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カナダ・オンタリオ州の介助システム(ダイレクト ファンド方式)の現状と今後の展望


田丸 あき子・山本 誠 20070917
障害学会第4回大会 於:立命館大学

last update: 20151224

聖隷クリストファー大学
田丸 あき子・山本 誠

◆要旨
◆報告原稿

■要旨

【はじめに】
カナダオンタリオ州の "Direct Funding Self Managed Care"(以下DF制度とする)は、身体障害者を対象とし、介助サービスに要する費用を、州政府がサービスを利用する当事者自身に直接給付する「直接給 付方式」と呼ばれる形態で運用されている介助サービスシステムの一つである。このDF制度はとりわけ、介助サービスの申請から支給決定、また給付にかかる 手続きなどの一連のプロセスを、当事者自身が管理するという特徴があり、世界中の様々な介助サービスの中で「当事者管理という点で最も自律度が高い」1) 制度であると言われている。筆者は、2007年3月にオンタリオ州を訪れ、1997年の本格運用より約10年が経過したDF制度の現状について情報を得る 機会を得たので報告する。

【先行研究と本研究の目的】
障害者の介助問題に議論を呈することを目的に、また日本の状況を踏まえながらよりよい介助サービスシステムを構築するために、カナダ・オンタリオ州の直接 支給方式が日本に紹介されたのは、1999年のことであった2)。それはDF制度が試行期間を経て、1997年の本格運用になった時期と重なり合う。本研 究では、以下のような目的を設定した:
1.DF制度の運用開始から10年間の変遷及び2007年3月時点での現状を明らかにする。
2.実際にDF制度やその他の介助サービスを利用している方々の声を聞く中から、サービス利用が実際にどのように当事者の生活を支えているかを明らかにす る。

【現状】
試行期間を経て1997年に本格的に運用を開始されたDF制度は、当初700名に支給することを目標に1800万CAD(約18億円)の予算規模でスター トした。これまでの10年間、州政府の政権交代があった中においても存続し、2006年に予算枠では、400万CAD(4億3000万円)増大し、総額 2150万CAD(約21億円)の規模となり、供給者数は720名となった。1997年当時100人程度と報告されていた待機者数(すべての申請手続きを 終了したが、依然給付金を受け取っていない人の数)は、2007年2月末で300名以上となっており、この制度の利用を望む当事者数の増加が裏付けられ た。しかしながら、その一方で、受給者の高齢化、障害の重度化により、一人当たりの供給額が増大傾向にあり、これら既存受給者のニーズに応えるために、新 規に給付をする対象者数は、逆に今後減少する見通しとの情報を得た。
また、身体の障害以外を対象として、DF制度に類似したサービスを模索する動きが見られており、特に知的障害者を対象とした制度が実現へと近づいている。 これは当事者自身による管理ではなく家族の管理によるものであり、純粋な意味での当事者による運営ではないが、DF制度の持つフレキシビリティや利用者に よりコントロールが可能な点が、人々のニーズにマッチした結果ではないかと考えられる。
2007年4月よりオンタリオ州では、医療福祉制度改革が行われており、急性期医療の充実と組織改革に焦点が当てられている。これまでDF制度を管理・運 営してきたCILT(トロント自立生活センター)が、医学モデルの下で運営されているLHINS (Local Health Integrated Networks)という組織の傘下に置かれる可能性もあり、今後の動向に重大な懸念が示されていた。
DF制度を利用している人たちは、この利用により、自分の生活の一切を自らが望むようにできる自由さと悦びを感じ、またそのマネジメントに自己のアイデン ティティを見出しているようであった。しかし、DF以外のサービス利用者の声を聞くと、短時間の介助を一日に何度にも渡って依頼したい場合や、24時間の 介助を依頼したい場合に利用しにくいという点で、DFよりもその他のサービスの優位性を訴える人もあり、サービスのあり方には、個々のニーズの多様性にあ わせたバリエーションが不可欠であることを再認識した。また、DF利用者が共同で居住し、介助者を共有することにより、限られたDF給付額を有効に活用し ようとする例も見られた。

