| >HOME 長谷川 貞夫 20070916 障害学会第4回大会 於:立命館大学 桜雲会体表点字研究プロジェクト(代表) 長谷川 貞夫 ◆要旨 ◆報告原稿 ■要旨 ●はじめに 点字が世界の視覚障害者の生活に与えた影響には計り知れないものがある。 私は、ルイ・ブライユのアルファベット、数字および、日本の仮名点字体系を含む「六点漢字体系」を構成し、1974年に点字データタイプライタの紙テープを用い漢字を含む日本語入力を汎用コンピュータで行なった。これは、ブライユ符号の日本語への拡張法によるものである。 「体表点字」は、これに対し、ユビキタス環境におけるブライユ符号の新しい表示方法であり、また伝達方法でもある。 体表点字の本質は、従来の指で読む点字と異なり、情報がある場所、すなわち、点字の書かれてある場所に指を差し出さなくても、点字が電波などで体表に情報として伝えられることである。これは、あたかも、言葉が音声情報として音波が耳の鼓膜に到達し、また、文字が文字情報として光線が網膜に到達するのと同じことなのである。 もし、音が電話の受話器のようなものに耳を当てなければ、一切の音声が聞こえず、また、光が顕微鏡の接眼レンズのようなものに目を当てなければ一切の視覚情報が伝えられなかったらどんなに不自由であろうか。点字は、点字の書いてあるところに指を差し出さなければ読めないというのは、このような不自由さと同じことなのである。しかしながら、点字を指で読んでいるかぎり、あまりにも便利なのでこのようなことに気付かない。それだけ、点字を自分で読めるかぎり視覚障害者にとって、かけがいのない便利な文字なのである。ところが、視覚障害者のうち点字を利用できる人が少ない現状を見た時、高年齢における失明など指先だけで読むということに点字普及の限界があるのかとも考える。体表点字は指先の触覚で読むのでないから年齢などによる感覚の鈍さで読めないということはない。 本研究は、*(1)のように共同研究者と行なっている。 ●体表点字の実際 これまでの点字についての概念として、(1)「指点字を含めて指で読む文字である。」(2)「視覚障害者の文字である」という二つの先入観があったと考える。 (1)については、体表点字の現在の研究段階では、体表の感覚に合わせ、直径約1cmの振動子を体表におおよそ2〜10cm程度以上の間隔で2個を装着するだけで点字の6点を充分に表現できることが分かった。 その2個の振動子で点字のマスを伝達できる原理は、点字を上・中・下段に分割し、振動時間と空白時間を合わせた1段を、おおよそ200ms〜400msで送ることにより点字1マスの平面的な形を心理的に形成できることが分かった。この点字1段及び1マスの提示速度は、今後の研究によりなお速めることができると考える。 2個の振動子を装着する体表の部位は、左右を対称に両側頭部、両耳介、両手首背面、両肘付近、両肩、両背部、両骨盤部、両膝付近、両足背、両足底、また、片側の耳介の上端と下端など、上記の各部位の片側における2点でも可能である。そして、掌で、2点を装着した白杖の上端の柄を握った形でも読める。 (2)については、体表点字は、視覚障害者と関係なく、触覚の情報量が、音声や視覚情報より圧倒的に少ないが、人間が確実に文字情報を取得できる情報チャンネルであると言える。したがって、聴覚障害者に対しても聴者への音声による耳からの呼び掛けのように体表からの文字による呼び掛けができるようになるものと考える。既に聴覚障害者に対しその可能性の基礎実験を行なっている。 ●体表点字の応用実験 1. 盲ろう者へのテレサポート 2001年10月にNTTドコモによりサービスが開始されたテレビ電話を利用することにより視覚障害者の目の前の情報を遠隔のサポーターが音声で説明するというテレサポートの実験をサービス開始の10月に行なった。 この場合、盲ろう者は音声では説明を受けられないので体表点字で説明する必要がある。*(1) 2. 自律移動支援への応用実験 点字ブロックにRFIDを埋め、また赤外線マーカーなどで高齢者および視覚障害者などの障害者の移動を支援する「自律移動支援プロジェクト」(国土交通省)*(2)がある。このうちの点字ブロックに埋められたRFIDの信号が音声で伝えられるところを、どのような騒音下でも体表点字により情報が伝えられる実験を行なっている。 ●おわりに 以上から、体表点字は視覚障害者のみならず、人間にとっての音の聴覚による音声言語、光の視覚による文字言語に加えられる新しい体表点字という触覚による文字言語であると考える。 体表点字は、まだ新しい点字の分野であり、訓練によりどこまで速く読めるようになるかについては未知である。 また、応用については、各障害別、および健常者の利用も考えられる。 参考資料 (1) 大墳聡,佐々木信之,長谷川貞夫,原川哲美,“体表点字と携帯電話による盲ろう者への遠隔支援システムの考察,” 電学論(D), vol.126 No.10, pp. 1406-1412, Oct. 2006. (2)http://www.jiritsu-project.jp/siryou/190330/siryo0701.html >TOP ■人間の新しい文字情報チャンネルとしての2点式体表点字システム」 【手話通訳、PC要約筆記等のための読み上げ原稿】 発表者 長谷川 貞夫(桜雲会[おううんかい]体表点字研究プロジェクト代表 ◆内容 (最初にB-brll[ビーブル]という弁当箱ほどの大きさの装置を見せます。 