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「(NPO)共同連シンポジウム」

2002/06/17

last update: 20160125


(NPO)共同連シンポジウム

2002年6月17日(月)

第1部 13:30〜15:00

第2部 15:30〜17:00


参議院会館 会議室



特定非営利活動法人 共同連


【 開催目的 】
 過去18年間30回以上行ってきた陳情(要望)を継続する形で、長年にわたり運営し続けてきた障害者に関わる「現場」からの課題を整理しつつ、実践者・研究者や行政官とそれぞれの立場からの な意見交換を行い、今後の政策に反映できるような論議をめざす。
 今回は前回のテーマを引き継ぐ形で、かねてから課題となっている「通勤・通学ヘルパー」の問題と「雇用を超える就労」として社会的協同組合について考えたい。



【 開催内容 】
 第1部  「通勤・通学ヘルパーの必要性とその可能性」
   シンポジスト 実践者 木村 俊彦(埼玉県 キャベツの会)
          研究者 立岩 真也(立命館大学政策科学部助教授)
          行政官 厚生労働省社会・援護局障害福祉部障害福祉課
              厚生労働省社会・援護局障害福祉部精神保健課
              厚生労働省高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課
              文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課
              文部科学省初等中等教育局特別支援教育課
          助言者 堀利和(参議院議員)
          司 会 入部香代子(豊中市市会議員)

 第2部 「雇用を超える就労を考える」
   シンポジスト 実践者 斉藤縣三(名古屋 わっぱの会)
          研究者 石塚秀雄(都留文化大学講師)
          行政官 厚生労働省社会・援護局障害福祉部障害福祉課
              厚生労働省高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課
              厚生労働省社会・援護局障害福祉部精神保健課
              経済産業省
          助言者 堀利和(参議院議員)
          司 会

 

第1部  「通勤・通学ヘルパーの必要性とその可能性」

 障害者の完全なる社会参加を痛切な思いで望んでおられるはずの厚生労働省の施策には、ことごとく通勤・通学に関する介助という視点が抜け落ちております。これは、社会福祉法が社会福祉事業法に変わろうとも、あるいは措置費が支援費に変わろうとも一貫しております。
 我々共同連は、これまでの度重なる話し合いにおいて、何よりもまず通勤・通学がなければ社会参加はあり得ないと繰り返し述べているところです。
 今回のシンポジュウムでは、厚生労働省が推し進める支援費制度に照らして、個々の事例についてその可能性を探ろうというものではありません。すなわち、『ガイドヘルパー』や『ホームへルプ』という言葉がキーワードとして飛び交うシンポジュウムではありません。
 そうではなく、支援費制度なる大きな壁を頭の中でひとまず取り壊して、本当の社会参加とは何か?というテーマを大きな柱にし、精神保健課、障害者雇用対策課ならびに文部科学省からは学校教育課、特別支援教育課両課同席のもと、通勤・通学に関する介助の必要性について議論することを願うものであります。
 当日は、進行上の都合で以下の論点にそって意見交換できればと思っております。

 1、一時的、家族援助的ではない恒久的な通勤・通学に関する支援策がないことに
 ついて。拠って、通勤・通学における介助者がいないために、仕事や地域の学校に行
 けない障害者が現前していることについて。

 2、現行の制度では、個人の永続的な経済活動に関するヘルパー派遣は望ましくな
 いとされております。これは、先の厚生労働省社会援護局との話し合いの折、障害者
 施策を中心になって制度化していく厚生労働省のみの見解ではなく、国の意向である
 と伺いました。経済活動に参加してこそ社会参加であると思いますが、この、国が示
 す障害者の社会参加の視点について。

 3、これまで、我々は、通勤・通学ヘルパーの確立を目指し、旧厚生省との間で、
 何度となく話し合いをしてきましたが、いまだ実現しておりません。これは、障害者
 施策イコール厚生省という我々の認識の甘さ故であったのかもしれません。今後の省
 庁を越えた施策確立の可能性について。

 

討議のためのメモ

 *以下のメモと同じものは「討議のためのメモ」にもあります(立岩)

                        立岩真也(立命館大学政策科学部)

 他のことについてはヘルパーを認めるが、通勤/通学にはヘルパーを認めないことを正当化しうる理由を参加者全員で考えてみたい。

 というのも、
 0)障害があることにかかわる社会的不利益は、社会がそれを補うべきであるという立場に立てば、理由があるはずはないからであり、私はこの立場が正しいと言うほかなく、ゆえに理由を思いつかないから。
 cf.立岩「自由の平等」(『思想』2001年3・5・8・11月号)、『私的所有論』
(1997年、勁草書房)

 1)必要の度合いの違い、重要性の違い? → 通勤・通学が他のことより大切だと言   う必要もない(と私は考える)が、しかし少なくとも、その重要性が他より低いと   は、まったく言えない。

 2)「家庭」奉仕員という、そもそもの成り立ち? → 歴史的経緯としてはそうだろ   う。しかしそのことは、そのままでよいことをまったく意味しないし、また、政府   自らも公言してきた少なくともここ20年来の「障害者福祉の理念」に合致
   しない。
 (にもかかわらず、「今日はヘルパーが来るから(仕事の方は遅刻して)家にいて待ってなければならない」といったことが起こってしまっているのではある。)

 2)役所間の担当、管轄の問題? → むろん(正当化の)理由にはならない。

 3)お金の問題? → ……

 4)…?

 5)…?

 6)…?



cf. 障害者と労働に関わる基本的な論点については以下で考えた。
 立岩 2001/12/25「できない・と・はたらけない――障害者の労働と雇用の基本
 問題」『季刊社会保障研究』37-3:208-217(国立社会保障・人口問題研究所)

 
 