【考察と今後の展望】
プログラム全体を政府の委託を受けて障害当事者組織がすべて一貫して運営するという世界でもユニークなこのプログラムは、当事者自身が全てのコントロール をしているという点で画期的である。一方で、予算の増大が叶わぬ中での制度の運用は、ある種政府の管理・抑制的要素を当事者自身の中に抱え込むジレンマを 作り出している印象を受け、その矛盾・葛藤が感じられた。
既存の受給者の高齢化により、個々の供給額が増大する一方で、総体としての供給者数を削減せざるを得ない運用者側と、DF利用者が共同で居住し、介助者を 共有することにより、限られた給付額を有効に活用しようとする利用者側の動きをみると、運用者・利用者側とも、DF制度は新たな段階に入ってきたことが感 じられた。障害当事者が自らの意志で作り上げる共同生活は、共同居住に関する日本との文化的な意識の違いがあるものの、限られた予算の中で自らの生活を豊 かにしようとする障害当事者の知恵として、今後この動きを見守りながら、考察を深める必要があると思われる。

1)茨木尚子「当事者が主体となるための『介助』サービスとは−直接支給方式による介助サービスシステム−」花田春兆編『支援費風雲録−ストップ・ザ・介 護保険統合−』現代書館、2004年。
2)鄭鍾和編『当事者主体の介助サービスシステム−カナダ・オンタリオ州のセルフマネジメンントケア』ヒューマンケア協会、1999年。


 
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■報告発表原稿

 カナダ・オンタリオ州の介助システム(ダイレクトファンド方式)の現状と今後の展望

 聖隷クリストファー大学  田丸 あき子、山本 誠

  <はじめに>
  1990年代後半、日本の障害者施策のあり方について盛んに議論が行われ、世界の様々な障害者施策がそのモデルとして検討されてきた。1999年全国自立生活センター協議会が紹介したカナダオンタリオ州の障害者自己管理型介助サービスシステム"ダイレクトファンディングセルフマネージドケア"もその中の一つであり、今後の日本におけるシステムの一つのあり方として注目を集めた。筆者は、2007年3月にオンタリオ州を訪れ、1998年の本格運用より約10年が経過したダイレクトファンディング制度の現状について情報を得る機会を得たので報告する。
  
  <目的>
  今回の研究の目的は二点あり、一つは、導入から約10年が経過したダイレクトファンディング制度の2007年時点での現状を、運用者側の視点から明らかにすることにある。もう一点は、実際に現地でダイレクトファンディング制度を含む介助サービスを利用している方々の声を聞く中から、当事者がこれらの介助サービスをどのように受け止め、またこうしたサービス利用が実際にどのように当事者の生活を支えているか、利用者の視点からの情報を得ることにある。
  
  <研究方法>
  研究方法は、二つよりなる。ひとつは、トロントにある障害者自立生活センターの「ダイレクトファンディング制度」担当者であるIan Parker氏に対する、聞き取り調査を中心とした調査研究である。もう1つは、実際に現地の介助サービスを利用している方々5名に対するインタビューによる事例研究である。調査はいずれも2007年の3月20日から28日の間に行われた。
  
  <オンタリオ州の概要>
  最初にごく簡単に今回の制度のあるオンタリオ州の紹介をする。オンタリオ州はカナダの中でも東寄りに位置し、カナダの政治経済の中心であり、最も人口の多い州であり、国全体の人口の約3分の1が居住している。州の面積は、日本の約3倍だが、人口は日本の約1割であり、また州のGDPも日本の1割である。障害者の数は、障害者の基準が日本と異なるため比較は困難だが、公式統計では、日本が人口の5%と発表しているのに対し、オンタリオ州では人口の15%であるとされている。
  
