@ 障害福祉制度の利用により達成された患者家族の生活様式と、医療・福祉専門職の連携による療養支援の知見を全国に広める。
A 特に各サービスの提供者が不足している地域の関係者のエンパワメントをはかり、在宅療養環境の基盤整備を推進する。
B 重度包括支援サービスの活性化につながる人的資源の掘り起こしと、商業施設も含む既存の社会資源の有効活用を提案する。
地域性や人々の多様なニーズに配慮できる柔軟な支援プログラムの開発により、地域間格差および利用者間格差を解消する。
3、事業期間
平成19年7月1日 から 平成20年3月31日 まで
4、事業実施予定地
東京、名古屋、仙台、京都、その他各関係機関の所在地
5、事業の具体的内容
@ 重度障害者等包括支援サービスの枠組みにおいて、重度訪問介護とデイケアの併用、訪問看護ステーションによる通所介護、地域の施設を利用した短期レスパイトケアなど、既存の社会資源を有効活用する支援プログラムの可能性を各地の支援者を対象に構造的かつ質的に調査する。(アンケート調査と聞き取り調査)
A その調査研究の過程でモデル事業実施の可能性について検討し、その地域に既存の社会資源の組み合わせによる包括支援モデル事業を提案する。(アクションリサーチに向けての第一次調査)
B 研究成果として、地域性や利用者のニーズに配慮した複数の包括支援モデルを提示し、全国各地で普遍的に実施できるように広報する。そのために、地域療養支援モデルや社会資源利用アイデア集(仮称)や、先進的な療養生活や支援の様子を紹介したDVDも作成し、関係各所に配布する。(冊子とDVD作成)
C 重度包括支援サービスの評価に関する研究を行う。
6、事業の効果及び活用方法
@ ALS等人工呼吸器利用者に対応した重度訪問介護従業者を定期的に養成し、重度包括支援対象者に配置するALS療養支援システムを各地に構築できる。
A アクションリサーチに参加した各地の当事者の切実な訴えにより、地域の医療・福祉職のエンパワメントや支援ネットワークの拡大が行われるので、在宅人工呼吸療法に対する理解が進む。
B 地域の人的・社会的資源を組み合わせた重度包括支援サービスモデルの提案と評価ができる。
@ 市区町村が長時間サービスの必要性をよく理解していないため推進力がない。
A 患者家族も支援者も長時間滞在型サービスを知らないし、利用方法もわからない。
B 重度障害者等包括支援は重度訪問介護より単価(単位)が低くなるので、実施するメリットがない。
C 重度包括支援サービスを利用するメリットもない。
D 重度包括支援事業者が少ない。(登録事業所は少ないが、なくはない。)
E 選択可能な福祉サービスがないか、ALS療養者のニーズにあわない。
F 多くの福祉施設でヘルパーは医療的行為(経管栄養や吸引など)を実施していない。したがって、ALS療養者には在宅と施設の併用は難しい状況にある。
(2) 地域間格差の現状
ALS療養者による重度訪問介護の利用は、2006年度日本ALS協会の独自調査と比較しても少しずつ増えてきている。(表参照) また、各地の支給量も全体として少しずつ伸びている。しかし、自治体の裁量による運営上の規定や給付状況は大きく異なったままで、現在は以下のような状況にある。
@ 重度訪問介護においても、居宅介護の報酬算定「2時間ルール」を適用している自治体がある(サービス間隔が2時間以上開いていない場合は前後のサービスを合算する)。
A 重度訪問介護の介助者は常に何らかの作業をする必要があり、見守り時間は算定できないとして、深夜帯の利用を認めていない市区町村がある。
B 週間介護計画について、トイレ何分、風呂何分などサービス内容を細かく積み上げて計算し、計画を立てねばならないとする市区町村がある(見守りやパソコン作業等の時間は算定できない)。
C 移動加算時間以外の外出は認められていないとする市区町村がある。
D 同じ都道府県の市町村間でも支給量格差がある。たとえば東京都内23区の西北部や多摩市では、家族同居の人にも500時間以上の給付が行われているケースも見られるが、23区南東部では多くても300時間未満である。区の障害福祉給付担当の話によれば、「必要とする者がいない」とのことであった。
