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電子投票への準備

村田拓司
毎日新聞社『点字毎日』4165号「論壇」欄(pp.22-23)[毎日新聞社点字毎日部『点字毎日新聞活字版』290号「論壇」欄(p.6)に同文掲載]



 来る11月9日の総選挙と同日、神奈川県海老名市長・市議選が電子投票により行われる。電子投票は金融機関のATM(現金自動受払機)同様、画面に触れて操作するタッチパネル式。見えない人はヘッドホンからの音声案内とボタンで操作可能だ。そのためにはあらかじめその旨、投票所で係員に申し出る。
 地元の人は選管に問い合わせ選挙当日までに模擬体験しておくことをお勧めする。これまでに電子投票を行った全6自治体で、私が視覚障害有権者に聞き取りしてきた結果、「体験して初めて全盲でも操作できることを知った」との声が多いからだ。注意が必要なのは弱視者が画面操作してみて、見えにくいのでやり直せないと言うこと。いったん操作が始まると投票しないで終了した場合、白票扱いされるからだ。むしろあらかじめ見え方を模擬体験してきた方が良い。全盲にしても操作の途中で、「やはり点字投票を」と考えてもやり直せないことは同様だから、注意する必要がある。何より操作ミスで意中とは別の人に投票するのを避けるためにも、模擬体験は欠かせない。
 今後、電子投票が導入されそうな自治体では障害当事者団体は、1.音声表示も要することを電子投票条例に盛り込ませる2.投票機を選管が選定するまでに体験会の開催3.当事者の選定委員への参加――等を自治体に求めて行くことが肝心だ。障害のある人のみならずアクセシブル(利用可能)な投票機は高齢者を含め誰にも優しいものであると主張する必要がある。ひとたび当局が導入したら、使い勝手の悪いものを使い続けなければならないのは結局、有権者である我々だ。
 「点字が書けなくても使えてうれしい」(中途失明者)、「少数故に匿名性に不安がある点字投票より安心だ」(全盲者)、「筆記投票の時、書いた字が読みにくくて無効票になるのではとの不安が解消された」(弱視者)等の声もある。そういった電子投票の利点を最大限生かしていきたいものだ。


UP:20060131
村田 拓司
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