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「北九州市餓死事件への取り組みのお願い」

難病をもつ人の地域自立生活を確立する会 2007/07/19

last update: 20151224


難病をもつ人の地域自立生活を確立する会の山本さんより

 難病の会 山本です
すでに、ご存知の方も多いと思いますが、
北九州市でおきてはならない餓死事件が繰り返されてしまいました。[…]
 生活保護廃止の手続きは、新聞報道を見る限りにおいても、極めて
問題のある対応がされています。詳細について以下の、新聞報道をご参照く
ださい。
 同じ内部障害、慢性疾患をもつ当事者団体としても、今回のような事件が北
九州だけでなく、全国で決して繰りかえされることがないように、このような
結果を生じさせた原因の徹底した解明と制度改正に向けた周知徹底を北九州市
と厚生労働省、各担当部署に求めます。

 少しでも多くの団体と、今回の起きた事件の問題を共有し、ともに取りくん
でいきたいと思っております。以下の声明に賛同いただける団体の連名をお願
いいたします。是非ともご協力のほど、よろしくお願い致します。

 連名をいただける団体は7月22日(日)(第1次集約日とします。それ以
降の2次集約も7月一杯をめどに受け付けいたします)までに
@ 団体名
A   代表者名
B 住所
C 連絡先
D 担当者
を明記のうえ、下記FAX、Mail先までご連絡ください。
<連絡先>
難病をもつ人の地域自立生活を確立する会(担当山本創)
FAX 03−5282−0017
Mail h.y.mg@k8.dion.ne.jp
お問い合わせ先 
TEL03−3296−7137 
携帯090−6193−1232(山本)


================以下申し入れ書===============
=====

北九州市餓死事件の真相解明と改善に向けた周知徹底を求める


 7月10日、北九州市小倉区で男性(52)が自宅で孤独死していたことが新聞各
紙で報道された。

<新聞報道等で明らかになっている経緯>

男性は肝臓の病気で通院、「病気で働けない」と生活保護を申請。12月26日から
生活保護を受けること
になったが、今春、事務所が病気の調査をしたうえで男性と面談し、「そろそろ働い
てはどうか」と勧め、
男性は「では、働きます」と応じ、生活保護の辞退届を提出。この結果、受給は4月
10日付で打ち切られ
た。この対応について男性は日記に「働けないのに働けと言われた」などと記してい
た。1カ月ほど前に男
性に会った周辺の住民によると、男性はやせ細って、「肝硬変になり、内臓にも潰瘍
(かいよう)が見つかっ
てつらい」と話していた。小倉北区役所の常藤秀輝・保護1課長は「辞退届は本人が
自発的に出したもの。
男性は生活保護制度を活用して再出発したモデルケースで、対応に問題はなかった
が、亡くなったことは
非常に残念」と話している。


同じ内部障害、慢性疾患をもつ当事者として、自分を死まで追い詰めていった心情、
また追い込んでいった
対応のあり方は、悔やんでも悔やみきれず、憤りを感じざるをえない。失われたのは
尊い命である。北九州
市では2005年(平成17年)と2006年(平成18年)にも保護が認められ
ず、孤独死した事件が報じられて
いる。生存権すら保障されない事件が起き続けている。「あってはならない」感覚が
失われ、放置されること
に慣れてきていないか危惧する。2度とこのような事件が、北九州市、又全国でも起
きないように、このよう
な結果を生じさせている原因の徹底した究明を求める。


<明らかにすべき点>

@ 何故、実際の収入が保護基準を上回る以前に、生活保護を廃止にしたのか。
例え、就労していたとし
ても、実際の所得が、憲法25条で保障されている、必要最低限の生活保護基準を下
回る場合は、生活保護
は継続される。又、保護基準以上の収入があっても、疾病等の理由で就労が安定しな
い場合等は、生活保護
を廃止するのではなく、停止しその経過を見守ることは運用上明記されている。その
ことの周知徹底、ケースワ
ークはどのようにされていたのか。なぜ実際の収入もない状態で、辞退届けの手続き
が行われたのか。

A どのような調査を行ったうえで、就労可能としたのか。事前に北九州市で
あった餓死事件では、健康状態
において、保健師との意見の齟齬も生じている。就労可能と判断した根拠を明らかに
すること。

