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「ベトナムにおける女性と社会、そして子供と社会について」

立命館大学政策科学部 Y.S. 2002/07/04

last update: 20160125


ベトナムにおける女性と社会、そして子供と社会について

立命館大学政策科学部 Y.S.
20020704


 私は二回生の夏休みに10日間ベトナムに行ってきました。観光目的の旅行ではなく、取材のアシスタントという名目での旅行でした。きっかけは、ベトナムの写真展を見たことです。私と同じ位か年下の女の子が生活をしていくために売春をしている様子、孤児院で暮らす子供たち、枯葉剤の影響で水痘症になった子供、そしてその子を見世物にお金を得る親、ベトナム戦争によって息子を亡くし精神状態が破綻してしまった老婆…。これらの写真を目の前にして、私は動けなくなる位の衝撃を感じました。日本で暮らしていたらまず見ることの無い光景が、当たり前のように存在している世界に驚愕し、自分の目で見たいと思い、写真を撮られた方に連絡を取り、次の渡越の際にご一緒させてもらった訳です。
 ベトナムでは家族愛について考えさせられる機会が多かったように感じています。以下はChao☆ストリートチルドレンを支える会のHPからのデータです。
 ホーチミンのストリートチルドレンの61パーセントが母親や祖母を家族の中で一番愛していると言っています。家に戻りたいかについては60%が戻りたくない、20%が戻りたい(17%は家がない)と答えています。

戻りたいが戻らないと言う理由は、
・親や保護者に叩かれるのが怖い  ・家族に渡す金がない
・帰ることを恐れ恥じている    ・友達と暮らしたい
・帰り方がわからない       ・家が貧しい  などです。

戻りたくないと言う理由は、
・継父・継母を憎み恐れている、または拒絶されている   ・つまらない
・叩かれるのが怖い     ・誰も自分の面倒をみてくれない
・家が貧しい        ・街での生活が楽しい
・独立したい        ・父親が投獄されている  などです。

