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「私たちは100万人の命を助けることができる」

林 達雄 2003/01/17

last update:2010408


 2月14日の行動に向けて、TACから市民グループに呼びかけるためのミーティングがケープタウンの労働組合連合(COSATU)の事務所で昨日、行われた。ピースボートでの講座を終え、ナミビアからケープタウンに戻った翌日、幸運なことに私はこの機会に遭遇することができたのだ。期せずしたザキたちとの再会である。南アではエイズに対する治療計画が政府、財界、労組、市民の4者の間で進んできた。4者が合意すれば、南アのエイズ対策は本当の意味で始めることになる。しかし、政府と財界が治療計画への調印を渋っている。そこで、ザキたちは2月の中旬までに調印がされなければ、本格的な抗議行動を開始することを決めた。そうした意味合いでの、デモ行進が2月14日に行われるのだ。それは、WTOのミニ会合が東京で行われる時期に重なる。私たちが日本政府とWTOに対して、命と健康を守るよう声をあげるであろう同じ日時に、南アでは新な行進がはじまるのだ。
ザキは語る。『私たちの行動は前進と後退を繰り返したきた。私たちの今後の成果は、労組、NGO,女性、若者と子供、メディア、学校などすべての連帯と協力なしにはありえない。』逆にいえば、多くの人々が結集さえすれば、未来をつかみとれる、そんな時点にたどり着いているのだ。私たちは百万人の命を救いうる。そんな希望が今日の参加者すべての表情に見られた。何の力みがあるわけではない。軽やかなのだ。
 1週間前、アフリカで最も感染率が高いと言われているカイリチャのタウンシップを訪ねたときも同様だった。一年前とは全く違う。以前は、エイズについて自ら語れる感染者はほとんど見られなかった。しかし、今回はピースボートの聴衆の前でも、若い女性たちがどうどうと自分の状態を語る。ここでは、TACの事務所があり、国境なき医師団がエイズ治療のパイロットプロジェクトを始めている。その影響もあって、重かった空気が軽くなった。TACの担当者マンドラ君の雰囲気も変わった。一年前は、せっぱ詰まった表情で、唱え文句のようなプロパガンダを繰り返していた彼が、余裕をもって皆に接している。自信を持つということは、きっとこういうことなんだろう。
 ザキたちの南ア治療計画は、まず強制特許を使って薬の値段を下げる。その上で南アの国家予算を使って、薬の無料化をはかってゆく。その際、足りない分の予算を国際社会と企業・財界にに求めてゆく。そのためには、エイズ・結核・マラリアと戦う世界基金にお金が入ることが重要である。そこで、『私たちは百万人の命を救いうる』という標語の横に『世界基金にもっとお金を』という言葉を付け加えことになった。世界のお金が、命を救う方向に向かうことも重要である。『イラクに無駄なお金を使うな』という掛け声で、2月14日の行進は米国大使館へも向かうことになる。
 私たちは日本からどのような応援や参加ができるのだろうか?私は3つの可能性をこのミーティングで提案してみた。ひとつめは、2月のWTOミニ東京会議に向けての行動である。南アの治療計画を実現するためには、薬に対する強制特許など、特許緩和措置が使いやすくなることが鍵となるからだ。二つめは、日本をはじめとする先進国が2国間援助ではなく、世界基金にお金をもっと入れることである。世界基金は、途上国への治療を促進するし、何より当事者・実践者たちにとって使いやすいものだからだ。そして、最近の日本の2国間援助は米国に負けず劣らず戦略性が高い。テロ防止などの交換条件を途上国に課し、エイズを含む社会開発を進める上での新たな足かせとなりうるからである。3つめ、お互いの政府に対して相互にプレッシャーを掛け合うことである。政府というものはときに、自国の市民団体からの圧力よりも外圧に弱いからである。
いかがだろうか?

 これまで世界の情報を追い求めてきたAJFとその仲間たちは2002年末に、この激動の時代に追いつくことができた。世界の仲間たちとネットワークを築くことができた。日本を変えることが、アフリカを幸せにすることも実感した。今度は私たちがこれまで知りえたことを出し惜しみせずに伝え、行動にでる番である。オックスファムや国境なき医師団などとはすでに行動をともにしてきた。分野を超えて、たとえば、アタック・ジャパンとも共通の行動をとろうとしている。ザキたちがいま、さらにその輪を広げようとしているように、私たちも輪を広げる時期である。日本に住む私たちもまた、百万人の命を救いうる位置にいるのだ。
 今日の新聞を見ていたら、2002年に比べ2003年に希望を感じている国別の人口比が紹介されていた。それによると最も希望を感じている国がケニアで、最も悲観的なのは日本であるらしい。どうも『希望』とは、その国の物質的な豊かさや、寿命や健康とは無関係で、未来へ託する気持ちの問題であるようだ。ケニアの選挙に立ち会った実感でいうと、静かで軽やかなやる気なのだ。未来に向けて、自分自身も一票を投じ、参加したんだという誇りと自信なのである。
 2003年は、1人でも多くの日本人に希望と誇りを持ってもらう年としたい。百万人の命を救うことへの参加。私たち日本人が自信を回復するまたとない機会である。ザキたちが南アで行動する丁度、同じ日に私たちも日本で静かに、軽やかに動き始める。・・・・
みんなで幸せになりたい。

1月17日 ケープタウンにて
林 達雄


*本文はアフリカ日本協議会事務局長斉藤龍一郎氏あてに送信されたメールを転載しています。

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