HOME >

緊急講演会「県と国に聞く 支援費のゆくえ」記録

主催:NPO法人船橋障害者自立生活センター
2004年6月26日(17時30分〜21時 於・船橋市勤労市民センター)
http://www.cil-funabashi.org/



緊急講演会「県と国に聞く 支援費のゆくえ」
主催:NPO法人船橋障害者自立生活センター
2004年6月26日(17時30分〜21時 於・船橋市勤労市民センター)

講師:
厚生労働省社会援護局障害保健福祉部企画課長 村木厚子氏
千葉県健康福祉部障害福祉課長 竹林悟史氏

指定発言者:(発言者順)
杉井和男(船橋障害者自立生活センター)
阿部貞信(ワークアイ・船橋)
岸川英嗣(魔法のランプ)
山本明(船橋障害者自立生活センター)
さとうももよ(船橋市議)
佐藤幸胤(船橋市役所)

司会進行:宮尾修(船橋障害者自立生活センター)

〔司会挨拶〕

  支援費制度のゆくえについてのお話をお聞きする。ご承知のように、介護保険制度と支援費制度の統合が浮上している。今朝のNHKのTVで社会保障審議会での中間報告が出ていた。骨子は、統合については「現実的な選択肢」の一つとしている。もし統合されれば生活に直結する問題となる。そこで厚生労働省・県の職員にお話を聞く。


〔講師紹介〕


(司会)
  今日の講演会では竹林課長にひとかたならぬご支援をたまわった。6月28日には介護保険部会が開かれる。この非常に重要な時期に講演会が開かれることになった。これから1時間少し村木課長に話を伺い、竹林さんには千葉県の支援費の実際についてお話をうかがう。休憩を挟み、指定発言と質疑。時間があれば場内からの質疑を受ける。


〔手話通訳の紹介〕


(司会)
  今日の講演で聞きたいことは大きく二つある。一つは、国は本当に統合するつもりなのか、するならいつからかということだ。そしてもう一つは、支援費制度は始まったばかりなのに、これから支援費制度はどうなるのかということだ。では、よろしくお願いいたします。