E 重度障害者等包括支援サービスに該当する者に正当な支給決定が行われず、15%加算も実施されていない自治体もある。担当者の話では「加算をしなければ対応できないような者がいない。従来のサービスの継続でできているから」であった。
F ヘルパーが医療的ケアを担うとして、その規制の強い地域では、制度が利用できないという訴えが多い。これは介護保険制度のケアマネジメント機能や、県の介護保険課の管理規制が厳しいためである。ヘルパーによる医療的ケアは、障害福祉サービスでは以前からグレーゾーンとして、取り扱われてきた経緯があるが、介護保険制度では、ケアサービスの均質化に配慮することから、個々の障害ニーズに応じたサービスが認められておらず、個別性を要求するALS療養者にとって厳しい状況にある。したがって、介護保険で医療的ケアを一切容認しないという指導が行われた場合、サービスの供給側と受容側の双方に抑制がかかり、介護保険サービスを使い切れず、自立支援法も利用できなくなっている。
G 利用者の声としては、介護保険サービスは使いにくいので、自立支援法を先に利用したいという希望が多く聞かれた。
H 重度訪問介護派遣事業所不足は深刻で、給付量が増えても事業者やヘルパーが足りず、サービスが利用できないという訴えが目立った。また経営上の理由から重度訪問介護サービスを実施しない事業所も少なくない。ヘルパーの医療行為に対して独自に加算請求をする事業所もあり、トラブルのもとになっている。
(3) 家族介護者の現状
中高年に多く発症するALS療養者では、若い障害者の自立と異なるニーズがあることがわかった。特に以下の状況から、同居して介護を行う家族介護者のための自立支援やレスパイト支援を含むサービスのあり方が望まれている。
@ 在宅療養中のALS患者は他人介護に対する不安から家族介護を望む傾向がある。
A 長期にわたる在宅介護期間中には、家族構成も変化するため、ALSの在宅療養は、家族の都合によって左右されやすく、流動的で落ち着かない。
B 家族介護者の高齢化が進行している。
C 深夜帯や休日の長時間滞在介護サービスを望む患者家族が多い。
D 多くの家族介護者は外出も睡眠もままならない不自由な生活を長期にわたって送っている。
E 公的介護給付量と患者や家族のQOLに相関関係は見出せなかった。患者の訴えが頻繁であり、患者か家族あるいは双方にケアに対する強いこだわりがあるケースでは、ヘルパーでは対処できず、常時家族が対応せざるを得ない状況にある。ヘルパーがいてもほとんど役に立たないという状況は、ALSの在宅療養では決して珍しくはない。
F 介護のために就労や進学、結婚を断念した若い家族も少なくない(喫緊に実態調査が必要である)
G 加療後の退院で在宅移行時のサポート体制が制度的に保障されていないため、医療的ケアに不慣れな家族の多大な負担になっている。病診連携にも多くの課題がある。
(6) 施設での包括支援サービスの実施可能性
@ 既存の身体障害者施設でのデイケアや一泊レスパイト等の受け入れには、施設側もALS療養者側も難色を示す傾向にある。施設側の理由は、療養者のニーズが不明である点、人手不足である点、経営面で困難がある点、利用者側はヘルパーが患者に対して一対一対応でない点などで、介護の質の低下に不安を覚えている。
A 訪問看護ステーションが療養通所介護を併設し、ALS療養者にデイケアを実施しているところが全国に散見される。ただし、往復の移動介護には労力・費用・技術を要するなど、労が多いわりに収益性が乏しく、発展性は現時点ではあまり期待できない。
B ALS療養者は、日常生活のケアの中に吸引や排痰など医療的ケアと、体位変換やマッサージなどの身体的な世話が混在しており、24時間絶え間ないケアを必要とする。従ってケアの内容の量と複雑さから、入院や入所は敬遠される傾向にある。現在都内の介護保険施設の9割が呼吸器を利用していないALS療養者でも、受け入れをしておらず、虐待など緊急やむを得ない状況でも6割が受け入れは困難としている。
