MCAの5原則
MCAは以下の5つの基本原則を基本理念として掲げる。
@ そうでないと証明されない限り、すべての成年は意思決定能力を有するとみなされる。
A 意思決定できないと判断される前に、自分で決定するための実施可能な限りの支援が尽くされていなければならない。
B 他人には奇妙または愚かと思われる決定でも尊重される権利がある。
C 意思決定能力の欠けた人のために、またはその人に代わって行うことは、それが何であれその人の最善の利益に叶っていなければならない。
D 意思決定能力の欠けた人のために、またはその人に代わって行うことは、それが何であれ、その人の権利と自由を最も制限しないものでなければならない。
これらの理念を実現するための実践的なガイダンスとして、4月には施行指針(Code of Practice)が公表された。「代理決定はどのように行われるべきか」、「当人の最善の利益はいかに見出していくべきか」といった手順についても詳細なチェックリストが提示される。ほんの一部に目を通しただけでも、「誰かに代わって意思決定をする」という行為は当人が有している権利を侵すことと紙一重のところにあるのだな……と、その行為の重大さを改めて痛感させられる指針だ。同法によって、これまで身近でケアしながら非公式に意思決定を行ってきた家族や介護者に法律上の一定の権限が与えられた反面、自分たちの主観による安直な“代理”決定もできなくなったことになる。
この法律について非常に印象深いのは、「意思決定能力」の有無については、特定の状況における特定の判断について検討すべきであり、一般的な能力判断を行ってはならないとしていること。つまり「この問題について決定できるかどうか」を一回ずつ問うのであって、「この人は自分では何も決めることができない」という丸ごとの判断は下してはならないのだ。
重大な医療行為に代理システム
重大な医療行為については、意思決定能力を失っている人に支援や代弁をしてくれる家族や友人がいない場合に当人の最善の利益を代弁する新らしい仕組みIMCA(Independent Medical Capacity Adovocate)が設けられた。IMCAが直接的に意思決定を行うことはないが、NHSや地方自治体に対して当該状況における当人の最善の利益を見出して表明するほか、家族や友人がいても虐待が問題になる場合にはIMCAを呼ぶことができる。さらにIMCAは本人の最善の利益に沿わない意思決定が行われようとしている場合にはその判断に異議を申し立てることもできる。
MCAが適切に機能することへの責任を負い、法定代理人を任命する権利を持つほか、MCA下で行われる決定に関する最終責任を負うのは保護裁判所である。