(村木課長)
  こんにちは。厚生労働省社会援護局障害保健福祉部企画課長の村木です。
  私の話は二つにわかれる。一つは、支援費制度が始まって1年少し、その状況がわかってきたので、支援費はどうだったのかという総括を行う。もう一つは介護保険との統合の意味はということと、そのメリット・デメリットはということを話す。
  資料(パワーポイント)が出なかったので、「障害者福祉施策基本的な方向性の資料」を見ながら、支援費制度の総括を行う。
  最近の障害福祉施策は地域でどうやって普通に暮らすかが大きな課題だった。それを一つのキーワードに施策の展開をしてきたが、そのなかで身体障害者・障害児の一部・知的障害者については昨年度から支援費制度がスタートした。そして精神障害についてはもともと契約制のサービスなので支援費の外におかれている。そして支援費制度がスタートした。スタートしてどうだったかというと、とにかく2003年4月から大きなサービスの伸びがあった。新聞報道にも出ているが、去年の予算では在宅サービスが伸びるだろうとのことで、これまでと3割増伸びを国は考えていたが、実際は1年間で6割増のサービスの伸びだった。だから予算が128億の赤字となった。そこで、他の福祉予算(老人や児童からその年で払わずにすむものや余分が出たもの)から集めてきた状態で、なんとか去年はしのいだ。
  なぜサービスが伸びたか。ホームヘルプサービスでいうと、知的障害者のホームヘルプサービスがかなり伸びた。これは情けない話だが、これまで市町村で身体障害者のホームヘルプサービスがあったのは全市町村の7割だった。さらに知的障害者のホームヘルプサービスをやっているところは全市町村の3割しかなかった。支援費制度が始まり、そこでやっと知的障害者へのホームヘルプサービスが5割になった。今まで遅れていた部分が伸びたことになる。身体障害者で日常生活支援の一人あたりの平均利用時間が83時間から135時間に伸びた。2003年4月から一気にサービス量が増えたことになる。
  2003年4月から今年2月まで、毎月どれだけサービスが増えてきたかを見ると、2003年4月を100とすれば、あまり変わりないのが身体で、それでも1.2倍強伸びたが、知的障害者の場合は1.8倍、障害児は2倍半に伸びている。支援費制度が始まってからどんどんサービス量が伸びている。今年4月のデータが出れば、このまま伸び続けるのか、ちょっと横ばいになるのかが分かってくるだろう。2004年1月くらいから落ち着いてきたのかなと思っているが。そのような状況にある。支援費制度でサービスが伸びたので、措置から支援費制度移行の効果はあった。知的障害者や障害児については、今までは市町村にサービスを求めても家族依存という状況だったが、支援費ではサービスを使っていいのだということになった。そして使ってみると、ほっとできる時間がやっとできたという話が伝わってきた。身体障害者にしても、身体障害者はこれまでサービス支給のベースがあったが、支援費制度では当事者が事業所を選べ、使い勝手がよくなった。船橋市は人口57万人。事業者も多々あるだろうが、地方(20万ほどの人口)にいっても、わりとサービスが受けられるようになった。町村になるとまだまだだが、それでもサービスが伸びた。しかしサービス量が増えた財源不足がある。この背中合わせとをして、今年も在宅サービスで600億円余の予算しか組めていないので、このままの伸びでいくと今年はもっと足りなくなる。今年4月に少し単価を抑えて工夫したが、今年もやっぱり財源が不足するだろう。毎年、他の部署から流用するわけにはいかない。今年の手当もなんとか方法を探さなければならない状態である。サービスが伸びたのはプラスだが、財源をどうするかが課題だ。
  もう一つの課題として、地域格差が大きいことがよく分かった。市町村ごとに格差を見るのが一番いいが、それだと複雑になる。だから都道府県ごとに格差を見た。地域間格差が大きいことが分かる。
  まず地域間格差をみる二つの視点がある。
  一つは、広くサービスがいきわたっているかどうかである。人口あたりでサービス利用者がどれくらいいるか。支援費の支給決定者数で7.8倍。実際の利用者数で6.2倍という数字が出てきた。身体障害者のホームヘルプだけだと5.5倍だが、知的障害者のホームヘルプ23.7倍、障害児のホームヘルプサービス44.4倍という数字が出ている。精神障害が11.6倍。そういう意味では、本当にサービスのいきわたり方に地域格差がある。支給決定で一番多い都道府県が滋賀、大阪、京都、東京、神奈川と、都市部である。ちなみに介護保険では格差1.7倍と小さいが、支援費制度では差があり、都道府県格差が大きい。知的障害者への利用者数では大阪がトップである。それから障害児では滋賀がぬきんでている。精神障害は悲しいことに全体のレベルが低い。ここはサービスそのものがまだないという世界だ。
  地域間格差を見るもう一つの視点、それはサービスの濃さだ。つまり一人あたりどれだけサービスが使えているかということだ。ホームヘルプサービスは一人当たりの利用時間で4.7倍の差がある。日常生活支援を除くと2.8倍。平均利用時間は東京がダントツである。千葉も平均よりちょっと高い。日常生活支援をのぞくと、わりと平準化してしまう。これは多分、重度障害者がどこでサービスを利用しているかということに、地域的な偏在があるのだろう。ホームヘルプサービスは一人当たりの平均利用時間にかなり格差があるのだが、そのサービスの内訳を見てみる。そうすると身体介護や家事援助の格差はそんなに大きくなく、日常生活支援と移動介護をどれだけ支給しているかで各自治体で差がある。知的障害者へのホームヘルプサービスをみると移動介護を使っているかどうかで、ほとんど移動介護がない県と、ほとんど移動介護に使っている県があって差がある。障害児も同じ状況である。精神障害については全体的にサービス支給量が少ない。
  この二つの視点を一つにしたのが、資料19ページのサービスの地域格差の図だ。ばらつきがあり、自治体の担当者もこのグラフを見ている。そうすると、サービスが普及しておらず一人当たりのサービス利用時間も少ない都道府県は平均までいこうと思って努力をしていくことになる。遅れている自治体がなんとか追いつく、進んでいる自治体がさらに伸びていく。これだけ格差があることを考えていくと、全体としてサービス量がさらに伸びていくだろうと国は想定している。
  今まではホームヘルプサービスで見てきたが、グループホームについても統計を出している。人口当たりの利用者数でみると、知的障害者のグループホームで15.3倍、精神障害者のグループホームで8.3倍の格差がある。グループホームも地域格差が大きい。
  介護保険も格差があるが、都道府県格差が3.9倍から2.3倍まで縮まってきた。全体のサービス利用回数はかなり高くなっている。高齢者サービスの伸びを見ても、障害者へのサービスも伸びるだろうし、地域格差が縮まる中でさらに伸びるだろう。
  支援費制度が始まってから見えてきた課題について述べていく。支援費になって、サービス量は伸びたこと、これはすごい力だった。これからも伸びていくだろう。地域格差を縮め、サービスの提供量を増やすことが、一つ目の課題である。
  次にサービスを受ける障害者のデータを紹介する。身体障害者で350万人(平成13年度調査)、知的障害者については他国に比べて少なく算出されていると言われているが50万人弱(平成12年度の調査)、精神障害者は260万人弱(平成14年度の調査)いる。精神障害者については5年前に調査をしたときから50万人くらい増えた。このデータは病院に通院した人の数から数字を出しているので、おそらく精神障害者が増えたという面と病院へ行くようになった面と、両方あるのではと言われている。そのなかで施設や病院にいる人の割合は知的障害者が一番高く、知的障害者全体の3割が入所施設にいる。精神障害者は13%ほどが入院している。うち7万人ほどは社会的入院と言われ、環境さえ整えれば退院できる人たちだと言われている。身体障害者での施設入所者は知的障害者や精神障害者に比べると少し少ない。次に年齢別のデータ。身体障害者で65歳以上は6割、知的障害者は3%、精神障害者は29%。団塊の世代がまだ若い方の区分に入ってているので、後10年たつと65歳以上の比率はさらに高くなるだろう。障害者と高齢者、事実上はかなり重なりがでてくる。支援費制度が始まってから、サービスを実施している自治体はどういうことをやっているか。構造改革特区というものがある。これはさまざまな行政の規制をある地域だけ特別にはずして、自治体が柔軟に施策をできる特区のことだ。残念ながらこの特区では特別にお金がかかることができず、知恵と工夫で施策をすることが求められている。特区の中では、障害者・高齢者サービスの相互乗り入れをやっているところがある。そのような中から支援費制度の課題二つ目。高齢者と障害者では事実上重なりがある。自治体ではなんとか効率的にサービス提供をしたいと思っている。そこで障害の種別や、高齢者向け/障害者向けというサービスの縦割り横割りを越えて相互乗り入れをしようとする試みが始まっている。特に田舎が深刻である。それぞれのメニューで全部そろえようと思うと、一つ一つのサービスの対象者が非常に少ないので、どうしても相互乗り入れが必要になってくる。介護保険と支援費制度との統合といった話ではなく、サービス提供の点で縦割り横割りをやめて、身近なところでサービスを受けやすくすること、これが支援費制度の課題になってきた。
  三つ目の課題は障害者の就労である。これは日本では非常に遅れている。養護学校卒業後就職できた人の割合は平成15年3月のデータでは2割をきった。5割強は施設、後は在宅となっている。重度化していることもあるだろうが、就労の壁があることが大きい。授産施設など施設に入って、訓練していずれは一般就労をと希望している人が多く、身体障害者・知的障害者で4割、精神障害者で6割の人がいる。しかし働きに出たいと思っても、現実になってない。授産施設や福祉工場から実際に一般就労できて退所できた人は1.1%。そういう意味では、なかなかみんなが希望しているルートにいけない。それは今の福祉施策で非常に弱いところだ。支援費制度だけの課題ではなく、今の障害者施策が抱えている大きな問題である。
  四つ目の課題はお金の問題である。お金はどうなっているか。厚生労働省障害保健福祉部予算は7000億円。障害者施策全体でいうと、雇用対策のお金があったり、障害年金は1兆円以上ある。生活保護をのぞくいわゆる福祉のお金は7000億円ほどかかっている。そのうちの3500億円が支援費のお金である。このなかのちょうど3分の2は入所施設にかかる支援費で、6分の1は通所施設にかかる支援費、残り6分の1の600億円は居宅支援費である。国の財政の仕組みでは、居宅支援600億円は裁量的経費であり、施設支援は義務的経費。義務的経費は、国が必ず二分の一の自治体補助をしなければならない。予算の範囲内で補助できるのが裁量的経費でこれが居宅支援費。福祉の7000億が高いか低いかはいろいろな判断があるが、そのなかでも在宅で暮らす財源のウェイトが少ない。医療と福祉のお金のウェイトをみると医療にかかるお金もたくさんかかっている。特に精神障害者で、財政という意味で、いろいろな課題がでてくる。2003年度に自治体から出てきた意見によると、一番多いのが、ちゃんと国からの補助金をよこせというものであった。もうひとつはケアマネジメント。障害者がサービスを利用するときに、その調整をする。そのような働きのマネジメントが今の支援費制度にないことが問題。そして支援費の額をいくら支給するかという客観的な基準がない、市町村職員の裁量にまかされてしまうことが問題だという意見もあった。それがあれば地域格差も少なくなるのではないか。他には、知的と精神と身体では制度が違うことで、これは非常に縦割り制度でやりにくいという意見と、市町村の自由がききにくく、国が細かいことをいろいろ縛っているという意見があった。自治体からの希望や不満のベースは、きちんとサービスを提供するための財源確保と、その財源をどうやって分配するかというルールの部分が弱いということだ。その不満を一番つきつめてみると、三位一体という構造改革の議論が出てくる。つまり地方分権を進め、補助金をやめ、自治体が財源を持って自由にサービスを提供し政策を進めるようにするものだ。国からの補助金ではなく、財布を地方にくれという議論がでている。そのなかで、補助金制度をやめ、自治体にすべて譲ってほしい項目のリストのなかで、障害者福祉のお金は最有力候補となっている。障害者福祉については自治体がもっと自由にサービス提供ができるように権限も財布もすべてよこすようにとの声がある。障害者福祉は、自分たちが住んでいる身近なところが一番実態を把握していて、自治体が主導権を握るのが一番いいのではないかということと、支援費については最初から予算が足りなかったりして、どうせお金が足りないなら足りないなりに、そのお金を渡してくれたら自治体でもっと工夫できるとの声が自治体からある。このことは障害者福祉だけではなく、全体に国から地方への権限委譲の流れの一つである。そういう流れがあるなかで、障害者福祉の問題を考える。私見だが、三位一体案をどう思っているかということについては、地域間格差があるなかでこのまま自治体への権限委譲でいいのかという思いがある。格差がさらに大きくなる不安もある。財布もよこせというときに、今の財布をよこすことになる。今までの例でいうと、ちょっと自治体で節約できるよねと言って、8掛けや7掛けでお財布を渡しているという状況だった。だからただでさえ足りないお金なのに、という心配がある。
  お金の問題では特に自治体に迷惑がかかっているというのが障害者福祉の実態だろう。なんで、こんな予算予測がはずれたのか。これは国がわびなければならない。二つの言い訳をさせてほしい。
  一つ目。サービスに対するニーズがある。ニーズにあった予算をあてるが、今の障害者福祉の分野は、普通ならそれぞれ自治体での障害者福祉に関する事業計画を出してそれを国にあげればいいのだが、障害者福祉については数字のついた計画をつくることを自治体には義務付けられていない。したがって障害者プランでは、国全体の予測をするしかなくなっている。国の約束として実現できる、現実的な範囲で数字を出せなくなっている。現実と希望のせめぎあいのなかで数字が出てくることになる。しかしそれぞれの自治体でがんばってサービス量を伸ばすと国の見込みがはずれてしまう。つまり予算の予測見込みを積み上げる仕組みがないということだ。
  言い訳の二つ目。もし市町村が数字の入った計画をたて、それを積み上げ、例えば6割伸びると言う予測がたっていたらどうかといっても、それでも予算は3割増だった。なぜかというと国の予算増をするには、どこかの予算を削らなければならない。それは政治の腕力の問題。さらにはそれは厚生労働省だけではできないことである。他の省の予算をとってくるとか、省内で工面するとかしないといけない。最後は政治の問題で、資源配分を変えることになる。よく皆さんから言われるのは、ミサイル一つやめればいいではないか、道路増設をやめれば、ダムをやめればというものだ。でも、その権限は厚生労働省にはない。政府全体の予算案をつくり、それを国会が認めるというプロセスのなかで資源配分を変えないと、福祉に予算はまわってこないことになる。税という財源での分配合戦のなかで、とれた予算は3割増しかなった。しかし実際には6割伸びたというのが、今回の予算不足の根本的な原因だった。
  そういう状況なので、課題その4として、全体として予算が少ない。それからその予算も施設にウェイトがかかっている。それから医療にも予算がかかる。その資源配分を変えなければならない。限られた資源を分配することが課題。自治体の数字の入った計画をもとに国の計画をたてる仕組みが必要であるということも課題だ。
  そういう課題がたくさん見えてきた支援費制度について、これからどうしていくべきか。私の上司のたとえ話として、この車は性能がよかったのだが、エンジンが弱いという話をする。それが支援費の致命的な欠点だ。それをどうしていくか。そのときに、なぜそこで介護保険が出てくるか。支援費制度のいい面があり効果があったからこそ、たくさんのサービス利用者が出てきた。つまりいい車だったのだ。しかしエンジンの弱さが露呈した。ではどうするか。なぜ介護保険の話が出たのか。(資料「障害者福祉を確実・安定的に支えていくために(2004年6月4日)」)
  介護保険というのは非常に唐突のように思えるが、ずっと前から議論があった。それは介護保険創設時からだ。介護保険は年金や医療保険以降、久々にできた新しい保険で、最初はいろいろな議論があり、高齢者だけやるのか、全年齢対象かという議論があった。結果、高齢者のみになり、保険料は40歳から徴収ということになったが、それは要介護の人の中で老人が数が多かったことと、老人介護を家族だけではまかないきれなくなったことがあった。そして保険制度にのせて介護を社会化すること、これまで家族が介護を担ってきたが、これを事業者が担うことにした。これは大きな思想転換だった。そのことのために国民から保険料を徴収することにどれだけ納得が得られるかという議論があった。保険があってサービスなしにならないかという議論があったわけだ。そのときに、どこまでなら保険料を支払う国民のコンセンサスが得られるのかという議論もわき、結果40歳以上が被保険者となり障害者は給付の対象からはずれた。障害者問題を扱う審議会の中で、当時、賛否両論あった。そのなかで、皆がまだ一枚岩になっていないこともあるので、介護保険がスタートして5年後の見直しで再度考えようということになった。その5年後の見直しで現在議論されているのが介護保険見直しである。そして身体障害が65歳以上が6割だ。現在65歳以上の身体障害者は介護保険を利用している。そして介護保険で足りない部分に、あるいは介護保険サービスにはない部分について支援費利用しているそういう非常に近くにあった介護保険制度を障害者施策に使えるかという議論になってきた。
  では支援費制度と介護保険とはどう違うのか。どうしてこのように道が分かれたかということについては、私自身まだ納得がいかない部分もある。社会福祉基礎構造改革の議論は措置から利用契約へ変えるものだ。この流れで障害者施策は措置から契約へと変わった。そして老人も介護保険によって措置から利用契約になった。この流れは同じだったのだが、利用契約にするための手段で片方は支援費という税金だけを使った制度となり、片方は保険料と税金の半々の介護保険なった。障害者施策については、当時は保険を使う議論もあったが、財源は税でいこうということになった。しかし財源問題はされに以後の宿題のままだろうという認識だった。そこで見直しのこの時に、答えを出さなければならなくなった。
  もし仮に介護保険を使うとなるとどうなるか(資料5ページ)。2004年6月4日社会保障審議会の3名の委員のデザインは以下のとおりである。現在は主には高齢者のための介護保険だが、それを年齢や障害の種別を問わず介護が必要な人のための介護保険にする。身体障害、知的障害、精神障害だけではなく、そのなかには高次脳機能障害や難病も介護ということであれば入るだろう。保険料を使って保険の範囲内でサービスをまずは提供する。しかしこれだけではサービス量が足りない人もいる。重度障害者や特別なサービスが必要な人などがいる。そこで、保険でまかないきれないものについては上乗せのサービス、あるいは「介護」と呼べないもの、それとは違う種類のもの、例えば就業支援の中には介護とは性格の違うものがある、そういうものは介護保険からではなく、それとは違う別の仕組みを残すという案を出している。その部分は税からとなるだろう。そういう二つのサービスを合わせて、全部トータルで障害者福祉をやるというのはどうだろうかという提言をしている。このまま支援費でいくというやり方もあるだろうが、しかし共通の介護保険と上乗せの障害者独自の施策にし、保険の仕組みを一部活用するのが「有力な選択肢」となるだろうとした。
  そして、障害者団体8団体に、2004年6月18日に、この提案を含めて、これからの障害者施策のあり方、そして介護保険なのか支援費なのかといったことについて意見を発表してもらった。その結果、賛成だった(介護保険を利用しようという意見)のが育成会で、統合は必然というものだった。次に精神障害の家族会である全家連は、一つの選択肢として前向きに考える必要があるというものだった。日身連は現実的な選択肢のひとつとしても考えられるというものだった。日本盲人会連合とろうあ連盟と脊損者連合会とJD(日本障害者協議会)は、少しずつ表現の違いはあるので団体の直接の意見書をあたってほしいが、判断の材料不足だというもので、設計図が見えてから判断をしたいというものだった。DPI日本会議が一番反対意見が強く、障害者介助サービスは生存権保障から国が税で行うべきだから反対という意見をはっきりと打ち出している。障害者の意見もさまざまである。そして国のほうは、それを受けて、審議会は昨日議論をした。そして新聞では介護保険との統合を目指したような結論になったと報道されているが、そうではない。こういう結論になった。この問題については、障害者団体としては賛成もあったし、選択肢の一つとする意見もあったし、判断する材料が十分でないという意見もあったし、反対する意見もあった。そういうなかで、この審議会としては介護保険の仕組みを活用することは「現実的な選択肢」の一つとして広く国民の間で議論されるべきものであるということになった。これはどういうことかというと、要するに介護保険に統合しないという結論を出していない。議論をされるべきだから、もし統合したらどうなるのか、どんな設計図になるのか、それをきちんとみんなで議論をしましょうという結論になった。特に今、判断するのは材料不足だという意見が、8団体のうち4団体であったわけだ。そうすると、誰かが統合したらどうなるのかという設計図を描かなければいけない。この設計図は残念ながら、障害者の審議会で設計図を作るわけにはいかない。やっぱり保険制度をもっているところが設計図を描かなければいけないので、そこにきちんとボールを投げて、もし介護保険を障害者が活用するとなればどうなるかという設計図を描いてほしいというオーダーを出すという案がでた。これについては昨日、いろいろな意見があった。最終の部会の取りまとめは、多分、もう1回か2回、審議会をやって決める。ただ、昨日の審議会の様子を考えると、おそらく、設計図を描いてくれということになるだろうと、私は昨日の様子から思う。私はこれを二世帯住宅に例えて話をする。最初から絶対に同居は嫌だという結論を皆が出したのであれば、二世帯住宅の設計図は描く必要がない。それが一つの選択肢だっただろうと思う。逆にどんな家でも一緒に住む、こういう結論も出せなくはなかったと思う。それからもう一つは、一緒に住んでいい暮らしができそうだったら一緒に住んでもいいけど、どんな家になるんだろう、その設計図を皆で考えようかという選択肢がある。3つの選択肢の中では、最後の選択肢が、審議会の結論と近いものになったという印象だ。いっぱい心配はある。今まで予算は足りないが、自分たちだけの家で、それなりに住み心地は良かった、少なくとも措置のときよりもよくなったわけだから。しかしこのままの生活を続けるためには、どうやっても生活費が足りないことも事実だ。では二世帯住宅に住むか。それは条件がある。自分だけの部屋はあるのだろうか、個室がないならとんでもないと思う。トイレくらいは自分のところがあるかな、好みも違うから台所も自分にあった方がいいな、風呂も好きな時間に入りたいから、など、いろいろな設計図の描き方がある。だが、高齢者の世界もそんなに豊かではない。これだけ国の財政が厳しいのだから。障害者の世界もそんなに豊かではない。それなりに節約して大事なお金を使って皆が暮らしやすいようにしたい。そのときに共通部分は共通でいいじゃないかという考え方もあるし、どんなに狭くて苦しくても別々の家に住んでいたいというやり方もあると思う。そこをきちんと議論をしたいということだ。賛成をする人たちの意見の中でよく言われるのは、では65歳で障害者の人生変わるのかということだ。65歳になったらいやでも介護保険を使うわけだ。人間の人生を年齢でスパッと機械的に割っていくなんておかしいではないかという意見だ。それから保険制度は皆が保険料を支払う。保険料を出すので、自分が明日事故で、あるいは自分が今の仕事の中でストレスを受けて障害をもったときに、あるいは自分の子どもが障害をもって生まれたときにどうするかというのを、保険料を支払う人は、そのために払うお金として意識せざるをえなくなる。そうすると障害が他人事ではなくなるのではないかというメリットを強調する人がいる。お金の面のメリットを言うと、一つは、保険制度はこれだけのサービスを提供しなければいけないということが決まっていて、それに応じて保険料を徴収することになっている。税は、ある程度のサービスニーズはあるが、最後は税金のうちのどれだけのお金を予算として組めたか、その中でサービスを提供していくやり方になる。そういう意味では、お金を払う人が了解してくれないといけないが、これだけサービスを伸ばしていきたいと言って、それだけ保険料が徴収できればサービスを伸ばせる。それと同額の税金がついてくるということになる。もう一つは、三位一体で地方に全部いってしまう、そのリスクが残っている。これから自治体の時代と言われているなかで、どれだけ残るか分からない補助金の仕組みをベースにするのかどうか、これは不安が残る。そして財務省関係者が聞けば怒るだろうが、今の支援費が仮に介護保険にいくと、半分は保険料が入ってくる、そうすると税金が浮いてくる。財務省は当然返せということになるが、しかし全額返さなくてもいいじゃないかと言いたい。そういう財政的なメリットはあるだろうと思う。
  反対に心配なところ、デメリットは何があるか。まず、要介護認定で自分たちのニーズがきちんと判定してもらえるかどうか。要介護認定が障害者に合ったものにできるかどうかというのが大きな問題になる。二つ目は保険なので上限がある。これで足りないサービス量をどうするか。さっきの6月4日の審議会委員の案では、上乗せは税でやろうということになった。標準的なサービスは保険だが、それで足りない部分は上乗せということだが、それが本当に実現できるかどうか。三つ目は、介護保険は応益負担なので1割の利用者負担になることである。これは低所得者対策をどこまで行えるかということだ。四つ目はケアマネジメントの仕組みである。介護保険にケアマネジメントは入っている。私はケアマネジメントの仕組みそのものは非常に大切だと考えている。しかし今の介護保険のケアマネジメントは非常に評判が悪い。それと特に介護保険の場合は、介護保険制度のサービスをどう組み合わせるかというところにウェイトがおかれている。本来はそうであってはいけない。障害者の場合は、働くとか通学するとか、いろいろなものがあって、それを地域で暮らすことをどうマネジメントするかという、非常に広いサービスがいる。これは今はないわけだから、あるようにできるチャンスともなるのだが、この仕組みをどうやってつくろうかということがある。そういう設計図がまだ見えないのでは非常に心配な部分がある。ただ、そこは設計図の描き方次第である。そういう意味では、ある程度きちんとサービスを伸ばしていきたいと言ったときに、正直、エンジンは大きい方がいいと思う本音がある。ただ、これは役所が決めるわけではない。まず一つは障害当事者がどう考えるか。賛否両論あったが、議論していくなかで、これがある程度方向が決まっていくかどうかが大きな問題だ。そして私たちが介護保険との統合にいきたいと思ったときに、反対の人達もいる。まず、市町村にも賛否両論ある。障害者サービスは税でやるべきではないかという自治体もあるし、支援費制度になったばかりだから賛成だけど実施は時間がほしい、十分な準備期間がほしいという自治体もある。そして一番最後まで反対をするのは経済界だろう。介護保険になると現役世代の負担する保険料の半分を企業が負担するからだ。そういう意味では保険制度というのはいろいろなところからお金を集めてくる仕組みになっているが、集められる側は反対するということだ。介護保険の保険料がどんどん伸びているので、それは福祉の面では保険料が伸びるというのはサービスが伸びているということなのでありがたいことなのだが、払う側にとってはたまらないという思いもあるだろう。そして20歳から保険料を徴収することについて、若い人たちは、今の年金や医療保険の保険料だけでも高いと思っているのに、さらに介護保険の保険料を給料から天引きされることになるという不満が起こるだろう。結局最後は、この問題は国民のコンセンサスが得られないとできない課題である。しかしまずは、障害当事者の意見の集約が大切になってくる。そのうえで、皆がその問題について理解していくかどうかという問題になるだろう。
  スケジュールとしては、もし審議会でそういう結論が出ると、どこかに設計図を描けということになる。設計図をまずは描いてみてくれということになる。きっと設計図が出てくるのが秋だと思う。そのうえで、決断をするのが年末くらい。そうすると5年目の介護保険法改正が年明けの国会に出るので、そこに間に合わせようと思えば年末までに決める必要がある。そういう意味では政治判断に最後は任されることになる。では施行はというと、それは準備期間がどれだけ必要かによる。17年度からということは絶対にないと思う。18年度、介護保険は3年ごとに事業計画をつくるので、21年度とかいうことになるだろう。そしてその間が準備期間になるだろう。
  今日、こういう場に呼んでいただいて非常に嬉しかった。なぜかといえば、この話は本当に大事なことだからだ。障害者福祉を税でやるか保険でやるか、今の介護は高齢者は保険だが障害者は税でなぜ違うのか、同じ介護が必要な人たちなのに、そこにどういう思想が含まれているかという問題がある。それから今の支援費制度で税でやっていくかぎりは、なかなかすぐに2倍、3倍にサービス量を伸ばしていけるわけではない。税の中で予算配分を闘っていかなければならない。いろいろな意味で、すごく大事な決断の時が来ている。三位一体で地方にいくかもしれない。それをよしとするかそうではないのか。本当にきちんと情報を得て、きちんと議論をしてほしいと切実に思っている。そういう意味で、今日、今の審議会のこととかお話させていただいたのは非常にありがたかった。そして、ぜひ、冷静な議論、食わず嫌いでもなく、感情的でもなく、自分たちにとって何がいいか、あるいは自分たちの仲間にとって何がいいかを考えてほしい。そのことが障害をたまたまもっていない人たちにとってもどういう意味があるか、そういうことを、今はいい機会なのでじっくり議論をしていただいて、その結果どんな結論になるにしても、後悔をしないかたちで議論、結論を出せればと思う。
  あとは質疑の中で補足して説明する。以上です。