C 家族介護者の地域の福祉施設利用の期待は大きい。しかし、患者は望んでいない。(後述する)
D 施設利用は都市部より地方のほうが進んでいる。
E 慣れ親しんだヘルパーが同行するのなら、短期レスパイトや通所介護を利用してもよいと考えるALS療養者も少なくない。ヘルパーが同行するのなら、家族の休養のために短期間の入所も覚悟できると考える者が、アンケート調査の結果、半数を占めている。
F ALS療養者では二人体制の外出が認められないなどの利用制限があると、滅多に外出ができなくなる。家族介護者もヘルパーが一人では、安心して外出もできない。また、ヘルパー二人体制の給付が認められたとしても、家族が外出支援に付き添っているのは、患者が家族の同行を強く望み、また家族も同行しなければ安堵できないためである。
G 多くの家族介護者は看護師やヘルパーのケアを手伝っているため、サービス利用中も休むことができないでいる。また多くの病棟施設で、家族の付き添いが求められるため、入院も家族のレスパイトにはならない。
(7) 支援者の現状
以下の状況と考えられるが、詳細は調査報告書を参照のこと。
@ 日本ALS協会でも、重度障害者等包括支援サービスを利用している者を確認できなかった。
A ALS療養者に重度訪問介護サービスを実施していない地域では、支援者もサービス効果を認知していない。支部会員のニーズがなく介護サービスの必要性を感じられないからである。
B 自立支援法の情報は主に障害者団体が運営するNPOを通して与えられている。支給量が増えている地域は、療養者個人と障害者団体との連携があるところである。
C 医療職は医療、福祉職は福祉の制度に関する知識に偏向するため、領域をまたいで相談支援ができる者は今はまだ非常に少ない。在宅で医療的ニーズを抱えた療養者のケアマネジメントやソーシャルワークでは、複数の職種の連携が必要とされるが、連絡の順序や職業倫理の違いなどからもトラブルが多発する。そのためALSを引き受けてくれるケアマネージャーはそう多くはいない。その上、疾患の進行速度は速く、日々新たな障害に対応する必要があり、利用する制度も刻々と変化するが、複数の制度の併用併給が制限されるため、ALSのケアマネジメントは大変に難しいとされる。京都班の独居療養者の参与観察では、入院治療を受けながら在宅移行を進める上で必要な生活保護受給の困難さが報告されている。
独居開始の現状と課題
@ 在宅独居希望者がいても、病院では地域の療養体勢を整える等では対応できない状況にある。病院と地域の医療専門職との連携も十分取れているとは言いがたい。
A 入院中に生活保護の申請が受理されないため退院できない。
B 家族が入院中の療養者の退院独居を望まない。独居は危険であるし、自分たち家族に迷惑がかかると考えるためである。
C しかし、病棟の看護からは倦厭されて転院や退院を迫られてしまう。
D 従って、療養者の24時間在宅介護を引き受けてくれる家族以外の人がいなければ、退院したくても退院の目処がつかないため片身の狭い思いをしている。
E その結果、療養者は病院を転々とすることになり、多くは神経内科医もいない病院の病棟に流れ着き、最期を迎えることになる。
F 特に呼吸器装着前の独居者は障害程度区分も低いため、十分な見守り介護が確保されない。そのため在宅独居で孤独のうちに転倒死や餓死する者もいる。
G いったん退院したら、ベッドはふさがってしまうので、再び入院できる目処がたたない。地域資源を活用するためには一度退院しなければならないが、再び病棟に戻ることができないため試験的に外泊ができない。
独居継続の現状と課題
H 長期独居の条件として、もっとも重要なのは、24時間365日介護する家族以外の支援者を複数確保し、24時間をカバーする重度訪問介護の給付量を自治体に交渉し、確保することである。
I 生活保護の必要があれば支給決定を受ける。
J 他人による医療的ケアの問題をクリアする。
