今回の判断は裁判所へ
もっとも、その後の展開は米国のケースと全く違っている。
Times(10月18日)によると、その後NHSの判断によってこの問題は正式に裁判に持ち込まれることになった。Katie本人の利益は、家庭裁判所が担当する案件で子どもの最善の利益に関して助言する政府機関CAFCASS(the Children and Family Court Advisory and Support Service)が代理する。また、Official Solicitorの意見も参照されるようだ。Official Solicitorとは、未成年や自分で判断する能力のない成人の法的代理を務める英国の裁判制度の一環とのこと。
このニュースには、「英国では、そういう制度が整っているのか……」と、認識を新たにした。が、同時に疑問にも思う。それほど後見制度が整っている社会で、なぜメディアの報道姿勢がこんなにお粗末なのだろう。
1月の論争の際、英国メディアは概ね冷静で批判的な論評をした。ところが自国で同じことが起こると俄かにセンチメンタリズムに走り、Alisonの献身的な介護を賛美する。「Katieの子宮を摘出することの是非」が問題なのではなく、まるで「Alisonは娘の子宮摘出を望む資格がある良い親かどうか」が問われているかのような報道振りなのだ。
しかし、それは問題が別ではないだろうか。Alisonがどんなに献身的な良い母親であろうと、重い知的障害のある未成年から医学上の必要もなしに子宮が摘出されることの是非は、それとは無関係に問われなければならない。