B たとえ働けたとしても、無理をした働き方をすれば、障害が悪化することは
明らかである。肝機能障害等に
よる稼得能力の減退といった、症状に合わせた働き方の指導はされていたのか。又、
就職活動をしなさいとの指
示だけでなく、厳しい雇用情勢の中、実際に職につくまでの支援はどのようになされ
ていたのか。就職活動中も生
活保護は継続されることの周知徹底はされていたのかどうか。

C 現行の日本の福祉施策は、臓器別や疾病別に規定された対象要件がある。肝
機能障害等の継続的な体力
の制限、疲れやすさは同じ内部障害でも臓器や疾病が違うために勘案されることな
く、様々な雇用施策の対象要件
となっている障害認定も取れず、障害年金制度の対象にもなりにくい現状にあり、
「福祉制度の狭間」にさらされてい
る。生存権を保障する生活保護が唯一生活を成り立たせる最後のセイフティーネット
となっている現状である。このよ
うな制度上の不備を放置したまま、すべてを本人の努力不足、自己責任として、限度
以上の労働を課すこと、又は実
雇用にすら結びついていない、名ばかりの就労支援を口実として生活保護を打ちきる
ことがどのような結果をもたら
すかは、人の生活、命を扱う生活保護のケースワークを行うものとして最低限把握し
ておくべきことである。どのよう
に認識していたのか明らかにすること。

D 北九州市が説明するモデルケースとは何をさしているのか。このような事件
がモデルケースとして全国に紹介
され、同じような立場にある方々に繰り返されれば、人命におよぶ事件が多発しかね
ない。何をもってモデルケース
と説明しているのか明らかにすること。



以上、保護記録の開示等をふくめた、徹底した原因の究明や問題のある生活保護行政
のあり方の改善を求める。
「失われてはならない命」が失われるようなことが、全国においても2度とあっては
ならない。そのためにも、北九州市
だけでなく、生活保護行政をおこなう厚生労働省も、このような事態がおこっている
原因究明を徹底して行い、改善す
べき点の検証、同じようなことが繰り返されることがないように、指導の徹底と、福
祉制度上の不備を早急に改正する
こと。

<申し入れ団体>
難病をもつ人の地域自立生活を確立する会
代表  山本 創        
〒101‐0054             
東京都千代田区神田錦町3-11-8武蔵野ビル5F                 
                
TEL/FAX03-3296-7137 Email living@y5.dion.ne.jp

==============以下新聞報道より================
=====

http://www.asahi.com/national/update/0711/SEB200707110049.html
日記に「おにぎり食べたい」 生活保護「辞退」男性死亡
2007年07月11日16時16分

 北九州市小倉北区の独り暮らしの男性(52)が自宅で亡くなり、死後約1カ月
たったとみられる状態で10日に見つかった。男性は昨年末から一時、生活保護を受
けていたが、4月に「受給廃止」となっていた。市によると、福祉事務所の勧めで男
性が「働きます」と受給の辞退届を出した。だが、男性が残していた日記には、そう
した対応への不満がつづられ、6月上旬の日付で「おにぎり食べたい」などと空腹や
窮状を訴える言葉も残されていたという。
 市などによると、10日、男性宅の異変に気づいた住民らから小倉北福祉事務所を
通じて福岡県警小倉北署に通報があり、駆けつけた署員が部屋の中で、一部ミイラ化
した遺体を発見した。目立った外傷はなく、事件の可能性は低いという。
 男性は肝臓を害し、治療のために病院に通っていた。市によると、昨年12月7
日、福祉事務所に「病気で働けない」と生活保護を申請。事務所からは「働けるが、
手持ち金がなく、生活も窮迫している」と判断され、同月26日から生活保護を受け
ることになった。
 だが、今春、事務所が病気の調査をしたうえで男性と面談し、「そろそろ働いては
どうか」などと勧めた。これに対し男性は「では、働きます」と応じ、生活保護の辞
退届を提出。この結果、受給は4月10日付で打ち切られた。この対応について男性
は日記に「働けないのに働けと言われた」などと記していたという。
 その後も男性は働いていない様子だった。1カ月ほど前に男性に会った周辺の住民
によると、男性はやせ細って、「肝硬変になり、内臓にも潰瘍(かいよう)が見つ
かってつらい」と話していたという。
 小倉北区役所の常藤秀輝・保護1課長は「辞退届は本人が自発的に出したもの。男
性は生活保護制度を活用して再出発したモデルケースで、対応に問題はなかったが、
亡くなったことは非常に残念」と話している。
 同市では05年1月、八幡東区で、介護保険の要介護認定を受けていた独り暮らし
の男性(当時68)が生活保護を認められずに孤独死していた。06年5月には門司
区で身体障害者の男性(当時56)がミイラ化した遺体で見つかった。この男性は2
回にわたって生活保護を求めたが、申請書すらもらえなかった。
 こうした市の対応への批判が高まり、市は今年5月、法律家や有識者らによる生活
保護行政の検証委員会を設置し、改善策を検討している。
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http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070711i416.htm?from=main4
生活保護辞退の52歳が孤独死、日記に市への不満…北九州

