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「在宅療養中のALS療養者と支援者のための重度障害者等包括支援サービスを利用した療養支援プログラムの開発」事業完了報告書 第六章U

特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンターさくら会 2008/03/31
平成19年度障害者保健福祉推進事業 障害者自立支援調査研究プロジェクト

last update: 20151225

平成19年度障害者保健福祉推進事業 障害者自立支援調査研究プロジェクト

「在宅療養中のALS療養者と支援者のための重度障害者等包括支援サービスを利用した療養支援プログラムの開発」事業完了報告書 第六章

平成20年3月31日
特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンターさくら会

第六章 U.呼吸器装着障害者の外出支援講座 DVDガイドブック

1、車椅子を利用した人と出かけるということ
車椅子を利用した人と出かける際、特に次に挙げる3点に気をつけてみてください。

・視点の高さの違い
・視界の制限
・動作の制限
 
日本の成人の平均身長は男性で約172センチ、女性で約158センチです。
これに対して車椅子に乗車している人の目線は50センチ以上低いことが多く、また車椅子のタイプや乗車時の背もたれの角度などから、利用者の目線の高さ、視界の広がり方は健常者のこれらと大きく異なると言う点に十分留意して操作にあたる必要があります。
 同様に、利用者と介助者の視界の違いをよく認識し、利用者に不安感を与えない操作が出来るとよいでしょう。
 また、ALS等の重度障害者の使用する車椅子には、車椅子本体に重量があり携行品を積んでいるものが多いので、自分が操作するタイプの車椅子の特性や重量をよく理解して支援に当たる必要があります。

2、車椅子を操作するときの留意点

〔本来なら写真あり、都合により未掲載、原本参照(ファイル作成者)〕

ALS患者は、疾患の特性から首の筋力が衰え自力での姿勢の保持が困難になります。
車椅子を利用している時も特に路面の状態の影響を受けやすいので、走行する路面の状態は常に確認しましょう。
また、発声が困難な人が多く、危険を感じても介助者に伝えることが出来ませんので、常に障害物の有無と、前方や横からの他人の行動を予測し、対応できる速度での走行を心がけましょう。
介助者が複数いる場合は頚椎への影響を最小限に抑えるよう、場合によっては頭部を保持しながらの走行も必要になります。

3、交通機関を利用しての外出
■電車を利用する時の留意点
@乗車券の割引制度
乗車券は利用する交通機関ごとに割引制度が設けられています。
概ね「障害者1人+介助者1人まで半額」というものですが、稀に「障害者1人+介助者2人まで半額」というケースもあるので、初めて利用する交通機関の場合は駅係員などに問い合わせてください。

Aバリアフリー対応
バリアフリー法によって駅構内でのバリアフリーが進んでいますが、その対応には各社で差があります。
バリアが大きい場合は、無理しないで駅係員に対応してもらいましょう。
また、遠方へ出かける場合はインターネット等を利用して事前に対応の程度を調べておくとよいでしょう。
バリアフリー対応については、大きく分けて以下の4つが挙げられます。
・エレベーター  → 介助者で対応可能
・エスカレーター → 駅係員が操作
・階段昇降機   → 駅係員が操作
・自走式昇降機  → 駅係員が操作

人力で移動せざるを得ない場合は、利用者に細心の注意を払いましょう。
特に発語の出来ない利用者に対しては、表情の変化に注意してください。

B駅構内での移動
乗車駅への事前通知はそれほど必要ではありません。
しかしながら、乗換え等で大きなターミナル駅を利用する場合は、駅員に誘導をしてもらう方が安全です。
C乗車・降車
車内への移動は、乗車板(スロープ)を利用する場合がほとんどです。
車内に接している側の板の端に段差が出来やすいので注意して乗り込みます。
乗車板を使わない場合は、ホームと車体の間に出来る溝に前輪がはまらないように、車椅子の先端をよく見ながら乗車します。

D指定席券特急券などの購入
特急券には身体障害者割引制度はありません。
新幹線や在来線特急で指定席・多目的室を利用する場合、発券に時間がかかるので事前に電話予約するとよいでしょう。

多目的室の位置は、東海道新幹線は11号車、その他の新幹線は車体編成によって位置が異なります。
また、多目的室の広さも車体によってまちまちなので、大型の車椅子の場合は予約時に利用できそうなサイズか問い合わせてください。


■飛行機を利用する際の留意点
予約の前に…
●RTCA規格
電磁波干渉規格と呼ばれるもので、電磁波を発する製品の飛行機内への持込を制限する規格です。
搭乗予定の航空会社で、利用者の使っている人工呼吸器がこの規格を通っているかを必ず確認してください。
持ち込み可能な人工呼吸器にも、機内での使用制限がある場合が多いのであわせて確認してください。

?予約
必ず人工呼吸器を利用すること、機内に医療機器を持ち込むことを伝えてください。
また、座席位置の希望(移乗の都合上、右側に通路がないとダメ。介助者と連番 等)
パック旅行等で代理店を通す場合は、まず担当者に伝え、必要ならば各航空会社の当該部署と直接やり取りすることもあります。
★機内持ち込み品の品名・型番などが分かっていると、交渉がスムーズになります。
航空券にも割引制度がありますが、各航空会社独自の格安航空券やパック旅行の方が割安になります。

A搭乗手続き
★チェックインカウンター〜手荷物検査場〜出発ロビー〜機内までは、混雑を避けるためにも可能な限り空港係員に誘導してもらいましょう。
また、空港では各種手続きに時間がかかるので、遅くても離陸1時間前には到着するようにしましょう。
●チェックインカウンターでの注意点
搭乗の際に必要なもの
・主治医の診断書(往復使用するので、往路はコピーをとって原本を返却してもらうこと)
・各航空会社指定の同意書(当日空港で記入する場合が多い)

