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「在宅療養中のALS療養者と支援者のための重度障害者等包括支援サービスを利用した療養支援プログラムの開発」事業完了報告書 第六章T

特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンターさくら会 2008/03/31
平成19年度障害者保健福祉推進事業 障害者自立支援調査研究プロジェクト

last update: 20151225

平成19年度障害者保健福祉推進事業 障害者自立支援調査研究プロジェクト

「在宅療養中のALS療養者と支援者のための重度障害者等包括支援サービスを利用した療養支援プログラムの開発」事業完了報告書 第六章

平成20年3月31日
特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンターさくら会

第六章 T.在宅人工呼吸療養者の社会参加支援プログラムの作成

 橋本誠(特定非営利活動法人 ALS/MNDサポートセンターさくら会)1、橋本佳代子1、海野幸太郎1

【要旨】
筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)等、在宅人工呼吸療養者及びその支援者が人工呼吸器を使用しながら社会参加が可能であること、また、その具体的方法を認識・修得する機会がないため、結果的に社会参加が制約されている。
今回、在宅人工呼吸療養者のための標準的な重度障害者等包括支援プログラムの開発にあたり、在宅人工呼吸器装着者及びその支援者が社会参加可能なプラグラムを作成する。

【方法】
在宅人工呼吸療養者が自宅外への社会参加(移動介護時)の状況を映像記録すると共にタイムスタディを行った。

【結果】
  在宅人工呼吸療養者が自宅外への社会参加にあたっては、事前準備から後片付けまでの一連の作業が求められる。外出目的地の遠近、また、外出時間の長短等により事前準備が違うため、それらを区分して、当該作業に必要な「人(介護者)、所要時間、財源、物」の視点でとりまとめた。
(1)宿泊を要しない場合
所要時間内容介護者財源
数日〜数時間前外出先場所への交通手段確認及び手配1名(通常のケア中確認)
数時間以上前人工呼吸器用外部バッテリー・吸引器の内部バッテリー残量確認と充電(機種によっては充電所要時間に違いあり)1名(通常のケア中確認)
2時間前@ 栄養摂取
・目的地や時間を考慮して事前に栄養摂取。
A 物品準備
・物品:車椅子、人工呼吸器、蘇生バッグ、吸引器(電気駆動の場合、手動式もあると安全)、外部バッテリー、衛生材料(カテーテル、吸引用精製水、酒精綿、カニューレ等)、経管栄養
・証明書:保険証、身体障害者手帳(身障割引制度利用用)
B 車椅子移動前準備
・着替え:外出前に必要に応じて着替え。
・吸引等、必要な事前ケア。
・車椅子への物品掲載及び車椅子への本人移乗。
2名(準備から移動中及び後片付けまで介護者は最低2名必要)財源計算にあたっては、現行の重度訪問介護報酬を適用し、所要時間を掛けた。例、日中8時間外出時は、重度訪問介護報酬×2人+移動介護加算=   31,060円
外出・外出時は、必要に応じて、体位交換、吸引、排泄等、本人と意思疎通を図りながら介助を行う。
・また、移動先によっては、バリアやトイレの有無等を事前に確認しておく必要がある。
2名(準備から移動中及び後片付けまで介護者は最低2名必要)財源計算にあたっては、現行の重度訪問介護報酬を適用し、所要時間を掛けた。例、日中8時間外出時は、重度訪問介護報酬×2人+移動介護加算=   31,060円
帰宅後の後片付け@ ベッドへの移乗
・帰宅後、ベッドへの移乗準備。移乗準備後、移乗。
A 物品整理
・持ち出した物品等の後片付け及び整理整頓。外出が頻繁な場合は、外出用の持ち出し物品を纏めておくと便利。
B バッテリー充電
・急な外出及び緊急時対応のために帰宅後充電。
2名(準備から移動中及び後片付けまで介護者は最低2名必要)財源計算にあたっては、現行の重度訪問介護報酬を適用し、所要時間を掛けた。例、日中8時間外出時は、重度訪問介護報酬×2人+移動介護加算=   31,060円

(2) 宿泊を要する場合
準備時間内容介護者財源
数ヶ月〜数日前・宿泊先のバリアフリー状況、交通手段の確認及び手配
数日前・当日の手荷物以外の物品を事前発送(宿泊先によっては、介護用ベッドはないため、エアマット等の日常使用している物品等を発送しておく)。
数時間前から後片付けまでは、前述の宿泊を要しない場合と同様の作業。2名前述(1)同様、所要時間×重度訪問介護報酬

【考察】
・支援費制度、障害者自立支援法、バリアフリー法施行以前、在宅人工呼吸療養者の社会参加は制約されていた。その背景には、法未整備だけでなく、在宅人工呼吸療養者及び関わる医療・保健・福祉関係者が在宅人工呼吸療養者の社会参加可能が困難であると潜在的な認識をもっていたこともある。
・法整備も進み、当事者の自立意識により、在宅人工呼吸療養者が社会参加可能であることの実践が重ねられてきた。今回、自立した在宅人工呼吸療養者の社会参加状況から、特に外出時に必要な「人(介護者)、所要時間、財源、物」の視点で前述結果を纏めた。
・在宅人工呼吸療養者においても、社会参加に必要な「人、物、財源」が確保できれば、十分社会参加可能なのである。そのために、特に「財源」の確保が必須。「財源」が確保できないと、「人材」も確保できないからである。行財政の逼迫による給付抑制により、在宅人工呼吸療養者が社会参加に可能な財源が削減されてはならない。
・なお、これまで社会参加の機会が奪われていた在宅人工呼吸療養者の場合は、突然の長時間・長距離移動には、様々なリスクを伴う。在宅人工呼吸療養者及びその支援者双方にとって、安心・安全な社会参加を可能とするためには、外出移動距離、時間等を段階的に距離と時間を伸ばしていくこと求められる。

【結論】
・今回、在宅人工呼吸療養者の社会参加にあたり、社会参加上、必要な外出支援プログラムを纏めたが、詳細なプログラムを更に進める必要性もある。
・在宅人工呼吸療養者及びその支援者が、社会参加可能なことを認識する機会を、関係機関を通じて増やしていくことが必要である。
・社会参加が可能なことを認識する手段の一つとして、当該支援プログラムの活用を期待する。


*作成:
UP: 200900915
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