  <ダイレクトファンド制度の概要>
  「ダイレクトファンド制度」の概要を説明する。この制度は、障害当事者の長年の働きかけをうけ、カナダ・オンタリオ州にて、1994年より100名を対象としてまず2年間のパイロットプロジェクトとしてスタートした。1996年にその総括がなされ、翌年1998年より数年かけ、対象者を徐々に700名に増やし、本格的に運用が開始された。
  この制度を利用することができるのは、定められた適性があると認められた身体障害者であり、介助サービスに要する費用を、州政府がサービスを利用する当事者自身に直接給付する。当事者は、その給付金を用いて、自身で介助者を雇用する。介助サービスはこの制度以外にもあり、利用者は、それら他の介助サービスと利用を選択することができる。
  しかし、予算に上限があり、1998年には700名に支給することを目標に運用が開始された。介助時間は、呼吸器を利用している場合などの特例を除くと、一人あたり原則月182時間以内、平均すると一日約6時間以内ということになる。いったん給付が決定すると、利用者自身の死亡や転居などの止むを得ない事情がある以外は、制度を利用し続けることができる。
  利用者が申請をすると、当事者同士による協議によって、支給が決定される。この支給の決定、その後の給付まで、すべてがオンタリオ州のトロント障害者自立生活センターが行っており、その意味で世界中の様々な介助サービスの中で「当事者管理という点で最も自律度が高い」1)制度であると言われている。
  
  <結果1 ダイレクトファンド制度の10年>
  今回の聞き取り調査の結果から、ダイレクトファンディング制度の現状について報告する。 前述した通り、ダイレクトファンディング制度は、1994年に100名のパイロットプロジェクトとして始まり、1998年より数年かけて700名分の予算が支給されるようになり、約100名の待機者がいると報告されてきた。その後大きな予算の増大はなかったが、2006年3月に州政府は、40名分の給付増大を目標として約400万カナダドル(約4億3000万円)予算を増大した。しかし、現実には、既存の受給者に対する支給額を増大した結果、全体では20名の支給分増大にとどまった。 2007年2月末時点で、待機者数は313名であり、8年から10年待つ人たちもいる状況である。
  利用者の構成について説明する。年齢は17歳から93歳までと幅広く、年齢層別の構成比では、45~65歳が46%、25〜44歳が35%、その他が19%となっている。性別では、女性が4割、男性が6割となっている。疾患別では、多発性硬化症が166名と最多を占め、脊髄損傷が152名、脳性麻痺が67名とそれに続いている。
  前述したように、一旦ダイレクトファンディングの需給が決定すると、制度をそのまま利用し続けることができるが、平均すると一年間に約30名、全体の4% に当たる利用者が、利用を中止し、新しい利用者と入れ替わっている。その利用中止の理由としては、利用者自身の死亡であったり、施設への入所、サービスを管理する認知機能が低下した場合、オンタリオ州外への転出などがあるとのことである。
  では、次にダイレクトファンディング制度の利用申請者数の推移を報告する。パイロットプロジェクト終了後、97〜98年には2名の申請しかなかったが、以降毎年約100名程度の増大が2001年まで見られている。2001年には、州政府が提供するこのダイレクトファンディング以外の一般的な介助サービスの使用上限を一日2時間までと制限したため、ダイレクトファンディング申請者が急増した。またこの時期、利用者数を700名へと増大させるため、自立生活センターも積極的にダイレクトファンディング制度のPRを実施した。その結果2001年から2002年にかけては524名の増大が見られている。その後、その余波もあり2002~3年には、386名の申請があり、以降149名114名115名119名と近年は比較的コンスタントに100名強の申請が見られている。 なお、この申請者数というのは、申請のすべての段階を含んでいる。申請のプロセスでは、最初の書類申請、書類不備による差し戻し、申請サービス量の適切性の審理中など、さまざまなプロセスを含んでおり、このすべての段階にあるものをカウントしている。前述の待機者数は、すべての申請プロセスを終了し、あとは受給を待つのみ…という純粋に待機状態にある人の数を指している。
  トロント障害者自立生活センターのダイレクトファンディング制度担当者、Ian Parker氏によれば、障害の重度化、加齢、家族の状況の変化などにより、支給金額の増大を要求している既存受給者が多いため、今後はその要求に対応して一人あたりの支給額を増大し、現在の720という供給者数は削減する見通しであるとのことである。そのため、待機時間が15年以上という人も出てくることになるとのことである。
  また、近年は身体の障害以外を対象として、ダイレクトファンディング制度に類似したサービスを模索する動きが見られており、特に知的障害者を対象とした制度が実現へと近づいている。これは当事者自身による管理ではなく家族の管理によるものであり、純粋な意味での当事者による運営ではないが、ダイレクトファンディング制度の持つフレキシビリティや利用者によりコントロールが可能な点が、人々のニーズにマッチした結果ではないかと考えられる。
  また、2007年4月よりオンタリオ州では、医療福祉制度改革が行われており、急性期医療の充実と組織改革に焦点が当てられている。これまでダイレクトファンディング制度を管理・運営してきたCILT(トロント自立生活センター)が、医学モデルの下で運営されているLHINS (Local Health Integrated Networks)という組織の傘下に置かれる可能性もあり、今後の動向に重大な懸念が示されていた。
  
