>HOME

1970年代のリハビリテーション雑誌のなかの「寝たきり老人」言説

田島 明子・坂下 正幸・伊藤 実知子・野崎 泰伸
障害学会第4回大会 20070916-17 於:立命館大学

last update: 20151224


◆報告要旨
◆報告原稿

■【報告要旨】

 日本において誰もがよく知る言葉である「寝たきり老人」は、いつごろ発生し、どのように定着していったのであろうか。
 1990年以降の「寝たきり老人」言説を見ると、高齢者の医療費自己負担率が一割定率負担となり、高齢者医療・福祉制度が、個人自己負担の増大/公的支出削減に向けて転換されたことを背景とするなか、たとえば、「厚生省大臣官房老人保健福祉部老人保健課」(1990年)の『寝たきりゼロをめざして――寝たきり老人の現状分析並びに諸外国との比較に関する研究(第2版)』の出版を端緒として二木立らによって展開された緒批判に見るように、欧米諸国の高齢者福祉の現状と比較検討され、「自立」や「予防」の重要性という論脈に繋がれていたり、また、諸外国には「寝たきり老人」がいないという事実とともに、「寝たきり老人」を作らない諸外国の「延命治療の消極性」という事実が知られることにもなり、日本における「延命治療の積極性」が批判的・否定的にニュアンスを含まれ浮き彫りにされることにもなったりしている。
 このように、「寝たきり老人」という言葉は、日本において、高齢者(ひいては障害者とも言いうるだろう)医療・福祉の諸制度の方向性を占うための1つの重要なキーワードとして位置していることが伺われるが、これらの方向性は、端的に言って、「寝たきり老人」を社会から消去しようという方向性とも受け取れ、何か怪しい言説を生産するキーワードのようにも感じる。
 時代を遡ると、1960年は、老人福祉の幕開けの年であった。この年に老人福祉法が制定され、老人の健康の保持、そして生活の安定を図る必要性が法律で唱われたのであった。そして、1965年に理学療法士法及び作業療法士法が制定された。その後、1966年に、養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム設備及び運営に関する基準により施設老人に対するリハビリテーションの必要性の根拠が与えられ、次いで、1972年の在宅老人機能回復訓練事業実施要綱において、在宅老人のリハビリテーションの必要性の根拠が提示された。
 このように、1960年代から1970年代初頭にかけて、「老人」に関わる法律の制定とともにリハビリテーションに関わる法律も整備され、施設・在宅の「老人」へのリハビリテーション実施の根拠が示されることとなった。その背景として、多くは脳卒中後遺症により、施設あるいは在宅において「寝たきり」の状態となった「老人」の存在が問題化されるようになり、その人たちへのリハビリテーションの必要性が言われるようになってきたことが挙げられる。つまり、「寝たきり老人」という言葉の発生・定着には、少なからずリハビリテーションが関与していることが想定されるのである。
 そこで、本研究では、理学療法士及び作業療法士法が制定された翌々年(1967年)に創刊され、1983年までリハビリテーション職種である理学療法、作業療法に関する唯一の専門誌であった『理学療法と作業療法』という雑誌より1970年代までを射程とし、「寝たきり老人」に関する記載のある文献を対象として、「寝たきり老人」の発生と定着の頃を探ってみたいと考える。
 障害学では、必ずしもリハビリテーションは肯定的に受け止められてはこなかった。その理由として、個人要因に着目し、障害は解消するべきものとし、回復・改善を目指すリハビリテーションの理念・思想が、反転して障害の否定的意味付与の発生要因となっていることが、まずあげられるだろう。そして、1990年代以降の「寝たきり老人」をめぐる言説にも、上述のように、それと同様な存在の肯定と否定をめぐる価値づけが底流していることが伺われる。
 1970年代のリハビリテーションにおける「寝たきり老人」という言葉の定着が、1990年代以降の「寝たきり老人」をめぐる言説にいかに転化したかを十全に明確化することは困難なことであるとしても、「寝たきり老人」をめぐるリハビリテーションの連関を考慮するなら、そこには何らかの影響力があったことは否定できないであろう。本研究は、1970年代〜1990年代以降の「寝たきり老人」言説をめぐる接合/非接合を考えるうえでの前段階的な作業となるが、こうした一連の作業は、障害学におけるこれまでのリハビリテーションに対する関心と連なるものであると言えるだろう。