第2部  「雇用を超える就労を考える」

 障害者にとって就労問題は、えてして「福祉」か「雇用」かに二分化されて論じられる。どうかすると「雇用」が最終到達点であるかのようにさえ捉えられがちである。はたしてそうだろうか。「雇用」も労働=就労の一形態にすぎないのではないか。
 労働者としての諸権利は、雇用関係を持つことによって保障されるために雇用形態を持つことの重要性は大きい。しかし、実質的には雇用する・される関係ではない働き方としての形態も実に大きなものがある。自営業、自由業といった個人での働き方もある。集団的には労働者協同組合という働き方もある。
 労働者間の連帯が基礎となり、誰もが対等であろうとする「協同労働」の関係では人に合わせた働き方が追求される。この「協同労働」は障害者の労働参加に大きな可能性を与えるのではないか。その証拠としての実践がイタリアでは進んでいる。それは社会的協同組合と呼ばれている。この協同労働が障害者の労働参加に大きな可能性を与えるのではないか。「雇用」が個人単位の能力を基礎するならば「協同労働」は集団による個人の能力を超える働き方を可能にするからである。
 しかしながら、日本においては労働者の協同労働の組合法が存してない。ましてや障害者が労働することを認めた協同組合法は存在しない。中小企業等協同組合法は事業主の協同組合法であり、その中の企業組合という形態にしても零細事業者の集まりという捉え方である。
 その点イタリアでは労働者の協同組合が多数存在しており、障害者の労働参加をすすめる社会的協同組合も1970年より生まれ、発展してきた。1991年に「社会的協同組合法」が成立し、各州ごとに社会的協同組合を支える法律が生まれている。
 我が国に置いても障害者の労働参加をすすめる協同組合法の整備が待ち望まれる。「雇用」を超えるとは、現在の障害者「雇用」の限界性をこえることであり、新たな労働形態をもって実は障害者のいっそうの「就労」の拡大をすすめようとするものである。

障害者雇用対策課に対して
1.現在の障害者雇用の停滞もしくは発展の壁をどのように捉えているのか。
  どうすれば雇用の拡大が出来るのか。
2.雇用にとらわれない障害者就労の道はないのか。
3.その方案として協同労働をどうとらえるのか。
4.より重度の障害者への就労をすすめるにあたって、協同労働をどう評価するのか。

障害福祉部に対して
1.一般就労が難しい障害者に対し、福祉的就労の場を提供していることをどう捉えているのか。
2.雇用にとらわれない障害者就労の道はないのか?授産訓練がその趣旨に反して、一般就労への準備の場ではなく終生的な訓練の場になっていることをどう捉えるのか。
3.その方案として協同労働をどうとらえるのか。
4.より重度の障害者への就労をすすめるにあたって協同労働をどう評価するのか。

経済産業省に対して
1.新たな起業支援・産業育成策として、協同組合というものの必要性をどうとらえるか。
2.現在の中小企業等協同組合法では、労働者の協同労働をのばすことは難しいと考えるが、どう捉える。
3.起業支援・産業育成にとっても、障害者参加の視点は大切と思うがどう捉えるのか。
 

            雇用を超える就労を考える
             −イタリアの社会的協同組合とは何か
                           斉藤健三(共同連理事)

1.障害者雇用は何故進まないのか
 ・法定雇用率と実雇用率の差は、少ししか縮まらない
 ・納付金財政はふくらみ続けている


2.福祉的就労は障害者の労働権を保障しない
 ・福祉的就労は拡がり続けている
 ・ここでは労働者とは認められない


3.共働事業所作りとは何か
・共働と事業所化という2つの価値を追求してきた
・福祉助成と雇用助成の2つを活用


4.社会的協同組合とは何か
 ・1991年 社会的協同組合法
 ・B型社会的協同組合とは


5.我が国における社会的協同組合の可能性
 ・日本にはふさわしい法体制がない
 ・社会的協同組合は拡がっている

 

    2002.6.17 シンポジユウム報告レジュメ 石塚秀雄

     ヨーロッパの社会的企業と障害者の労働の権利


1.「ヨーロッパ連合は障害者に労働の提供責任を持つ」(1998.4.17)
◎   ヨーロッパ連合の障害者の定義→身体的・精神的・知的・経済的・社会的→アムステルダム条約(EU基本憲法)第13条(あらゆる差別の克服)。
◎   EU社会政策における「新しい挑戦」としての障害者にたいする雇用政策が取り組まれている。→1999.6.17「障害者の雇用の機会平等にかんする勧告」
◎   EU障害者雇用政策(1999.2)→@労働市場差別、社会的排除に対処。A障害者の機会均等、平等権利の追求。B非営利組織事業体などとの協働促進。
◎   EUは障害者の労働市場参入計画に470億ドル(約5兆円)を当てる(1999年度)→財源としてのEU社会基金、EU構造基金。
◎   財政危機と従来の雇用助成金や社会政策の有効性の低下、削減。民営化。

2. 障害者と労働の権利の論理構造
◎   労働の権利は誰が持つのか→EU社会憲章(1989)における「worker働く人」、「citizen市民」とは。基本的社会権と公正社会→個人の権利(自己責任・自立)。
◎   市民としての障害者→障害に対応するだけではなくて、市民としての活動機会の拡大→社会的パートナーとしての障害者。「福祉型」から「参加・統合型」へ。
◎   労働市場に障害者を参入させる。→EUの雇用政策の基本として、@人々の雇用能力の開発。A起業による仕事の創出。B機会平等の確保: 事業主、労働者、政府の連携。
◎   障害者と社会参加→社会的統合、社会的挿入、社会的参入。
◎   (潜在的)失業者としての障害者→一般労働者と比べての不平等。不公正。⇔労働市場での競争力。
◎   障害者の所得補助の考え方の転換→給付金に対する受動的依存をなくす。福祉の罠からの脱出。
◎   障害者のエンパワーメント(自己活力化)→障害者には能力があるのかないのか→条件と制度の転換。

3. 障害者の労働参加・雇用のための社会的支援の取り組み
◎ ヨーロッパにおける社会的企業とは→非営利協同の社会的貢献事業体:@福祉・社会サービス(福祉システムの転換への貢献)。A社会的弱者の労働市場挿入(雇用創出への貢献)。B社会的連帯の促進(社会的統合への貢献)。C社会的資源・公共資源の有効活用と再配分機能(地域開発・社会開発への貢献)。
◎   社会的企業、社会的協同組合、非営利アソシエーションなどによる取り組みは増大している →公的支援とニーズとのギャップの克服。スウェーデン、イタリア、スペイン、イギリスの事例。
◎   一般企業での障害者雇用割り当て制度はあまり活用されず好まれない→会社、障害者双方にとっての不利益が生ずる可能性。
◎   「障害者はみんな仕事につくべきだ」(イギリス・ブレア首相)→そのためには支援制度の確立が必要。

