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「希望の手を差し伸べよ――アフリカ民族会議(ANC)執行委員会の声明文」

アフリカ民族会議 2002/03/20

last update: 20160125


斉藤@足立区です。

柿元さんに3月20日付けANC声明文「LEND A CARING HAND OF HOPE -
STATEMENT OF THE NATIONAL EXECUTIVE COMMITTEE OF THE ANC」を訳しても
らいました。この声明が出された後、最高裁の判決も出ており、先日、牧野
さんが報告してくれたように、連邦政府もネビラピン処方の拡大に向けて動
き出しており、この声明の主張そのものは否定されています。その意味では、
記録として共有する、というもの。

用語については
(1)序、22  non-compliance → 手順無視
(2)19*   Condomise → コンドーム使用
(3)19f    lay counsellors →  助産婦
(4)34    from the Bench → 実験室から
としました。より適切な用語があれば教えてください。


====<以下訳文>============
「会議では、抗レトロウイルス薬の多くがこの国で使用登録されている事実
を確認した。しかしながらこの薬は、高価であること、そして結核対策など
ではきわめて一般的である、決められた手順を無視すると重大な結果につな
がりかねない複雑な管理体制のために、公共衛生システムには流通していな
い。」

希望の手を差し伸べよ − アフリカ民族会議(ANC)執行委員会の声明文
2002年3月20日 アフリカ民族会議

1.アフリカ民族会議(以下ANC)執行委員会は、2002年3月15〜17日の会議
開催中、HIV/AIDSに関する幅広い討議を行った。まず最初に、政府のこの疫
病に対する政策とプログラム改革について詳細な説明がなされた。

2. 会議では、政府と青年女性連盟(Youth and Women's Leagues)やANCが、
社会の他分野の人々と協力してこの苦難を撲滅する包括的プログラムの特徴
を述べた。
 また、現在実施されている戦略の改善を再確認する一方、ANC委員会の公
約として、HIV感染の広がりと適切で効果的なエイズの管理方法を引き続き
探っていくことを強調した。

3. ANCは、この問題に関する基本的前提として以下の3つの点を再度強調し
たい。

4.まずHIVがエイズを引き起こすということ。

5. 2番目に、様々な治療方法があるがAIDSの治療方法は確立されていない。

6. 3 番目に、病気の感染と広がりには、社会経済的状況特に貧困問題が重
要である。


希望はある

7.エイズは、私たちの社会への最大の挑戦である。この病気がもたらす困
難で複雑な問題そして家族の苦痛を解決するためには、私たちが団結した目
的をもち行動することが必要だ。

8. 南アフリカの人々がこの共同行動の公約に刺激され、AIDSの管理に成功
し、それを完全に打ち負かすことが出来ると確信する。従って、私たちがま
ず求めるのは、一人一人が希望を構築するためにその手を差し伸べることだ。

9. 希望はある。南アフリカは、個人として、コミュニティーとして、国家
として自らを守る力をその中に秘めているからだ。

10. 希望はある。私たちが今まで育んできたメッセージが南アフリカ国内の
多くの人々に達しているからだ。

11. 希望はある。長い間構築してきたパートナシップは大切な資源であり、
今後もらに拡大していくからだ。

12. 希望はある。過去に私たちが始めた治療と家庭治療のプログラムが、国
の疫病管理に役立っているからだ。

13. 希望はある。私たちは、エイズと共に生きる人々の権利を守るための法
的手段と文化的実践をいまもなお改善しているからだ。

14. またとりわけ希望がある。全ての人々により良い生活を構築するための
包括プログラムを通じて、HIV蔓延とエイズ進行に決定的な貧困撲滅に取り
組んでいるからだ。


継続と機会

15. NEC(全国執行委員会)会議は、私たちの政策と戦略の全ての点につい
て検証し、さらにこの問題が明確に述べられるべき状況を考察した。その結
果、現在実施されている政策と戦略はこの病気の管理にとり最適かつ最も効
果的な方法であるとしたが、これは重要である。

16. しかし今まで以上の領域を改善する必要がある。HIVとAIDSが存在する
限り、現在実施している仕事に満足することはないのだ。

17. これに関しNECの結論は、現在実施している私たちの仕事は「継続と変
化」の取り組みであるとした。つまり、幅広く戦略と政策を継続し、そして
実施と言葉の強さを調整変化させることである。