  <結果2 事例紹介>
  次に実際に現地で介助サービスを利用している方々の事例を紹介する。 インタビューを行った5名は、ダイレクトファンドを利用している方が2名、申請中の方が2名。申請をしていない方が1名である。
  

  <事例1>
  事例の一人目は、RT氏20代後半の男性である。この方の障害は筋ジストロフィーであり、子供の頃より、17歳まで母親が主に介助をしていた。しかし本人が交通事故で骨折し、母親による介助が難しくなったことから、地域の介助制度を利用し始めたそうである。しかし、このサービスは最低限の時間のみ。母親も身体を崩し、限られたサービスを組み合わせるのに必死だったそうである。その頃丁度ダイレクトファンディングがスタートしたために応募。呼吸器使用のため、ほぼ日中常に介助者がいる状態である。2006年9月、視覚の障害を持つ女性と結婚。結婚後もダイレクトファンディング制度を利用し続けている。ダイレクトファンディングを利用したことにより、母親との関係にストレスが少なくなり、さまざまなサービスを組み合わせる調整から解放され、より自由になった思いがあり、自分が解き放たれて活発になったとのことである。自分がビジネスを行っているという充実感があり、何よりダイレクトファンド制度を利用できていなければ、妻に介助を全面的に依存せざるを得ず、結婚をためらっただろう…とのことである。
  RT氏の平均的な平日の一日に、介助者が滞在している時間とその間の主な介助業務を示す。介助者はほぼ毎日、朝の8時から夜の11時まで滞在している。 朝8時~9時半にかけては、朝の起床・シャワー・更衣など、朝の身支度に介助者は従事する。 11時から4時までは、RT氏が自立生活センター職員としての業務に従事する介助を行う。4〜6時は夕食作りと食事介助。6時〜10時はデスクワークの介助を行い、10時から11時まで就寝の準備を行う。また、RT氏の収入と支出のおおまかな状況を示す。家計の収入として、自分と奥様の年金と合わせて2人分の年金収入が、一か月約2200カナダドルある。支出としては、家賃・食費・ガソリン代・ケーブルテレビ利用料、電話やインターネット利用料など合わせて一か月約1350ドル程度かかるとのことである。
  ダイレクトファンディングの長所として、介助者の選考・教育がコントロールできることや、介助者を連れての外出が可能なことをあげていたが、同時に短所として、労務管理などの複雑さと責任があること、また全体として全員のニーズに応えるだけの政府予算がないこと、申請手続きが複雑であることをあげていた。 RT氏は、トロント郊外の都市の自立生活センター職員をしており、その職務を通じてダイレクトファンディング制度申請者のニーズの判定をする業務も行っている。
  
