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障害福祉サービスの利用者を中心とする新たな福祉コミュニティの形成のために

―セルフ・アドボカシーとエンパワメントのためのコミュニティワーク―

岡部耕典(5461)
東京都立大学大学院社会科学研究科社会福祉学専攻博士課程
日本社会福祉学会第51回全国大会報告・報告要旨
報告資料(パワーポイント)



キーワード:障害福祉サービス・地域福祉・アドボカシー

1.目的 
  従来の行政のパターナリズムに基づく保護的なありかたに代り、自らの主体性と権利性に基づきサービスを選び使いこなす利用者、および、それを支える従来の福祉や施設の枠を超えた地域ネットワーク形成の重要性が高まっている。そこに、障害当事者・福祉サービスの利用者へのエンパワメントとセルフ・アドボカシーを通じてあらたな福祉コミュニティを形成するためのコミュニティワークについて紹介し、その可能性と課題について検討を行う点に本発表の意義がある。

2.視点および方法 
  基本となった米国の実践研究およびその実践研究をもとにとりくんだ日本における2つのプロジェクトについて報告を行い、これからの日本で必要とされる、自己決定と脱施設を前提とし、障害者の地域自立生活を支えるためのセルフ・アドボカシーとエンパワメントのためのコミュニティワークのありかたと課題について検討を行う。

@Developing a Curriculum to Help People with Disabilities
  Nancy Fitzsimons-Cova(米国イリノイ州イリノイ州立大学シカゴ校障害と人間発達学部)による1997年8月から2000年7月までの、障害当事者と地域をネットワーキングしセルフ・アドボカシーを定着させるコミュニティワークの実践研究

A障がい者虐待防止ワークショップ
  全国自自立生活センター協議会人権委員会主催・日本財団助成事業:障害者の人権侵害に焦点をあわせた、2001年7月より2003年3月までの、全国各地でのプレワークショップを含む計10回のワークショップ開催

Bあどぼ三鷹武蔵野プロジェクト―市民による障害者福祉サービス利用支援事業―
  心のバリアフリー市民会議主催・社会福祉医療事業団助成事業:地域での障害者サービス利用支援に焦点をあわせた、2002年4月より2003年3月までの、東京都三鷹市におけるセミナー2回及びワークショップ2回を核とし毎月1回の交流会と週1回の電話相談をおこなった複合事業

3.考察 
  70年代から脱施設化が進んできた米国においては、多くの州において障害者が地域で暮らすことは本人の権利とされ、それを前提にした地域サービス体制の充実、自己決定に基づく市場からの福祉サービスの供給が行われてきた。また、他のマイノリティの権利擁護活動とも連携する形で、1990年にアメリカ障害者法(Americans with Disabilities Act of 1990)が制定され、障害者に対する差別禁止も実定法上においても強固なものとなっている。
  しかし、そういった米国の障害者が、虐待や差別等の人権侵害と無縁となったわけではなく、また、教育やサービスの受給を巡る行政と利用者側の対立が消えたわけでもない。障害当事者ひとりひとりの権利と地域生活が守られるためには、実体的な制度整備や侵害された権利の回復への支援と並行して、障害当事者が内的にも外的にもエンパワーされ、適切な地域資源や法的・制度的権利擁護の制度を活用できるようになることが必要なのである。前述のDeveloping a Curriculum to Help People with Disabilitiesにおいて開発されたTake Charge Against Abuse, Neglect and Financial Exploitation というプログラムは、そのような観点にたち、コミュニティにおいて障害者およびその家族およびその支援者に対し、虐待・放置・金銭搾取に対抗する「知識・勇気・仲間」を提供することにより、障害のある人がエンパワーされ、自らの権利を守る(self advocacy)ことができるようになることを目的とした一連のプログラムであった。
  その特徴は、専門的援助とセルフ・ヘルプの長所を取り入れたワークショップ〜小集団による相互体験学習〜という実践形態及び、その優れたコンテンツ、プログラム開発そのものがコミュニティの障害当事者や市民団体と行われた地域組織化の過程となっていること、また、運営のイニシアティブが障害当事者を中心とするインストラクターに委ねられ、当事者主体が貫かれていることなどにある。
  日本でも、福祉サービスの利用者ひとりひとりの侵害された権利を回復する「たたかうアドボカシー」のための実定的・手続的権利保障の制度の確立とともに、一人一人の障害当事者や福祉サービス利用者が自らの権利を自覚し制度や資源にアクセスを可能にする「支えるアドボカシー」(注1)の必要性が論じられ、次の段階として、その実現のための具体的な方法論が求められている。  
  そこで、Take Charge Against Abuse, Neglect and Financial Exploitationのインストラクター研修に参加した障害当事者・関係者を中心とした「障がい者虐待防止ワークショップ」と「あどぼ三鷹武蔵野プロジェクト」が行われることになった。これらの実践を通じて得られた成果と日本での応用実践のための課題については、当日の発表のなかで述べていきたい。
(注1) 平田厚2001「これからの権利擁護」筒井書房


UP:20031102
日本社会福祉学会  ◇障害学  ◇全文掲載
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