(司会)
  ありがとうございます。大変わかりやすく、また明快な解説でお話いただいた。村木さんにお話いただいたために、竹林さんのお時間がなくなった、竹林さんには質疑のなかで千葉県についてはフォローをしてもらいたく思う。
  村木課長のお話を聞き、ぜひ私の立場から申し上げたいことがある。
  私達の自立生活センターは全国自立生活センター協議会の加盟団体で、創設から13年になる。船橋市を中心に、どんな障害があっても地域のなかで自立した生活をしたい、施設の人生は嫌だ、地域社会の中で皆と同じような毎日を自分の力でつくりあげる、また地域や行政の支援を受けながらそうした生活をしたいと思う障害者の支援をしている。3年前には全身性障害者介護人派遣事業の委託を受けた。支援費制度の事業者としても事業に参加している。NPO団体にもなっている。7年前には市町村障害者生活支援事業を始め、私が責任者である。この7年間に1万件近い相談を受けた。しかし市町村障害者生活支援事業は一昨年に一般財源化した。そして支援費が介護保険に統合する案がでている。今日のお話を聞き、もし私が障害当事者でなく、またこの問題についてあまり関心がないなら、課長の言うとおりだろうと思った。しかし私は障害当事者で脳性まひの1種1級の全身性障害者だ。眼の前に二人仲間がいるが、彼らもそうです。私は65歳を過ぎているので介護保険サービスも受けている。実は先日、厚生労働省に伺い、ある方に、介護保険も支援費も受けている私は高齢者なのか、障害者なのかとお聞きした。そうすると両方ですと言われた。しかし制度の中でそのようなことが行われていることが、私には非常に不可解だ。それは日本の障害者福祉施策がそれだけ貧困だからだ。先ほどの村木さんのお話のなかで社会保障審議会の話があったが、昨日の審議会の座長はうっかり失言をしていて、私は限りなく統合賛成に近いと言った。その中で一番座長に反対していたのは東大の福島先生だ。いろいろな意見が出たが、最終的には先ほどの村木さんの話にもあったような締めになった。村木さんのお話で重要なことは6月28日の介護保険部会に、6月25日の議論を投げていきたいと言ったことだ。障害者部会もその様子を眺めながら中間まとめをするとなった。介護保険部会がどういう結論をだすかによって、障害者部会も考えていくと言った。となると厚生労働省の本音は一体何なのか。二世帯住宅のどっちに結論が出るのか見極めたいということだ。いつまでも待っているわけにはいかないだろう。一言で結構ですので、政府の運営の事情として、いつまでに最終結論が出るのか、そういうことをお聞きしたい。