 取材の一つとして、ある家族に出会いました。母親がカンボジアに出稼ぎに行った先でHIV、をもらい、夫と息子に感染し、しかし二人の娘は感染を免れている、という家族です。母親はすでに他界しており、娘二人は親戚の勧めもあってホーチミンシティの孤児院にいる、とのことでした。私が父と息子に会いに村に行った時は立っているのもやっと、といった具合だったのですが、つい先日に父親が他界した、との報告を受けました。村中に息子もHIVに感染していることが知られており、そのために友達が出来ずにいる彼が言った、「今すぐ死にたい。病気がつらいからじゃなくて、友達がいないから。」という言葉が私は忘れられません。それまで私は本気で死にたい、と思っている人間に出会ったことが無かったし、しかもあんなに小さい男の子が死にたいと考えているという事に大きなショックを受け、HIVの恐ろしさを身をもって感じました。彼に、「お母さんの事は好き?」と聞くと、「好き」とすぐに返事が帰ってきたことにも何ともいえない感情がこみ上げてきました。二人の娘と父親の手紙を渡す役割もさせていただいたのですが、親子の愛は世界中どこにいてもかわらないのだ、という当たり前のことに大変感動し、村の人も一緒におお泣きしたことは忘れられない出来事です。
 私が泊まっていたホテルは物乞いもストリートチルドレンもたくさん見られる場所でした。ストリートチルドレンにはカンボジアから来た子供もいるようでした。はじめのうちはストリートチルドレンにネガティブなイメージしか持っていませんでした。できれば寄ってきて欲しくなかったし、あまり見たくなかったし、目を合わせたくないと思っていました。しかし、私がホテルの前で一休みをしている時などに、言葉は通じないけれども言葉を交わす時間を持つ事ができ、一緒に笑いあったことがありました。今までの根拠の無い偏見のような物を持っていた私がとても恥ずかしく、先入観を持つ事は人生を半分損しているような物なのかもしれないと思いました。
 親に捨てられた子供などが集まる孤児院を訪問する機会にも恵まれました。ちょっと子供たちと遊ぶ位しかできなかったのですが、ずっと手をぎゅっと握っていてくれる子供がいて、こんなに可愛い子供を手放した親はなんてかわいそうなのだろうと漠然と感じました。
 ベトナムのストリートチルドレンは、現在約2万2千人、そして15歳未満のDisadvantaged Childrenという社会的に不利な立場におかれている貧しい子たちは330万人います。少年少女の非行は年々増え続けており、全ての犯罪の中での全国平均は9%を超える程度なのに対し、ハノイでは10%、ホーチミンでは18%にもなる、ということです。
 現在、HIVに感染しているストリートチルドレンは数多く、母子感染・売春・麻薬(注射器の使い回し)などが主な感染経路です。感染しているとわかると、ショックのあまり自殺してしまう子もいるといいます。ベトナムではHIVのしっかりとした知識を持っている人が少ないのも大きな問題の一つです。HIV感染者の人数に関しては、HIVの検査が義務ではないということや、検査費が高いという理由で、正確な調査ができずにいるのが現状です。         (Chao☆ストリートチルドレンを支援する会のHPより)
 HIVは深刻な問題になっていることを反映して、ホーチミンシティには多くのHIV啓蒙看板が見られました。また、道端に注射針が多く落ちていたのも事実です。日本ではHIVはまだまだテレビ・雑誌などのメディアのもの、といった感じでとらえていたのですが、ベトナムでは深刻な社会問題になっているのです。また、ドラッグも非常に身近な存在になっており、私が良く一緒に遊んでいた男の子の父親も実は投獄中であった、といったこともありました。
 ベトナム戦争の傷跡はまだまだ深いのが現状です。日本では「ベトちゃんドクちゃん」と言えば多くの人は知っているのに、ベトナムでは知らない人が多数だそうです。若い人たちにも関心がない、と言った様子だと言うことでした。身近にベトナム戦争の痕跡が残っている状況にある彼らが、ベトナム戦争について真剣に考える機会を持たない、あるいは持てないことは無いわけで、今後の教育に関して何かしらの対策が必要では、と感じさせられました。
 あらゆる社会問題を考えるにあたって、女性の地位向上、女性の能力の活用と社会に対する貢献、そして教育が肝要になるのはいうまでもありません。まだまだベトナムでの教育の現場も女性の社会貢献度も満足しているとは言いがたい状況です。学校に通うためのお金の工面に困るというケースが多いからです。
 ▲母親教室…母親、乳幼児のための栄養や環境衛生を改善し、健康を保つための活動。例えば、乳幼児診断や予防接種、おかゆや豆乳の作り方、家庭菜園の作り方などの指導を母親に対して行った。         (日本国際ボランティアセンターHPより)
 ベトナムにおいて家族愛は深いものだという見解もみられたので、母親、乳幼児が共に健やかに過ごせるための活動を実施する事は意義深い事でしょう。
 ベトナムがよりよい方向に向かう事、それは子供たちに対する対策をこうじる事だと私は考えます。そして子供たちに対する対策を考えるにあたって、女性を軽視する事はできません。
 ベトナムでの十日間を通して、家族について考えさせられることが多かった気がします。多くの家族の形態を見ることができました。ごみ山でゴミを拾いながら暮らす家族、母親にHIVをもらったにもかかわらず母親に対する愛情は変わらない子供たち、などです。どこに行っても子供が可愛いのはかわらないし、子供を愛する母親の気持ちは変わりません。ただ違うのは家族が存在し、生活していくという土俵が平等に与えられているのか、いないのか、それに尽きると思います。

参考URL
フォトジャーナリスト村山康文の世界〜ベトナム南部を歩いた三年間の足跡〜
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Ocean/1093/
Chao☆ストリートチルドレンを支援する会
http://www1.ttcn.ne.jp/~zibanitu/
日本国際ボランティアセンター
http://www1.jca.apc.org/jvc/JVC_project/vietnam.html


……以上、以下はホームページの製作者による

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