終末期医療のガイドライン(中間答申)
■日本医師会第X次生命倫理懇談会 20070822 「終末期医療のガイドライン」(中間答申)
www.med.or.jp/teireikaiken/20070822_1.pdf
終末期における治療の開始・不開始・変更及び中止等の医療のあり方の問題は、従来から医療の現場の最も重要な課題の1つとなっている。
日本医師会第]次生命倫理懇談会は、終末期医療に際しての医師の対応に関するガイドラインを以下に提示する。
1. 患者が終末期の状態であることの決定は、医師を中心とする複数の専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチーム 注1 によって行う。
2.終末期における治療の開始・不開始・変更及び中止等は、患者の意思決定を基本とし医学的な妥当性と適切性を基に医療・ケアチームによって慎重に判断する。
3. 可能な限り疼痛やその他の不快な症状を緩和し、患者・家族等 注2 の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療及びケアを行う。
4. 積極的安楽死や自殺幇助等の行為は行わない。
終末期における治療の開始・不開始・変更及び中止等、特に中止に際してはその行為が患者の死亡に結びつく場合がある。従って、医師は終末期医療の方針決定を行う際に、特に慎重でなければならない。終末期における治療の開始・不開始・変更及び中止等に際しての基本的な手続きとして、以下のことがあげられる。
1. 患者の意思が確認できる場合には、インフォームド・コンセントに基づく患者の意思を基本とし、医療・ケアチームによって決定する。その際、医師は押し付けにならないように配慮しながら患者と十分な話し合いをした後に、その内容を文書にまとめる。
上記の場合は、時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更に応じて、その都度説明し患者の意思の再確認を行う。また、患者が拒まない限り、決定内容を家族等に知らせる。
なお、救急時における医療の開始は原則として生命の尊厳を基本とした主治医の裁量にまかせるべきである。
2.患者の意思の確認が不可能な状況下にあっても「患者自身の事前の意思表示書 注3 (以下、「意思表示書」という。)」がある場合には、家族等に意思表示書がなお有効なことを確認してから医療・ケアチームが判断する。また、意思表示書はないが、家族等の話などから患者の意思が推定できる場合には、原則としてその推定意思を尊重した治療方針をとることとする。
なお、その場合にも家族等の承諾を得る。患者の意思が推定できない場合には、原則として家族等の判断を参考にして、患者にとって最善の治療方針をとることとする。家族等との連絡が取れない場合、または家族等が判断を示さない場合、家族等の中で意見がまとまらない場合などに際しては、医療・ケアチームで判断し、原則として家族等の了承を得ることとする。
上記のいずれの場合でも家族等による確認、承諾、了承は文書によらなければならない。
3.上記 1.及び 2.の場合において、医療・ケアチームの中で医療内容の決定が困難な場合、あるいは患者と医療従事者との話し合いの中で、妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合などに際しては、複数の専門職からなる委員会を別途設置し、その委員会が治療方針等についての検討・助言を行う。
以上、終末期における治療の開始・不開始・変更及び中止等に関しその手続きについて述べた。終末期の患者が延命措置を拒否した場合、または患者の意思が確認できない状況で患者の家族等が延命措置を拒否した場合には、このガイドラインに沿って延命措置を取りやめた行為について、民事上及び刑事上の責任が問われないような体制を整える必要がある。
注1) 医療・ケアチームは原則として主治医、主治医以外の1名以上の医師、看護師、ソーシャルワーカー等の医療従事者から構成される。在宅医療に際しては、在宅療養に従事する医師の判断を支援するシステム(例えば委員会の設置等)を地域の医師会で構築する必要がある。その際、支援する地域の医師会の委員会は内規を定めるとともに会議の議事録を保管する。
注2) 家族等とは、法的な意味での親族だけでなく、患者が信頼を寄せている人を含む。なお、終末期を想定して患者にあらかじめ代理人を指定してもらっておくことが望ましい。
注3) 患者自身の事前の意思表示書とは、患者があらかじめ自身の終末期医療に関して指示している書面のことをいう。
終末期医療の方針決定に至る手続き
図:略(PDFファイルをご覧ください)