(村木) 座長のうっかり発言は、本人が失言だと謝っておりましたので、私からはこれ以上申し上げない。東大の福島先生は統合に反対ではない。福島先生がこの間に一番言ってこられたのは、団体の意見をよく聞いてくれということだ。6月18日の障害者団体8団体のヒアリングをしようという提案をしたのは彼だ。そして福島先生は、皆さんの意見を中立的に受け止めるべきだというのが、一番彼の大きな意見だと思う。彼は介護保険部会で設計図を作ること、そのものについては反対ではないと思う。それはご本人に聞くのが一番いいのだが。皆の意見をきちんと集約したいということを繰り返しおっしゃっているように思う。
  誤解があるといけないので、もう一度スケジュールを言う。6月25日の社会保障審議会で、今、皆さんの手元にある部会長案を元にいろいろな議論をした。いろいろな意見が出たが、介護保険を選択肢として認めないからどこも設計図を作ってくれるなというのではなく、選択肢として、そこに価値観を入れるかどうか、「有力な選択肢」とか「現実的な選択肢」とか「将来の選択肢」とか、いろいろな意見が飛び交ったが、選択肢だということについてはかなりコンセンサスがあったと思う。そういう審議状況を介護保険部会に6月28日に投げる。25日の社会保障審議会の審議はこうだったという報告をする。それをふまえて介護保険部会は障害者も入れた介護保険がありえるのか、保険料を20歳から徴収できるだろうかとか、そういう議論をおそらくやるのだろうと思う。介護保険部会も7月あるいは8月まで議論を続ける。障害者部会はこの6月25日の部会長案をベースにいろいろな意見が出たので、それを整理して、障害者部会は障害者部会でもう1回か2回、おそらく7月中だと思うが、今はどう考えているかという取りまとめを1回して、それで中間とりまとめを終わる。そこから後は、私たちだけが言ってもしようがないし、設計図が出ていないとしようがないので、設計図が出てきて市町村や経済団体などの意見を聞いていく、そういうことをするのが秋で、さらに年末までに結論を出す。それは我々だけの結論ではなく、関係者すべて、それは障害者関係だけではなく介護保険の関係者を含めての役所ベースに進んでいる議論については年末までに結論を出す。政治の議論は国会の場で議論をするので、もう少し先になる。そういうスケジュールになる。障害者部会の議論は介護保険との絡みの議論は7月中に1回締めるということになる。これは私が勝手に決めることではなく、審議会で決めることになる。しかしおそらくそういうことになるだろう。秋から何をするかというと、エンジンだから、どこに向ってどんな車にするかという車の性能そのものの絶対の議論を、もっときちんと秋に深めていく。そのなかでもう一度、エンジンの議論もやっていくというかたちになる。