4. 非営利協同組織による障害者労働参入取り組みの利点と問題点(ヨーロッパの事例)
A.   利点
 @   非営利協同性と社会的有用性の強調(利潤極大化せず、新しいニーズへの対応)→民間営利企業の参入動機は少ない。公的機関の直接サービスからの転換。
 A   コンソーシアム(事業連合)の形成。アソシエーション主義。⇒小さな単位組織では困難な、政治的交渉、契約、経営指導、会計管理などを実施する。
 B   法整備がされている。制度化。ボランタリー組織法、アソシエーション法、協同組合法。⇒組織構造と運営原則・規則の明確化(意志決定、各種参加、権利など)
 C   ヨーロッパ連合の社会的経済的開発プログラムに組み込まれている。⇒地方自治体や公的機関との協定による優遇。税制優遇。行政からすると外部契約化の側面。社会的資源・社会的資本の活用という見解。⇒地域コミュニティ開発・社会的開発の一環。雇用対策の一環。
 D   市場化への対応が可能⇒社会的企業の位置づけは単なる非営利組織とは違い、事業継続性を重視。起業、労働市場への統合。
 E   社会的費用・取引費用・生産費用の軽減。集団的福利の実現→人々の主体性・当事者性の確保。
B.   問題点
 @   事業に必要十分な組織形態がとれない→十分なサービスが提供できない。法人制度の不備。
 A   公権力(公共政策・社会政策・労働政策)への依存が深まる→行政のニーズと定義にあわせがち。公共機関の代用ではない。助成の対象となる障害者に特定される。資金調達の困難。
 B   市場競争原理と準市場との関係の困難さ。→競争原理と効率指向。公共性、社会性の是認。行政の認知。社会的市場の形成。
 C   労働市場への挿入の困難。雇用訓練、起業、雇用。短期、長期雇用。
 D   職員の質の確保、所得の相対的低さ。
 E   経営的自立の困難→小規模などのために運営費用の増大(非効率性)。→さまざまな資源の活用:市場からの収入(民間商業資源)、補助金収入(公的資源)、寄付収入(民間個人資源)、支援制度(公的・私的)。生産能力、投資能力。経営能力。社会的監査・社会的会計。
 F   組織の社会的位置付け意識が明確でない→第三セクター、社会的経済セクター(市場セクターでもなく公的セクターでもないもの)としての自己認識がないと、「業界・セクター」を構成できない。                 (FIN)

 

※第1部 参考資料
             できない・と・はたらけない
           ――障害者の労働と雇用の基本問題――

                          立岩 真也 2001/12/25
      『季刊社会保障研究』37-3:208-217(国立社会保障・人口問題研究所)
                       http://www.ipss.go.jp/

 

(別添一)
        身体障害者ホームヘルプサービス事業運営要綱

三 事業対象者
 身体障害者ホームヘルプサービス事業の対象者は、次のとおりとする。
(一) 入浴等の介護、家事等の便宜を供与する場合の対象者は、重度の身体上の障害等のため日常生活を営むのに支障がある身体障害者であって、当該身体障害者が入浴等の介護、家事等の便宜を必要とする場合とする。
(二) 外出時の移動の介護等の便宜を供与する場合の対象者は、重度の視覚障害者及び脳性まひ者等全身性障害者であって、市町村、福祉事務所等公的機関、医療機関に赴く等社会生活上外出が必要不可欠なとき及び社会参加促進の観点から実施主体が特に認める外出をするときにおいて、適当な付き添いを必要とする場合とする。

四 便宜の内容
 身体障害者ホームヘルプサービス事業は、事業主体により対象者の家庭等に派遣されたホームヘルパーが、次に掲げる便宜のうち、必要と認められるものを供与することにより行うものとする。
(一) 入浴、排せつ、食事等の介護
 ア 入浴の介護
 イ 排せつの介護
 ウ 食事の介護
 エ 衣類着脱の介護
 オ 身体の清拭、洗髪
 カ 通院等の介助
(二) 調理、洗濯、掃除等の家事
 ア 調理
 イ 衣類の洗濯、補修
 ウ 住居等の掃除、整理整頓
 エ 生活必需品の買い物
 オ 関係機関との連絡
(三) 生活等に関する相談、助言
 生活、身上、介護に関する相談、助言
(四) 外出時における移動の介護
 外出時の移動の介護等外出時の付き添いに関すること。((一)の業務の一環として行われる外出時の付き添いを除く。)
(五) 前各号に掲げる便宜に附帯する便宜
 (一)から(四)に附帯するその他必要な介護、家事、相談、助言


一二 ガイドヘルパーに関する特例措置
 四の(遙)四の便宜については、当分の間、これを専門に行うホームヘルパー(以下「ガイドヘルパー」という。)を派遣することとするとともに、次の特例措置を設けることとする。
(一) ガイドヘルパーを利用した場合の費用の負担については、六の規定にかかわらず、別表の「生計中心者」を「本人」と読み替えて費用を負担するものとする。また、身体障害者本人の事情によらない外出と実施主体が認めた場合には、費用の負担を減免できるものとする。
(二) ガイドヘルパーの選考に当たっては、七の規定にかかわらず、次の要件を備えている者のうちから選ぶものとする。
 ア 心身ともに健全であること。
 イ 身体障害者福祉に関し、理解と熱意を有すること。
 ウ 外出時の付き添いを適切に実施する知識と能力を有すること。
 なお、実施主体は、ガイドヘルパーとして選考した者を、重度の視覚障害者のガイドヘルパー及び脳性まひ者等全身性障害者のガイドヘルパーの種別毎に登録するものとする。
(三) ガイドヘルパーの研修に当たっては、八の規定にかかわらず、別に定めるところによって行うこととし、外出時の付き添いに関する必要な研修を受けるものとする。
(四) その他、ガイドヘルパーの派遣による便宜の供与に関しては、別に定めるところに従い運営するものとする。

 

(別添)
           ガイドヘルパー養成研修実施要綱

3 研修カリキュラム及び受講対象者
 (1) 本研修は重度視覚障害者研修課程及び重度脳性まひ者等全身性障害者研修課程の二課程とし、各課程のカリキュラムについては別紙のとおりとする。
ただし、地域性、受講者の希望等を考慮して、必要な科目を追加することは差し支えない。
 (2) 各課程の受講対象者及び研修時間は次のとおりとする。
課程 受講対象者 時間
重度視覚障害者研修課程 A 障害者(児)ホームヘルパー養成研修1、2級課程修了予定者又は修了者及び介護福祉士 12
 B 上記以外の者 20
重度脳性まひ者等全身性障害者研修課程 A 障害者(児)ホームヘルパー養成研修1、2級課程修了予定者又は修了者及び介護福祉士 10
 B 上記以外の者 16


