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当事者の運動からグローバル基金へ

〜ある英国人HIV感染者女性の軌跡とグローバル・エイズ問題〜

ケイト・トムソン(世界エイズ・結核・マラリア対策基金市民社会関係コーディネイター) 2003/08/05
国際シンポジウム「アフリカのHIV/AIDS問題と世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)の役割」



Date: Thu, 18 Sep 2003 13:20:07 +0900
From: SAITO Ryoichiro
Subject: [info-jsds] 8月5日シンポジウム ケイトさん、ロラケさん講演録

皆さま こんにちは。

 8月5日に保健分野NGO研究会で開催した国際シンポジウム「アフリカの
HIV/AIDS問題と世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)の役割」でのパ
ネリストの講演のうち、ケイト・トムソンさん(GFATM市民社会コーディネイター)、
ロラケ・ンワグさん(ナイジェリア治療アクション運動フォカル・パーソン)の
講演のテープ起こしが完了しました。
 ぜひ、目を通してください。有意義な講演となっています。

稲場 雅紀

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当事者の運動からグローバル基金へ
〜ある英国人HIV感染者女性の軌跡とグローバル・エイズ問題〜

ケイト・トムソン
世界エイズ・結核・マラリア対策基金
市民社会関係コーディネイター

皆さんこんばんは。本日は大雨が降る中、そして暑い中わざわざお越しいただいてありがとうございます。アフリカ日本協議会の皆様にも感謝申し上げたいと思います。私は、スピーチが非常に苦手で緊張してしまうので、最初にスピーチを終わらせてしまおうと思います。

私の名前はケイトと申します。ジュネーヴにある「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」で働いております。私の役割は、NGOやHIV・エイズの患者や感染者の人々などを含む市民社会と共に働いていくことです。世界基金についてお話する前に、個人的な経験についてお話させていただきたいと思います。

HIV感染とPOSITIVE WOMANの結成

私がHIVの感染と診断をうけたのは1987年の1月でした。しかし私が感染したのは1981年ごろだと思われます。私が診断をうけた病院では、女性で感染者だとわかったのがはじめての例でした。そしてこちらにいる仲間(注:講演会に同席したアスンタ・ワグラ・「ケニア・エイズとともに生きる女性たちのネットワーク」事務局長のこと)のように、「あなたに対してできることは何もない、赤ちゃんを産むのであれば、あなたも赤ちゃんも死んでしまうだろう、あなたの余命は2年くらいだろう」と診断されました。

そこで私がとった行動というのは、他の二人の女性、同じ立場にある女性二人を誘って、POSITIVE WOMANという組織を結成でした。そしてその後の2年間の活動において、私たちの組織は大きく拡大していきました。また幸運にもイギリス政府から十分な資金を得ることができました。

私の組織は1987年から1992年のあいだにスタッフが25名にまで拡大し、その組織を私が管理しておりました。私達が行った活動というのは、女性同士のケアサポート、これは仲間内でのサポートですが、コミュニティーの女性たち、服役中の女性たちに教育をほどこし、また、教育を行った対象としては、ヘルスケアの専門家や警察・刑務所のなかの職員なども含まれました。POSITIVE WOMANでは財務担当者以外の全てのスタッフがエイズの感染者であります。

エイズとともに生きる女性たちの国際委員会(ICW)

1992年に、他の50名ほどの女性とともにアムステルダムで開催された国際エイズ会議に参加いたしました。そこでICW(「エイズとともに生きる女性たちの国際委員会」)という組織を立ち上げました。

私達の組織の目的は、しばしば目に見えず聞こえても来ないものとしてある、HIVに感染した女性たちの見解、声を集団で集まって聞かせていこう、届けていこうというものでした。我々が要求したものはわれわれの見解・考えを着実に政府の意思決定機関に届けるということでした。

私はICWでフルタイムに活動していましたが、結局私たちの活動というのはロンドンにとどまるだけでした。というのもイギリス国内では十分なリソースを得ることができましたが、他のさまざまな国では十分なリソースを得ることが出来なかったからです。
ICWは今も多くの活動をおこなっております。国際的なワークショップを開いたり、患者感染者の会議を開いたり、またさまざまなエイズ関連の文書を発行しております。

治療へのアクセスとその実現

1990年代の中盤、私たちの活動に参加していたメンバーは、世界の多くの国々から参加していたのですが、皆なにかしら共通の経験を共有している人でした。

90年代中ごろに世界的に大きな変化がありました。幸運なことに、私たちと一緒に活動していた人々は、毎週毎月のように仲間のお葬式に行くことがなくなりました。なぜなら治療を受けられるようになったからであります。実際、アジア・アフリカ・ラテンアメリカなど世界のほかの国々に住んでいる人々は、毎週のように友人の葬式に参列しなければいけない状況にあったのです。

私自身が治療を開始したのは約5年前です。その時、私のCD4(HIV/AIDSの病状の進行を表す指標。低ければ低いほど病状が深刻)の数字は8にまで落ちていました。私はベッドからほとんど立ち上がることが出来ませんでした。治療というのはそれだけで可能なものではありません。さまざまな治療にはさまざまな副作用が伴ってきます。そしてそれにどれだけ適応・調整できるのかというのが問題になってきます。またこれは私だけでなくさまざまな仲間、友人が経験していることです。

そういった不満はあるものの、こうして皆さまの前に座っていられることを非常に幸運に感じております。

世界基金と私

上記のことから、私にとって世界基金(グローバルファンド)は重要なものになってきました。私は多くの友人、愛すべき親愛なる世界の友人を数多く失ってきました。私が治療にアクセスできるのに、アクセスできない友人が数多く存在しているのです。これが、私がここでこうして座っているグローバルファンドにかかわっている理由です。