 北九州市小倉北区の無職男性(52)が10日、自宅で孤独死しているのが見つ
かった。男性は、2006年末から生活保護を受けていたが、同区役所職員から就職
を促され、今年4月に受給を辞退していた。
 男性は自宅に残された日記に「働けないのに働けと言われた」「おにぎりが食べた
い」など市への不満などを書いていた。市は「対応は適切だった」としている。
 市などによると、近所の人らが10日午前10時半ごろ、巡回中の同区職員に「1
か月ほど男性を見ない。家から異臭がする」と伝えた。通報で駆けつけた福岡県警小
倉北署員が男性方の室内で男性の遺体を発見した。死後1か月以上とみられ、一部ミ
イラ化していた。事件性はないとみている。
 男性は肝臓の病気などで通院。06年12月7日、生活保護を申請した。市は「働
けるが、当座の生活費がなく、電気やガスなども止められ生活は窮迫している」とし
て同26日から保護を開始。市は男性に5回、就労指導した。今年4月2日の指導の
際、男性は「自立して頑張ります」と話して辞退届を提出。同10日付で受給が打ち
切られた。
 同市の三崎利彦・保護課長は「対応は適切。亡くなったのは残念だが、保護を打ち
切った後のことで、市の保護行政とは直接関係はない」としている。
(2007年7月12日1時41分 読売新聞)
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http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/040/040_070712.htm
生活保護辞退の男性孤独死、北九州市「対応問題ない」

 小倉北区の無職男性(52)が10日、自宅で孤独死しているのが見つかった問題
で、北九州市は11日夕、記者会見し、「残念な結果だが、市の対応に問題はなかっ
た」と主張した。しかし、男性は死の約1か月前、周囲に「肝臓が悪くて働けない
し、お金もない」と漏らし、生活苦はピークに達していた。男性の知人らは「何とか
ならなかったのか。あまりにも寂しすぎる死に方だ」とやり切れない表情を浮かべ
た。
 市によると、昨年末から男性に生活保護を支給し、並行して就労指導を続けた。今
年4月、男性が「働きます」と話し、保護辞退届を提出した。
 会見した菊本誓・同区参事は「保護開始から打ち切りまでの流れはモデルケースと
言えるほど適切だった」と説明。三崎利彦・市保護課長は「担当職員は威圧的な態度
を取っておらず、男性も反発しなかった」とした上で、「打ち切り時も『困ったこと
があったらまた来てほしい』と呼びかけた。今回の死亡は生活保護行政と関係ない」
と、市側の責任を全面否定した。
 一方、周囲の住民によると、最後に男性の姿を見たのは約1か月前。やせこけ、顔
色も悪かった。男性の知人(79)は、男性が「体が疲れやすく、働けない。首をく
くるしかないかも」と寂しそうに笑ったのを覚えている。
 市では現在、昨年発覚した門司区の男性孤独死問題を、有識者による検証委員会な
どで調査中だ。今回の問題について、三崎課長は「委員から求めがあれば別だが、市
から積極的に取り上げてもらうよう働きかけることはない」と述べた。
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http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/seibu/shakai/news/20070712ddp041040017000c.html
孤独死:北九州市小倉の男性、4月に生活保護辞退届
 北九州市小倉北区明和町の民家で一人暮らしの男性(52)が死亡しているのが見
つかった。死後約1カ月とみられる。男性は生活保護を受けていたが、市の就労指導
を受けて4月に辞退届を出し、5月以降は受給していなかった。
 北九州市保護課や福岡県警小倉北署によると、10日午前、近所の人が「男性宅の
様子がおかしい」と市職員に通報。警察官が確認したところ男性が家の中で死亡して
いた。外傷はなく、警察は病死とみて調べている。
 男性は昨年12月から今年4月まで月額約8万円の生活保護を受けていた。ケース
ワーカーが面接のたびに就労を指導し、4月2日に「自立してがんばる」と自ら保護
辞退届を出した。一方、残されていた日記には「働けないのに働けと言われた」
「(窓口が)冷たい」などの不満も書かれていたという。
 市によると、主治医が2月末に「就労に問題はない」と診断した。三崎利彦・市保
護課長は「働けるのであれば就労を指導するのは当然。無理強いはしておらず誤った
措置はなかった。『困ったことがあれば来訪を』と伝えていたので、日記の記述は意
外だった」と話した。【古川修司】
毎日新聞 2007年7月12日 西部朝刊
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p://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/fukuoka/20070712/20070712_015.shtml
北九州の52歳男性 生活保護辞退し孤独死 日記に「働けと言われた」

