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「科学技術基本計画の概要」


last update: 20160125


科学技術基本計画(全文)

cf.総合科学技術会議
http://cstp.jst.go.jp/

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科学技術基本計画の概要
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2001/kagakugijutu/0330summary.html
より

第1章 基本理念
1.科学技術を巡る諸情勢

(1) 20世紀を振り返って
科学技術のめざましい進歩により、先進国は豊かで便利な生活と長寿を獲得。

一方、科学技術は、人間社会と地球環境を脅かす負の側面をもつことも明確化。

(2) 21世紀の展望
科学技術は、人類の生活、経済社会の発展に一層貢献。
世界の持続的発展の牽引車。
我が国が直面する産業競争力の低下、雇用創出力の停滞、少子高齢化等の
課題を克服し、国民生活の安定的な発展を図るためには、技術革新により
高い生産性と国際競争力を持つ産業を育て経済活力を回復することが必要。
また、高齢者が生きがいを持ち、健康で活力に満ちた質の高い生活を実現
することや、情報格差の解消も大きな課題。

人口の爆発的な増大、水、食料、資源エネルギーの不足、地球の温暖化、
新しい感染症等に対処し、発展途上国を含めた世界全体の持続的な発展を
実現し、人類の明るい未来を切り拓くためには科学技術の力が不可欠。

生命倫理、情報格差、環境問題等科学技術の社会への影響の深まりへの対
処のため、自然科学と、人文社会科学を総合した英知が求められる。

2.21世紀初頭に我が国が目指すべき国の姿と科学技術政策の理念



◇「知の創造と活用により世界に貢献できる国」 −新しい知の創造−

科学を通じて新しい知識を生み出し、その知識を活用して人類共通の問題
解決に資することにより、世界から信頼される国を実現。

このため、科学的なものの見方・考え方、科学する心を大切にする社会的
な風土を育み、知を国の基盤とする社会を構築。

具体的には、国際的に評価の高い論文の比率が増加、国際的科学賞の受賞
者を欧州主要国並に輩出(50年間にノーベル賞受賞者30人程度)、優
れた外国人研究者の集まる研究拠点が相当数できること等をめざす。



◇「国際競争力があり持続的な発展ができる国」 −知による活力の創出−

付加価値の高い財・サービスを創出し、雇用機会を十分に確保することで我
が国の経済活力を維持し、国民の生活水準を向上させられる国を実現。

このため、産業技術力の強化を図ることにより、国際的な競争力を有する産
業が育成されることが必要。

具体的には、公的研究機関の研究成果が数多く産業へ移転される、国際標準
が数多く提案される、国際的な特許の登録件数が増加すること等をめざす。



◇「安心・安全で質の高い生活のできる国」 −知による豊かな社会の創生−

高齢社会において健康に生活できるよう疾病の治療、予防能力を飛躍的に向上
させること等により、人々が安心して心豊かに、質の高い生活を営むことので
きる国を実現。

このため、科学技術の発展とその社会への活用が重要。また、科学技術の先進
国として我が国が国際社会の直面する難問を解決するとともに、国際的地位と
国の安全を維持するため、科学技術を活用。

具体的には、オーダーメイド医療を可能とする基盤が形成されること、自然災
害の被害を最小限に抑えること等を目指す。発展途上国の感染症、災害対策等
にも貢献。

* 3つの国の姿の実現に向けた留意点


我が国が20世紀に築いた科学技術の蓄積を基盤に21世紀に持続し、発展さ
せることが、国内の課題の解決と国際貢献にも寄与。

我が国の近代化の経験を踏まえ、科学技術文明の発展と固有の文化の維持のた
め世界に寄与。



3.科学技術政策の総合性と戦略性

(1) 科学技術を総合的、俯瞰的に展望し、社会や自然環境との調和を推進。

(2) 科学技術は尽きることのない知的資源であり、その振興は、未来への
先行投資。研究成果が社会や産業活動に速やかに還元され、次の投資につなが
りさらに大きな成果を産んでいくダイナミックな循環システムを構築。