 
>TOP

■報告原稿

1970年代のリハビリテーション雑誌のなかの「寝たきり老人」言説

田島明子(立命館大学先端総合学術研究科)
坂下正幸(立命館大学先端総合学術研究科)
伊藤実知子(立命館大学先端総合学術研究科)
野崎泰伸(大阪府立大学OD)

  ◇資料1個関連年表(MS Word)
  ◇資料2・3:対象とした文献の詳細(PPT)
  ◇資料4:17文献の内容の詳細(MS Word)

【以下、読み上げ原稿】

0 プロローグ
  ことばにならないもののために――なぜ「寝たきり老人の言説分析」か  野崎泰伸

  私たちは世界を了解しようとする。そして、このことじたいが特段に悪いわけでもないだろう。私たちは世界に対面し、そこで起こっている出来事を感じ、咀嚼しようとする。また、そのためにさまざまなツールがある。学問はその一つである(し、一つにすぎない)。
  了解しようとするとき、それはわかりやすいほうが当然よいだろう。もしくは、そのほうがよいとしよう。しかしそのことと、「誰かの都合によってわかりやすい言説が作り上げられる」こととは別のことである。誰かの都合のよいように言説が作られ、それ(ら)が流布されるなら、そこには権力の磁場が生成される。その磁場によって、また私たちの言説が再−固定化される。そして、それら総体として大きな知の体系が作り上げられる。こうして、言説と知、そして権力とは、抜き差しならぬ関係として社会において機能する。
  言説を取り上げ、分析し考察するという作業は、この社会においていかに知が編成され、いかに権力が布置されるかを暴くものとも言える。いっけん「中立」に見える、あるいは「中立」を装う言説も、仔細に分析・考察したり、ある一群の言説たちの中に置かれたとき、一定の知の方向性、あるいは権力の不均衡を見出すことができる。その意味において、言説分析は社会を捉えるための鋭利な道具であるということができよう。
  本研究は「寝たきり老人」の言説分析を通して、「寝たきり老人」をめぐる社会の編成について、歴史的な検証を行ったものである。その内容については、本文に譲るとして、本研究の射程はいかほどのものであるのか、少し考えてみたい。
  前述したように、言説分析はその社会における知と権力とを調べる上で非常に有用である。さらに、言説を通して、知の再生産、権力の固定化も促される。「寝たきり老人は〜である」という表象じたい、一つの権力装置としての役割を担うものである。それがリハビリテーションとつなげられたり(70年代)、安楽死・尊厳死に至るものや介護予防言説も散見されるようになる(90年代)。こうした言説群じたいが一つの権力構造なのである。言説分析とは、こうした権力構造を明るみに出すものであるとも言える。それはひいては、この社会における支配的な価値観の姿を浮き彫りにもするだろう。このように、言説はたんに言語の相互行為にとどまらず、社会における価値観をもあからさまに映し出し得るのである。
  本研究はそうした言説を歴史的に追ったものであるが、裏を返して言えば、こうした言説によって社会の支配的な価値観が映し出されるとともに、ある部分において言説が現実と齟齬をきたす部分があるだろう。「寝たきり老人は〜である」という言説ではくくりきれない寝たきり老人の<生の現実>がある、と言いたいのだ。そうした言説では語り得ない寝たきり老人の<生の現実>――言説からはみ出、にじみ出る部分――にも注意する必要がある。私たちが言説分析において、むしろ「ことばにはならないもの」のためにこそ、ことばによる言説を分析する意義を見出したいのである。語り得ないものの想起のためにこそ、語られたものの分析から、社会の編成を読み取っていこうとするのである。その作業は、語り得ぬものを逆照射する作業であるとも言えよう。
  私たちが世界を了解しようとするとき、言語という媒介は大きな役割を果たす。その意味において、私たちが言説の作り上げる知や権力の網目から抜け出すことは非常に困難である。言い換えれば、言説によって構築される権力を放棄することは、諦念されなければならない。だが、その知や権力の網目をくぐり抜ける、私たちが世界を了解することに抗う存在こそ、私たちの倫理性をあやうくも担保するのではなかろうか。言説分析とは、「知と権力による社会編成」とともに、その裏側において「言説による私たちの世界の完全な了解を拒むものの存在」をも浮き彫りにする。言説はこのように二重に私たちの社会をあらわしているのである。

