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「「葛飾ろう学校」についての公開質問」

足立ろう学校の教育を継続する会・東京の聴覚障害教育を考える会 2002/03/12

last update: 20160125


2002年3月12日
「葛飾ろう学校」開設準備担当 林 茂和殿
東京都教育委員会殿
                  足立ろう学校の教育を継続する会
                       代表 矢沢国光 
                  東京の聴覚障害教育を考える会
                       代表 本多忠雅

「葛飾ろう学校」についての公開質問

 私たちはこの間、東京の聴覚障害教育の再編整備問題に関して、さまざまな形
で関わってきました。その中で、私たちは、「都立ろう学校の統合再編が避けら
れないのであれば、小さな子どもや重複児の通学を保障し、聴覚障害者・ろう者
のニーズに応える都立ろう学校にすべきである」という形で、一定の理解を示し
てきました。
 ところが、「葛飾ろう学校」の2002年4月の発足に向けてのこの間の事態の推
移を見ると、私たちの期待した方向とは大きくずれた方向に進んでおり、遺憾な
がら、裏切られたという感を深くします。
 こうした事態を知った足立ろう学校保護者の中には、このままでは「葛飾ろう
学校」に通えないと深刻に悩んでいるものもたくさんおり、私たちは、大きな責
任を感じています。
 私たちがこの公開質問を提出する目的は、足立ろう学校の親子が、1カ月後に
迫った「葛飾ろう学校」の入学式・始業式を、安心して迎えられるよう、関係者
の早急な対処を促すことにあります。
 以下の諸点をおたずねし、誠意ある回答を求めます。

 1.足立ろう学校教員で「葛飾ろう学校」への異動を第一希望として希望した
にもかかわらず、2月末の異動内示では認められなかった人たちがいます。その
中には、足立ろう学校の手話を使用する教育を長年に渡って熱心に実践し、多く
の成果を上げ、足立ろう学校教育の継続・発展のために大きな役割を果たすと期
待される教員もいます。また、現在は他のろう学校にいて、同じ立場で「葛飾ろ
う学校」への異動を希望した教員もいます。
これらの教員の「葛飾ろう学校」への異動を敢えて認めなかった理由は、何でし
ょうか。

 2.1999年7月に策定された「東京都聴覚障害教育推進構想」では、「足立ろ
う学校と綾瀬ろう学校は統合される」となっており、「葛飾ろう学校」は二つの
ろう学校の「統合」であって、実質的には新設校ではないと私たちは理解してい
ます。「葛飾ろう学校」の開設にあたって「開設準備室」を設けず、「開設準備
担当」(林綾瀬校長)のみをおいた、という準備経過も、このことを裏付けてい
ます(註)。足立ろう学校は廃校ではなく「葛飾ろう学校」に統合・移行するこ
と、「葛飾ろう学校」は実質的には新設校ではなく、足立ろう学校と綾瀬ろう学
校の統合した学校である、ということに変更があったのでしょうか。

 (註)東京都議会文教委員会速記録(2001年12月14日)によると、曽根
委員の「準備室が必要ではないか」という質問に対して、比留間学務部長は、
「…準備室について考え方を申し上げますと…東京都教育委員会としては、全く
新しい学校を設置する場合、また、統合により既設校とは異なる学校を設置する
場合には、開校に向けて開設準備室を設けることにしている」が「今回の聾学校
2校の統合は、既設の幼少中学部のろう学校と高等部のろう学校を統合して一校
にいたすもの」[であるから準備室は設けなかった]と回答しています。

 3.都教委は「足立ろう学校の手話を早期から使用する教育は継続する」と繰
り返し約束しました。にもかかわらず「葛飾ろう学校」の「学校案内」文書(案)
には、足立ろう学校2001年度学校案内に掲載されている「…指文字・手話などを
使用する」の文言が入っていません。足立ろう学校の保護者は、このことを知っ
て「「葛飾ろう学校」に行ったら手話がなくなるのか」と不安を抱いています。
なぜ「指文字・手話を使用する」という文言を削除したのですか。
 また、足立ろう学校の2001年度「学校教育目標(2)幼稚部の教育目標」には
「手話を共通のコミュニケーション手段としながら、各自にあった指導方法で言
語を獲得し…」となっており、手話は単に「一人ひとりにあったコミュニケーシ
ョン手段の一つ」ではなく「共通のコミュニケーション手段」であることが明記
されています。「葛飾ろう学校」の教育目標には、このことが明示されているの
でしょうか。

 4.足立ろう学校の親子の中には、発達早期から共通のコミュニケーション手
段としての手話使用を必要とし、切実に要求している者が多数います。そのよう
な教育を求めて学校の近くに転居した親子もいます。こうした親子の要求に、
「葛飾ろう学校」はどのように答えるつもりですか。
 足立ろう学校の親子の中には、「葛飾ろう学校」が手話を使用する教育を継続
しないならば、他校への転校も考えざるをえない、というところまで追い込まれ
ている親子もいます。「葛飾ろう学校」は、急激な学校教育方針の転換が親子を
切り捨てるのも、やむを得ないことと考えるのでしょうか。
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【連絡先】 矢沢国光(足立ろう学校元教員)
 ・自宅 〒334-0052 川口市安行出羽4−5−14
     声専用 048−294−6046
     FAX 048−294−6078
     Eメール yazawa@msg.biglobe.ne.jp
 ・職場:(東京都嘱託)都立足立養護学校
     声03−3850−6066(代表)
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