K 独居を支援してくれる24時間体制の診療所、訪問看護ステーション、介護派遣事業所が近くにあること。また、ALS当事者の病状や資質も関係する。これらの課題が次々押し寄せるため、協力者間の関係調整は面倒で、支援チームが挫折して解散することもある。それゆえ幾重もの障壁を乗り越えて、長期人工呼吸療法中のALSの独居を成功させるのは大変に難しい。
L 現在24時間他人介護で吸引や経管栄養を必要とするALS療養者の独居は全国でも現在2事例にすぎない。たいていの人は途中で挫折し、国立病院等の病棟での長期療養に切り替えているが、今後長期入院先の確保はますます難しくなる傾向にあるため、療養場所が確保できなければ、単身者は呼吸器をつけられない状況にある。
M 重度訪問介護でも「見守り」は請求できないとされたケースが各地で報告されている。これはおかしなことで、「見守り」が制度でできなければ、人工呼吸治療の開始は当然のことながら不可能である。そのような地域では、重度障害者の治療を受ける権利と生存する権利が剥奪されている状況にある。
(7) 地域の連携の現状
@ 病院のソーシャルワーカーや難病医療相談員が、障害ホームヘルプに関する人的ネットワークがなかったり、障害福祉に関心度が低かったりすると、障害者団体や患者会が発信する情報が届きにくくなる。また、病診連携が困難な場合も多々あるが、他地域の実践から学び現状を反省し改善しようという動きにつながらないようである。地域の医療ネットワークが閉鎖的では、当事者に届く情報も選別され限定されてしまうので、在宅での自立支援が進んでいない。
A 介護保険のケアマネージャーに、障害者自立支援法における訪問系サービスの実務経験が乏しいと、多職種連携の調整が難しく、信頼関係が築きにくいことがある。
B 先に述べたように、地域独自の制約が、国の制度上の制約のように伝達されている傾向がある。
C 地方分権の余波として都道府県や市区町村で決定したことには国が指導することができないといわれるため、自立支援法と異なる理念で自立支援法を運用している自治体に対しても指導できる機関がないことは非常に問題である。
D 異なる二つ以上の制度の利用を開始する際、制度ごとに異なる審査会や認定調査にかかる時間のずれから、利用当事者にとって緊急性のある必要不可欠なサービスも、開始が大幅に遅れるなどの問題が多発している。
E 多くの自治体で重度訪問介護従業者養成機関が常設されていないため、介護従業者不足の解消策は取られていない。障害福祉の従業者増員施策に遅れがある。
F 都道府県や市町村の障害福祉の担当者が、国の制度を変更した独自の運用規定を作って、制度を使いにくくしているケースは少なくないが、それを「自治体の裁量」としている。また一方では、地域での連携が構築しやすいように、独自に工夫している自治体もある。たとえば、重度訪問介護と居宅介護の併用は国で認めているが、認められないとする市区町村もあるし、制度の併用、具体的には病棟内でのヘルパーの付き添いを容認している市町村もあり、ヘルパーの医療的ケアの規制も自治体によってかなりの開きがある。このように、複数の制度の整合性欠如を補完するためにグレーゾーンが存在するのであるが、地域福祉の裁量が発揮されるゾーンでもある。したがって、グレーゾーンを残すことも検討されている。もしグレーゾーンを無くすのなら、現行の法制度の規制を相当緩和しないと、ALS患者のような者の療養支援は不可能になる。
(8) サービス提供者の現状
@ 慢性的なヘルパー不足である。
A 吸引や経管栄養のサービスは法律上ヘルパーの業とされていないことから、実施しても評価されないばかりか、これらのサービスの提供は県によっては事業指定取り消しの対象とされることもある。
B ヘルパーの実地研修費は事業所の持ち出しになっているが、長期にわたるためその間の負担は多大になってしまっている。特にコミュニケーションが難しい利用者の場合、半年以上の研修期間が必要になるが、研修中のヘルパーを制度を利用して派遣すれば、利用者に「質の悪いヘルパーを派遣してくる」と苦情を言われることもあるため、研修中の時給は事業所の持ち出しになってしまうのである。また、研修途中でヘルパーが挫折し退職すると、それまで費やした研修費が無駄になる。これが度重なると、その事業者はALS療養者には二度と派遣しないということになってしまう。