1 はじめに

  誰もがよく知る言葉である「寝たきり老人」は、いつごろ発生し、どのように定着していったのでしょうか。
  1990年以降の「寝たきり老人」言説を見ると、高齢者の医療費自己負担率が一割定率負担となり、高齢者医療・福祉制度が、個人自己負担の増大/公的支出削減に向けて転換されたことを背景とするなか、たとえば、「厚生省大臣官房老人保健福祉部老人保健課」(1990年)の『寝たきりゼロをめざして――寝たきり老人の現状分析並びに諸外国との比較に関する研究(第2版)』の出版を端緒として二木立らによって展開された緒批判に見るように、欧米諸国の高齢者福祉の現状と比較検討され、「自立」や「予防」の重要性という論脈に繋がれていたり、また、諸外国には「寝たきり老人」がいないという事実とともに、「寝たきり老人」を作らない諸外国の「延命治療の消極性」という事実が知られることにもなり、日本における「延命治療の積極性」が批判的・否定的にニュアンスを含まれ浮き彫りにされることにもなったりしています。
  このように、「寝たきり老人」という言葉は、日本において、高齢者(ひいては障害者とも言いうるでしょう)医療・福祉の諸制度の方向性を占うための1つの重要なキーワードとして位置していることが伺われますが、これらの方向性は、端的に言って、「寝たきり老人」を社会から消去しようという方向性とも受け取れ、何か怪しい言説を生産するキーワードのようにも感じます。
  時代を遡ると、1960年は、老人福祉の幕開けの年でした。この年に老人福祉法が制定され、老人の健康の保持、そして生活の安定を図る必要性が法律で唱われました。そして、1965年に理学療法士法及び作業療法士法が制定されました。その後、1966年に、養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム設備及び運営に関する基準により施設老人に対するリハビリテーションの必要性の根拠が与えられ、次いで、1972年の在宅老人機能回復訓練事業実施要綱において、在宅老人のリハビリテーションの必要性の根拠が提示されました。その背景として、多くは脳卒中後遺症により、施設あるいは在宅において「寝たきり」の状態となった「老人」の存在が問題化されるようになり、その人たちへのリハビリテーションの必要性が言われるようになってきたことがあります。 つまり、「寝たきり老人」という言葉の発生・定着には、少なからずリハビリテーションが関与していることが想定されるのです。

2 研究の目的

  そこで、本研究では、理学療法士及び作業療法士法が制定された翌々年(1967年)に創刊され、1983年までリハビリテーション職種である理学療法、作業療法に関する唯一の専門誌であった『理学療法と作業療法』という雑誌より1970年代までを射程とし、「寝たきり老人」に関する記載のある文献を対象として、「寝たきり老人」に関する記述を調査し、「寝たきり老人」をめぐりどのような言説が生成されてきたのかを探りたいと思います。

3 本研究の障害学における意義

  障害学では、必ずしもリハビリテーションは肯定的に受け止められてはきませんでした。その理由として、個人要因に着目し、障害は解消するべきものとし、回復・改善を目指すリハビリテーションの理念・思想が、反転して障害の否定的意味付与の発生要因となっていることが、まずあげられるでしょう。そして、1990年代以降の「寝たきり老人」をめぐる言説にも、上述のように、それと同様な存在の肯定と否定をめぐる価値づけが底流していることが伺われます。
  1970年代のリハビリテーションにおける「寝たきり老人」という言葉の定着が、1990年代以降の「寝たきり老人」をめぐる言説にいかに転化したかを十全に明確化することは困難なことであるとしても、「寝たきり老人」をめぐるリハビリテーションの連関を考慮するなら、そこには何らかの影響力があったことは否定できないでしょう。本研究は、1970年代〜1990年代以降の「寝たきり老人」言説をめぐる接合/非接合を考えるうえでの前段階的な作業となりますが、こうした一連の作業は、障害学におけるこれまでのリハビリテーションに対する関心と連なるものであると言えるものと考えます。