別紙
ガイドヘルパー養成研修カリキュラム
1 重度視覚障害者研修課程   A B
 合計 12時間 20時間
(1) 講義 (計) (3) (11)
 ア ホームヘルプサービスに関する知識      
(ア) ホームヘルプサービス概論     2
(イ) ホームヘルパーの職業倫理     1
 イ ガイドヘルパーの制度と業務   1 1
 ウ 障害者(児)福祉の制度とサービス     2
 エ 移動介助の基礎知識   2 2
 オ 障害・疾病の理解     2
 カ 障害者(児)の心理     1
(2) 実習 (計) (9) (9)
 ア 移動介助の基本技術   2 2
 イ 屋内の移動介助   2 2
 ウ 屋外の移動介助   4 4
 エ 応用技能   1 1
2 重度脳性まひ者等全身性障害者研修課程   A B
 合計 10時間 16時間
(1) 講義 (計) (6) (12)
 ア ホームヘルプサービスに関する知識      
(ア) ホームヘルプサービス概論     2
(イ) ホームヘルパーの職業倫理     1
 イ ガイドヘルパーの制度と業務   1 1
 ウ 障害者(児)福祉の制度とサービス     2
 エ 障害者(児)の心理     1
 オ 重度脳性まひ者等全身性障害者を介助する上での基礎知識      
(ア) 重度肢体不自由者における障害の理解   1 1
(イ) 介助に係わる車いす及び装具等の理解   1 1
 カ 移動介助にあたっての一般的注意      
(ア) 姿勢保持について   1 1
(イ) コミュニケーションについて   1 1
(ウ) 事故防止に関する心がけと対策   1 1
(2) 実習 (計) (4) (4)
 ア 移動介助の方法   3 3
(ア) 抱きかかえ方及び移乗の方法      
(イ) 車いすの移動介助      
 イ 生活行為の介助   1 1

 

(別添1)
          精神障害者居宅介護等事業運営要綱
5 便宜の内容
事業は、運営主体により利用者の家庭等に派遣されたホームヘルパーが、次に掲げる
便宜のうち、必要と認められるものを供与することにより行うものとする。
(1) 家事に関すること。
ア調理
イ生活必需品の買い物
ウ衣類の洗濯、補修
エ住居等の掃除、整理整頓
オその他必要な家事
(2) 身体の介護に関すること。
ア身体の清潔の保持等の援助
イ通院、交通や公共機関の利用等の援助
ウその他必要な身体の介護
(3) 相談及び助言に関すること。
生活、身上、介護に関する相談、助言

 

(別紙)
      心身障害児(者)ホームヘルプサービス事業運営要綱

三 派遣対象者
 心身障害児(者)ホームヘルパー(以下「ホームヘルパー」という。)の派遣対象者は、重度の心身障害のため日常生活を営むのに著しく支障がある重症心身障害児(者)、知的障害児(者)、身体障害児(以下「心身障害児(者)」という。)の属する家庭であって、心身障害児(者)又はその家族が心身障害児(者)の介護サービスを必要とする場合とする。なお、外出時における移動の介護の対象者は、重度の知的障害者であって、市町村、福祉事務所等公的機関、医療機関に赴く等社会生活上外出が必要不可欠なとき及び社会参加促進の観点から実施主体が特に認める外出をするときにおいて、適当な付き添いを必要とする場合とする。


 

              職場における介助制度
1.雇用納付金による助成
○重度障害者介助等助成金
 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または就職が特に困難と認められる身体障害者を雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類または程度に応じた適正な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。
@職場介助者の配置または委嘱
・申請できる事業主
(1)一般事務、会計事務及び営業・販売関連事務等の事務的業務に従事する重度視覚障害者、または重度四肢機能障害者の業務遂行のために必要な職場介助者を配置または委嘱する事業主です。
(2)事業的業務以外の業務に従事する重度視覚障害者の業務遂行のために必要な職場介助者を委嘱する事業主です。
・助成対象となる障害者
「重度視覚障害者」・2級以上の視覚障害者・2級以上の視覚障害者である短時間労働者
「重度四肢機能障害者」
 ・2級以上の両上肢機能障害及び2級以上の両下肢機能障害の重複者
 ・3級以上の脳病変による上肢機能障害及び3級以上の脳病変による移動機能障害の重複者
 ・2級以上の両上肢機能障害及び2級以上の両下肢機能障害の重複者である短時間労 働者
 ・3級以上の脳病変による上肢機能障害及び3級以上の脳病変による移動機能障害の重複者である短時間労働者
助成対象となる職場介助者の数
 重度視覚障害者または重度四肢機能障害者1人に対し、1人の職場介助者を配置または委嘱することができます。
支給額及び支給期間等                             
│ 助成金の種類 │助成率│ 支給限度額 │ 支給期間 │ 備考           │
│ 職場介助者の │   │ 配置1人月15│      │ 事務的業務に従事する重度 │
│配置     │   │ 万円    │      │ 視覚障害者、または重度四│
│ 職場介助者の │ 3/4 │委嘱一回1万円│ 10年間  │ 肢機能障害者が対象   │
│委嘱     │   │(年150回まで)│      │             │
│職場介助者の委│   │委嘱一回1万円│      │ 事務的業務以外に従事する重│
│嘱      │   │(年24回まで)│      │度視覚障害者が対象    │




○重度障害者通勤対策助成金
 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または通勤が特に困難と認められる身体障害者(以下、この助成金において「重度障害者」といいます。)を雇い入れるか継続して雇用している事業主、またはこれらの障害者を雇用している事業主の加入する事業主団体が、これらの者の通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。

●通勤援助者の委嘱
申請できる事業主
 助成対象障害者の通勤(公共の交通機関を利用する通勤に限る)。を容易にするための指導、援助等を行う通勤援助者を委嘱する事業主です。
対象となる障害者
 住宅の新築等または賃借と同じです。
支給額及び支給期間等                             
│ 助成金の種類│ 助成率│ 支給限度額 │ 支給期間│  備考          │
│ 通勤援助者の│  3/4 │ 1回2千円 │1ヶ月間 │支給期間は、対象障害者を雇入│
│ 委嘱    │    │       │    │れた日から起算して3月以内の│
│       │    │       │    │1ヶ月間となります     │