(司会)
  ありがとうございます。この審議会メンバーには堂本知事が委員に加わっておわれることを初めて知った。後で県の立場から竹林さんのお話をうかがいます。
  みなさんの中には、どうして村木企画課長という立場の方が来られるのか、障害福祉課長が来るものだろうとお思いの方もいることだろう。しかし船橋でもそうだが、企画課長の方が全体を仕切っている。政策や制度について。しかし介護保険との関係をどうしようか、あるいは防災などの関係をどうしようか、労働の関係をどうしようか、そういうのはすべて企画調整課の仕事だ。それと同じような意味で、厚生労働省でも企画課が仕事をしていて、ケアマネジメントについても企画課が担当されている。そういう意味では今日は、障害保健福祉の現在の話をしていただいたことになる。それでは休憩に入ります。


〔休憩をはさみ、再開〕


〔電報紹介〕


〔指定発言〕

(杉井)
  杉井です。私はこの自立生活センターのはじめからのメンバーで、この船橋で自立生活を始めて9年たちました。はじめは何も政策のないところから、介護者のボランティアを集め、安い値段で介護にきてもらい、そういうところから生活を始めた。それが司会者から話があったように、全身性障害者介護人派遣事業が始まり、途中から支援費が始まり、やっと少しずつ生活が安定してきた、この国の生存権保障に近づいてきたというのが実感だ。そういう意味で言うと、ここにきてまた介護保険に一緒になるということに不安を感じている。一番気になるのは、設計図を描いてもらうという話があった。それはわかるが、厚生労働省としてはどういう設計図をもっているのかということをお聞きしたい。中身としては支援費制度が赤字だと言いながら、そのほとんどが施設の費用だということが問題だと思う。私たちは自立生活を志向するので、それはなぜなのかを聞きたい。現実にバランスを変えることはできないとのことだが、その必要性についてはどのように考えているのか。そして、ケアマネジメントの問題についても大きい。今の介護保険制度のように、医者が要介護認定を行い、それでサービス量が決められてしまうのではという不安をもっている。支援費制度がこれからどういうふうになっても、自己決定の仕組み、それからそれに基づいてサービスの中身が決められるような仕組みが果たしてできるのか、ということに不安をもっている。以上のことについて見解をお願いする。


(司会)
  以下の3点が杉井氏の発言のポイントだ。
@厚生労働省の設計図はどうなっているか。
A予算の半分以上が施設経費にあてられているが、その配分比率を変えられないのか。
B介護保険の要介護度の認定は医師の主導によるのでは?自己決定に基づくケアマネジメントがそれによって保障されるのか


(安部)
  私は視覚障害をもっています。盲導犬と一緒に社会福祉法人あかねという、視覚障害者を中心とした就労の場を営んでいる。私は基本的には障害福祉施策は税でまかなうべきという前提をもっている。まず財源不足の話から支援費と介護保険の統合とあったが、この2004年1月にふってわいたように思える。5年前の介護保険創設時には、障害者福祉サービスは介護保険にいずれ移行するだろうと言われていたのは知っていたが、ここにきていきなり128億円の財源不足となった。財源不足をおこした要因は、知的障害者の移動介護が見積もり誤りだったとのことだった。身体障害者の移動介護については決してのびていない。私は1年足らずで統合するのははなはだ不本意。ただ財源がないからという理由で統合にいくのは反対だ。高齢者福祉、とりわけ介護保険と障害者福祉との基本的な考え方は違う。高齢者は日常生活上の介護、障害者は社会参加活動としての介護支援が必要である。その基本的なところをさておいて、財源の問題だけで統合するというのはいいのか。二階建て方式の案もあるが、それなら介護保険に財源不足だけを理由に統合するのか。もっと知恵を出してほしい。知的障害者の福祉については行政が怠ってきたのではないか。なぜこれだけ支援費制度になって移動介護がのびたのか。それは親や家族に知的障害者の介護をまかせていたからではないか。そこをもうちょっとつっこんで考えてほしい。
  二つ目。このままでは統合に流されていくだろうと思っている。反対の意見もあるが、設計図が明らかになれば検討もやぶさかではないという意見もある。そういうことを考えると介護保険への統合は流れだなと思う。あとは実施時期がいつになるのかの話になる。もしこれから介護保険に移行した場合、どうやって使い勝手のいい制度にするのか。私達が一番不安なのは、介護保険の利用者負担が1割、将来2割から3割に上がるだろうとの話もある。障害者が自立するための支援がお金を払わなければできないことになるのではないか。介護保険に移行した際の利用者負担の問題、介護保険と同じようになるのだろうか。
  三つ目は就労の問題だ。福祉的就労から一般就労にという意見がある。施設ではお金がかかるからとのことだ。授産施設や作業所などの就労の施設を見直して、3つの段階に振り分けましょうとの声があるそうだ。時間がないので、まとめて障害者の就労の方向性についてお聞きしたい。


(司会)
  発言のポイントは3点ある。
@支援費により移動介護が始まった。介護保険にはこれがない。このことを統合の際はどうするか
A利用者負担の問題
B障害者就労の問題


