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精神病の原因、どこが病んでいるか

精神保健福祉コンシューマー 桐原 尚之 2006/04/28

last update: 20151224


1章 今までの治療

  精神病、精神障害、これらの原因は現在の医療では脳の気質的なものといわれております。少し前まではこころの病と言われておりました。過剰なストレスが原因とも言われております。先天性の障害と言う説もあります。これらの原因にともなって、いままで医療は治療をしてきました。しかし、これらの治療で思わしい効果は殆どありませんでした。また、障害学という新しい分野の著しい回復も、これといった完成された理論は実際のところありませんでした。あいまいではあるが確かに存在して、効き目が高いというところでした。

2章 今までの治療に対する本当の答え

1、脳の神経伝達物質の効果(ドーパミン仮説)を否定します
  ドーパミン仮説は脳の気質的な障害と言う理論のもと、向精神薬の投与によって脳内のドーパミンの量を強制的に通常の量に戻すというものです。向精神薬の治療は効果があるといわれておりますが、私の目から見ればとても効果があるとはいえません。それは病者といわれる立場であれば誰しもがわかると思います。向精神薬の治療が効果なしである以上、ドーパミン仮説は否定されるべきです。

2、軸策の繋がり方に問題がある、はずありません
  かつて、ロボトミーと言う脳神経手術がありました。精神医療の大失敗のひとつです。これが間違いであったことはすでに医療が認めているので詳しくは書きません。ただいえることは脳の軸策を通常の通りにするために脳の軸策を切り離すというのは間違いであることを医療が認めたことから、この仮説は否定されるべきです。

3、ストレス性のこころの病が強大化した、とも思いません
  ストレスは現代社会には考えられないほど多いです。いまや精神病は流行の病のようになっています。街中の心療内科がどんどん増えていきます。いまや精神病がきちがいとの認識も薄まりはじめ、ストレスのためにこころを病んだ人というイメージが強まっています。数年前のこころ(メンタル)ブームもその原因のひとつでしょう。
  しかしストレスによって発症する病気だったのでしょうか?多くの人、日本人の90%以上が強大なストレスによって苦しむ中、一部だけが精神を病むのも不自然な話です。実際のところ、『苦しい事』が『病気』にイコールできないと思うのです。『苦しい事』は『乗り越えられる深刻な感情的苦痛』といえます。乗り越える事が『我慢する事』ではなく『ともに乗り越えるもの』という視点ではないと苦しくなりますので、ここは絶対勘違いしないで欲しいです。『頑張ること』と『我慢する事』は全く違います。
  つまり、不治の病とはとても言いにくいのです。しかし、ストレスは何かにからんでいることは認めます。

4、本当は精神病なんて存在しない、とも言いたくないです
  一部の人が精神病の存在を完全に否定しております。そんな病気ないという事です。人々が個性の中で排除されたときに、医療が定めて国が作った『精神病』と言う枠組みに無理やりおしこんでレッテルを貼る国家犯罪という考え方です。精神病ではなくユニークな人で良いのではないかという仮説です。これも一概に否定できないと私は思っていましたが、精神病ではなくても私たち病者の枠組みにいる人にはある程度の共通点があり、それをほおっておくのも解決にはつながらないと思っています。私たちの課題解決には病気でなくても、この枠組みが何なのかを解る必要があります。そうでないと解決はできません。つまり何かしら存在するものがあり、それをあえて精神病という名前にもできることから、精神病はないとはいえません。

5、リカバリー、エンパワメント、ピアサポート
  障害者自身がセルフヘルプと言う医療否定による本当の治療のようなものをうみ出しています。このセルフヘルプこそは間違いのない効果を持っていると思っています。医療回復をする人はみたことがありませんが、セルフヘルプ活動で回復した人は随分見てきました。医療にいても結局は回復するときは仲間がいて回復します。つまり、当事者の学問『障害学』が一番有力な治療効果を持っています。しかし、理論としてはなかなか難しいところもあります。この考え方はどこが病んでいるのかという具体的なものがありません。人との繋がりを喪失したとか、孤立したとか、原因が大まかで医療の否定に傾いている傾向があります。この理論もまた効果が絶大で強くはありますが、完成はされていません。