●駐車場の賃借
申請できる事業主
 自ら運転する自動車により通勤することが必要な身体障害者(助成対象障害者)に使用させるために駐車場を賃借する事業主です。
助成対象となる障害者
 住宅の新築等または賃借と同じです。
支給額及び支給期間等                             
│ 助成金の種類 │ 助成率│   支給限度額       │  支給期間   │ 
│ 駐車場の賃借 │  3/4 │対象障害者1人につき月5万円 │  10年間    │ 

●通勤用自動車の購入または賃借
申請できる事業主
 自ら運転する自動車により通勤することが必要な重度障害者(助成対象障害者)のために通勤用自動車を購入または賃借する事業主です。
 ただし、通勤用自動車の購入または賃借に係る助成金の申請日において、過去に支給を受けた「通勤用バスの購入」、「通勤用自動車の購入」に係る助成金及び重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の助成対象障害者(支給決定日から10年を経過したものを除く。)が離職している場合(重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金については、通勤用自動車の購入に係る助成金の場合に限る。)、当該重度障害者に代わる重度障害者をもって対象とすることができます。したがって、助成対象の重度障害者の数に増加がなければこの助成金を申請することはできません(助成金の支給にあたっても同様の取り扱いとしています。
支給額及び支給期間等                             
│ 助成金の種類│助成率│   支給限度額              │ 支給期間│
│ 通勤用自動車│   │ 1台 150万円               │     │
│の購入    │ 3/4 │ 1台 250万円(1級または2級の両上肢障害) │     │
│ 通勤用自動車│   │ 月 5万円                │ 3年間 │
│の賃借    │   │ 月 8万円(1級または2級の両上肢障害)) │     │

2. 職域開発援助事業
  窓口 障害者職業センター及びハローワーク(公共職業安定所)
 制度の概要 事業所での実習を通じて、職業生活全般の支援(指導・援助)を行うこと      で、就職に必要な労働習慣や作業能力の向上を図るために実施します。
      作業技術面の指導は、委託事業所で選任された技術支援パートナーが、職業      生活面の支援は、障害者職業センターの生活支援パートナーが行います。
 委託料  委託事業所に対し、委託料として月額59,000円が支給されます。
 実施期間  1〜4ヶ月の期間(原則は2ヶ月)で、対象者の状況を勘案し、期間を設      定します。必要に応じ、最長7ヶ月までの実施が可能です。

3.職場適応援助者

4.自治体による公務員別枠採用−自力通勤でき介助者なしで勤務することを条件とする


学校における介助制度
 1.盲・ろう・養護・学校
 2.普通学校−自治体における独自の介助者派遣


 


※第2部 参考資料

                           1999.3.8 石塚秀雄
        イタリアの社会サービスセクターと社会政策
            ーーマロッキ報告へのコメントーー

1.イタリアの社会的協同組合の登場の要因
 イタリアにおいて、なぜ社会的協同組合特別法が制定されたのかについては、社会的要因と協同組合の側の要因とに分けられる。第一に、社会的要因としては、社会政策や福祉政策を含む公的政策の見直しに直面したからである。これはいわゆる福祉政策の危機(福祉国家の危機)と言われるものである。第二に、また非営利・協同セクター(社会的経済セクター)が80年代より発展してきたことである。第三に、従来の協同組合の定義ではカバーできない役割が、協同組合にとって課題として登場したからである。
 イタリアの福祉国家(Stato sociale)の役割については、イタリアでは従来公共サービスは公的セクターの責任によって行うものと位置づけられてきた。福祉国家とは経済成長と連動した、富の再配分いう公共性(普遍性)を基盤にした福祉供給の考えであった。しかしイタリアの福祉国家としての歴史は浅く、50年代後半から始まり、80年代には財政的困難に直面した。イタリア的特徴として、クリエンティリスモと呼ばれるような、政党や労働団体などとの強い利害的結びつきがあったし、また一方で、カトリック教会などの宗教団体の福祉分野における大きな影響力を持つということが伝統的にあり、さらに不十分な社会保障に対抗した労働運動が存在していた。伝統的協同組合運動は、労働運動にリンクしており、組合員に対して、共済保険サービス、住宅供給、就労などの相互扶助活動を行ってきた。
 イタリアの福祉国家モデルは、国による公共福祉モデルを伝統的な非営利組織とでもいうべきカトリック教会勢力および福祉サービスが補完するものであった。イタリアの社会政策は1970年代後半の国家医療制度の確立から本格化し、社会保障や社会サービスの分権化も徐々に始まった。社会政策の骨格は労働者保護と地方自治体主導型の医療・社会保障の2つである。イタリア福祉国家は1970年代から整備され始めたが、80年代から社会的変化が見られた。直接には社会費用の増大だが、EU統合化にも関連した社会変動も要因である。
 国による社会サービスの問題点は、再配分効果の非効率・不平等、公共機関がサービスの直接供給を行うための費用効果の非効率、サービスの質の不適切性などがあげられる。このために、1990年代にいくつかの転換が図られた。1992年の社会保障関係費は国内総生産の25.6パーセントであり、EUの平均の28.8パーセントとより若干低い比率であったが、これはイタリアにとっては重い財政負担であった。1991年には雇用手当制度の再編が行われた。1992年には医療制度改革があり、1995年には年金制度の改革が行われた。
 また公権力と非政府組織の関係強化の政策も採用された。公立地域保険機構(USL)を社会サービスの認定機関として民間機関との契約を行う制度を作ったのがその例である。これらはいずれも国家財政が逼迫したことを反映したものであった。また雇用政策については、1985年には、マルコーラ法による民間倒産企業の協同組合化促進と、協同組合共済基金法による失業労働者への就労支援促進が図られた。これらの施策は、協同組合を失業対策における積極的な仕事おこしの手段として使うということで協同組合の社会的役割を一層鮮明化した。
 このような文脈に沿って、社会サービス分野(福祉と雇用)において、地方自治体への責任の分権化が促進された。これは「新しい連帯」と呼ばれた。その担い手とされたのが非営利組織と社会的協同組合であった。地方自治体は、自ら社会サービスの供給者となっても良いし、非営利協同組織と契約を交わしても良し、公的資金の配分決定も地域の政治家と行政により決定された。非営利組織の重視は、イタリアの伝統的な「利益誘導型」政治による腐敗汚職が当時建設協同組合等にまで波及するくらい深刻化したことも反映している。行政と非営利組織とボランティアとの協力という関係は、特に社会サービス分野で重要性が増した。
 行政側からの福祉国家から福祉社会への移行政策の柱は、従来の福祉政策の普遍型供給を選択型供給にすることによって再配分非効率を軽減すること、民間委託とりわけ非営利セクター(当初、「社会的民間(Privato sociale)」と呼んだ)を育成することによって費用効果とサービスの質向上を図ること、などによって社会福祉財政を軽減化することにあった。イタリアの場合、1991年の社会的協同組合法とボランタリイ組織法は福祉政策における非営利セクターの活用の重視を示すことになった。

