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「ALSと暮らす―在宅移行への困難―」

仲口 路子 難病看護学会抄録
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last update: 20151225


ALSと暮らす―在宅移行への困難―

所属:立命館大学先端総合学術研究科先端総合学術専攻一貫性博士課程4回生
藍野大学医療保健学部看護学科基礎看護学
○仲口(なかぐち) 路子(みちこ)

 研究目的:現代の日本では「施設から在宅へ」といったスローガンは、さまざまな制度/施策のなかで登場する。そしてひとびとの中でもそういった思想は定着してきているようにも見える。今回の報告は、ALS(筋委縮性側策硬化症、以下ALSと略す)の療養者「A氏」が長い病院での入院生活に終わりを告げ、すなわち施設を出て在宅へと、しかも日本の福祉施策では「含み資産」とされている意味での「家族」を持たない状況下において、「A氏が自分の生活を取り戻す」過程にかかわることができた。想像に難くないように、ここにはさまざまな困難や障壁があった。それらの多くは今後ぜひとも積極的に検討・討議していくべき課題があり、本報告では、おもに専門職のかかわりの問題について照準しつつ、そこにどのような困難があったのかについて報告する。
 研究対象と方法:対象は、家族と同居せずに独居在宅療養生活を送ろうとし、現在も生活されているALS療養者である。本報告ではその経過をまとめたレポートを中心に、在宅移行に際してどのような時期に、おもに専門家らが、どのような対応をし、そこにどのような混乱や困難が見られたのかについて整理しなおすことを試みるものである。主たる調査期間は2007年1月から9月にかけてである。なお、本報告を行うにあたり、A氏の同意は得られている。
 結果:この「経過の詳細」については2008年度「地域福祉学会」において報告しており、そちらを参照いただきたい。ここに関わった「専門職」らはおもに「(介護保険)ケアマネージャー」や「医師」「看護師」「障害者地域生活支援センター相談員」などであった。本事例は「典型例」とはいえないのではあるが、それぞれの専門職の「連携」がうまくはいかなかった例として位置づけられる。
 考察:コミュニケーション困難があり、呼吸障害などによって医療的処置が必要でもあり、さらに四肢運動麻痺等によりADLに関してさまざまな援助を必要とするALS療養者が、独居在宅療養生活を送ろうとする場合、現状ではさまざまな制度・施策を輻湊的に援用・運用することが必至となる。それらはおもに、医療保険法、介護保険法、障害者自立支援法、生活保護法などであるが、それぞれの制度・施策ごとに決められている内容や適応の範囲、あるいは他法との関係、優先順序や、解釈の問題、さらにはおりにつけ出される「通知/通達」による細かな変更などがあることにより、ここにかかわる「専門家」らはその業務の範囲内でも困難をかかえつつ、さらにそれらの「限界」を超え出ての対応を余儀なくされる場面がある。本報告では、これら制度・施策の援用・運用の過程をその中軸としつつ、この間に行われたさまざまな「専門家」のかかわりに照準してそれらの問題の所在と原因について考察する。


*作成:近藤 宏
UP:0800901 
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