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いのちの回廊 生と死の地平 オランダ編6月8日記事について
抗議及び要望書

2006年6月20日

北日本新聞社代表取締役社長 梅沢直正 様

富山市五福3734−3 NPO法人 文福
理事長 八木 勝自 TEL/FAX 076-441-6106

last update: 20151224


  私たちNPO法人文福は今から3年前に、どんな障害があろうと皆が安心して地域社会で生活が出来るようにしていきたいと、障害者と健全者で活動してきている団体です。この目的を実現するために、ヘルパー派遣事業やレクリェーション、移送サービス、連続学習会や映画上映会など幅広く、いろんな人との関わりを大切にしながら活動して来ています。
  しかし、去る3月25日の射水市民病院人工呼吸器取り外し事件以来、この事件をきっかけに社会状況は、一気に終末期医療を中心に、ガイドライン作り、「尊厳死」法制化に向けて動き始めました。
  私たちはどんな障害があろうと、あたえられた命を大切にして生きていくことが当然の事だと思っています。その視点から、今回の射水市民病院の事件に対しても激しい憤りを感じていました。
  その中で、貴社はそれ以前からずっと『いのちの回廊』という欄を設けて医療問題に関心を持ってこられたことは、ある程度評価していました。ところが最近になって『生と死の地平』という海外編で、「安楽死」の国という事でオランダを四回にわたって取り上げられ、特に6月8日の三回目は、まるで「安楽死」を美化し、推進するかのごとく、貴社からの何のコメントもなく記事として載せてありました。
  これに対しては、激しく抗議します。なぜなら、1994年秋にTBSが『依頼された死』というドキュメンタリー番組で、オランダの「安楽死」について貴社と全く同じ報道をした事がありました。その時も、オランダという国民性や文化などの違いを抜きに、ただ単に「安楽死」という実例を挙げただけでした。これに対して放送直後から、当事者団体や各関係団体から激しい抗議が、寄せられ、次週でTBSが謝罪したという経過があります。そういう過去の事例があったにも関わらず、貴社には「安楽死」問題を取り扱う時の配慮が全くありません。何故、事例だけをそのまま載せられたのでしょうか?
  オランダの「安楽死」の歴史は古く1970年代から行われており、いくつかの事件を契機に、論議が巻き起こり法制化されました。95年のNHKが行った実態調査では、法制化されてからは「安楽死」の条件がだんだん拡大されていき、本人の意思だけではなく家族の意思や背景に複雑な家庭状況があったというし、未成年者や精神科患者の意思も認めるようになり、健康な人でも対象になるという報告があります。また、法制化が年を重ねていく中で医師が権限を持っているので、「安楽死」を促すなどの事例があったとも報告されています。そしてオランダの医師連盟は「ケアがイギリスと同じようなレベルだったら『安楽死』を必要とする人は減少するだろう」と言っています。
  このような実態をどこまで把握し取材して来られたのか、ものすごく疑問に感じます。この記事だけを読んだ人たちが、どう受け取るかは、全く考えておられなかったのでしょうか?
  「安楽死」を選択するまでに、医師からあらゆる説明がなされての結果なのか、この記事からは全くわかりませんでした。同じ病気(ALS)の人たちが人工呼吸器をつけて生活しているとかが、全然書かれていませんでした。また、この記事からは、治る見込みのない者は、自ら死を選ぶのがまるで美徳であり、「安楽死」を選択する事が如何にも良い事であるように書かれています。治る見込みのない者が、いつまでも生きている事が「死ぬ勇気がない」、「臆病者である」かのように思わせるような表現で描かれています。これは、今の「尊厳死」法制化に拍車をかけるものでしかありません。改めて強く抗議します。もっと、公正中立な立場で改めて記事を載せられるように、また、日本の当事者の取材も含めてされるよう、そして貴社の意見を聞く場を設けられる事を強く要望いたします。
  この抗議及び要望について6月いっぱいまでに何らかの返答をお願いします。


 

 *MSワード版 http://www.arsvi.com/2000/0606b.doc

 

  [報告]

  6月20日に、理事長と私と介助者の4人で北日本新聞社に行き、抗議及び要望書を渡してきました。
  まず、渡した文章を読んでもらってから、私たちが今回何故抗議したかという説明を対応に出てきた人に話しました。
  相手の人は『私たちは決して「安楽死」を推進しようという意図はないです』と言われましたが、しかし、「この記事だけを読んだ人は、そう受け取るのではないか」と言うことを繰り返し話ました。その中で、「他の国がどうなっているのか知らせて皆に考えて欲しいと思って取材に行った」「オランダ編だけで4回あるので全部読んでもらえたら、意図は分かると思います。」との事でした。
  こちらとしては『「安楽死」の問題を載せるなとは言っていない、載せる時の配慮があまりにもなされていなかったのではないか』『「安楽死」に対して、もっと公正中立な立場で記事を書いて欲しい』「このシリーズの最後で良いから、日本の同じ病気の患者さんの取材とかこのような抗議とか意見があった事を是非載せてほしい」また、「この抗議文を受けて、編集部の人たちがどう思ったのかを、簡単で良いから文章にしてこちらに送って欲しい」「できれば、意見交換が出来る場を作って欲しい」と言いました。それに対しては、「そういう要望は分かりましたが、私の一存では決められないので、持ち帰って検討させてください。」という事で、話し合いは終わりました。
  簡単ですが、まとめて見ました。何らかの誠意ある返事が来る事を期待して待っているところです。
                 文責 河上千鶴子 (アパッチより。)


UP 20060624
安楽死・尊厳死  ◇安楽死・尊厳死 2006  ◇安楽死・尊厳死 オランダ  ◇射水市民病院での人工呼吸器取り外し

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