(3) 科学技術の両面性を踏まえて、「社会のための、社会の中の科学技術」
という認識の下、科学技術と社会とのコミュニケーションを確立。

(4) 知の革新を図るため、総合科学技術会議は、政策推進の司令塔として、
重要分野、研究基盤への計画的投資、厳正な評価とそれに基づく資源の効果的
・効率的配分の考え方を示すとともに、その実行に当たり使命を果たす。


4.科学技術と社会の新しい関係の構築

 「社会のための、社会の中の科学技術」という観点から、科学技術と社会と
の双方向のコミュニケーションを図るための条件を整備。
 研究者、技術者、ジャーナリストに加えて、人文・社会科学の専門家も、双
方向のコミュニケーションを図るため、重要な役割を担う。


5.政府の投資の拡充と効果的・効率的な資源配分

◇平成13年度から17年度までの政府研究開発投資は総額約24兆円必要。
(前提:対GDP比1%、GDP名目成長率3.5%)

◇毎年度の投資は、財政事情等を勘案し、研究システム改革や財源確保の動
向等を踏まえて検討。

◇研究開発投資の重点化・効率化・透明化を徹底し、研究開発の質を向上。



第2章 重要政策
1.科学技術の戦略的重点化

◇基礎研究の推進


新たな知に挑戦し、未来を切り拓くような質の高い基礎研究を重視。

◇国家的・社会的課題に対応した研究開発の重点化
 以下の4分野に対して、特に重点を置き、優先的に研究資源を配分:


ライフサイエンス分野:疾病の予防・治療や食料問題の解決に寄与

情報通信分野:高度情報通信社会の構築と情報・ハイテク産業の拡大に直結

環境分野:人の健康、生活環境の保全、人類の生存基盤の維持に不可欠

ナノテクノロジー・材料分野:広範な分野に大きな波及効果を及ぼす基盤

以上の4分野に加え、エネルギー、製造技術、社会基盤、フロンティアの4
分野においても、国の存立にとって基盤的で、国として取り組むことが不可
欠な領域を重視して推進。


◇急速に発展し得る領域への対応

近年、異分野の融合や新たな科学技術の発展により、新領域が出現すること
が多い。したがって、小規模ながらも将来著しい成長が予想される領域が先
駆的に出現した場合は、機動性をもって的確に対応。

最近の例:ナノテクノロジー、バイオインフォマティクス、システム生物学、
ナノバイオロジー


2.優れた成果の創出・活用のための科学技術システム改革

◇研究開発システムの改革

競争的資金の倍増と間接経費(30%)の導入。

人材の流動性の向上:若手育成型任期制の改善(任期:3→5年)、公募制の
普及と任期制の拡充。

若手研究者の自立促進:若手研究者への競争的資金の重点的拡充、助教授、
助手が独立して研究できる環境の整備。

評価システムの改革:大綱的指針を改定、評価結果の資源配分への反映等。

研究開発に関する予算執行の柔軟性を図るとともに、勤務形態等の弾力化。

多様なキャリアパスの開拓、優れた外国人研究者の活躍機会の拡大、女性研
究者の環境改善等。


◇ 産業技術力の強化と産学官連携の仕組みの改革

産学官連携を促進する人材の養成・確保、研究情報や人材情報に関するデー
タベースを充実。

公的研究機関の研究成果を活用した事業化の促進:国有特許の専用実施権の
設定及び譲渡のルール化、技術移転機関への譲渡による活用拡大。

地域における「知的クラスター」の形成等、地域における科学技術振興のた
めの環境整備。

◇優れた科学技術関係人材の養成とそのための科学技術に関する教育の改革


国際的に通用する大学、大学院の実現をめざし、創造性・独創性豊かで広い
視野を有し実践的能力を備えた研究者や技術者を養成するよう教育研究の質
を向上。
各大学における自己点検・評価、第三者評価の実施及びその結果の公表を推進。