 北九州市は11日、同市小倉北区の独り暮らしの男性(52)が自宅で亡くなり、
死後約1カ月たった状態で見つかったと発表した。男性は昨年12月から生活保護を
受けていたが、今年4月に就労の意思を示し、受給を辞退していたという。自宅に残
された男性の日記には、市側の対応に不服を訴える記述があった。
 同市によると、10日午前、男性宅の異変に気付いた住民が、小倉北福祉事務所を
通じて小倉北署に通報。同署員が一部ミイラ化した男性の遺体を発見した。外傷はな
く、病死の疑いがあるという。
 男性は昨年12月7日、「病気で働けない」として同事務所に生活保護を申請。同
事務所は病状を確認した上で「働けるが、水道が止まるなど生活ができない状態」と
して、同月から月額約8万円の生活保護費の支給を決めた。
 今年に入り、男性の主治医から病状回復の報告があったことなどを受け、同事務所
は男性に就労を促した。男性も求職活動を始めたと報告し、4月2日に「自立して頑
張る」として生活保護の受給を辞退したことから、同事務所は同10日付で廃止し
た。その後、男性から連絡はなかったという。男性の日記には「働けないのに働けと
言われた」「おにぎり食べたい」などと書かれていた。
 市は「男性が働けると判断した。生活保護の廃止は適切だった。廃止後のことは把
握していない」と話している。
=2007/07/12付 西日本新聞朝刊=
2007年07月12日01時42分

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http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-07-12/2007071215_01_0.html
2007年7月12日(木)「しんぶん赤旗」
生活保護打ち切られ
北九州で男性孤独死
日記に就労指導の不満記す
 福岡県北九州市小倉北区に住む男性(52)が、今年四月に生活保護を打ち切ら
れ、孤独死していたことが十一日、わかりました。孤独死した男性は今月十日、自宅
で一部ミイラ化した姿で見つかっていました。男性の日記には、生活保護の打ち切り
や市による就労指導に対する不満が複数記されていたといいます。
 市などによると、男性は昨年十月までタクシー運転手として働いていましたが、糖
尿病やアルコール性肝障害のため仕事を辞め、昨年十二月七日に福祉事務所に生活保
護を申請。自宅は電気、水道も止められており福祉事務所は昨年十二月二十六日から
生活保護の支給を開始していました。
 今年に入り福祉事務所は、「(この男性の病気を診察した医者が)軽就労は可能と
の診断を下した」として、男性に就労を指導。「男性本人が働く意思を示した」とし
て、今年四月十日付で生活保護を打ち切りました。
 ところが、男性は生活保護打ち切り後も仕事に就けず自宅で死亡。死後一カ月が経
過したとみられる状態で発見されました。
 事件の一報を受けこの男性宅に向かった日本共産党の大石正信北九州市議は、近隣
の人たちの話として、その男性は亡くなる直前「寝たきりで、見るからにやせこけて
土色の顔をして、食べるものもない様子だった」「道端の草を食べて飢えをしのいで
いた」といいます。
 男性が記していた日記からは、「働けないのに働けといわれた」とする趣旨の言葉
が複数見つかっているといわれ、行き過ぎた就労指導が死に追いやった可能性があり
ます。
 十一日、北九州市役所で記者会見した同市小倉北区役所の菊本誓参事は「亡くなっ
た男性の生活保護の打ち切りは本人の納得に基づくもので、行政上の問題があったと
は考えていない」とコメント。同市の就労指導についても「問題はない」と話してい
ます。
 北九州市では、昨年五月に門司区で、電気、水道、ガスのライフラインをすべて止
められた身体障害者の男性(56)が二度も生活保護受給を求めたにもかかわらず、
申請書すらもらえず餓死した事件が発生。同市では検証委員会を立ち上げ、同市の生
活保護行政の問題を検証中です。
異常な生活保護行政
 大石市議の談話 今回の事件は、市の就労指導が本人の健康状態や意思を無視して
行われていたといえます。昨年の門司区の餓死事件につづき、異常な生活保護行政が
新たな犠牲者を出したと断ぜざるをえません。北九州市の異常な生活保護行政は“闇
の北九州方式”として、社会問題になっています。日本共産党は、一貫して生活保護
の改善を市に迫ってきましたが、今回の事件の真相解明を求め、生活保護行政の対応
を根本的に改めるよう運動をつよめたい。
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生活保護辞退、職員が指導 念書「お手本」例示も 北九州市 【西部】
2006.09.01 朝日新聞西部朝刊 33頁 1社会 写図有 (全1,144字) 

