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「警備業法および銃砲刀剣類所持等取締法における障害に係わる欠格条項見直しに対する意見」

日本障害者協議会 2001/11/05

last update: 20160125


                            2001年11月5日

警備業法および銃砲刀剣類所持等取締法における障害に係わる欠格条項見直しに対する意見

                            日本障害者協議会
                            代表河端静子

 日本障害者協議会は,障害をもつ人の当事者団体および関係者団体により構成
される全国団体です(現在69団体加盟)。
 当会は,以前より政府および関係省庁に対して,障害にかかわる欠格条項の抜
本的見直しを求めており,近年では別紙にあるように,1998年に総理府障害者施
策推進本部宛に,「障害を事由とする欠格条項に関する要望」を提出し,見直し
にあたっての当会の意見を表明したところです。
 警備業法および銃砲刀剣類所持等取締法における障害に係わる欠格条項につき
ましても,下記の理由で廃止すべきと考えており,是非廃止の方向でご検討いた
だきたくお願い申し上げます。

1.警備業法について

1)欠格事由の規定理由が合理性を欠き,「精神保健福祉法」の理念とも矛盾する
 こと

 警備業法では,昭和57年の改正で,欠格事由が追加され,「精神病者」等が追
加された。なおその規定理由は「精神病者は一般的に判断力、自制力に欠けると
ころがあり、さらには、他人の生命、身体及び財産を侵害するおそれもあり、適
正な警備業務の管理運営、実施を期待し得ないと認められるため」(1998年総理
府調べ)となっている。くしくも,昭和57年は国が「障害者対策に関する長期計
画」を策定し,障害をもつ人の社会参加を推進することを政策課題とした年であ
る。しかるに,本規定事由は精神障害をもつ人の社会参加を阻害するだけでなく,
精神病者に対する誤解と偏見に基づいていると言わざるを得ない。現行の「精神
保健福祉法」は昭和62年の改正で,精神障害者の理解と協力を義務づけており
(3条),同法の理念と相反する規定が警備業法に残されていることは遺憾である。

2)欠格とすることは「真に必要」といえないこと

 警備業は,民間で行われるものであり,いかなるものが警備業を営み,警備員と
して採用されるかは,基本的に民間の裁量に任されるところである。無論,事業の
性格上,最低限の規制は必要であるが,本欠格事由を廃止しても,事業の信頼性を
揺るがすものではない。実際には,精神障害をもつ者の雇用先として,警備業は重
要である。
 同様の規定理由から,「精神病者」を欠格事由としていた「風俗営業法」におい
ても,欠格事由が廃止されてこともあり,警備業法においても廃止されることを強
く要望する。

2. 銃砲刀剣類所持等取締法

1) 欠格事由の規定理由が合理性を欠き,「精神保健福祉法」の理念とも矛盾する
 こと

 基本的には,警備業法で述べたのと同じであるが,「銃砲刀剣類所持等取締法」
においてもその規定理由を「精神病者,心神耗弱者のように健全な精神状態を完全
に欠いている者や,これを欠いている者に銃砲刀剣類を所持させることの危険性を
排除するため」と述べており,古い精神病者観に基づいた規定である。現在の学会
等の理解では,精神障害をもつ者であっても,健全な精神状態を併せ持っていると
している。

2)欠格とすることは「真に必要」といえないこと

 確かに銃砲刀剣類は,国民が一般的に所持するものではなく,その所持にあたっ
て規制を行うことは合理的であり,必要なことと考える。そして,自己や他人に危
害を加える恐れが高い者に許可を与えないということも理解できる。しかし危害を
加える恐れが高い者=「精神病者」とは言えない。自由民主党政務調査会「心神喪
失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム報告(案)」(座長熊代昭
彦・平成13年10月30日)でも,「精神障害者は、我々の社会の大切な構成員
である。精神障害者の犯罪率は、社会全体の犯罪率に比ベ、かなり高いのではない
かと一般に漠然と考えられているが、その認識は正確な資科によって改められる必
要がある。」と冒頭で基本認識を述べている。
 よって「精神病者」であろうがなかろうが,安全な管理ができない者を欠格とす
ることには賛成できるが,「精神病者」一般を対象とした本欠格条項は,合理性を
欠き「真に必要」とは言えず,撤廃すべきであると考える。

(以上)


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