4 関連制度の年表

  この時代の、寝たきり老人に関連する諸制度等について年表にまとめました。(資料1:関連年表;ポスターにて掲示)

5 対象

  対象は、『理学療法と作業療法』(医学書院)です。選定理由は、次の2つです。1つは、本雑誌は、理学療法士及び作業療法士法が制定(1965年)された翌々年(1967年)に創刊されている、2つめは、1983年までリハビリテーション職種である理学療法、作業療法に関する唯一の専門誌であった、です。
創刊(1967年)〜1970年代までの文献から、タイトルに「老人」が含まれる33文献を収集し、調査の対象としました。

6 分析手順および方法

1)分析対象の特定
  まず、対象とした33文献(資料2:対象とした文献の詳細;ポスターにて掲示)から「寝たきり老人」の記載のある文献を捜したところ、17文献がありました。資料3:年代ごとの文献数(パワーポイント、ポスターにて掲示)を参照して下さい。さらに、17文献にはNoを付加しました(資料2:対象とした文献の詳細;パワーポイント、ポスターにて掲示)。17文献の内容の詳細については資料4:17文献の内容の詳細(ポスターにて掲示)をご覧下さい。これら17文献が分析の対象です。分析対象とした17文献数を年代ごとに整理したものが資料3:年代ごとの文献数(パワーポイント、ポスターにて掲示)になります。
2)分析方法
  17文献から、「寝たきり老人」の記載のある文章を抜粋し、@前後の文脈が失われないよう、A   
  なるべく単一の意味内容となるよう分節化したところ、59カードが作成されました。59カードには、「カードNo」【「年代」−「文献No」−「頁数」】とカード番号を割り当て、内容の類似性で、グルーピングを行いました。

7 結果

1)13グループの生成
  59カードを内容の類似性で分類したところ、13グループが生成されました。そして、それらのグループにグループの内容を代表できると思われるグループ名をつけました。( )内の数字は、各グループにおけるカード枚数です。さらに、13グループを、内容の類似性で4つのまとまりとし、それらを代表すると思われるテーマを設定しました。(カード内容の詳細はパワーポイントにて。ポスター掲示もします。)

テーマ1 「寝たきり老人」の実態・要因・表現
@ 寝たきり老人に関する統計調査の紹介(8枚)
A 寝たきりの原因・要因(6枚)
B 「寝たきり老人」の表現(5枚)

テーマ2 リハビリテーションの意義・関連職種の役割
C リハビリテーションの意義(6枚)
D 理学療法の役割(3枚)
E 作業療法の役割(5枚)
F 看護師の役割(2枚)

テーマ3 特別養護老人ホーム
G 特養ホームでの寝たきり老人(4枚)
H 特養ホームにおけるリハ効果(3枚)

テーマ4 地域サービス
I 寝たきり老人に対する訪問事業(6枚)
J 地域活動・地域サービスへ(4枚)

テーマ5 家族
K 家族が作る寝たきり老人(4枚)
L 家族の介護負担(3枚)

2)言説のまとめ
 以下、7−1)のグループ番号に基づき、13グループにおける「寝たきり老人」をめぐる言説を整理しました。

@ 寝たきり老人に関する統計調査の紹介
当初は、大規模な統計調査の結果が紹介されている。その内容は、大括りに見て、年代ごとに、@寝たきり老人の多さ、A寝たきり老人となった原因疾患(脳卒中)、B寝たきり老人の数が増加していること、Cより小規模地域での寝たきり老人の実態、の順で明らかとなっていた。

A 寝たきりの原因・要因
寝たきり状態は、脳卒中後、地域で放置されたり、骨折後の放置、人工骨頭置換術後の再脱臼が起因して生じた、と述べられていた。

B 「寝たきり老人」の表現
「寝たきり」は、老年の意義や健全さを失った状態である。また「寝たきり」は、弱者としての身障老人の不安・孤独感を生じさせる状態である。そして、「寝たきり」は、なってしまえば、サービスも半減するので、いかにしないかが大切であると述べられ、活動性ゼロで達磨のよう、または人間の最終状態で、あとは死のみと記述されていた。