  今までの有力な仮説を並べました。どの仮説に対しても完成されていないと言う共通点があります。ドーパミン仮説やロボトミーは特に否定されるべき理論であることは解っていただきたと思います。
  しかし、新しい分野の3,4,5は否定されるべきではないが、完成されていないということが事実として浮かび上がっております。本論文では、この3,4,5の効果があるが完成されていない理論を、完成させるための理論によって真の原因を明確にあらわすことを目的とします。また、今まで完成されていなかった為、1,2の意味のない(不利益な)医療に否定されがちであり、そこから人や社会が悪化していきました。そのような1,2を完全に否定して社会をよりよくする目的も、本論文は兼ねております。

3章 精神病の原因

  病んでいるところがどこなのか?いままでこの答えははっきり出ていません。もちろん間違った答えはたくさんありました。正しい答えは障害学(当事者学)でもギリギリでていません。

ピアサポート、エンパワメント、リカバリーの趣旨
  ピアサポートはお互いに変わろうと言う意味があります。ピアヘルパーがいるとします。障害者がヘルパー2級を取得してただヘルパーとして働いたとします。掃除して御飯作って帰るだけの普通のヘルパーを障害者がやるのです。それはピアヘルパーと言えるでしょうか?これは障害者のヘルパーと言うのではないかと思います。ピアヘルパーは仲間として一緒にやっていこうと言う意思が必要だと思います。利用者と言われる人はいずれヘルパーになったりして成長をしていきます。協力しながらやっていくことがピアヘルパーの最低条件といえるでしょう。では、利用者が「飯を作って掃除したらかえってくれ!俺は成長なんてしたくないんだ!」と言ったらどうなるでしょうか?ピアヘルパーは必要なくなり、その時点で障害者のヘルパーになってしまいます。つまりお互いに『ピアヘルパーの最低条件』があって始めてピアヘルパーになれるのです。ピアサポートはお互いの関係があってお互いに成長するので『ピア・対等』なのです。
  エンパワメントという考え方も同じで、相手を信頼し相手から信頼されという関係の中で成長していくことを主にさします。つまり自分がいくら頑張っても相手が私を信頼しないと、関係が成り立たないのです。
  このようなピアサポート、エンパワメントによってリカバリー(回復)すると言うものが重要な趣旨です。

病んだ場所
  病んでいる場所はあくまで自分(ヒト)の体ではないです。実は、私とあなたの間にあるコミュニティ(繋がり・関係)が病んでいるのです。私がわるくなくても相手によっては関係が病んでしまう事があります。もし自分の周りに人が一人もいなかったら、病む事はないでしょう。精神病はなくなります。
  また、情報障害と言う言葉があります。障害者には情報に関するハンディがあるということです。視覚情報、聴覚情報、伝える情報、情報を記憶するもの、発信する情報などそれぞれがハンディを持っていると言う考え方です。これで言うと、情報発信障害にあたるようですが、情報の発信は受け取る側によっても随分変わってきます。やはり相手あっての考えなのです。
  病気が存在しないという理論もこの考え方だと理屈があいます。つまり社会枠であることが変わりないからです。医療枠が間違っていた、それは事実です。しかし、自分自身の問題に関しては否定できませんが、その個々の問題の共通点こそが人とのコミュニティにあります。ユニークと受け取るか精神病とうけとるか、それは相手が判断するものです。ユニークな人と相手が判断すると、お互いの間の問題がなくなり病むことはありません。繋がりを遮断するかのように病気と思う人間の前では病んでしまいます。
  また、ピアサポート、エンパワメントの効果がここではっきりします。ピアサポートやエンパワメンとはお互いの間の問題を徹底的にきたえます。お互いに変わろう、お互いに信頼しあう関係、これは人と人の間を病んだ人にとっては有効な治療手段であることが明確になります。互いに変わろうと互いに同じ意志をもった人同士があつまると回復できる理屈もここにあります。
  ストレスにしても脳の気質的なものにしても、それだけではなく、それを媒介にして人とのコミュニティが病んでいく事も考えられます。

4章 これからの医療

  ただ、これからの治療方法は向精神薬や入院、ECTなどは論外と言う事です。治療をするにあたって、人と人の間のコミュニティの修復作業こそが、真の治療になるのです。

参考文献
脳の発達障害――ADHDはどこまでわかったか?
東北大学大学院医学研究科 精神・神経生物学分野 曽良一郎
夢から現実へ どのようにしてコンシューマーはリカバリーをおこなっているのか
ナショナルエンパワメントセンター 共同所長 ダニエル・B・フィッシャー
こころの専門家はいらない 洋泉社 小沢牧子 著


◇桐原尚之 精神医療と精神福祉のこれからを考える
 http://members.goo.ne.jp/home/k_naoyuki2


UP 20060724
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