C 介護保険や居宅介護の身体介護と比較して、重度訪問介護は単価が低く、長時間現場に滞在するヘルパーの管理も難しいことから、サービスの提供者が少ない。また、自立支援法では450時間ごとに一人のサービス提供責任者が必要とされるが、重度訪問介護を実施している事業所では、サービス提供責任者の資格保持者(ヘルパー2級以上、3年以上の実務経験者あるいは介護福祉士)が不足しているため、派遣を依頼されても対応できない状況にある。また、介護保険の身体介護と同様のサービス内容を提供しても、重度訪問介護では収益や運用面で不利益が生じやすいため、概して長時間滞在型の重度訪問介護はニーズがあっても事業者が育たない状況にある。
D 療養者の入院中はサービスが提供できないため、ヘルパーのレイオフも行わざるをえず経営に響く。また利用者にとっても慣れ親しんだヘルパーを入院中に失ってしまうため、入院を拒否せざるを得なくなり、適切な医療を受けるタイミングを逸している。(自治体の裁量でコミュニケーション支援を認めるところもあるが、1日4時間を限度とする短時間では効果がない。)
・
(9) 訪問看護の現状
@ 訪問看護師も不足している。
A 24時間対応の訪問介護ステーションは少ないが、独居患者も法律に従い、ヘルパーは経管注入をしないよう要請されるため、独居者は真夏も、夜間も、外出時も、のどが渇いても水分摂取ができず脱水になっている。
B ヘルパーによる経管注入の禁止で看護師の1日の訪問回数が増え、その往復の交通費が自己負担となったために、家族が訪問を断ってしまい在宅療養が困難になり、施設入所になり、入所後1ヶ月で死亡したケースがある。
C ヘルパーの医療的ケアの指導は、訪問報酬としては算定できないため訪問看護師のボランティアになっている。
D 地域の医療従事者が経管のケアに慣れない等で、在宅療養が困難になったケースがある。地域の医療従事者の医療技術にはばらつきがある。
E 訪問看護師による長時間滞在や外出支援を希望する療養者が多い。
F 療養通所介護を開設し、呼吸器を利用中のALSを受け入れている熱心な訪問看護ステーションも全国にわずかにある。しかし収益性が乏しく、ALS療養者の移動介護も困難で手間がかかるため、現在の報酬では赤字になり、一般のステーションでは困難である。
4,重度障害者等包括支援と国庫負担基準
重度障害者等包括支援の国庫負担基準が実質的な給付の上限とならないよう、各自治体で独自の上乗せ、生活支援事業によるサービスが実施されるべきである。しかし、実際には多くの市区町村で国庫負担基準を給付上限とする設定がなされている。認定区分に収まらない非定型の療養者に対する給付の上乗せは自立支援法に定められているが、多くの市区町村で実施されていない。また、介護保険が適応されない場合でも国庫負担金は月額45万円5千円の給付しかなされず、その予算内でのサービスでは、まったく足りないという状況である。介護保険適応者ではさらに低くなり27万6千円である。したがって、改善策としては最重度の障害者に対する国庫負担基準額の引き上げ、介護保険利用者も減額せず全額を支給した上で、各地域で独自事業を用意してサービスの不足を補完する、区分間流用ができることから、制度を少ししか利用しない障害者も自立支援法の支給決定をしておくことなどが考えられる。そして、支援を推進するためには当該利用者に対して制度の宣伝を積極的におこない利用方法を丁寧に説明することと、医療と福祉の連携を強めるためのなんらかの仕組みが必要である。
以上、本年度の調査研究の結果を受けて、重度障害者等包括支援のあり方について考察した。今後の課題としては、提案されたサービス利用計画を全国2、3箇所で実施し、実行可能性や対費用効果について検討する予定である。
V 重度包括支援支給の実態調査結果