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>Archive 吉永 純 20011129 辛抱たまらん!ええかげんにせえ!生活保護の切り下げに反対する緊急集会 ■生活保護基準引き下げ問題について 吉永 純(花園大学) 1 5年連続の保護水準の切り下げ 【削減経過】 2003年度 保護基準が戦後初めて0.9%切り下げ 2004年度 同じく0.2%削減、老齢加算段階的削減開始(2006年度全廃) 2005年度 多人数世帯生活扶助一定割合カット、母子加算(高校生年齢児童を対象とする加算)段階的削減開始(2007年度全廃)、 2006年度 母子加算段階的削減2年目 2007年度 母子加算(中学生以下の年齢の子ども対象)の段階的削減開始(2009年度から全廃の見込み)。 【削減結果】 (例1) 70歳以上の高齢者(1人暮らしの生活扶助費/月) 2003年 93,850円 → 2006年 75,920円(△17,930円、19%) (例2) 母子家庭(高校生1人)の場合(2人暮らしの生活扶助費/月) 2004年152,490円 → 2007年 129,180円(△23,310円、15%) 2 問題点 〜「健康で文化的な生活」の検証抜きの貧困スパイラル (1) 利用者の最低生活を切り下げるもの ○ 老齢加算が減額された保護利用者への調査から(生活保護受給者老齢加算廃止後の生活実態調査」全日本民医連ソーシャルワーカー委員会、2007年10 月) ・加算がなくなって食費が不足した者が51.9% ・被服・履物費が不足し者が30.5%に及んでいる(いずれも単身者) ・「食事は、朝は水でお腹を膨らましている。脳梗塞の後遺症があるので、冷房、暖房の節約は出来ない」、「ガス代を押さえるために風呂をひかえる。夏場 (4月から10月)はシャワーで済ませる」などの深刻な実態 ○ 母子加算については、2007年度に23,260円(1級地)が15,510円へ、08年度には,750円へ減額され、09年度には全廃見込み。 ・各地の生活と健康を守る会へ寄せられた声 「食べ盛りの食費は削れません。汗をかいて帰ってくる子どもに毎日お風呂に入れてやれないことはつらい」、「クラブ活動のユニホーム代や校外練習の費用が 高くて参加せせられない」、「修学旅行をあきらめさせなければならない」など悲痛な声 (2) 低所得者との均衡という手法の意味 ○ 第T・10分位(国民を収入の低い方から10等分した場合に、一番低い階層のこと)の比較を主要な方法としている。 ○ その特徴は、何が健康的で文化的な生活かの検証を抜きに、低所得層とのバランス論を理由とした水準の検討 ○ 捕捉率(生活保護の利用資格がある人のうち実際に利用している人の率)が20%台といわれる中で、低所得層には生活保護基準以下で生活している人が多く含 まれている。そういう層と比較すると保護基準は際限なく下っていく。貧困スパイラル、負の悪循環に陥ることは明白 ○ 生活保護基準は、生活保護法8条にあるように、本来、市民の「需要」をもとに、「健康で文化的な最低限度の生活」を測定すべき。 (3) 格差拡大社会において格差を固定化し、低所得者を保護から排除する「貧困隠し」 ○ 貧困ラインが下降することの影響 → 年収200万以下1000万人と言われるワーキングプア層や低所得層を直撃。 それまで生活保護基準以下であった人々が、運用面だけではなく、保護基準の面からも生活保護から排除。生活実態は全く変わらないのに、ある日突然「あなた は生活困窮者ではないことになりました」と生活保護から排除される。財政の削減と同時に、政策的な「貧困隠し」! 3 保護基準切り下げの影響・被害 (1) 1次影響・被害 〜保護利用者、低所得層への影響 @ 保護利用者への影響・被害 ○ 現在の保護利用者への影響(図1のA)。 A1 …… 生活保護基準が下がることによって保護が廃止される層(この場合、単に保護が廃止されるだけに止まらずに、生活保護利用者だから利用できた各 種の施策も利用できなくなる。図2の1参照) (注)この層は基準が下がる前ならば保護を利用できた層。新たに保護から排除される階層 A2 …… 基準が下っても保護は引続き利用できる層。保護費は基準削減分だけ減少し、さらに苦しい生活を強いられることになる。 