C リハビリテーションの意義
すでに1960年代に、リハビリテーションの意義についての言説が存在していた。それらの言説が増えたのは、1975年以降である。寝たきり老人への訓練は、離床させ、1日30分でも座位を取らせるなど、1歩前進をめざすものであり、知能の低い人ほど訓練の必要がある、訓練そのものが寝たきり老人の支えになると述べられていた。

D 理学療法の役割・E 作業療法の役割
「寝たきり老人」をめぐる取り組みの言説は、理学療法より作業療法の方が早かった。理学療法では、訪問活動のなかでの理学療法について言及されているが、それは難問であるともされる。作業療法では、日中活動の提供を通して、心理的な部分にも着目しながら、ベットから離れさせることの意義が述べられていた。

F 看護師の役割
施設サービスでも、在宅サービスでも、看護婦は、チームリーダーとなって、寝たきり老人へのアプローチで多くの役割を担うと述べられていた。

G 特養ホームでの寝たきり老人
特養ホームでの寝たきり老人の実態については、「ほとんどが寝たきりの生活をしている」という言説がある一方で、「千差万別である」、「本当の意味での寝たきりは少ない」など、多様な記述のなされ方をしていた。

H 特養ホームにおけるリハ効果
1970年代後半には、施設内における「寝たきり老人」に対するリハ効果が指摘されるようになった。また、施設環境が問題となり、環境設定の工夫がなされることによる効果が指摘されていた。

I 寝たきり老人に対する訪問事業
すべて1979年であった。寝たきり老人に対する訪問事業、デイホスピタルなど、具体的な事業の展開の紹介、そのための人員などの具体例が述べられていた。

J 地域活動・地域サービスへ
 在宅の寝たきり老人の掘り起こしなくして地域サービスはありえない、地域サービスを行うために、PT・OTの養成、活動パターンの開発は急務であるとしていた。また、経験者が、その難しさを語っていた。
 
K 家族が作る寝たきり老人・L 家族の介護負担
 家族の思い込み、過保護、諦め、が人為的に寝たきり状態を作ることがあるとされ、一方で、居宅の寝たきり老人の問題は、家族の問題でもあり、寝たきり老人の介護負担は、家庭崩壊にまで至るケースも少なくないとしていた。

8 考察

  これまで述べた13グループのつながりについて考えてみたいと思います。およそ、次の4つにまとめられると考えます。
  1)まず、寝たきり老人をめぐり、実態や原因が明らかとなったり、否定的イメージが生成されるような言説が現れたり、それと同時に、寝たきり老人に対するリハビリテーションの関与の可能性も言われるようになってきた
  2)そうした言説とともに、特別養護老人ホームなどの施設における寝たきり老人の実情が記述されるとともに、70年代後半には、リハビリや環境設定の工夫によって、寝たきり化を改善できたとする報告が見られるようになった
  3)一方で、家族が寝たきりを作る、寝たきり老人の世話をする家族の介護負担について懸念がなされるようにもなり、地域サービスや訪問事業の具体化や課題についての記述も見られるようになった
  4)そうした流れのなかで、理学療法、作業療法、看護師の担うべき役割についても記述されるようになってきた
の4点です。

9 まとめ

最後に、本研究から得られた知見を、次の3点に集約しました。
・「寝たきり老人」に関する記述は、1975年以降に急増していた。
・「寝たきり老人」については、その実態や要因、否定的イメージを生成するような言説とともに、リハビリテーションを行う意義が強調されていた。また、家族については、家族崩壊の懸念とともに、家族が人為的に寝たきり老人を作ることが指摘され、地域サービスや訪問事業の意義が指摘されていた。
・施設(特別養護老人ホーム)の寝たきり老人化が指摘される一方、施設には本当の寝たきり老人は少ないことも指摘され、施設の寝たきり老人に対する環境の工夫、リハビリテーションの効果が指摘されていた。

10 今後の課題

  本研究では、当時の法制度の成り立ちや要綱、あるいは、その時代に出版された老いに関する文学などとの関連を確かめるまでの余力がありませんでしたが、今後の課題として重要な事項であると考えております。なお、今後、1980年代以降のリハビリテーション雑誌における「寝たきり老人」をめぐる言説も調査していく予定でおります。

以上。


UP:20070808 REV:20070904
「寝たきり老人」  ◇障害学会第4回大会  ◇Archive

TOP HOME (http://www.arsvi.com)