搭乗手続きの際に、座席位置の最終確認(予約時の希望通りか)をし、不都合があれば最終交渉をします。

●手荷物検査場での注意点
車椅子に載せている荷物は可能な限りすべて取り外し、検査機を通します。
液体物などで、倒すとこぼれるものなどは渡す時に申告してください。
車椅子背もたれ部分のポケット内のもの全て出すことになります。
吸引機・バッテリーは積んだままでも大丈夫です。
利用者自身にも簡単なボディーチェックがあります。
触れられて痛むところがある場合は、申告してください。
特に気管カニューレ部分は注意してください。
介助者自身も検査を受けるので、コミュニケーションをとるのが困難な利用者の場合は、交代で検査を受け利用者を一人にしないようにしてください。
車椅子等優先ゲートが設置してある空港もありますので、それらも利用してください。

?搭乗
手順は次のとおりです。
@ボーディングブリッジ入場→A機体入り口まで移動→B機内
優先搭乗を実施している航空会社がほとんどなので、全ての乗客より先に機内に入ります。
歩行が可能な利用者は、機内の座席まで航空会社オリジナルの車椅子に乗り換えて移動することが出来ますが、人工呼吸器利用の場合は難しいので自身の車椅子で機体入り口まで移動します。




機体入り口から座席までの移乗手順は次のとおりです。
★機体入り口と機内座席の動作は、ほぼ同時進行で行われます。
 
機体入り口 機内座席
@機体入り口に車椅子停車 @移乗時に不要な手荷物を機内座席へ異動
A車椅子を移乗の体勢に整える A機内の座席の準備
B吸引機・呼吸器を座席に配置
B利用者を機内座席へ移乗させる
C車椅子を係員に預けるためのチェック C座席での体勢を整える
 
C離陸
離陸時は座席のリクライニングを使用することが出来ません。
このため座位を保持できない状態の利用者は、ヘットベルトでの固定や介助者による頭部の補てい、ベルトによる体の固定が必要になります。
ベルト着用サインが消灯したら、リクライニングを調整して楽な体勢をとりましょう。
D着陸
着陸時も座席のリクライニングを使用することが出来ません。
離陸時と同様に、座位を保持できない状態の利用者は介助者や器具による頭部・体の固定が必要になります。
また、着陸時相当のG(重力)が前方に向かってかかります。
座面をすべるように前にずれることも予想されるので注意しましょう。
ベルト着用サインが点灯したら、リクライニングを元の位置に戻しましょう。
★ヘットベルト・体の補ていベルトなどは航空会社によって貸し出しもありますが、数が少ないので、利用者側で使い勝手のいいものを自作するほうがよいと思います。
貸し出し分を利用する場合が必ず事前に(予約時など)申請してください。


E降機
全ての乗客が降機した後になります。
また、貨物室から車椅子が運ばれてくるまで時間がかかるので、座席のリクライニングを倒し、楽な姿勢をとりましょう。
時間もかかるので、空港から車で移動する場合のタクシーの予約時間などをあらかじめ遅めに設定するなどしておくと、焦らずに体勢を整えることが出来ます。



座席から機体入り口までの移乗手順は次のとおりです。

 
機内座席 機体入り口
@移乗時に不要な手荷物を機内座席へ異動 @貨物室から戻ってきた車椅子のチェック
A座席を移乗の体勢に整える A車椅子の座席の準備
B吸引機・呼吸器を車椅子に配置
B利用者を車椅子へ移乗させる
C忘れ物などのチェック C車椅子での体勢を整える
 

4、おわりに〜介助者としての心得
利用者と外出する場合は、介助にふさわしい服装・私物でのぞみましょう。
特に宿泊を伴う場合は、不必要に大きな手荷物だと、必要な介助が出来ない場合が出てきます。利用者と相談して本当に必要なもののみ持ち歩き、残りは現地に送ってしまうなどの工夫が大切です。
また、複数の介助者と共に介助に当たる場合は、それぞれの担当わけなどを明確にし、休む時はしっかり休み、働く時は働く、を心がけてください。
乗り物酔いなどをしやすい人は、酔い止め薬などで自己予防をしましょう。

<付録>
持ち物リスト
@宿泊を伴わない外出時
・使い慣れた人工呼吸器
・人口鼻(外出中は加温加湿器は使用できないので)
・携帯吸引器
・吸引道具(注射用水、蒸留水、カテーテル、アルコール綿など、外出時必要なもの)
・人工呼吸器用外部電源(バッテリー)
・身体障害者手帳
・健康保険証
・各種証明書
・飲みなれた薬
・予備品
(経管栄養に使用するチューブ類、ガーゼ、カニューレ、人口鼻、シリンジ、消毒薬など)
・食料品(経管栄養用、水分補給も忘れずに)
・ティッシュペーパー(唾液ふき取り用)

A宿泊を伴う外出時
★先に宿泊施設へ送ると便利なもの
・エアマット(マット本体、ポンプ、使用するシーツなど)
・バッテリーチャージャー(呼吸器・吸引器それぞれ)
・延長コード 適量
・ナースコール(複数持っているならば先に送っておくよい)
・着替え
・食料品
・ティッシュペーパー予備(唾液ふき取り用)
・尿器・オムツなど
★出発当日忘れずに持っていってほしいもの
・ナースコール

忘れ物のチェックは、利用者とともに必ず行いましょう。
外出に慣れてくると手を抜きがちですが、手帳類・保険証だけは必ず持ち歩いてください。

*作成:
UP: 200900915
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