ここで少しグローバルファンドについてお話させていただきます。すでにこの組織について知識をお持ちの方もおられるかと思いますが、どうかご辛抱なさっていただけるようよろしくおねがいします。

またもうひとつお詫びしたいことがあります。世界基金についての情報をたくさんもってきたのですが、飛行機の中で私の荷物がブリティッシュ・エアウェイズのせいでなくなってしまいまして、皆様に本日提供することができません。もしご興味があるかたは、私の事務局の方に連絡しまして、必ず情報をお送りするようにしますので、このセッションのあとに必ず連絡先を教えてください。

そしてもうひとつお詫びがあるのですが、私はパワーポイントでのプレゼンテーションに非常に慣れています。今日ここにパワーポイントがあるのを知らなかったので、なにも準備をしていませんが、いつものように何か指をさしてしまったとしても笑わないで聞いていてください。

世界基金の設立とその構造

HIVエイズの問題は世界規模の問題であります。このことはすでにもう十分に強調されていると思います。世界的な問題に対しては、世界規模での対策・多国間での問題が必要になってきます。

世界基金は、最も資金援助が必要なところに、新たに追加的に資金を投入する目的で設立されました。既存のメカニズムや追加的な措置として、すでにある多国間二国間の支援と調和をとって、活動していくことが非常に重要視されています。

また世界基金がこれまでの組織と違う点は、真のパートナーシップを求めていることを強調している点です。すでに多くの感染症においても証明されていますが、この感染症に立ち向かっていくには、多くのコミュニティーの関与が必要なのです。

次に世界基金の構造についてお話したいと思います。

@ まずは理事会についてですが、さまざまな分野の人々が代表者となっています。そのなかには援助国・非援助国・民間の企業など、財団があります。そして最も重要なのが、NGOが関与している点です。これは南・北、両方のNGOが参加しています。そして最後にエイズの感染者や患者のコミュニティーからも代表者が参加しています。
理事会のパートナーとして、世界保健機構、国連エイズ広報基金(UNA)・世界銀行などが参加しています。そしてここで強調しておきたいのは、我々の理事会のなかでも最も活発に活動しているのは、NGOの代表の3名であるといえましょう。

A 事務局もあります。ジュネーヴに大体70名のスタッフがいます。また世界各国にオフィスを設けているわけではありません。我々の活動のなかにおいて、拠出できる金額に対してなるべく人件費を削減していこうという試みを行っております。
スタッフの国別出身は、地理的バランスがとれています。また民間企業から派遣されているスタッフもいますし、多くのNGOからのスタッフもいます。また開発のパートナーもいますし、世界銀行など多種多様な人々がスタッフを構成しています。

B 非常に独立した申請を審査する機関もあります。このなかには3つの感染症、エイズ・マラリア・結核の専門家もいますし、コストをいかに効率よく使用するかという専門家もいます。そのなかの一人はHIV感染者であります。

国家調整機構(CCM)の役割

国レベルに話がいきますが、ここはまだ多くの可能性を秘めており、開発が可能だと考えております。

世界基金においては、その受益国の主体性に100%信頼をおいております。故に、ジュネーブに座っている私たちが決断するのではなく、なにを必要としているのかを下から上にあげてもらうシステムをとっております。

世界基金にたいして、資金の申請をおこなう場合、まずその国が、国家調整メカニズム(CCM)といわれる機関を通じて申請を行います。

この国家調整メカニズムの基本概念は、包括的な活動の実施です。もう一つの基本概念としては、市民社会・NGO・コミュニティーベースのセクター・感染者・専門家・民間団体・政府関係者、二国間・多国間の援助団体などが共に協力し、包括的な支援をおこなっていくような申請書を作成することです。その国が何を必要としているのかを明らかにすることが必要となってきます。つまり「包括的な活動・支援」、こういった理念をもっています。

そしてこれはそれぞれの国が主体となっているものですが、残念なことに、必ずしも我々の理念に従ったものが作られてくるとは限られません。例えば世界基金は、CCMをどうおこなっていくのかというガイドラインを作っています。しかし必ずしもこれが守られている状況ではなく、本来のあり方と違っていることもしばしばあります。

国家調整メカニズムの中には、非常にうまく機能していて、包括的に意味ある市民社会の参画を達成しているところもあります。しかし我々が望むレベルに全然達していないCCMもあります。ここが私たち組織の直面している最大の課題であるといえます。

個人的な見解を申し上げますと、世界基金というのは真に資金調達をするための機会を提供するもので、必ずしもその国、または組織のキャパシティを構築していくことはできない組織です。しかしこれらのCCMがより効率よく機能するために、われわれは特定なモデルを提供して、こういった調整も行っています。

おわりに

そこで我々は、世界のさまざまな国々にある大規模なNGOとのパートナーシップを重要視しています。こうした大きなNGOはさまざまな経験をもっておりまして、より小さいグループやネットワークと繋がっております。そしてこの小さなコミュニティーベースの、感染者などが参加している非常に限られたリソースしかもっていない団体に対しても、連絡をとることができます。CCMを通じてコンサルタント的な役割も果たしております。

時間が限られておりますのでまとめさせていただきます。私個人として何故グローバルファンドが重要なのかをお伝えできればと思います。これは、全てのひとに関わってくる問題であります。豊かであろうが貧しかろうが、そしてHIVポジティブであろうがネガティブであろうが、この問題はあらゆる人々、地域を巻き込んだ問題なのであります。そしてアドボカシーという活動は、間違った政策を正していく重要な活動であると思います。本日はどうもありがとうございました。


UP:20031228
HIV/AIDS2003  ◇全文掲載
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