(岸川)
  岸川です。知的障害者の居宅介護について、まずはお話します。知的障害者の居宅介護の展開は契約によって、任意団体やNPO法人など24時間のレスパイトサービスが基盤をつくってきた。その実践のなかから多くの事例をもって、知的障害者の居宅介護について語ることはできても、体系的に整理されていない状況にある。知的障害者の居宅介護を考えた場合、どういう方がどれだけの支援が必要かという問いに対して、行動障害や重症心身障害者の方には手厚い支援が必要であるというように、大きな枠組みの中では説明できても、そんな一言ではすまされないと感じている。知的障害者はそれぞれの生活と自分の障害に応じた個別サービスを求めていると感じている。このように課題を抱えながらも、支援費制度1年利用されてきたなかで、確実にサービスの内容が向上して、支援の質も高まってきたと思う。その傾向としてあげられるのは、家族支援ではなく本人支援という発想の転換が始まってきたこともそうですし、また、家族や本人がヘルパーを活用することで、本人が主体的に行動することが増えたり、移動介護の活用によって年齢に応じた生活の幅が広がったと聞いている。知的障害者の支援には、やはりヘルパーが大きな役割を果たしているということを現場の人間として感じている。
  こちらの方から質問というか提案です。一方で市町村の現場においては知的障害に対する客観的な判断や情報が充分ではなく、上限として支給を決定したりとか、支援量をどれだけにしていいかわからないという問題がでている。今後、介護保険と統合になると、要介護認定のような一定の判断基準を知的障害者には必要ではないかと思う。それは現場サイドとして、その判断基準を作成して行政の担当者にバックアップするというふうなやり方もあるだろうと感じている。身体障害者の方とはまた障害の特性も違うので、なかなか知的障害者の方は自分の発言が難しいということがある。この点についてどのように考えるのかということと、今まで支援費制度になる前から私達のところは知的障害をもつ人の親御さんと私的契約を結んでレスパイトサービスを行ってきたが、そのなかで本人支援と家族支援と、どのようにコーディネートしていくのかということをお聞きしたい。マネジメントをきちんと行わないと、いつでも施設に戻ってしまうという危険性が知的障害者にはあると思うので、よろしくお願いします。


(村木)
  杉井さんの質問にあった設計図だが、今、一所懸命つくっているという段階だ。一緒に住まないと言われたら出せない設計図だったので、一生懸命出してもいいかどうかというのを見ながら作っていて、それを出していけるのが、多分、秋だと思っている。今、特別にチームを組んで役所にこもって設計図を描いているメンバーがいる。全体が出ていなくても、少しずつ方向が見えてきたらいろいろな情報を出していきたい。
  そして施設から在宅へ資源を移したいというのは、我々も、ものすごく思っている。今は先ほども話したように、施設は義務的経費で、必ず国が補正予算を組んででも払わなければいけない。在宅はそうなっていない。なぜ違うかというと、施設はハコができない限り増えないお金なので、ある程度目処がつく。しかし裁量的経費は、これからいくらお金がかかるのか分からない。支援費制度になって伸びたのを見て、ますます財務省は在宅を義務的経費にしたら大変なことになると思っているのではと感じている。今、お金の仕組みが違うので、なかなか資源の分配が難しい。お財布を一緒にして移していきたいと思っているのと、もう一つは、施設はものすごく固定的経費がかかる。50人の施設で、一人や二人地域に出ても、お金が50分の1減るかというとそうではない。ある時期どうやってもお金がかかる時期がある。それが今なのだろう。そういう意味では、必死で財源をとらなければならない時期だと思う。そしてこれは賛否両論だろうが、施設の利用者の負担も、もうちょっとできないかという話も必ず出てくるだろう。そういうかたちで財源を移していく作業をやらなければいけないと思っている。
  ケアマネジメントの話。これはセルフマネジメントが基本という考え方は、違っていないと思う。それをサポートするのが理想的なケアマネジメントだと思っている。ただ、気をつけなければいけないのは、お金を払うルールは非常に支援費の場合は見えにくくなっているので、自分の生活は自分で決めるんだというのはそのとおりだが、そのときに税金として集めたお金もその人が決めたとおりに払いますかという問題がある。税金を払う人たちが、それは違うということになることもある。自分の生活は自分で決めなければならない。そこはそのとおりだ。受けるサービスを自分で決め、それもそのとおり。だが税金として集めたお金を使うときには、最終的には税金を払っている人々が納得するものでなければならない。そこはルールがあると思う。今、お金の部分とサービスの部分、自分自身の人生の話が、わりとごちゃまぜに議論されているので、そこは整理をして議論していかなければならないと思う。そのことはあるにせよ、ケアマネジメントというのは本人の自己選択をサポートするという姿であるべきという意見は、考え方は同じだ。
  阿部さんのお話の中で、ガイドヘルプがあった。ガイドヘルプはすごく大事だと思う。実は、我々が審議会の中でガイドヘルプについて、視覚障害の方のガイドヘルプについては、介護保険は嫌だが今の支援費もずいぶん使いにくい、もっと違う別系統のサービスとして確立すべきではないかという意見と、同じ仲間でおいといてきちんとやってほしいという意見と、両方まじっています。これは支援費だろうが介護保険だろうが、あるいは別のサービスだろうが、当事者の方々の意見を聞いてどういうかたちのサービスがいいか、そのための仕組みとしてはどの仕組みのなかでまかなうのがいいのかということを議論しなければいけないと思う。
  高齢者は日常生活のサポートであり、障害者は社会参加活動のサポートである、これはそうだという気持ちも大雑把にはあるが、私は65になったときに日常生活のサポートだけされたくはないと思っているし、今のわがままな団塊の世代はそれでは納得しないと思っている。介護というのをどこまでの範囲で見るか。介護は本来、自立をサポートするものだと思う。それは高齢者にとっても同じことだと思う。ただ、そのサービスをどこまで公費でみるかというところには一定の制約がかかってくるのは仕方がないと思う。ただ、障害者が一生を通じてきちんと社会参加をしていく仕組みというのは公費でやっていかなければならない。それは保険でやる部分もあるし税でやる部分もあるかもしれない。そこは制度設計のやり方と、公費の使い道にコンセンサスが得られるのかどうかという問題だと思う。だから完全に高齢者の世界と障害者の世界が違うんだとは言いたくない。そのなかで日常生活のケアの部分と社会参加活動のサポートの部分というのを、それぞれどう組み立てて、どこまで、いくらお金をかけて、どの財源でやるかという設定の問題で、さっきみた保険でやるところと、税でやるところでは、どっちにどのサービスをもっていくかという設計の問題になるだろうと思っている。いずれにしても、今、お金が足りないのは本当にサービスを怠ってきたというところが原因だろうと思う。ある知事は、寝た子が起きたのだと。この子はもう絶対寝ないと言われたが、私もそう思う。寝た子を起こした責任は取らなければいけない。私は「寝た子」という例えもあまり好きではないので、鉢に木を植えたら、思った以上にこの苗はいい苗だったらしくて、非常に大きくなったと。この苗もちゃんと育てていくためには、もしかしたら鉢も取り替えなければいけないという思いがある。知恵は出さなければならないのだが、鉢を取り替えるというのも一つの知恵だし、他の知恵もあるのかもしれない。他に知恵が何かあればください。いろいろなことを考えたいし、税のなかでなんとか金をとってくるということも、今は必死でやっている。もう一つ、保険という仕組みもあるな、これも一つ知恵が出てきたわけだ。他にどんな方法があるかは一緒に考えていかなければいけない。どこかから棚ぼた式に知恵が出てくるわけではなく、一緒に悩んでいければいいなと思っている。
  流れは介護保険なんだろうと。いつも役所は勝手に決めてということは反対派からも賛成派からも怒られているが、さっき言ったように、我々がいくら統合したいと言っても、あるいは障害者団体が皆さん賛成しても、いっぱい外に反対している人がいるのでわからない。正直なところ。ただ、やるとしても準備期間はきちんととらなければいけないと思っている。そして、やったとして一番心配なのは、最後に残るのは自己負担の問題だ。それはそのとおりだ。介護保険の自己負担が2割、3割にしろという新聞報道が出たが、どんどん金が膨らんでくれば自己負担をもっと取れという話は出る。ただ、厚生労働省が今、介護保険の負担を増やしたいと思っているかといえば、それはNOだ。やりたくはない。今の障害者の支援費も応能負担で、能力に合わせて利用者負担を支払っている。ただ、8割から9割の人がお金をまったく払っていないというかたちになっている。これがいいかどうかは、私は正直言って少し悩む。やはりサービスを使うと一定の負担がかかってくるということは、たいていはあるのではと思う。ただ、お金がない人、そして本当に地域で暮らしていくためにものすごくお金が必要で、自己負担額が多額になる人をきちんと公費でみるというのはあると思う。しかし全部ただでやるべきだというのは、私自身は疑問である。
  就労の問題。これは施設ではお金がかかるから働けという気持ちはない。働きたいと思っている人があれだけいて、しかも一人一人が成長していくために、本当にいい人生を送るために自己実現するために、働くというのは日本人にとってはものすごく大きなウェイトがあると思う。障害があるからというだけで、そういう場から締め出されていることの方がおかしいと思う。だからそれを応援する仕組みをしっかりつくりたい。就労の話については、もし話すチャンスがあれば、後にします。
  岸川さんの言われたこと。知的障害は本当に特有のニーズがあると思う。そのなかで、グループホームだとかホームヘルパーとか、支援費制度になってここのサービスが知的障害で伸びてきたことは、我々は本当に嬉しいと思っている。支援費制度になってよかったことの一つはそれだと思う。逆に精神障害が今、支援費に入っていない、この恩恵にあずかっていないことが、ものすごく悔しい。知的障害をもつ人々については、今の支援費でいくにしろ、介護保険でいくにしろ、どういう人たちが手厚いサポートが必要かというのを、ある程度判断するメルクマールが必要だというのは、私は岸川さんのおっしゃるとおりだと思う。それを元に、必要な人にはお金を重点的に使う、そうじゃない人には少し我慢をしてもらうということはできると思う。やはり要介護認定と呼ぶかどうか別として、判断基準をつくっていきたい。それはかなり試行錯誤があるだろうと思う。現場の力を借りながら、ものを作ってみて、それを当てはめてみて妥当性があるかどうか、その繰り返しをしながらいい制度を作っていくということになるのだろう。
  本人支援と家族支援の問題だが、本当にマネジメントの仕組みづくりが大事だと思う。これは障害者部会で激論になった。誰がマネジメントを、どういうかたちでやるのがマネジメントの理想かと。グループマネジメントみたいな話や、本当にスーパーバイズできるような専門職を育てるとか、いろんな意見が出た。聞くところによると、私の勝手な解釈かもしれないが、激論がたたかわされて、みんな意見がなかなか一致しないからいつまでも障害者のケアマネジメントが制度として発足しないんだと、こう言われたこともあった。もうちょっと議論を秋に重ねながら、100満点でなくても、なにかしら制度の中に取り込んでいきたいと思っている。さっき、お叱りがあった市町村障害者生活支援事業が一般財源化された話も、なんとかドサクサ紛れに取り戻せないかなと思うのが私の気持ちだ。以上です。


