、箕輪裕訳『T.A.Z一時的自律ゾーン』インパクト出版会1997年
Bay,Hakim,T.A.Z. The Temporary Autonomous Zone,Ontological Anarchy,
Poetic Terrorism
・ウンベルト・エーコ他、池上嘉彦、唐須教光訳『カーニバル!』岩波書店1987年
Eco, Umberto,Carnival!
・トーマス・ハイランド・エリクセン、鈴木清史訳
『明石ライブラリー 94エスニシティとナショナリズム 人類学的視点から』明石書店2006年
Eriksen, Thomas Hylland, Ethnicity and nationalism
・デヴィッド・グレーバー、高祖岩三郎訳『アナーキスト人類学のための断章』以文社2006年
・カルロ・ギンズブルグ、竹山博英訳『神話・寓意・徴候』せりか書房1988年
Ginzburg ,Carlo,MITI EMBLEMI SPITE
・カルロ・ギンズブルグ、上村忠男訳『歴史・レトリック・立証』みすず書房2001年
・Ginzburg, Carlo, Rapporti di forza : storia, retorica, pro
UP:20081116 REV:
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