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ドナーからみた生体肝移植(第3報)
──レシピエントの死がもたらす家族の変動と癒えぬこころ(抄録)

一宮 茂子 20071121 『日本移植学会 第43回総会』仙台国際センター

last update: 20151225

 本研究は夫婦間移植でレシピエントが死亡した事例報告であり、術後4年以上経てドナーにインタビューした内容を分析した。

【目的】生体肝移植でレシピエントを失ったドナ−の心の奇跡とその核家族の変動を明らかにする。
【方法】半構造化面接によるインタビュー調査である。
【結果・考察】肝細胞癌の夫は2001年妻がドナ−となって生体肝移植を受けた。ドナー決断の意志決定過程では「夫を助けるのはあたりまえ」という純粋な愛情で決断した。インフォームド・コンセントは「よう分からん」、でも「助かるんやったら何でもして下さい」と、移植医療を受ける一つの通過点と捉えていた。レシピエントの術後経過は良好であったが術後65日目に敗血症で死亡した。家族はレシピエントが死亡前日に車椅子で散歩したほどに元気であったため、医師から説明を受けても死因に納得できす、約4年を経たインタビュー時点でも医療者に不信感を持っていた。その間、長女は縁談を破談にし、次女は交通事故から鬱病となり自殺企図があった。ドナーは、夫の死は「全部吹っ切れている」と口にしながらも霊媒師に相談、般若心経を唱え四国八十八カ所巡りを行い、精神的に苦悩していると考えられた。インタビューで医療者にその疑念を話したドナーからは「あ〜ぁ、すっとした」と、心の重荷の軽減が図れた言葉を口にした。
 病院とは縁が切れたドナーやその家族は、問題が発生しても家族自体で解決しなければならずその苦悩は計り知れない現実があった。
【結論】ドナーやその家族の精神的負担を軽減するために、生涯に渡っていつでも相談できるなんらかの仕組み作りが必要である。


*作成:一宮 茂子
UP: 20080608 REV:
全文掲載
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