  <事例2>
  2人目の方は、MSさん40代前半の女性、頸髄損傷C6機能レベルの方である。14年前に自動車事故にて受傷し、1年間の入院生活ののち、サポーティブハウジングユニット(以下SHU)という介助サービス付きのアパートに転居した。SHUとは、集合住宅の中の一部の部屋に介助を必要とする人が生活し、介助者がその集合住宅の一室に交代で滞在するというサービスである。介助者はあらかじめ決められたスケジュールに沿って、巡回して介助をする。また介助者は24時間滞在するため、緊急時にも呼び出しに応じることができる。
  このサポーティブハウジングは、トロント郊外に272ユニット存在するが、1995年以降新たな建設はされておらず、こちらにも多くの待機者がいる。MSさんは、ダイレクトファンディング制度に申請をしておらず、今後もする予定はないとのことである。
  MSさんの平均的な一日を示す。7:30から9時にかけての朝の身辺処理、10:15から10:30に出勤前の準備に介助者が滞在する。パートタイムの仕事についており、通勤及び仕事時間中は介助者はついていない。帰宅後に15分ほど介助者が滞在して、帰宅後の片づけや休憩をとり、次に4〜6時の間に夕食の準備、部屋の片づけなどをし、夜10時~10時半に就寝の準備をし、夜中の2時に体位交換の介助、朝方5時ごろに週3回ほどの留置カテーテルの処置の介助を依頼するなど、一日に渡って細切れの時間帯に介助を依頼している。MS氏の収入と支出のおおまかな状況をみると、収入として自動車事故の保険金とパートタイムの収入、Long-term disability insuranceと合わせて月に約3500ドルの収入がある。家賃をはじめその他の支出で大まかに月に1600ドルほどの出費があるとのことである。
  SHUを利用し、ダイレクトファンドを申請していないMS氏であるが、両者のサービスについてどのような評価をしているのか? SHUの長所として、MS氏は、24時間のケアが保証されること、細切れの時間のケアの依頼が可能であることを挙げた。一方で、介助者の組合が強く、介助者のサービスが低くなりがちであること、SHUに付属したサービスであるが故に住む所を選ぶことができないことを短所としてあげていた。理想的なサービスとして、ダイレクトファンディングを利用している知人の例を挙げていた。知人が5〜6人で一軒家を借り共同で居住し、ダイレクトファンディングで得た介助費用を出し合うことで、介助者をシェアして生活している。これにより、ほぼ24時間の介助が可能となっている。自分の部屋も持て、24時間介護を受けられ、介助者も自分で選択でき、介助も柔軟に依頼できる…と全てが満たされると述べていた。
  
  <5名のインタビューより>
  インタビューを行った5名が、アテンダントサービスについて語った言葉をテーマ別に分類を行った。その結果、ダイレクトファンド制度を利用している人たちは、この利用により、自分の生活の一切を自らが望むようにできる自由さと悦びを感じ、またそのマネジメントに自己のアイデンティティを見出しているようであった。特に介助者の質が生活の質に大きく関係していることを多くの方が強調しており、介助者の教育を自らできることの大切さを語っていた。しかし、短時間の介助を一日に何度にも渡って依頼したい場合や、24時間の介助を依頼したい場合には、ダイレクトファンドよりもその他のサービスの優位性を訴える声も聞かれた。また、ダイレクトファンドの利用申請を判定する側の経験をした方は、CILTが役所のように煩雑な手続きを要するようになったことを感じ、また利用希望者が提出した介助ニーズが適切であるのか否かの評価が難しいことをあげていた。
  
  <まとめ及び考察>
  ダイレクトファンディング制度に関し、最新の情報を得、また実際に介助サービスを利用している方々に、現在の生活の様子及び介助サービスの利用に関する意見を伺った。介助サービスの選択肢の一つとしてダイレクトファンディングという制度がある点は、選択肢を豊かにし、また当事者がサービス運用・利用の主体となるという当事者自身の主張を実現した点で、世界でも貴重な制度であろう。
  しかし一方で、予算の増大が叶わぬ中での制度の運用は、ある種政府の管理・抑制的要素を当事者自身の中に抱え込むジレンマを作り出している印象を受け、その矛盾・葛藤が感じられた。運用者側は、既存の受給者の高齢化により、個々の供給額を増大させる一方で、総体としての供給者数を削減せざるを得ない状況にある。一方、細切れに一日に渡る介助や24時間に渡る介助サービスの利用を望みながらも、利用時間の増大が望めない利用者側は、共同で居住し、介助者を共有することにより、限られた給付額を有効に活用しようとする様子が見られている。これらの動きをみると、運用から10年が経過し、ダイレクトファンディング制度は新たな段階に入ってきたことが感じられた。障害当事者が自らの意志で作り上げる共同生活は、共同居住に関する日本との文化的な意識の違いがあるものの、限られた予算の中で自らの生活を豊かにしようとする障害当事者の知恵として、今後この動きを見守りながら、考察を深める必要があると思われる。


UP:20070807 REV:20070905
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