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「『銃砲刀剣類所持等取締法施行令の一部を改正する政令試案』に対する意見」

障害者欠格条項をなくす会 2002/08/15

last update: 20160125


2002年8月15日

警察庁生活安全局銃器対策課企画対策係 殿

障害者欠格条項をなくす会
(代表 牧口一二・大熊由紀子)
事務局連絡先
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11
DPI障害者権利擁護センター気付
TEL 03-5297-4675  FAX 03-5256-0414


「銃砲刀剣類所持等取締法施行令の一部を改正する政令試案」に対する意見


 当会は、「鉄砲刀剣類所持等取締法」第5条第1項第2号「精神障害又は
発作による意識障害をもたらし、その他銃砲又は刀剣類の適正な取扱いに支
障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものにかかつている者」の
条文自体が大きな問題と考えている。
 この条文のもとでは、政令は、障害や病気がある人をあらかじめ危険とみ
なして不許可対象に列記することになる。実際に今回の政令試案は、精神分
裂病、そううつ病、痴呆、てんかん、等々をあげている。これに対して反対
意見と提起を述べる。

 障害や病気がある人を含めて、どんな人でも、注意力や集中力、心身のコ
ンディションの変化などによって「鉄砲又は刀剣類の適正な取扱いに支障を
及ぼす」状態となりうる。それらの個々人の状況は環境条件とも不可分であ
る。
 しかし、なぜか法律は「精神障害又は発作による意識障害…支障をおよぼ
すおそれがある病気」と直結させて、該当する障害や病気のある人に許可を
しないものとなった。

 ぜひともお考えいただきたい。何が安全で何が危険かは、私たち一人一人
が、自分と周囲の安全のために日ごろ注意していることである。心身のコン
ディションが不調な時ならば、家庭用包丁や事務用カッターを使っていても
ケガをしやすいことは、経験的にもよく知られている。障害や病気によって、
鉄砲や刀剣の扱いに支障があるような状態であれば、そもそも扱うことが大
きな負担になるので自然に遠ざかっている。
 そして実際に、鉄砲や刀剣類にかかわるほとんどの事故、事件は、環境要
因と切り離せない誤認や、単純な不注意によって、あるいは、破壊や殺傷の
ために意図的に扱おうとする人々によって、起こされているのではないか。

 従って鉄砲や刀剣を取り扱う人の障害や病気のみに焦点をあてて、あらか
じめ許可を規制するという発想では、本質的に安全を図ることはできないと
考える。
 危険な道具を必要に応じて扱う場合はあり、最大限安全に扱うための法制
度として、子どもの時からの安全教育を充実し、環境の安全性を高め、それ
でも万一事故が生じた場合には適切に対応できる態勢をつくることが課題で
ある。

 基本的には、法律条文は「鉄砲又は刀剣類の適正な取扱いに支障を及ぼす
状態にある者は、鉄砲又は刀剣類の取扱いをしてはならない」として、もし
不適正な取扱いをした場合に、公正な審査によって許可の停止や取消等を行
う規定を設け、同時に、障害や病気に言及した政令等は定めるべきではない。

 上にも述べたように、障害や病気と「支障を及ぼすおそれ」を結びつける
ことには、本来、合理的根拠がなく、障害や病気がある人に対する差別偏見
を増幅する。この法令の今年度にかけての見直しにあたり、障害者観の根本
から見直し改めるチャンスが、見送られてしまったのは非常に残念なことで
ある。

 今後、新「障害者基本計画」の前期5年の新「障害者プラン」期間中をめ
どに、障害や病気がある人々と向かい合い話し合いを重ねることを通して、
同法および関連する法律・政令等の見直し検討を進めることを強く要望する。

以上

REV: 20160125
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