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CODA(親がろう者の聴こえる子ども)の世界

小久保壮太郎・武居渡 2001/08/25
障害学研究会関東部会 第16回研究会



レジュメ
(1)
                小久保壮太郎

◎私の発言に関して。これは私の個人的経験からなる私の個人的意見です。CODAを代
表するものではありません。いかなる団体を代表とするものでのありません。また、
本日の発言によっていかなる団体、個人への非難を目的としません。

●自己紹介 28歳。東京生まれ。ろう者の両親と3歳違いの姉(聴者)と私の4人
家族。世田谷福祉専門学校、手話通訳学科に今年4月から通っています。

●「何故手話通訳学科に学ぼうと思ったか。」
  この問いに「手話を覚えたかったから。」と答えています。ろうの子であっても手
話を知らないという事は私にとって私の選択の自由の結果でした。両親は「ろうの子
だからといって必ずしも手話を覚える必要はない。子供が興味を持てば教えよう。」
という考えだった様です。幼い頃の私にとって手話を覚えるという事は、当時両親が
手伝っていた手話講習会に参加する事を意味し、気弱な私はそれを嫌がりました。 
母は口話が上手いので、親とのコミュニケーションは口話、身ぶり(ホームサイン)
で済ましていました。その私がなぜ今さら手話を覚えようと思ったのか、これが今回
の主題となると思います。

●親の事を隠してきた。
  私はこれまで、親の事、家族の事を人にあまり言いませんでした。親がろうである
事を知られたくないと思っていました。言ってはいけない事、考えてはいけない事だ
と思っていました。なぜそう思っていたか。

●堂々巡りする思い。なぜ私は沈黙していたのか。
  手話を覚えなかった自分は悪い子。⇔親は自分の言葉を子に教えるものではないの
か。⇔社会への敵対。
  幼い頃から親を助けなければいけないと思っていた。周りの大人もそう言ってい
た。
>親を困らせてはいけない。>困った事があっても親を頼ってはいけない。>親を
「たよりない」とみている事への罪悪感。>ろう者への社会の見方への怒り。>行き
場の無い感情。>自己防衛策。「無色透明」への憧れ。

●幼い頃から消えないイメージ。
  目の前に透明なドアがふたつある。ろう者の社会へのドアと聴者の社会へのドア。
そのどちらへも入れない、入りたくない自分。
  ろう者の子の聴者は時として「ふたつの世界に引き裂かれる存在」になりうる。

●言葉を教えたのは誰。
  私は(言葉)音声言語を自分で覚えたという意識が強い。ラジオ、TV、本、辞書
など。友達にバカにされないよう必死だった。小学校に入学した際、担任の先生から
発話を直された。私はどうやって言葉を覚えていったのだろうか。母。姉。

●「ろう者の子供だからといって必ずしも手話は必要無い。」という事。
  なぜ両親はこのような考えを持っていたのか。厳しい口話教育をうけた母。私の生
まれた時代背景。
  両親と両親の親の関係。子供を自分達の通訳として育てたくはない。

●「親思う心にまさる親心」
  私はいつでも(反抗期においても)親を尊敬はしていた。両親はとても仲がよかっ
た。それ故に私は支えられ、且つまた、悩みもしたと思っています。CODAというこ
と。
違い(異文化?)を持つ[親子]という事。意思疎通。


(2)CODAをどう考えるか 武居 渡

1.自己紹介
2.ろう文化と聴者文化
  ろう者の様々な文化(生活様式)
  →今まで「聞こえない人は常識がない」という言葉で片付けられていた
3.手話について
  CODAだからといってすべての人が手話ができるわけではない。
  すべてのCODAがろう者に対して肯定的なイメージを持っているわけではない
         ↓
   親が自分の手話や聞こえないということを肯定的に受け止めているかどうか
   子どもはそれをそのまま受け継ぐ
4.CODA文化はあるのか
  文化の定義 継承性
   CODAは絶対にCODAの子どもを生むことができない。
        ↓
   CODAが集まるコミュニティがない現在、CODA文化があるとはいえない
  
5.CODAの持つナイフ
    CODAというナイフ
    ろう者も聴者もこのナイフには太刀打ちできない
      ↓
   手話を学ぶ多くの聴者を簡単に傷つけることができる
   日本語もまた習得していることからろう者に対しても強く出ることができる
      
6.CODAとろう者
  CODAは通訳する上での十分条件であり必要条件ではない
     ↓
  CODAが集まって団体を作るとき、その目的は何か
   個人の悩みを共有 (悩みのない人もいる)
   通訳養成 (通訳にはなりたくないCODAもいる)
   小さなCODAの援助 (CODAがCODAを援助するより、ろう者のほうが適役?)


REV:.20041208
障害学
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