A 低所得者への影響 ○ 低所得者への影響(図1のB) 図2の2のA以下 …… 生活保護基準の何倍かで利用条件が設定されている低所得者向け施策 図2の3 …… 低所得層への現金給付や貸付に生保基準を用いている制度 (2)2次影響・被害 〜最低賃金、年金、課税最低限などナショナルミニマムへの影響 2次影響・被害とは、生活保護基準と自動的に結びついているわけではなく、何らかの政策決定を要するが、生活保護基準を考慮せざるを得ない制度・施策のこ と @ 最低賃金への影響 周知のように、40年ぶりの最低賃金法改正案では、労働者の生計費を考慮するに当っては、生活保護に係る施策との整合性に配慮することが謳われている。も し、最低生活費が下げられれば、最賃法案が成立しても、最賃の上げ幅は少なくて済むことなる。2007年8月10日に出された中央最賃の目安額(この金額 を目安に各都道府県審議会で地域別最賃額が決定される)は労働者側が50円以上を求めたにもかかわらず6〜19円(平均14円)にとどまっている。生活保 護との逆転現象解消には、逆転している11都道府県で時給49円のアップが必要と言われているが、これが値切られることになる。 A 年金への影響 政府・与党は低所得層の基礎年金に加算制度を検討しており、年収160万円未満の単身世帯などを対象に、現在満額で月額66000円の国民年金を25%程 度引き上げて83000円にする計画を検討していると報道されている。なぜ83000円かと言えば、「保険料を40年支払った人の受け取れる年金が生活保 護費より低いのはおかしい」との声があることを考慮し、単身の高齢者世帯の生活保護費月約8万円(都市部)より高く設定したという。ここでも最低生活費が 下れば、この年金の加算額も下らざるをえない。 B 住民税の課税最低限 地方税の非課税基準額(図2の2の地方税の@)については、夫婦子2人世帯で、生保基準を下回らないように設定することが法令上明記されている。近年は生 保基準が下っているため、この非課税基準額も、図の「備考」欄にあるように、平成15年度2600千円→16,17年度2571千円→18年度2557千 円とだんだん下っている。 生活保護基準が下れば、連動して住民税非課税基準額が下ることは確実である。そうなると新たに住民税非課税から課税世帯になる人が出てくる。住民税非課 税 を施策の対象者としている福祉施策は広範に存在するし、非課税が課税になれば、税制転用方式、すなわち地方税の課税額によって利用料や負担金を決めている すべての制度、すなわち国民健康保険料や保育料、介護保険料などが上昇する。これも広範な影響・被害が発生する。 4 級地について 級地というのは、地域における生活様式や物価差による生活水準の差を生活保護基準に反映させることを目的とした制度で、現行級地制度は、22.5%の格差 を6区分(3級地6区分制)化し、地方自治体(市(区)町村)単位でそれぞれ級地区分を指定している。大都市部である1級地の1から、地方の3級地の2ま での区分がある。 もし、大都市部を下げて、地方を上げるというような改定をすると、生活保護利用者にとって重大な被害となる。級地別被保護人員数・構成比(表1)を見る と、1級地-1(東京23区、横浜市、名古屋市、大阪市等)と1級地-2(札幌市、千葉市、広島市、福岡市等)だけで、55.6%を占めている。2級地- 1(青森市、熊本市等)を加えると、74.6%すなわち4分の3となる。また政令指定都市・中核市・東京都23区だけでは被保護世帯数、被保護人員の半数 (世帯では55%、人員では54.4%)を占める。このように、生活保護は優れて大都市の問題なのである。級地の変更は大都市部の保護利用者に重大な被害 を及ぼすことは必至。 <表1> 級地別被保護人員数・構成比(H18年分 『H19年版 生活保護の動向』) 総 数 1級地-1 1級地-2 2級地-1 2級地-2 3級地-1 3級地-2 実数(人) 1,474,737 589,480 230,073 279,879 67,252 193,282 114,771 構成比% 100.0 40.0 15.6 19.0 4.6 13.1 7.8 図1 <生活保護基準切り下げによる影響・被害範囲図> ●1次影響・被害 ◇低所得者 B ×生活保護基準の何倍かで利用条件が設定されている施策が利用できなくなる(図22A〜I、3) ×その施策が利用条件となっている他の施策の利用もできなくなる。 ◇生活保護利用者 A1 ×生活保護廃止 ×生活保護利用者だから利用できた施策も利用できなくなる(図21) A2 △生活費が削られる (注)A1:保護費切り下げによって保護が廃止される人 A2:保護費切り下げがあっても引続き利用ができる人 B :保護費切り下げによって、これまで利用できていた低所得施策が利用できなくなる人 ●2次影響・被害(ナショナルミニマムへの影響) 1 最低賃金アップを抑制 → ワーキングプアに直接影響 2 年金額を抑制 (例)基礎年金加算制度等(与党検討中) 3 住民税非課税限度額の切り下げにより課税される人、負担額が増額する人が発生(図22@) ×:住民税非課税であったことから利用できていた施策が利用できなくなる。 △:非課税でなくなることから負担金等が増額される場合が発生する。 ※各種福祉サービスは住民税非課税、課税額を、利用資格や負担額の目安にしているものが多い。 図2 生活保護基準が下った場合の影響・被害項目一覧 1 生活保護を利用していることから、負担能力がないとされ、利用時の負担が免除されているもの、生活保護費計算時に考慮(控除)されるもの (例) 地方税、所得税、国民年金保険料(法定免除)、NHK受信料、公立高校授業料、母子栄養食品支給、入院助産、保育料、児童養護施設など児童福 祉施設一部負担、養育医療、更生医療・育成医療・補装具・療育医療、小児慢性特定疾患治療研究事業、地域福祉権利擁護事業利用料、医療保険(保険料、自己 負担)、介護保険(保険料、利用時1部負担)、雇用保険(保険料)、心身障害者扶養共済年金掛金、生活福祉資金貸付金の収入認定除外と返還金は収入から控 除、公営住宅家賃(住宅扶助超過額免除等) (その他法外援護・各自治体施策)私立高校授業料等への補助、バス・電車の無料証、交通共済掛金免除、水道料金減免など 2 生活保護基準と連動する制度、生活保護基準を減免基準にしている制度 (注)@地方税の非課税基準、EG境界層該当減額措置 以外は各自治体に任されており、実施自治体は必ずしも多いとはいえない。 分野 制度・趣旨 計算基準・減免基準 備考 ・地方税 @地方税の非課税基準(均等割非課税=全額非課税) 生活保護基準以下の収入でも住民税が課税となるようになった時期が20年ほど前にあり、そうならないように定められた規定 生活保護法による前年の保護基準額(生活扶助費、教育扶助費、住宅扶助費)として算出された金額を勘案して、市町村の級地区分に関わるものを乗じて得た金 額を「参酌して定める」こととされている。1級地は1.0、2級地は0.9、3級地は0.8とされている。 (根拠)地方税法295条3項、施行令第47条の3(2)号、施行規則第9条の4A (夫婦子2人の限度額)近年生保基準の削減に従い次第に減額:N2600千円→OP2571千円→Q2557千円(給与所得控除込み) A地方税の減免 (例)高松市「世帯収入が生活保護の収入基準以下で、納税が著しく困難であると市長が特に認める者」については免除(高松市税条例36条、施行規則) B滞納処分の停止 (例)京都府 生保基準額の120%以下の場合 ・国民健康保険 C保険料の減免(申請減免) (例)国分寺市 生活保護基準の1.1倍未満:100%減免〜生保基準1.5倍未満:20%減免 (例)練馬区 生活保護基準の1.15倍未満は減免 (根拠)国保77条、地方税法717条 D一部負担金の減免 (例)京都市 生保基準120%以下は免除、130%以下は1部負担金の多寡により2割、4割、6割を減額、 (例)川崎市 生保基準115%以下は免除、115%超〜130%以下は減額 (例)広島市 生保基準 110%未満は免除、110% 以上〜130%以下は減額 (根拠)国保44条 ・介護保険 E利用料・保険料の減額(境界層該当) 高額介護サービス費、食費、保険料を1ランク下げれば生活保護にならなくて済む場合に、1ランク下げる。 (根拠)施行令38条1項等 F保険料の減額 (例)旭川市 年間収入見込額が生保基準以下、貯金が年間生保基準の2倍以下の場合、保険料を第1段階に減額 ・障害者自立支援法 G利用料の減額 (境界層該当) 利用料を1ランク下げれば生活保護にならなくて済む場合に、1ランク下げる。 (根拠)施行令17条1項等 ・公立高校 H授業料減免 (例)都立高校…生活保護世帯及び同程度の世帯は免除、生活保護の1.2倍までの世帯は5割減額 ・公営住宅 I家賃減免 (例)埼玉県:最低生活費以下は減免 3 低所得層への現物給付及び現金給付や貸付に生保基準を用いている制度 @生活福祉資金 貸付対象者 (「低所得者」の範囲) 目安として生活保護基準の1.5倍〜2倍が多い(例) 京都市 生保基準の1.8倍 (例) 沖縄市 生保基準の1.7倍 A就学援助 給付対象者(「準要 保護者」の定義) 生保基準の何倍以下(1.3倍までが大多数) (例) 足立区 1.1倍 中野区 1.2倍 宮津市 1.3倍 B自治体の低所得者向け貸付制度 貸付対象者 (例)京都市夏季歳末特別生活資金貸付制度 (貸付対象)世帯の合計収入が生活保護基準の1.5倍以内 UP:20071204 ◇Archive ◇反・ 貧困(所得保障/生活保護/…)2007 |