18. NECは、病気の特徴を全て述べる政府の包括的戦略を再度確認した。特
に、下記の問題は重要である。

19. ABC戦略に要約される予防プログラムは、私たちの意識キャンペーンの
主な柱である。

* 「 自制、忠実、(2)コンドーム使用」は、南アフリカの幅広い層に浸
透しているメッセージである。自分の生活に責任を持つことは大切である。
また、強調されるのは生活様式の変化、つまり性感染症(STIs)の管理、ワ
クチン第一主義などである。これに関しては2つの点が詳しく調べられた。

a. NECは、母子感染防止(PMTCT)には抗レトロウイルス薬投与以上のもの
が必要だが、また出産の複雑な処置方法や母親の健康状態も考える必要があ
ると強調した。

b. ネビラピン問題に関し、現在のプログラムは薬の長期的効果、薬剤耐性、
取り扱い上の問題を確立するための研究だと強調された。

c. 研究分野での主な疑問は:

* 南アフリカ (都市と地方)で、HIV母子感染を減少させるためにネビ
ラピンを使用した場合の効果?

* HIV ポジティブの母親から生まれた子供に効果的な授乳の選択肢は。
また、母子の健康と生存を守るために、政府はどのようにしてそれを支援す
べきか?

* 最近問題となっている、ネビラピンの安全性と薬剤耐性に関する懸念
はどれほど深刻であるか、もし可能なら、政府はどのような行動をとるべき
か?

* 医療インフラと適応力を考慮すると、MTCT プログラム実施の際の運営上
の問題は何か?

* 南アフリカにおけるMTCT プログラム実施の経費とその持続性は?

d. 故に、現在の課題は研究を集約するすることである。研究分野がどう
発展するかは、このプログラムの要請がどのくらいあるかで決まり、その決
定は国のガイドラインと規範及び基準に基づき、閣僚とMEC(中央執行委員
会)が総合的に行うだろう。

e. このプログラムで最初の赤ん坊グループが12−18ヶ月なら、薬の投与を
一般に行うべきかどうか決定するのは可能だろう。この方法は、2002年12月
に開始される予定。

f. 一方HIVポジティブの母親から生まれる子どもの出産に関しては、(3
)lay counsellorsカウンセラー(助産婦)の訓練強化と他の出産方法を実施
する。

20. 会議では、性的暴行や注射針による感染を防ぐために抗レトロウイルス
薬を使用する効果は証明されていないと述べた。故にNECは、抗レトロウイ
ルス薬をこの目的で公共衛生機関に提供できないことを再確認した。しかし
保健省に対し、医師やその他の医療関係者と協議しながらこの問題をさらに
検討するよう指示した。

21. 治療、看護、支援に関して、NECは政府プログラムを支持することを再
確認し、また 日和見感染及び患者と感染者を治療するプログラムを強化す
るよう求めた。

22. また会議では、抗レトロウイルス薬の多くが国内使用の登録がされて
いる事実を強調した。しかしながら、その薬は公衆衛生システムには供給さ
れなかった。理由は、法外な値段と、結核のような病気の管理には非常に一
般的だが(1)手順を無視すると重大な結果につながりかねない管理の複雑
さのためである。

23. さらに会議では、以上のような問題(抗レトロウイルス薬処方)で、
この薬が現在は公衆衛生システムで取り扱えなが、医師や医療関係者と相談
しさらに検討するよう保健省に指示したことを強調した。

24. 会議は、養護施設助成金や食糧小包など、患者と感染者を助けるため
の組織と
資金を支援するための説明会を歓迎した。

25. NECは、ANCはこの問題解決でコミュニティーを動員する重要な責任を
持っていることを強調した。これは4月の健康月で推進されるLetsima プロ
グラムの一環となるだろう。

26. NECは、HIV/AIDSに対する闘いを科学的に継続して追求していく機会と
役割を検討した。会議が決定したのは:

a. 政府は、公共政策に影響を与えるこのような問題及びその他の問題に関
して、科学的立場からの質問を行う義務がある。故に、NECはAIDSに関する
大統領諮問委員会が継続的業務を行うことを歓迎し、審議中の問題が早急に
審議されるよう促した。

b. しかし、この問題に関する激しい議論の主役はANCでも政府でもないこ
とを強調したい。達成したいことは、私たちと国が以前よりもよりさらに真
剣に病気と取り組むことができるような知識の確立である。同時に、偽の科
学、利益に対する思いやりのない欲望、安価な大衆受けを狙う日和見的抗議
によって行動を起こしてはいけない。