2. サービス供給モデル −国・利用者・民間の関係−
 イタリアにおいても、公的セクターが福祉サービスの供給者であることは、事業の独占による競争原理の欠如や、官僚主義の結果によるサービスの質の低下をもたらした。すなわち福祉制度の「非効率性」があると指摘された。また公的福祉制度の経済的な持続可能性に翳りが見えて、福祉予算の赤字化、一方で重税というパターンがあらわれることになった。このような文脈の中で、国家と社会サービスの在り方は、いくつかの在り方が模索されることになった。
 そこでなによりも、国家と市場の関係あるいは公的セクターと民間セクターの関係の在り方が問題とされた。バルベッタの分類を援用して次のようなモデルが想定できる(Barbetta,1995)。すなわち、第一のモデルは、国家(公共セクター)が依然として主導権を握ることである(国家主導型、公社型)。これは、政府が直接、サービス内容を決定して、受給者に供給する一方通行型すなわち従来型である。財源は基本的に税金という間接的な形あるいは公的保険料という形で徴収されて、利用者は補足的な費用を支払う。
 第二のモデルは、民間が公的セクターの下請け的・補助的役割を担うことである(民間受託型)。これは政府が計画および費用負担をして、契約をした民間組織が受給者にサービス供給を行うものである。サービスの内容の決定権は政府にある。民間組織は政府の代理人であり、利用者は料金を支払わないという点ではあくまでも従来型の受給者である。
 第三のモデルは、公的政策の民間市場への依存と従属である。政府は費用を直接、利用者に「利用券・クーポン券」として出す。利用者は「自由な」選択により、民間業者のサービスの内容を選択するか要求するかする。民間業者は利用者のニーズにあったサービスを提供する。この場合、民間セクターとは主として営利であり非営利も付随する(民間市場依存型)。
 第四のモデルは、政府と民間とが対等な関係を持つものである(公民協力型)。この場合、公共性を担保しやすい民間組織の形態は非営利組織である。行政は非営利組織の一員として参加することが可能である。
 第五の選択肢は政府行政の干渉を排除して民間主導で行うもので、営利企業と非営利組織のいずれも存在しえるが(民間独立型)、社会サービスでは非営利主導型が多い。さらにこれらのバリエーションが想定できるが、これらの型にはそれぞれ得意な主要分野がある。すなわち、国家主導モデルでは教育分野、民間下請け型は福祉事業、協力型には社会サービス、民間独立型には老人施設、非営利主導型には環境、市民運動分野が有力になるであろう。
 イタリアでは社会サービス分野はとりわけ第四の公民協力型がふさわしいものとして現れた。これは福祉混合とも呼ばれている。社会的協同組合はイタリアの社会政策費用の13%(1993年度)を占めていると言われている(鈴木勉,1998)。また非営利セクターの社会サービス部門に占める総事業高は3.8%(1991年度)という数字となっている(Barbetta,1997)。
 マロッキ論文は最初に、社会的協同組合の法的枠組みについて1991年法の第1条「定義」を引用して「共同利益(公益)interesse generaleを追求するもの」であるとその特殊性を指摘している。イタリアでは、伝統的に、民間セクターの公共性(公益性)追求という点では、非営利組織としての財団とアソシエーションをあげており、その経済活動が制限される代わりに公益性が付与されている。一方、協同組合は伝統的に組合員制度という枠内における「相互扶助」による経済活動を行うものであるとされている。協同組合は組合員の「相互利益」を追求するものとみなされていた。

3. 社会的協同組合と従来の協同組合との違い
 社会的協同組合が従来の協同組合と相違する点は、まさに社会的目的を持ち、コミュニテイ一般の利益追求をして人々の社会的統合を図りつつ実現するという社会に「開かれた」目的を持つものとして作られたことである。社会やコミュニテイに開かれた組合員制度と目的を持つことが、「閉じられた」組合員制度を持つ従来の協同組合の在り方との根本的な相違である。その結果、新たに特定の協同組合法を作る必要ができたのである。
 社会的協同組合法の第ふ
2条は「現行の協同組合法以外に」として、特にボランティア組合員を定義している。この場合のボランタリイとは労働報酬を受けないという意味である。1960年代、70年代には社会連帯協同組合と呼ばれていた所以である。また、英国などでコミュニテイ協同組合と呼称されるものも同じような性格と目的を持っている。
 マロッキも説明しているが、社会的協同組合法第一条ではその種類をA型とB型に区分している。A型は社会福祉サービス型、B型は社会的弱者の労働市場再挿入型である。日本ではともするとA型に関心が集中しがちであるが、社会政策上は雇用問題と合わせて労働市場再挿入を目指すB型のコンセプトも今後重要さを増すものと思われる。
 社会的協同組合は、従来型の協同組合における単一種類の組合員とは異なり、複数の種類の組合員が存在することが最大の特徴である。こうした複数異種の組合員を持つ協同組合の存在を法的に規定しているのはイタリアとスペインだけである。スペインの法律では混合型協同組合という表記をしている。
 社会的協同組合にはもちろん従来通りの組合員がいるので、ボランティア組合員を含めて4種類に分類される。すなわち、第一は「提供組合員」で、通常の労働提供する従業員、医療関係者・専門家、障害者従業員(社会的「障害」を含む。この種類はB型社会的協同組合のみ)などでいずれも、報酬(賃金)を受け取る者である。第二は、「ボランティア組合員」で、先にも述べたように、労働対価を受け取らない者であるが、組合員の50%以上を超えてはならないとされている。ただしこの制限には意味はないとする意見もある。第三は、「利用者組合員」で、協同組合のサービスを享受する者たち、すなわち、高齢者、障害者、その家族などである。第四は、「その他の組合員」で、法人や財政支援者である。こうした組合員制度をマルチステークホルダーと呼んでいる。
 資料によれば、平均的にはA型の社会的協同組合においては組合員の構成は、一般従業員70%、専門家5%、ボランティア14%、法人1%、利用者8%、財政支援者2%となっている。またB型社会的協同組合においては、一般従業員40%、専門家1%、ボランティア22%、法人1%、財政支援者10%、障害者従業員(利用者)26%となっている。
 
