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ドナーからみた生体肝移植(第4報)
──生さぬ仲のドナーの苦悩(抄録)

一宮 茂子 20080921 『日本移植学会 第44回総会』大阪国際会議場

last update: 20151225

 本研究は生さぬ仲で行われた移植でレシピエントが死亡した事例報告である。術後6年以上経てドナーにインタビューした内容を分析した。

【目的】生さぬ仲で余儀なく〈自己決定〉せざるをえなかったドナーの苦悩を考察する。
【方法】半構造化面接によるインタビュー調査である。本研究は倫理委員会の承認と研究参加者の同意をえている。
【結果】ICの席上でドナーの話になったとき家族全員が妻であるA氏の方をみた。レシピエントは先妻の長男である。長男は先妻のドナーを望まず、夫は拒否の意志表示後に肝疾患が判明、長男の妻は妊娠中、A氏が断るとドナーは実子の次男になる。実家の家族には心配するので相談できず、さらに移植まで1週間という時間的制約があった。A氏は「血液型が違う」し、「先妻を捜そうと思えばできたと思う」が、「生さぬ仲だから私が切らなきゃいけないのでは?」と余儀なく決断せざるをえなかった。ICの内容は記憶になく死の不安を抱えながら再度の意志確認にも「全て大丈夫です」と明言した。長男は死亡した。A氏は「傷をみるたび泣けてくる」苦悩を誰にも語らず、その後2年間、鬱状態となった。
【考察】複雑な家族構成で誰がドナーになるのか、家族の視線が暗にドナー候補を強要し決定的な印象を与えた。ICのその場で第三者が調整役となり家族間で本音の話合が必要であった。長男は死亡したがドナーの命がけの選択肢に意味づけをなすには、家族間・親族間での取成や感謝や労いの言葉かけがあれば結果は違っていたと考える。通院していないドナーに対してフォローする仕組みが必要である。


*作成:一宮 茂子
UP: 20080926 REV:
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