ここからケーブルにつながれた2個のワイシャツのボタンぐらいの大きさの振動子が 付属してあります。) ●はじめに 私は全盲の視覚障害者です。 現在のインターネットなどで代表される情報化時代の始まりは1837年における モールス符号の電信技術の発明に始まります。 ところが、その12年前の1825年に全盲のルイ・ブライユにより点字という符号が 発明されていたことに私は特に注目します。 点字の符号は光が伝えられない人に文字情報を伝える技術としてスタートしました。 モールスの符号は、遠くて情報が伝えられない人に通信で 情報を伝える技術としてスタートしました。 点字が世界の視覚障害者の生活に与えた影響には計り知れないものがあります。 また、情報技術が人類に与えた影響も同じです。 私は、ルイ・ブライユのアルファベット、数字および、日本の仮名点字体系を含む 「六点漢字体系」の点字を組立てました。 そして、1974年に点字データタイプライタの紙テープを用い 漢字を含む日本語入力実験を汎用コンピュータで行ないました。 (ここで、今では珍しいコンピューター用の紙テープを見せます。) 「六点漢字体系」は、ブライユの点字符号の日本語への「拡張法」です。 「体表点字」は、これに対し、ユビキタス環境におけるブライユ符号の新しい 「表示方法」です。また「伝達方法」でもあります。 ・体表点字の本質は、従来の指で読む点字と異なり、情報がある場所、すなわち、 点字の書かれてある場所に指を差し出さなくても、体表点字という点字の方から積極的に 電波などで体表に点字が到達することです。 これは、あたかも、言葉が音声情報として音波が耳の鼓膜に到達し、また、文字が 文字情報として光線が網膜に到達するのと同じことなのです。 もし、音が電話の受話器のようなものに耳を当てなければ、一切の音声が聞こえず、 また、光が顕微鏡の接眼レンズのようなものに目を当てなければ一切の視覚情報が 伝えられなかったらどんなに不自由でしょうか。 ・ 点字が、点字の書いてあるところに指を差し出さなければ読めないというのは、 このような不自由さと同じことだったのです。 しかしながら、点字を指で読んでいるかぎり、あまりにも便利なのでこのようなことに 気付かないで今日までに至りました。 ●体表点字の実際 これまでの点字についての概念として、 (1)「指点字を含めて指で読む文字である。」 (2)「視覚障害を有する人の文字である」 という二つの先入観があったと考えます。 (1)については、体表点字の現在の研究段階では、体表の感覚に合わせ、 直径約1cmの振動子を 体表におおよそ2〜10cm程度以上の間隔で 2個を装着するだけで点字の6点を充分に表現できることが分かりました。 その2個の振動子で点字のマスを伝達できる原理は、 点字を上・中・下段に分割し、 振動時間と空白時間を合わせた1段を、おおよそ200ms〜400msで送ることにより 点字1マスの平面的な形を心理的に形成できるようにします。 ・2個の振動子を装着できる体の部位は、 左右の両耳介、 左右の手首、 左右の肩、 腰のベルトの左右、 左右の足の甲と足の裏、 などです。 (2)については、体表点字は、視覚障害者の文字ということと関係なく、 触覚の情報量は、音声や視覚情報より圧倒的に少ないですが、 「体表は、人間が確実に『文字情報』を取得できる情報チャンネル」 ということです。 したがって、聴覚障害者に対しても聴者への音声による耳からの呼び掛けのように 体表からの文字による呼び掛けができるようになるものと考えています。 既に聴覚障害者に対しその可能性の基礎実験を行なっています。 ●体表点字の応用実験 1. 盲ろう者へのテレサポート テレビ電話を利用することにより視覚障害者の目の前の情報を遠隔のサポーターが 音声で説明するというテレサポートの実験を 2001年10月に行ないました。 この場合、盲ろう者は音声では説明を受けられないので体表点字で説明する必要が あります。 2. 自律移動支援への応用実験 点字ブロックにRFIDを埋め、また赤外線マーカーなどで 高齢者および視覚障害者などの障害者の移動を支援する 「自律移動支援プロジェクト」があります。 このうちの点字ブロックに埋められたRFIDなどからの信号が視覚障害者に音声で 伝えられるようになっています。 しかし、騒音の激しい交通量の多い大通や鉄道の駅では音声が聞こえません。 そこで、どのような騒音の激しい条件の場所でも体表点字により情報が 伝えられるようにするための実験を行なっています。 ●おわりに 以上から、体表点字は視覚障害者のみならず、 人間にとっての音の聴覚による音声言語、 光の視覚による文字言語に加えられる 体表点字という点字を拡張した触覚による体表の文字言語であると考えます。 体表点字は、まだ新しい点字の分野であり、 訓練によりどこまで速く読めるようになるかについては未知です。 また、応用については、各障害別、および健常者の利用も考えられます。 *(共同研究者、参考文献については発表原稿に記載されています。) UP:20070807 REV:20070903 ◇障害学会第4回大会 ◇Archive ◇HOME(http://www.arsvi.com) |