4.イタリア法制度の非営利組織についての原則
 イタリア憲法の第45条では、「協同組合の社会的機能」として相互扶助的で私的投機をしないことと定めている。1991年第381号社会的協同組合法は、他の協同組合の相互扶助の原理からはずれて、相互扶助から相互愛他支援への初めての転換したものと言える。悪く言えば、社会的協同組合は灰色の領域すなわち、営利と非営利の境界領域に位置すると言える。さらに同年制定された法第266号は、ボランタリイセクターと行政との関係強化促進をめざしたものとして重要である。
 20あるイタリアの行政自治州で1992年に社会的協同組合法を制定したのは一地方だけであったが、93年には6自治州が、94年には5自治州、96年には2自治州が制定した。
 社会的協同組合の税制優遇措置に関しては、97年に非営利組織に対する税制優遇措置が適用されている。このように社会的協同組合を含めた幅広い非営利組織を「社会的有用性のための非営利組織」(ONLUS、Organizzzazioni non lucrative di utilita sociale)と新たに規定して、非商業的団体とは区別して社会的目的をもったものとして括っている。これは「コミュニテイの福利のための非営利組織」とも表現される()
 ヨーロッパ連合では、1992年にEEC指令により社会的協同組合を公共的性格をもった組織として認定している。1995年にはEU指令を実行するための公共入札の法令が出されて社会的協同組合にも適用された。社会的協同組合の貸借対照表、財政制度については、民法の非営利条項の適用及び関係条例の制定により定められている。また労働面の問題については、労働省の省令により、さらに国家雇用推進局(INPS)の統制を受けている。

5. イタリアの福祉国家の再編と契約化
 イタリアは1920年代前後の産業化の時代に労働者共済組合、疾病老齢保険制度、国家保険基金、強制年金保険制度を創設した。ファシスト政権は共済組合、政党を禁止し、国家強制保険は国民一般ではなく特権的労働者を対象とした。カトリック教会と国家の関係は憲法第7条でも規定があるように、いわば、対立と妥協の関係であった。教会は貧困地区で社会サービスを行なってきたが、教会権力の制限しようとする国家とカトリック教会の紛争は、カトリックの権限を国家に移行めざした協定「コンコルダード」として現れる。教会の資産を国家に、すなわち、パブリックに移した。建物は病院など公共施設にするといういわゆる世俗化ず推進された。教会施設を収容し競売に付し、その福祉施設を国家管理にすることは1920年代のファシズム期に完成した。しかし、カトリックは他の宗派に比べて特権的な位置におり、所得優遇、税制優遇があり、教会が使用できる基金「イタリアンフェイスフル」があり、寄付は所得の10パーセントまでは減税となる。
これまで非営利組織の役割は協同組合や公的セクタ、教会、家庭が吸収していた。社会的協同組合は新しいタイプの非営利組織の創設である。
 イタリアでは公共サービスは公的セクタの責任とみなされてきた。非営利組織が公共サービスとりわけ福祉分野に参加するという政府の政策は、直接的には政府の福祉予算の赤字や年金制度の危機による公的福祉政策制度の危機や福祉制度の「非効率性」が原因であるが、非営利セクターの参加に道を開くことは福祉制度の経済的持続可能性の増加を持たす。それは税制優遇に支えられものであるが、独占と競争の欠如、官僚主義と質の低下と言われる公的セクターによる供給から、契約によるサービスの質の向上、運営上の民主的チェックと参加への可能性を増加されるものになる。いわば、福祉制度の危機の反映としての民営化であり、この「契約福祉制度」は福祉の国家独占を打ち破るものとみなされる。
 イタリアではこれまで教会や労働組合という伝統的な組織と福祉国家モデルが並行的に存在した政党とこれらの伝統的非営利組織関係にあった。イタリアはINIと呼ばれる産業公社制度があり、ファシズムをその変形としてコーポラティズムの機能が強く働いていた。しかし、この関係は近年の政治制度の中で困難に直面した。「イデオロギーの危機」による政党の解体再編は、伝統的な福祉政策の枠組み以外に議論がでない従来政党の在り方までも変えた。特に、1980年代後半よりオペライスモ(労働者中心主義)と反資本主義イデオロギーの克服が強調され、企業を起こす権利が強調された。イタリアの経済民主主義の在り方が5つに整理されている(後房雄、1994)。すなわち、政党支配からの離脱、政治的多元性、多様な経営民主主義、市場原理における企業民主主義、労働者の経営参加としての産業民主主義である。
 こうした流れに沿って、社会サービスの分野においても、教会が統制する福祉組織や労働組合が福祉制度を外側から補足的に担ってきたという図式に変化があらわれ、それらの宗教的および職能集団的な伝統的な組織を基盤とする福祉の補完的な担い手にとって変わって、新たに「市民的な」組織が登場する理由がある。
 民営化は政府にとっては、政府費用の軽減が目的である。非営利組織はボランティアを引きつけるし、公的労働者よりも低賃金または低費用でかつ、フレキシブル労働と高いモチベーションが期待できる。効率性の獲得、個人へのインセンティブ、公的セクターよりも安い労働費用が政府の動機づけである。
 1995年の法令157号により、3億8千万リラ以上の金額については入札契約を義務化している。入札の基準は低価格である。価格以外の、供給主体の信頼性、サービスの質、設備、専門性などの内容をどのように確保するかも重視される必要が指摘された。州によっては価格要素を評価内容の50パーセントに止めるという規定もできた。低価格の基準だけで契約をすることが90年代半ばに起きた一連の公共受注の腐敗問題につながったと言われている。
 契約の仕方には4種類ある。すなわち、公共入札(誰でも参加できる)、限定入札(特定の指名された業者のみ参加できる)、コンクール入札(特定の条件を満たした業者が競争コンクールに参加できる)、限定契約(公的機関が特定の業者と個別に交渉する)である。

