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精神障害の受容(理解)の事例の一考察

立山 尚 200709
障害学会第4回大会 20070916-17 於:立命館大学

last update: 20151224

ルーテル学院大学大学院生
立山 尚

◆要旨

1.問題の所在
 もし、中途で上肢のひじ以降を失った人がいたら、さぞ悲しいだろう。しかし、その人は自分が肢体不自由になったことが理解できるし、やがてはその障害を 受容するだろう。
しかし、精神障害については、まず精神障害という「もの」が見えないので、理解が難しい。また国民全体に精神障害者への差別があるので、(精神障害者に なった)当人が精神障害者を差別しており、自分が精神障害者であることを受容できない。精神障害のため生活保護や障害年金を支給されているものでも、精神 障害者保健福祉手帳を交付されるのを拒み「精神障害者になっちゃう」というものも少なくない。
 どのような場合に精神障害の受容(理解)がなされるのだろうか?

2.Aさんの事例
・1992年、不安神経症になる
・1996年、精神科病院入院。ピアと出会う。またPSWと出会い精神保健福祉を知る。
・1997年、作業所通所。そこで月2回精神保健福祉の学習開会があり、Aさんは精神障害者福祉制度が身体障害者福祉制度・知的障害福祉制度に比べ著しく 遅れていると感じた。自分も作業所の職員となって、精神保健福祉に貢献しようと考えて。
・1998年、社会福祉士養成専門学校入学
・1999年、卒業を控え、精神障害者小規模作業所の面接を7,8箇所受けたが不採用。
そのころAさんは、早く就職して、その金で生活して、「人並みの生活」をしたいと、そればかり考えていた。
 やむなく、Aさんは昔電気技術者だったので小さな電気会社に就職した。しかし、就職はゴールでなくスタートである。病気を押して働くのはつらかった。そ の会社は工場の作業員を採用するつもりだったので元技術者のAさんと合わず、1月半で退社。
○Aさんはある私鉄電車に乗っていたとき、ふと「今とにかく生きているんだから、これでいいんじゃない」と思った。
○年末、主治医に「私の神経症はいつ直るのでしょう?」と聞いたところ、主治医は「Aさんあなたは神経症ではないですよ。うつ病ですよ」といわれる。
Aさん「私はうつ病?では精神障害者じゃないか。それなら健常者の生活と違うのは当たり前じゃないか」と思って、自分が精神障害者であることを理解した。 そして障害者年金と精神障害者保健福祉手帳を申請した。

3.考察
・Aさんは作業所の面接や電気会社の1ヶ月半の生活をすごし、ふと「今の状態でいいんじゃないの」という心境になっていた。
・Aさんにはもともと精神障害者に対して差別感が少なかった。
・Aさんはもともと学生時代学生運動をしたり、社会人になってからも反原発運動をしていて、虐げられた人を支援していた。Aさんは自分が精神障害者とわ かって、今度は支援でなく自分が虐げられたものになった、戦うぞと思った。

4.課題:Aさんの事例をどう一般化するか?


UP:20070807
障害受容
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