 北九州市の福祉事務所の職員が、生活保護の受給者に「辞退届」と呼ばれる念書を
書かせ、保護の廃止につなげているケースが相次いでいることが分かった。職員自ら
が「お手本」を書いて示し、文言を指導するケースもあり、保護費の短期支給の交換
条件に使われる例が多い。受給者が内容を理解しないまま書くこともあり、問題視す
る声も出ている。(園田耕司)
 60代の男性は05年2月、市に生活保護を申請した。翌3月、申請日にさかの
ぼって2、3月分の保護費(生活費)を受給した。
 3月末、福祉事務所に呼ばれた。担当のケースワーカーは男性の目の前でA4判の
紙に文言を書いた。「自ら強い意志で自立する。ついては、住宅費の支給は、保護開
始時分からお願いできませんでしょうか? 4月中に就職する目途を立てますので、
勝手ですが5月分保護費まで支給できませんでしょうか?」
 ケースワーカーは「これを織り込んだ文章を書きなさい」と辞退届を書くよう求め
た。男性は当時、求職活動をしていたが仕事が見つからない状況だった。4月中の就
職は無理だと感じ、「納得できないので書きません」と拒否した。男性は今も保護費
を受給している。
 市保護課によると、このケースワーカーは「男性の処遇指導を分かりやすく示すた
め文書化した」という。辞退届は就職などで保護が不要になった時、行き違いを防ぐ
ため書いてもらっている。大嶋明課長は「あくまでも本人の意思によって書かれるべ
きもの。結果的に不適切だった」と話している。
 また市内の元ホームレスの50代の男性は05年4月、腎臓の病気で入院して保護
を申請した。5月下旬に退院する際、ケースワーカーが病院に来て4、5月分の保護
費を支給。その際に辞退届を求められ、男性は言われるがままに「生活保護を辞退し
ます」と書いた。その後、保護は廃止された。
 男性は「ケースワーカーが言うことなので従った」と話す。男性は後に保護を再申
請し、今は保護を受けている。
 低所得者の生活改善に取り組む市民団体「北九州・八幡生活と健康を守る会」によ
ると、「辞退届を書かされて保護が打ち切られた」という相談は、年に十数件ある。
吉田文弘会長は「辞退届を書かせる際に何らかの交換条件をちらつかせるため、ほと
んどの人は重大性が分からないまま書いてしまう。辞退届は保護廃止とセットになっ
ていると言っていいほど、現場で常態化している」と指摘している。
 ◇届け出の運用、適正な範囲で
 厚生労働省保護課の話 辞退届について、国は何も基準を設けていない。運用は、
それぞれの現場の判断で行われている。個別のケースを把握していないが、辞退届が
出た後に、「強要された」との批判が出るのは好ましくない。適正な範囲で運用すべ
きだ。
 【写真説明】
 北九州市のケースワーカーが書いた辞退届の「お手本」

UP 20070726
 
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