道理あるパートナーシップの構築

27. NECは、HIV/AIDSの闘いで最大の効果を得るためには、私たち全体のた
めの社会全体のパートナーシップを強化する必要があることを検討した。会
議は、SA National AIDS Council(SAエイズ予防国家政策)で現在行われて
いる討論を歓迎した。そこでは、HIVと共に生きる人々を含むあらゆる分野
の人々を結集させる団体の強化を目指している。

28. このパートナーシップは、政府がキャンペーンを組織、統合し、また
挑戦に勝つためにSANACの閣僚コアチームなど保健省のHIV/AIDS部門を強化
するための政府組織の力による。さらに、SANACの閣僚コアチーム はHIV/
AIDSに関する大統領作業チームとなるだろう。

29. NECは、ANCと青年女性連盟が、包括的戦略における全分野の目的達成
のため、コミュニティーを動員するのに中心的な役目を果たしてきたと強調
した。また三者同盟(Tripartite Alliance )と大民主運動も同じことが言
える。

30. このようなパートナシップ構築の中で、HIV/AIDS関する人々の利益を
求める欲求によって多くのNGOとCBOが突き動かされているとANCは理解して
いる。そ
こで人々の基盤が形成され、ANCと政府が偏見なしで同じ利益を追求してい
る。

31. 個人と家族に酷い代価を生み出す病気と直面し、そして懸念とあせりを
感じている人々がいる。また、その他様々の職業の人々が毎日困難な挑戦に
向かわねばならない。この人たちを含め多くの人々が焦燥感を感じており、
その考えと行動は私たちが求める目的に逆っていると運命の代理人は述べて
いる。

32. ANCは、そのような暗示を拒否する。私たちは、病気との闘いに誠意を
持ち参加する人々と今後も協力していく。同時に、安っぽい支持活動や、国
内及び国際的利益団体によってその利益を浪費している大衆迎合主義(ポピ
ュリズム)そして日和見主義と闘う。


33. 私たちがひとつの目的で団結し実践する時には、製薬会社の多くにで
は協力できる分野があるとたくさんあると確信している。また、製薬会社と
の協力は今後も更に継続していく。


裁判判決の取り扱い

34. NECは、政府がネビラピンの世界的普及に関し憲法裁判所に裁判判決
を求めたとした。この訴えは、公共政策で法の役割を明確にしたいとする欲
求にから起きたものだ。有効性が検討中にも拘わらず、誰であれ(4)実験
室にある注意を要する薬を処方できるのは正しくない。

35. さらに、憲法裁判所に訴え、 裁判判決保留を実施する命令は論理に反
している言うのが私たちの見解だ。実際には研究された薬は世界にアクセス
するために医療機関に分配されるが、憲法裁判所が判決に反対するなら引き
上げることにもなる。

結論


36. 今まで述べてきたことは、HIV/AIDSキャンペーンに対するANCの見解で
ある。わが国の人々、特に患者と感染者に対する深い信念と懸念から、この
ような見解をもっている。私たちの立場と行動は、病気撲滅の治療に手を差
し伸べる南アフリカの希望の力で奮い立たされている。

37. 私たちは運命の場所で、希望に向かって立っている。また、諦めが渦
巻く場所で、基準に合った効果的、持続的プログラムを求めている。また、
ひとつことに関心が集まる場所で、HIV/AIDSと闘うために必要なすべての行
動に注目している。

38. 私たちは市民中心主義でない。常に誠意を持って行動している。

39. ANCはその歴史の中で、その行動はいかに強力なものであったとしても
一度も壊したことはない。

40. ANCはその歴史の中で、困難な問題に直面した時も手を抜いて近道を探
したことはない。また、お世辞のニュース見出しによって、人々を誤った方
向に導いたこともない。

41. 南アフリカの大多数の人々は、希望の手を差し伸べ私たちと共に歩いく
ことを確信する。

42. NECは、ANCがAIDS政策に関して、支部と地区理事会などの法的組織に対
し一貫して明白な説明を行っていくリーダーシップを求めている。この意義
深いメッセージを社会の全ての人々に伝えることは、南アフリカを憂える全
ての人々の責任である。


43. 最後にNECはこのプログラムによって、感染者や病気の人々に希望の手
を貸し世話をしていくことを強調する。

詳しくは、Smuts Ngonyama :082 569 2061


……以上……

REV: 20160125
HIV/AIDS 2002  ◇HIV/AIDS  ◇全文掲載
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