◇科学技術活動についての社会とのチャンネルの構築

初等中学教育を通じ科学技術に対する興味・関心を育成。大学における科学教
育の改善。
体験学習、産業現場等におけるインターンシップや社会人講師の活用を促進。



◇科学技術の倫理と社会的責任


生命科学の発展により、脳死による臓器移植や人に関するクローン技術等人間
の尊厳に深く関わる科学技術が登場、生命倫理上の大きな問題。
今後、生命科学、情報技術などの科学技術の一層の発展が、社会と個人に大き
な影響を及ぼすことが予想され、社会的コンセンサスの形成と倫理面でのルー
ルづくり、国際的な協調が不可欠。

研究者・技術者は、関与する科学技術の社会全体での位置づけと自らの社会と
公益に対する責任を強く認識し、倫理観の高揚に務めることが重要。

学協会等での倫理に関するガイドラインの策定を求めるとともに、技術者の資
格認定において倫理の視点を盛り込み、高等教育等における教育内容の充実等
を図る。

研究機関・研究者は研究内容や成果を社会に対して説明することを基本的責務
と位置づけ、研究機関の一般公開、公開講座、インターネット等で受発信し、
双方向のコミュニケーションを充実。
科学技術に関わる組織は、事故やトラブル等のリスクについて、その影響を評
価し、リスクを最小化する管理と研究者・技術者の倫理の涵養に努力。


◇科学技術振興のための基盤の整備


施設・設備の計画的・重点的整備:大学等の施設整備を最重要課題と位置付け
施設整備計画を策定し、計画的に実施。

研究施設の支援:研究支援業者については、研究室の中で、個々に研究に必要
とされる支援者を雇用する等により対応。共通的な支援業務や特に高度な支援
業務は研究機関内で集約して整備する等により確保。

知的基盤の整備:研究者の研究開発活動、知的基盤(研究用材料、計量標準、
計測・分析・試験・評価方法及びそれらに係る先端的機器、関連するデータベ
ース等)の戦略的・体系的な整備。

研究情報基盤の整備:LAN整備、ネットワークの高度化等、高度情報化の先
陣を切る高度化を推進。

知的財産権制度の充実と標準化。

ものづくり基盤の整備:熟練労働者の高度な技能や過去の成功・失敗事例等のデ
ータベース化等。

学協会の活動の促進

3.科学技術活動の国際化の推進


◇世界に向けて国際協力プロジェクトを提案し実施(地球規模の問題解決や国
際的な取組が必要な基礎研究)

◇国際的な情報発信力能力の強化

◇国内の研究環境の国際化


第3章 科学技術基本計画を実行するに当たっての
総合科学技術会議の使命


◇運営の基本

科学技術政策推進の司令塔として、省庁間の縦割りを排し、先見性と機動性を
持って運営。
21世紀の人間社会のあり方を視野に置き、常に世界に開かれた視野を持ちつつ、
人文・社会科学とも融合した「知恵の場」として活動。

「社会のための、社会の中の科学技術」という認識の下に、科学技術の両面性に
配慮し、生命倫理など科学技術に関する倫理と社会的責任を重視。


◇重点分野における研究開発の推進

基本計画の重点化戦略に基づき、各重点分野における基本的事項を定めた推進
戦略の作成。


◇資源配分の方針

次年度において特に重点的に推進すべき事項、質の高い科学技術推進のための
科学技術に関する予算の規模等に関する意見の提示。

次年度の重要な施策、資源配分の考え方の提示。
上記の考え方を反映した資源配分が行われるよう財政当局と連携。


◇国家的に重要なプロジェクトの推進

府省の枠を越えたプロジェクトについて、効果的・効率的な実施等のための
意見の提示。

実施段階においても必要な評価を実施。

◇重要施策についての基本的指針の策定

研究開発評価、研究者の流動化等の基本的な指針の作成。


◇大規模研究開発プロジェクトや各府省の施策の評価

大規模な研究開発等についての評価に加え、基本的政策等に反映させるため、
各府省の施策についても評価。


◇ 科学技術基本計画のフォローアップ


実施計画の提出をもとめるなど、各府省の協力を得てフォローアップ。

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