(竹林)
  宮尾さんから、堂本知事が障害者部会に委員となっているが、私もお付で一緒に行っている。非常に知事が多忙ななか、さらに障害関係の仕事が増えることになるが、堂本知事の意向で部会メンバーとなっている。部会も皆勤に近く、知事も関心を深くよせている。
  新聞報道をみて、統合問題ばかりがクローズアップされているが、実際には就労やケアマネジメントなど、生活全体の議論をまずは行っている。報道とのかけ離れがあるという感覚をもつ。
  県の立場からどう考えているかというと、まだ議論が重ねられていない。今は全体の状況を見ているところ。私見では、千葉県は健康福祉千葉方式を採り、対象者横断的な支援を行っていこうという姿勢をとっている。障害者にこの話をすると、障害特性に応じたきめ細かなニーズが忘れられてしまうのではという声もあるが、地域のなかで生活するためには、制度に名前をつけ、縦割りにするのはおかしいと思う。制度の壁を越えることで、利用者のニーズが確保されるのではないか。このような考え方からは、財源についても支援費と介護保険であえて区分する必要があるのだろうか、ということになる。時間がないということなのでここで終わりにする。


(山本)
  山本です。日本の高齢者や、障害者の福祉行政が問題はあるものの近年になって、ようやく、当事者から一定の評価を得るようになった。介護保険と支援費制度の両制度には当然違いがあるが、共通しているのは、当事者自身の選択権、決定権であり、また、その遂行である。
  私自身、一種一級の全身性障害者で、現在、1日8.5時間までの支給を受けており、生活のほとんどをこれに当てているが、不足していて空白時間帯が生じることが多い。介助者の存在なしで生活は成り立たない。尿も便も自分ひとりでは始末さへできない。私の日常生活に支援費制度はなくてはならないものになってきた。介護保険を利用していらっしゃる方たちも同様な感慨をお持ちだろうと想う。すこしずつだが日本の福祉もようやくよくなってきたかに見えてきた。
  ところが支援費制度がスタートして1年も経たないうちに、厚労省は支援費制度と介護保険をドッキングさせたいと言い出してきた。ようするに支援費の資金が大幅に不足していることがその要因らしい。しかし、1年も経たないうちに一つの制度が崩壊の憂き目にたたされるとは、哀しいの一言に尽きる。
  もともと支援費にまつわる資金上の問題は、昨年2月から始まっていた。支援費の支給時間に対して、上限をつけようとした。何がノーマライゼーションだといいたい。国も地方自治体も、そして当事者側からも一度は歓迎され、「措置制度から支援費制度へ」ノーマライゼーション、地域共生社会を実現する大改革のはずであった。
  このような事態になることはおおよその当事者、関係者であれば分かっていたであろう。
理由は簡単である。この制度の持つ重さを厚労省は十二分に計りきっていなかったのだ。それは単に予算上のことだけではない。制度が及ぼす当事者の生活への影響、それを軽々しく見てはいなかったか。特に全身性といわれる障害者の、日常がどのような状態で送られているか。また、障害当事者が一日一日の生活をどのように送りたいのか、そこにヘルパーはどのくらい必要になってくるか。全体的なヘルパーの質と量は、当事者自身の生活の質の向上に大きく関係してくる。そのあたりを的確に捉えた上で厚労省は、この制度の策定をすべきであった。
  もうひとつは自由競争の原理を取り入れたことにある。支援費制度を動かす本体は、民間の事業所となった。各事業所は、それぞれ収益を多くすることに専念し始める。多くの障害者を登録させ、数多いヘルパーの派遣を行なった。支援費の利用者数が厚労省の予想を大きく上回るといった事態になったのも、こうしたことが一因であると、私は想っている。 以上、私がここにあげた問題をどのように考え、明日へと導こうとされているのかお聞きしたい。当事者の一人として支援費継続を強く願うものである。


(さとう)
  市議会議員で福祉を特に熱心にしているといわれドキッとしました。村木課長のお話はどんどん引き込まれてしまう話術で危険を感じた。
  ここにいる人は支援費のことはわかるが、一般の人は支援費制度なんてわからない。介護保険についても同じだ。
  財源不足について。市民の一人として発言したい。そもそも支援費制度と介護保険の統合の理由は財源不足だが、国民をどのように見ているのかという点ではなはだ疑問を感じている。最後に国民に対して政府はどのように責任を果たすのかということを突きつけていっていいのではないかということ。そもそも見込み違いということを謙虚さをもって検証してほしい。
  具体的な話をしたい。私は今月の12日に87歳で母を亡くしている。要介護生活もあったが、最初は要介護2、そしてがんばって要介護1に改善した。ところが病状が悪化してこの3月からは要介護5ということで寝たきりで在宅介護を行った。介護保険を使っていた母がなくなった。要介護5で在宅介護を行っていた。私の母はとてもじぶんらしく生きることを望んだ人で、一人暮らしを25年間実現していた。一人暮らしの中で介護の社会化という、まさにその場面を迎えたわけだが、この3月からの要介護5になったとき、やはり現実を目の当たりにして愕然とした。母の収入は年金、遺族年金の収入で年間200万ちょっとだったと思う。それが要介護5で利用いっぱい使って1割負担の利用者負担を支払って、足りない部分は10割になる。そのへんを含めると、母の生活費は全部介護サービスのために使うというかたちになっていた。そこから3ヶ月で亡くなったということ、とても悔しいが、永遠にこの介護生活が続くと考えると費用の負担もかなりかかる。母の暮らしが、介護保険制度の中で尊厳を守った生活をすることができなかった。介護保険サービスの質と量については課題が大きい。統合ということで大きいエンジンと言われているが、本当に大きなエンジンとなるのか、介護保険そのものの問題をおざなりにしていていいのかということをどういうふうに考えていらっしゃるのか見解をうかがいたい。
  もう一つ、私は同じ女性として切実に思うのは、ヘルパーの社会保障がきちんとできているのかということである。二つの事業所を利用しての在宅介護だったが、そこで働くヘルパーに聞くと、7つの事業所に登録していて、それでも生活ができないというような話を聞いた。介護現場で働く人々が、そのような実態であるということ、これは非常に貧しい国だなと思う。そこの課題をクリアせずに、ただ介護負担を上げていくというのはしてはいけないと思う。


(佐藤)
  船橋市障害福祉課の佐藤と申します。現実的な話から最初にさせていただきますと、平成16年度の国庫補助の基準の話が若干聞こえてきましたのでお聞きしたい。最近の新聞報道で16年度予算は176億円不足、これは概算でまだはっきり分からないという話でしたが、国庫補助の市町村への配分の問題がある。15年度に関してはそれなりの配分をいただいた。船橋市は残念ながら赤字だったが。16年度以降の国庫補助金の配分の考え方は変わるのではないかという噂も聞こえているので、そのへんのところをお聞きしたい。
  介護保険への統合について。三障害を含めて介護を必要な人を対象にし、それは年齢を問わないということで、その中には難病や高次脳機能障害もあるとのことだったが、それ以外に高機能自閉症や、現在の法律のなかで網にかからない方も対象にするのかという部分をお聞きしたい。以上です。