6.社会的協同組合の効率性とニーズへの対応
 マロッキが述べている「弱い道徳性」の意味とはなにか。第一は、国家や伝統的慈善団体からの「強い道徳性」からの決別であろう。これまで、福祉サービスは市場を介在しないで、国家や教会、家庭、職能団体という、市場から離れた所で、「強い道徳性」すなわち愛他主義、相互扶助主義でなされてきた。それは市場という経済活動の外側あるいは補完的な位置にあるものであった。社会的協同組合が「弱い道徳性」を持つというのは、道徳性が弱くなったというのではなくて、道徳性をあくまでも持つということである。過度な自己犠牲ではなくて、妥当な犠牲あるいは献身が目指されている。それは社会性あるいはコミュニテイ性ということである。強い道徳性は福祉国家を補完するメダルの裏側の動機であったといえる。しかし、この点で効率性は重視されなかった。
 第二は、「弱い道徳性」とは、市場の「無道徳性」とは違うということであろう。一般に、非営利組織は営利組織と異なり、組織運営をしている構成員に対して利潤分配を行わないかあるいは制限的な利潤配当を行う(協同組合の場合など)。営利組織は自己利益配当最大化を目指す。営利組織の動機には「道徳性」は含まれない。営利企業の「道徳性」はただ市場からの要請がある場合である。営利企業がモラルハザードを起こすのは、その社会性の欠如と経営上の透明性が確保されていない場合に多い。
 一方、社会的協同組合の「弱い道徳性」とは、その市場における企業活動と社会的目的(すなわち利他目的)の結合を意味する。しかし、社会サービスの分野において、非営利組織は営利企業より優越する根拠はどこに求められるのか。マロッキは民主的な「1人1票」原則、オープンドア原則、経営に地域コミュニテイの代表が参加することをあげつつも、近年、社会的協同組合においてボランティアと利用者の経営参加が減少傾向にあることに警告を発している。
 ボランティアは賃金報酬を受けないし、利他的・道徳的な動機により参加するために、ボランティアの存在は費用の低減化に貢献できる。また、利用者の意思決定への参加はサービスの適切な質の供給をもたらし、非効率性の低減化を可能にする。他のNPOと異なり社会的協同組合は、労働者も経営参加しまた部分的配当を受けることによって、社会サービス労働に対する労働者のモチベーションが確保されて、費用の低減化が可能である。
 市場競争ではなによりも費用効率が問題にされるので、社会的協同組合には、原則的にその競争力が備わっていると言える。市場競争において社会的協同組合がボランティアを活用するという点で、社会性をもち、「弱い道徳性」をメリットとして持つのである。また財源としての寄付を、NPOのような利他組織に比べて協同組合は貰いにくいが、社会的協同組合はボランティア組合員の存在と社会性によって、寄付を受ける対象となることが可能である。
 第三に、「弱い道徳性」とは、非営利組織の種類にかかわる議論につながる。これに関連してマロッキは、K.ボルサガの利潤配当禁止の基準による区分を紹介している(Borzaga,)。これを補足説明するならば、ボルサガはまず、従来の非営利(Non Profit)と準営利(Not For Profit)の区別を強調している。Non Profitは自己利益配当をせず、利他的な目的すなわち他者が利益を享受する組織である。Not For Profitは、部分的な自己利益配当を認めるものであり、利己的・利他的利益の双方を追求する組織である。ボルサガはこの2つの基準は厳密に区分すべきであるとしている。さらに、構成員が単一種類の構成員(Single Stakeholder)か複数種類の構成員(Multi Stakeholder)かの基準を組み合わせている。これによってボルサガは非営利組織を5つに区分しているので、試みに原理的特徴を継ぎ足して表に示した。

 表1  非営利組織の5区分
      区分       /   原理的特徴        /  例
1.伝統的NPO・配当禁止型  統制型・非市場・非効率・利己目的   財団
2.単一メンバー・配当禁止型  参加型・非市場・非効率・利他目的 アソシエーション、NPO
3.単一メンバー・部分配当型  参加型・市場・効率・利己目的   生協・労協
4.複数メンバー・配当禁止型  参加型・非市場・非効率・公共目的 福祉アソシエーション
5.複数メンバー・部分配当型  参加型・市場・効率・利他利己目的 社会的協同組合
 社会的協同組合は、第五番目のマルチステークホルダー型に該当し、利潤部分配当を認める点で、社会的企業として位置づけられている。社会的企業は、社会的協同組合を包含したより広い概念である。非営利か営利かという議論の有効性に疑問が投げかけられている。非営利であることでどのようなメリットを持つのか、非営利であることは良いサービスを提供できる根拠となるのか、それよりも非営利・営利の区分を超えて、社会的ニーズに答えられる企業を社会的企業として括るほうが有効ではないか、ということである。
 近年、協同組合におけるトランスアクションコストの議論が取り上げられているが、複数の参加者を利害当事者(ステークホルダー)として内部化し、情報、意思決定、実行などにかかる取引費用負担を軽減化することにより、効率化を図ることが可能であるとの主張がある。ボルサガは、国や伝統的NPOが社会サービス供給主体となるときに、「二重のインフォメーション・ギャップ」が生じる危険があると述べている。供給側がサービス受給者のニーズを知る必要を感じないために、自分たちの決めた基準によって社会サービスを一方的に供給し、また受給者も供給されるサービスの内容を知ることなしに、サービスを受けるという情報不足とギャップが発生する。社会的協同組合の場合には、利用者組合員、ボランティア組合員の存在によって、情報提供のアンバランスを補正できる。ただし、労働者組合員と利用者組合員の利害が対立する場合は危険性が増加する。マロッキはその点を指摘している。
 社会的協同組合の効率性は、なによりもマルチステークホルダー型のメンバー制度による運営の透明性、情報伝達のバランス、モチベーションへのインセンティブ、ニーズに対応した適切なサービス供給、トランスアクションコストの低減化などにより、市場競争力を確保することができるとしている。
 社会的協同組合というイタリアモデルは、従来のNPOモデルや民間営利企業を超えた効率性、社会的ニーズへの適切なサービス供給、社会的有用労働の実現などにおいてメリットをもつ、社会的企業形態として位置づけられる。

参考文献
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田中夏子『エミリア・ロマーニャの社会的協同組合を訪ねて』、(「協同の発見」第72号、1998所収)
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鈴木勉『福祉供給システムの転換と「非営利・協同」組織の役割』、(「協同の発見」第72号、1998所収)
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REV: 20160125
(NPO)共同連  ◇全文掲載
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