(宮尾)
  私からもひとつ質問がある。それは厚生労働省の中に障害者団体などが入って、地域検討会、生活の検討会という会が作られている。そこに最近、厚生労働省の方から国庫補助基準及び長時間利用サービスの在り方に関する議論の整理案というのが出ている。この整理案の長時間のホームヘルプサービスや、あるいは長時間の移動介護について案がでている。長時間サービスの在り方については、以下のように議論の整理を行うということで、平成17年度の対応について、「サービス利用者間の公平を図る観点から、一月当たり相当量を超えるサービス提供については、包括的な報酬体系を導入するとともに、定期的に長時間サービスを行う従業者を確保するため、一定の条件の下にヘルパー資格要件を緩和すること」。これは何のことかよくわからないので、今日はお話いただきたい。


(村木) 実務的なことから先にお答えする。佐藤さんのご質問。16年の国庫補助について。去年は128億足りないということで、その後、朝日新聞がこれは厚生労働省が出した数字ではないのだが、170億足りないとか報道した。これはどういう数字かというと、去年の支援費の一番新しいデータで実績を見て、それはまだ一定程度伸びるということで計算をしていくと、今年600億の予算がある。だがどうも170億くらい足りないという試算が出た。今年4月から単価が変わっているので、4月のデータとか見てみないと、本当の予測が立たない。今年の財源予測について言えば、去年はほぼ96%から98%くらいまでカバーできたのだが、今年はまだどういう対策が立てられるのかということについて目処がたっていない状況だ。早く今年の予算の見込みを出すことと、どういう対策がとれるのかで、いろんな方策を考えていく必要があるという状況だ。今年、どういう予算をとれるのかが分からない。例えば補正予算をとれるのかとれないのかとかいうことなど、本来できないと言われていることにもチャレンジして、なんとかお金をもってくる方法を考えなければならないという状況だ。
  三障害統合して、他の高次脳機能障害とかいろいろな障害も入るのかということについて。できるだけ審議会では、ここ数ヶ月やってきたのは、千葉に見習うということになるのかもしれないが、できるだけ看板別の制度で細かく分かれたものではなく、三障害共通の枠組みにしたいと考えている。年齢や障害の壁を越えた介護保険ということになれば、要介護の状態であれば難病や高次脳機能障害の人でも対象になる可能性があるのではないかと、これは制度設計をしていかないとわからないが、その可能性、そのチャンスがあるのではと思っている。では、高機能自閉などはどうかということについても、それもどういう制度がつくれるか次第だと思う。ただ、高機能自閉とかLDやADHDなどについては、もう一つの動きがあって、議員立法で新しい発達障害の支援法を作ろうという動きがある。これは役所が中心になるのではなく、先生方が中心にやっているので、その法律の動きも見ながら、そこで制度の狭間に落ちてしまっている人たち、特に発達障害の人たちを救える法律が出てくれば、それに合わせたかたちで政策を新しく展開したいと思っている。議員立法をつくっている先生達と、文部科学省と我々と関係団体の人で、今、一生懸命連絡を取り合いながら、何か進められないかということでやっているところだ。
  地域支援のあり方に関する検討委員会の中で、長時間の介護について包括払いができないかという話が出ている。今年度あるいは来年度以降の国庫補助基準の議論をしているなかで、特に24時間のホームヘルパーが必要な人たちのサービスをどうやって確保するかということで出てきた一つの提案だ。これは決まったわけではなく、提案として出された。これはどういうイメージかというと、今のホームヘルパーの単価は、極端に言えば、ここで30分お世話をして、次の家まで行ってまた30分お世話をして、次の家に行って2時間お世話をしてと、こういうかたちのお世話をする人たちについてもペイをするような単価設定をしている。そういう単価設定で一日5時間、10時間、15時間、20時間、24時間というふうになっていくとなると、実際にはある市の一番長時間サービスを使っている人を上から10人選んで平均の支援費額を出したときに、一人2200万(年間)という金額がでてきた。ものすごいお金だと思う。そのときにこんな議論になった。24時間ホームヘルプを必要とする人がいる。これは確かにそのとおりだ。それをもしサービス提供できないとしたら、その人は施設に帰るしかなくなる。そうすると24時間のホームヘルプを受けられるようにする。しかもそれをどういう単価設定にやっていくかというときに、そういう非常に長い時間を使う人の単価設定と、1時間ここで世話して、次の家で1時間というホームヘルパーの人たちの単価設定とは違うやり方もあるかもしれない。そういう長時間の介護に非常に慣れている、質のいいサービス提供できるところに、24時間でいくらという、丸めというのか、そういうパッケージのサービス提供のお金の設定ができないかという提案をした。そのときの条件として、長時間のホームヘルプを確保するために、ヘルパーの資格要件について少し緩めるということをしたほうが提供がしやすくなるのではという話があった。結論はまだ出ていないが、検討会で議論をしてもらったときには、丸めの単価はしようがないという意見が結構あったように思う。それはサービスの必要な人と、限りある財源とのバランスをみたときに、そういうお金の設定の仕方はあるかもしれないという意見がわりと多かったように思う。ただ、ヘルパー要件緩和については、わりと反対が多かった。そこはもう1回、議論をしないといけないと思う。結論はまだ出ていないが、そういう提案があって、議論がなされているということです。
  そのことと関係が出てくるかもしれないが、さとうさんからヘルパーの労働条件の問題があった。私は労働省に入って、働く人の労働条件を守ることの仕事を長いことしていたので、そのことは私自身も非常に問題視している。福祉の仕事を、劣悪な職場にしたくないという思いが非常にある。ただ、悲しいかなヘルパーの給料を上げれば上げるほど、介護の報酬なり、支援費の単価設定を上げなければいけない。もし予算が決まっていれば、予算は単価×時間なので、単価が安ければたくさんのサービスが確保できるという仕組みになっている。そのなかでどういうバランスをとっていくかということだと思う。それを考えたときには、まさにさとうさんが言ったように、どれだけもっと財源を持ってこれるかということになるのだろう。そこは国の政策転換の根幹にも関わってくるだろう。役人だけでどうこういうことではなく、皆が福祉にもっと金かけろというコンセンサスが最後には必要になるのだろうと思う。介護保険を知らない人もいるけど、支援費はましてもっと知らない人がいるという状況からPRしていかなければならないと思っている。
  最後に山本さん。支援費になって一つ進歩したというふうに言っていただいて、それは非常に嬉しかった。本当に必要なサービスを必要な人に。だけど効率的に提供できる仕組みを作っていきたいので、そのときに財源は税がいいのか保険も入れていくのかということだ。これは皆で決断しなければいけない問題なので、ぜひそれぞれのお立場で議論していただきたく思う。制度が始まってすぐ1年目でこういうふうにつまずいていること自体は、大変恥ずかしいことだと思う。制度をつくって施行までに3年おきます。その間に施設のお金と在宅のお金の財布が別になってしまった。支援費の仕組みを作った後でそうなってしまった。そして三位一体の話もさらにその後から出てきた。そういう意味ではどんどん世の中は変わっていく。制度をつくるためには3年から5年の準備期間が必要だが、そういうなかで周りの状況が変化していく。そうすると、私は現実論者なので、今の状況の中で最良の選択をして5年後10年後にはばかな選択をしなかったと言えるように、今は考えなければいけないと思っている。皆さんのお知恵と意見をいただきたいと思う。


(司会) ありがとうございました。先日、障害者団体が都心でデモをやった。そのときのシュプレヒコールが「厚生労働省は障害者の声を聞け」というものでした。今日は本当に村木さんに我々の声をよく聞いていただいたように思う。またお話も本当にしていただいたように思う。私たちは地域の中で船橋市役所と時には率直な話し合いをしながら、また時には助け合うという関係を作ってきています。この分だと厚生労働省ともそういう関係を、日本中の障害者とつくることができるのかもしれないと思う。今日は本当に有益なお話だったと思う。最後に拍手でお礼をしたいと思う。ありがとうございました。


UP:20040706
介助・介護(支援費制度/介護保険 …)2004  ◇(NPO)船橋障害者自立生活センター  ◇全文掲載
TOP HOME (http://www.arsvi.com)